停電がヤバすぎ&リアルが非常に多忙でした。
「グリッドナイトと連絡が取れない……」
キャリバーの報告にマックス達は嫌な予感を覚える。既にトレギアが動いているのは明白であり今後どういう行動に移るかわからない。
「まさか……やられたんじゃねぇだろうな」
ボラーが小さい声で呟く。
計画ではグリッドナイトと新条アカネがアクセスフラッシュをする事で三人のグリッドマンの力でトレギアに対抗するはずだった。
「みんな帰って来たらまた作戦会議だねこれは」
普段気だるそうにしているヴィットもこの緊急事態のせいかそういう様子を一切見せない。
「その前にグリッドナイトの様子を見に行くぞ。まだやられたかどうかはわからない。仮にそうだったとしても早期発見で助かる可能性がある」
「ボラーとキャリバーはみんなの護衛を、俺とマックスでグリッドナイトの様子を見に行こう」
ヴィットの言葉に他の三人が頷きマックスとヴィットは新条アカネのパソコンへと急ぐのだった。
なみことはっすは六花達と別れた後、カラオケに来ていた。
カラオケに来ている割には歌を歌わずに動画を見ている二人。
「ねぇはっす~、最近Arcadiaの動画つまらなくない?やまとさんどうしたのかなぁ?」
「なんか芸風変わったよね、どうしたんだろ。ま、わたしは応援するけど」
「そりゃあたしも応援するけどさ~、なんか物足りないっていうか」
推しのyoutuberの劣化を嘆く二人。
「合コンの時も六花とさぁ……あれ?なんか違和感あるような……」
「……なんかわかるかも」
自分達が苦労してセッティングしたはずの合コンの事についてあまり思い出せない事に二人は違和感を覚える。
「それよりさっきの一平くん、なみこどう思ってんの?」
「べ、別にどうもこうもないんだけど!?」
だがすぐに恋バナへと移るのだった。
「はぁ~、最近スランプだよなぁ」
Youtuberとして有名になったもののここ最近の再生数がイマイチ伸び悩む。
ファンには口を揃えて昔のスタイルに戻って!って言われるけど、やり方変えた訳じゃないし正直今も昔も変わってないはずなんだけどな。
前に女子高生と合コンした時はレベルの高い子ばかりで俺もここまで来たかと思ったものだが、そこから動画が伸び悩むようになったのも事実。
エゴサしても合コン前後で全然ファンの反応が違う。
女の子にチヤホヤされながら広告収入やネット番組に呼ばれてお金を貰う生活が黄色信号だ。
「動画編集すっか」
いつものように毎日投稿するため動画を編集しようとパソコンのマウスに手を伸ばした。
するとパソコンの画面が突然黒くなったかと思った瞬間、禍々しい闇から赤い眼が見えるのと同時に腕が伸びて来る。
「やあ、youtuber。君の奥底に眠る感情を喚び醒ましに来た」
悪魔とも思える何かが俺に語りかけてきたのだ。
何が起きているのか頭の整理が出来ずに呆然としていた。
「君は動画の再生数が伸びず悩んでいるんだねぇ」
「ど、どうしてそれを……あっ、もしかしてファン?」
精一杯おどけてみる。
だが悪魔にハァと溜め息をつかれてしまう。
「私は君の動画が伸び悩む原因を知っているぞ。ファンが本当に望む君、いや、君達を」
「な、何言って……」
悪魔が指を鳴らす。すると俺の頭に記憶がなだれ込む感覚に陥る。
俺はyoutuberだけど、一人じゃなく四人で活動していたこと。
三人とも俺の知らぬ間に怪獣に殺されてしまっていたこと。
俺の親友、仲間達はもうこの世にいない。
その現実を約半年後にようやく思い知らされる事になるとは。
「う、うああああああああああ!!!!」
全身が震え吐き気さえする。
今までこの異常な状態を何も疑問を持たずにいたことに嫌悪感を抱く。
「君から大切な物を奪った奴の名は新条アカネ。この子さ」
悪魔が手のひらを開けるとそこに映像が映る。
合コンの時に一番狙っていた子だった。
「ア、アカネちゃんが……?意味わかんねぇ……」
「無理もない。君はこの世界の仕組みを知らないのだから」
悪魔はこの世界の仕組みについて話始めた。
この世界は新条アカネによって作られたということ。
怪獣は新条アカネが差し向けたこと。
色々と俺の知らなかったこの世界の真実を悪魔は次々と明らかにしていく。
しかしどれよりも衝撃を受けた事実を聞かされる。
「君自身も当然作り物さ。試しに君の本名を思い出してみるといい」
「何言って……俺の本名は……あれ?」
Youtuberとして活動している「やまと」というニックネームしか頭に浮かんでこない。
いや、そもそも俺には「やまと」という名前しかない。
この悪魔に指摘されなかったらずっと気づいていなかった。
新条アカネに設定された俺は「youtuberのやまと」という事でしかない。
「さて、本題だ……私なら君の友達を生き返らせる事が出来る。もちろん、私の提示した条件を守るというのであれば……」
薄ら笑いをしながら目の前の悪魔は俺に選択を迫る。
「君の選べる選択は二つだ。一つ目はこの世界の真実を知ってもなお君は何も行動出来ずに仲間を失った悲しみに暮れyoutuberとしても評価を下げ続ける虫ケラのように惨めな生活を続ける、か。二つ目は私の条件を受け入れ仲間と共に元の日常生活に戻る、か」
頭が追い付かない。こいつはまるで三人を生き返らせる事が出来ると言ってるように聞こえる。
「君の思っている通りだ。私の提示する条件さえ守れば君の大切な仲間は再びこの世界で生きていく事が出来る。全ては君次第さ」
おれの答えは決まっている、だがこいつを信用できないのが問題だ。
「先に条件を聞きたい。それからなら……」
「いいだろう。君に課す条件は一つ、新条アカネに復讐しろ。ひたすら怨め、君が心の奥底に眠らせている感情を、あるべきだったものを解放するのだ」
新条アカネに復讐……俺のあるべきだったもの?
