電光超人グリッドマン ヒカリノキズナ   作:消しゴム

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第16話 新条アカネ

「初めまして。ツツジ台の神様、アカネくん」

 

目の前の悪魔はかつてのアレクシス・ケリヴを彷彿とさせる姿をしていた。私の呼び方も恐らくアレクシスの真似をしている。何故この悪魔がその事を知っているのかもわからない。

 

「ククク……このパソコンの中にいるのが君の大好きな友達じゃなくて残念だったね」

 

「……私はあの時の自分には戻らない。だから早く帰って」

 

私はアレクシスと同じような奴が自分のパソコンに現れたと感じた。

かつてのアレクシスは甘言で私を騙しツツジ台を作らせたことからも相手にしないようにと努めることにした。

しかしこいつは私のことをどこまで知っているのだろうか?

すぐにパソコンから離れて部屋を出ようとする。

 

「私の名はトレギア。……おっと、そこのドアを開こうとしても無駄だよ」

 

私がドアを開けようとした瞬間にトレギアと名乗る悪魔は忠告してきた。

 

「な、なんで……!?」

 

ドアは何故か開かない。全身から嫌な汗が吹き出すのがわかる。

 

「なぁに、すぐに日常生活に戻るさ。私はただ君の友達が置かれている状況を伝えに来ただけだ」

 

トレギアがそう言うと画面から手を伸ばしてくる。

 

「かつて君が神として君臨した世界は間も無く私が用意した怪獣軍団によって消滅する」

 

「!」

 

ツツジ台が消滅する………?もしかしたら私を呼んでいた声はそれを伝えようとしていたのかもしれない。

 

前に会ったあの三人組の人達もツツジ台に危機が迫っているから来てくれと言っていた。

その時も私は約束を反古にする事は出来ないという気持ちとグリッドマンが来てくれているから大丈夫という気持ちがあり、断ってしまったが。

 

「あの声は……」

 

「声?それは君の作った忠実な負け犬のものだ。うるさいから私が処理しておいたよ。君は無視し続けていたんだからどうってことないだろう?」

 

まさかアンチが……?生きていた事に喜びを覚えると同時にアンチが殺されてしまった事にショックを覚える。

私が気付かない振りをし続けたせいで……。

 

「助けにいかなくていいのかい?友達に危機が迫っているんだよ?」

 

「でも……」

 

私の友達……六花との約束。二度と私があの世界へ逃げないように背中を押してくれた。

彼女の事だ、私が約束を破って帰ってきても受け入れてくれるだろう。

しかしそれは彼女の願いに反することにもなる……。

 

「そうかそうか。現実で充実してる今、あんな世界に行きたくもないだろう」

 

「……違う」

 

私はトレギアの言葉に憤慨しそうになる。確かにあそこは私にとって逃げる場所であるが同時に大事な友達のいる場所である。

 

「まあそれでいいかもしれないな。あっちの友達は君の事なんかどうでもいいみたいだしね」

 

トレギアどういう意味で言っているのか一瞬解らなかったがすぐにその意味を知ることになる。

 

トレギアが手を小指から順折り曲げてから開くと共に映像が現れる。

 

『正直新条さんには来て欲しくないよ』

 

心臓がドキッと激しく跳ねる。この声は内海くんのものだ。私に来て欲しくないと確かに言っている。

 

『新条アカネって本当に俺達と共に戦えるのかよ』

 

私に会いに来ていた一平君だった。

そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アカネには 来て欲しくない』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一番大切な人から、一番聞きたくない言葉が出る。

胸が苦しくて息が止まりそうになる。六花すら、私にこの世界に来て欲しくないと思っていたなんて。

 

「君の友達との絆なんてそんなものさ。神様はもうあの世界にはいらないんだよ」

 

目から涙がこぼれそうになるのを必死に抑えながらトレギアを睨み付ける。

 