「君のお世辞にも良いとは言えない心、その全てを新条アカネへの憎しみに変えろ」
憎い……そうだ。俺が本来あるべきだった感情は憎しみだ。3人の命を奪った新条アカネに対する復讐心だ!
悪魔が近くにいるせいだろうか。自分の心の奥底までどす黒いものが広がっていく感覚になる。
「最後に一つだけ……今から生き返る三人は自分が死んでいたことを認識したら人間として死を迎える。三人の命は君次第だ」
俺の意思は硬い。有井、タカト、今井……三人の命が蘇るなら何でもする。
「上出来だ、約束は守ろう。闇に身を委ねるがいい…」
奴が指を鳴らすと俺の意識は遠退いていった。
「……これが俺達が問川について知っていることだ」
「新条アカネの怪獣によって殺された子達……か」
直人の顔もいつもと違う大人びた表情になっていた。
一平、井上さん、武史も同様に真剣な表情をしている。
内海の言う問川さんも俺の記憶にはない。
ただ内海の話から察するに、俺がグリッドマンと戦っていた時にもきっと彼女の存在はかなり大きいものだっただろう。
「いざそういう話を聞かされると、なぁ。新条アカネって本当に俺達と共に戦えるのかよ。そりゃあっちで会ったときはもう改心したって感じだったけどよ」
一平の意見は俺も思っていた事だった。記憶のない俺にとって内海や六花とは違いどうしても転校生と瓜二つと言われる新条アカネに対する印象が良いわけではない。
彼女はこの町に限らず人も世界も全て作り、ここの世界の神であったがゆえに作られた命に対して責任を持つことはしなかったのだろう。
彼女が人を殺したというのは事実であるが、今この世界にいないと言うことは責任を持って反省し自分の世界を生きているということにもなる。
グリッドマンが言うには彼女の力が無ければトレギアを倒す事は出来ないらしいし、もし力を貸してくれるならすぐにでもお願いしたいのもまた事実だった。
「確かにそう簡単に信じてもらえないかもしれないけど……アカネを信じて欲しい。アカネはきっとこの世界を助けに来てくれる」
六花の必死な素振りを見るとそれだけ新条アカネを大切に思っているかがわかる。
内海もそれは同様だ。
「宝多さんを、新条さんを信じよう、みんな」
武史が六花に続く。
「彼女は僕と一緒なんだ。例え一度道を踏み誤ったとしても友達がいれば正義の道だって歩めるはずなんだ。僕だって直人達がいなかったら日頃の鬱憤を晴らすためだけに人を殺めていたのかもしれない」
武史はかつて直人達と敵対していたらしい。
孤独だった心を直人達に救ってもらえたからこそグリッドマンシグマとして正義のヒーローにもなれた、と。
「……それもそうだよな。これから仲間になるやつを疑ってる暇なんて俺達にないしな」
一平は納得したのか語気が心なしか緩くなっている。
「でも、なんで問川さんは生き返ったのかしら?」
「トレギアの仕業かな?でもわざわざ生き返す必要なんてあるのか?」
生き返す必要……か。俺はふと頭によぎった事を皆に話すことにした。
「あいつは悲劇を喜劇のように楽しむ奴なんだ。俺の時も皆がいてくれなかったらあいつの悲劇のシナリオ通りだったに違いない。生き返らせた事には意味が絶対あると思うんだ……悪い方に」
「響君……」
「裕太の言う通りかもしれない。トレギアのする行動は何か必ず意味があるはずだ。奴が作る悪趣味な脚本通りにするために行動を起こしているに違いない!」
トレギアの目的はわからないがろくでもない事に違いない。今後のためにもとりあえず新世紀中学生のいる六花の家に行き、ジャンクの強化と問川さんの事を相談することにした。
「……?」
誰か私を呼んでいる……?
気のせい……?
私の部屋へ入るとコンピューターから声が聴こえてくる。
前に会った三人組……グリッドマンとあの世界の事を知っていた。
もしかしたらこの声はあの人達のものなのかな?
グリッドマンと一体化した抜けてるけどやるときはやるあの男の子かな?
いや、ウルトラマンが好きなオタクで頭のいいあの男の子かな?
それとも、私の親友で大切なあの女の子?
恐る恐る私はコンピューターの電源をつける。
だけどコンピューターは何も映らなかった、私さえも反射せず黒い画面のままに。
コンピューターが壊れたのだろうか?
……何か凄い嫌な予感がする。
そう思った時には既に遅かった。
禍々しい闇が画面を包みそこから赤い目をした悪魔が私を見つめてくるのだった。