「おやおや、そんなに睨み付けても君が嫌われている事は変わらないよ。君の大事な人から貰った定期入れ、君の思った通りどっか行っちゃえって事だったんじゃないのかい?」

 

トレギアの一つ一つの言葉に心が傷ついてしまっている自分がいる。

でも辛い事や苦しい時でも逃げない、あの時の私とはもう違う。

たとえ求められていなくても、これ以上あの世界の平和を壊さないために、大切な人達を守るために。

心が重くなったまま、涙目でそう決心した。

 

「それでも私は……あの世界に行く。皆を助ける!」

 

涙で震えた私の言葉を聞いた瞬間、トレギアは私を嘲るように大笑いする。

部屋中に声は響き、パソコンを包んでたの闇のオーラは更に深まる。

 

「何をいい子ぶってんだよ」

 

トレギアはドスの効いた声で私に言い放つ。

鋭い爪をした人差し指を私の顔の前に持ってくる。

 

「グリッドナイトもいない、アレクシスがいなければ怪獣すら作れない。そんな役立たずがあの世界に行って何が出来る?」

 

「………やめて 」

 

「本当は怖くて行きたくないんだろ?私に言われたから仕方なく決心をしたフリをしただけだ」

 

「そんなことない!」

 

「あの時の自分と違う?どこまでも笑わせる奴だ。お前は何も変わっていない。ツツジ台を作る前から離れるまで何一つな」

 

私は夢中だった。ただただトレギアの言葉を聞きたくない、決心を揺らがせないようにと思いパソコンの電源切るためコンセントを抜く。

パソコンについた闇はそのままだったがトレギアはいなくなる。

 

「いない……良かった……」

 

安心したのも束の間、トレギアは私のすぐ横に立っていた。

 

「きゃあ!」

 

私は思わず声を上げ椅子から転げ落ちる。

そして恐怖から無意識にベッドの布団の中に隠れていた。

体の震えが止まらない。

 

そんな私の様子を見てトレギアは再び大笑いをする。

 

「やはり私の言った通りじゃないか。お前は何一つ変わっていない。卑怯者でずるくて臆病で弱虫で……どんな世界にいようとも変わらない、逃げ場所が変わっただけだ。作り物にすら見捨てられる、それが新条アカネだ」

 

もう私は反論する気力すら失われていた。

早くこの苦しい状況から時間だけが過ぎていくのを布団の中で待つ、昔の私みたいに。

いや、いつもの私みたいに。

 

あの世界にいる私の友達を、あいつは殺そうとしている。

それなのに私はここから動けない。

どこまでも……弱い人間だった。

 

「じゃあ私は失礼するよ、アカネくん」

 

トレギアがいなくなった、ドアも開くだろう。

でも私の心はさっきのドアよりも硬く閉ざされていた。

LINEの音が鳴ったけど見る気力も今はない。

ただただ泣きながら時間が過ぎるのを待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ククク……やはり絆なんて簡単に壊れるものだ。

絆を信じられなくなってからは早かったな。

 

絆など下らないもので他人にすがる位なら私は孤独でも闇を身に纏い光を超越する。

光も闇も変わらない、正義や悪も。

 

絆は一度繋がれば切っても切れない呪いのようなものだ。

そんなものに価値などない。

 

私が間違っていない事を証明してやる……奴らの絆を使ってな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒカリは絆だ」

 

「え?」

 

いきなり発せられた内海の言葉に俺は困惑する。

 

「おいおい前に言っただろ?俺の好きなウルトラシリーズのうちの一つの……」

 

「はいはい」

 

六花も呆れているようだ。

トレギアが怪獣軍団と共に攻めてくるまで残り1日となった今、こうして登校中でも対策を練ろうという事だったが開始早々内海が変なことを言って微妙な空気が流れる。

 

「まあ内海くんは空気読めないからね」

 

「うん、確かに。……あ、そうじゃなくて!内海は空気読めない時もあるけど良い奴で!」

 

「裕太……そういうフォローは逆に傷つく。……いや、そうじゃなくて!この言葉って俺達にも言えるよな!って話をしたくてだな……」

 

俺達にも言える?どういう事なのかと内海に聞くとニヤリとして早口でそのウルトラシリーズの設定とかを説明し始めた。

そういうところだよ……と心の中でツッコむ。

 

「武史が俺達三人じゃないと新条さんを理解してやれない、心を動かせないって言ってたろ?」

 

「確かにそうだけど……それが?」

 

「何とかして新条さんに俺達の言葉を伝えられないかな?新条さんだって知ってる人からのSOSの方が来やすいだろうし」

 

なるほど、新条さんが来ないなら直接こっちから行けば良いということか。でも新条アカネのコンピューターは近づけないんじゃ?

 

「六花、新条さんの連絡先知ってるだろ?それで繋がったりしないかな?」

 

近づけないなら他の方法でと言わんばかりの内海の言葉に六花はあまり浮かない表情をする。

 

「実はもうLINEで送ったんだ。既読はついてないし、ちゃんと送れてるかどうかも……」

 

「そっかぁ……いい作戦だと思ったんだけどなぁ……」

 

内海は落ち込んでしまう。六花もやはり浮かない顔で俯く。

 

「なあ、裕太って新条さんの事何か思い出せねぇの?」

 

「……実は少しだけ記憶があるんだよね」

 

「えっ!?」

 

「マジかよ裕太!?何で言わなかったんだよ!」

 

二人は驚いた顔をしていた。まあつい最近思い出しただけなんだけど。

 

「でも、正直あまり言いたくないんだよなぁ。内容的に」

 

「いやいや!もしかしたら新条さんがこっちの世界に来る手がかりがあるかもしれないし!」

 

「お願い響君!」

 

二人にここまでお願いされたら話すしかない。

 

俺が目覚めると新条さんがおれを看病していたみたいだったこと。

その世界で俺は新条さんと付き合っていたこと。

その他にも色々あって、グリッドマンや皆を思い出して夢から覚めようとした事まで覚えていたのでそこまで話した。それ以降は覚えていないので仕方ない。

 

断片的な記憶であるが、内海が言うにはどうやら夢を見せる怪獣に夢の中へ囚われていた時の事らしい。

 

 

「くぅー!お前夢の世界で新条さんと付き合ってたのかよ!キスとかしてねえだろうなあ!」

 

「へー……。ふーん、そう……」

 

内海はともかく六花はジト目で俺の目を見てくる。

隣で内海があくまで夢の話だとフォローしてくれるが六花はツーンとしてしまった。

 

「と、とにかく!もう明日にはトレギアが来るわけだし最後にグリッドマン達に相談してみようぜ!」

 

内海が雑にまとめた後、六花はいつものメンバーの方へと向かって行った。べ、弁明出来てない……どうしよう。

 

「……なあ、裕太。新条さんって本当に来てくれるかな?」

 

内海は少し暗い顔をして言う。

 

「そういえば前は内海と六花もあまり来て欲しくないって言ってなかった?」

 

「この世界に来るってことは新条さんにとって現実から逃げることになるだろ?それに今回の戦いは絶対に危険な事になる。友達がそんな目にあって平気なわけないだろ」

 

そっか。六花も内海も新条さんが大切だからこそここに来てほしくなかったのか。

新条さんの記憶について夢の中の出来事しか覚えていない俺も決して新条さんを悪人とは思えなかったし。

 

「お前も一緒だ。一番の友達なのに命をかけた戦いをさせてる自分が情けないんだ。だから少しでも役に立てそうな事があるか必死になって探してるんだ」

 

「内海……」

 

内海はいつも皆のために動いており、しっかりと戦いに出れるようにおれのサポートをしてくれている。

 

そんな友達のためにもトレギアには負けられない。

きっと新条さんは来てくれる。

俺はそう願わずはいられなかった。

 

 

 

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