明日にはもうトレギアとの戦いが始まる。
私はそう思うといてもたってもいられなくなる。
それはこの場にいるみんなも一緒みたいだ。
響君と直人君と武史君はグリッドマンと一緒に戦いでの確認をしているし、私と内海君はゆかちゃん、一平君とともにサポートの確認をしている。
「三人とも、君達の言っていたことだが……少し難しいかもしれない。現状、新条アカネのコンピューターにアクセス出来ないからどうしようもないのだ」
グリッドマンは申し訳なさそうに言っている。
アンチ君の安否がわからない時点で察してはいたけどやはりこうして言葉にされると悔しい。
トレギアがいる今、アカネが一緒に戦ってくれるか以前に無事でいてくれてるかどうかわからないのがもどかしい。
トレギアに何かされてないかと不安になってしまう。
響君も内海君も残念そうにはしていたがすぐに切り替えて色々な事を確認していた。
「裕太、内海、六花!ついに俺達の奥の手が完成したぜ!」
「奥の手?」
恐らく私達の頭の上には大きなハテナマークが付いていることだろう。
「その名も『追放プログラム』さ!」
直人君が自慢気に答える。
「私から説明するわ。これは物体の一部をプログラム化してこの世界に来れなくするように書き換えるの。トレギアは私達同様この世界でも生身に過ぎないから無理矢理プログラム化させて書き換える作戦よ」
「あいつに効くかどうかわかんねーけど、試してみる価値はあるって。倒すよりかは楽かもしれないしな」
「この世界に来れなくすればこれ以上この世界をあいつの好き勝手にはさせないように出来るんだ」
いつの間にかそんなに凄いものを作り上げていたなんて。
新世紀中学生達も驚いていた。
「さすが俺達の生みの親ってところかな?」
「た、助かる」
ヴィットさんもキャリバーさんも感心してる横で一平君を見ながら納得がいってない様子のボラーさんをマックスさんがなだめていた。
「しかし過信は禁物だ。奴に通用するかはまだわからない上に、グリッドマンの技でもビーム系の技と併用でしか使えない。使うタイミングはここぞというときでないといけないぞ」
その判断をするのは直人、裕太、君達二人だ。
そう言って二人の肩をポンと叩くマックスさん。
「シグマと僕は君達のサポート役になると思う。大丈夫、絶対足を引っ張ることはしないよ」
武史君の頼もしい言葉も出る。
「明日は恐らくここにいる全員含めて経験したことのない激しい戦いになるたろう。奴が約束を守るかどうかの問題もあるが、明日に向けてしっかり休息を取ってくれ」
結局グリッドマンシグマのこの言葉で、この日まで私達が出来ることはやりきったということでそのまますぐ解散になった。
みんなはそれぞれ拠点に戻っていった。
どうやらゆかちゃんはママの手伝いをするらしく台所へ二人で行ってしまった。
私はすぐに部屋に戻らずジャンクの前でグリッドマンと話をしていた。
「しかし、見違えたな六花。初めて会ったときは一人で抱え込んでしまうから心配していたが、今はちゃんと友達を信頼して抱え込まないようになった」
グリッドマンはそんな事考えていたんだ……。
心配かけちゃって少し申し訳ないな。
あの時は本当に毎日が驚きの連続だった。
グリッドマンはもちろんこの世界もアカネのことも。
「やはり新条アカネの事が心配か?」
「うん……。来てほしいけど、せっかく現実で頑張ってるのに私達が邪魔してるみたいで……」
「そんな事はない。新条アカネは決して君を、この世界を邪魔だとは思わない。六花が彼女に来てほしいと強く願えばきっと来てくれるさ」
グリッドマンが優しく頷いてくれた。
「ふふ……ありがと、グリッドマン」
肩の力が少し抜けた気がする。
グリッドマンは私の様子を見て励ましてくれたのかもしれない。
「ところでだ……裕太とはどうなのだ?」
「えっ!?」
思わずズッコケそうになる。
な、なんでいきなりそんなことを!?
「マックスに言われてな……。私が裕太の君への恋心をバラしてしまった以上責任を取れと」
マックスさん……。
グリッドマンに言われた時はドキッとしたな。
まあ言われる前から響君の気持ちに気づかない訳がないのだけれど。
あまりにもかわりやすくて率直な彼。
この世界でも、記憶が無くなっても私を思い続けてくれた。
「そう言えば……私は裕太が六花に告白した後彼と一体化したはずだったな。今の裕太はそこから私が帰るまでの記憶を忘れていたはずだから、君へ告白した事は覚えているんじゃないか?」
そ、そうなの!?
どうしよう……記憶が戻ったら答えようなんて悠長な事してる場合じゃなかったかもしれない。
「ちゃんと君の胸にある想いを彼に伝えてやってくれ。それが彼の力になるはずだ」
「うん……」
その後もグリッドマンと沢山話をした。
グリッドマンが去った後のツツジ台の事を話したり、逆にグリッドマンのその後を聞いたり。
「六花ぁ~、ゴハンよ」
ママが呼んでる。
グリッドマンにまた明日ねと言って私はリビングへ向かった。
「グリッドマン、大変だ」
「どうしたシグマ」
「ハイパーワールドが襲撃された。被害は一ヶ所のみ。だがそこには……」
「なあ裕太、これ食べていい?」
「いいよ、好きなだけどうぞ」
「よっしゃー!」
「二人とも、少しは遠慮しなって」
三人が来てから俺の家は騒がしい。
両親が出張でいない今、寂しさを紛らわせる事が出来るのはありがたいが。
~♪
「あれ、電話だ……六花から?」
どうしたんだろう?何か明日の事でトラブルでもあったのだろうか?
俺はすぐに携帯電話を通話モードにする。
(おい、俺達は一旦別の部屋に)
(オーケー、邪魔しちゃ悪ぃしな)
(裕太の部屋にいこう)
三人は気を使ってリビングから移動する。
……別にいいのに。
「もしもし」
『響君?ちょっと時間空いてるかな?』
「うん、空いてるけど……どうしたの?」
『えーと……あー……』
六花は何か話を切り出そうにも出せない、そんな雰囲気を出していたので俺から話を切り出す事にした。
「じゃあ俺からちょっといい?新条さんへのLINE、既読ついた?」
『それが……ついたんだけど返事が来なくて……。繋がったのは確かなんだけど』
既読スルーか……。
でも新条さんは今のツツジ台の状況を知っているはず、直人達が一度会っているし。
それにLINEが繋がったってことはこっちからアクションを起こせるかもしれない。
「LINEって電話出来るよね?それで連絡してみれば?」
『……本当は怖いんだ。この世界はアカネにとって忘れたい過去なのかもしれない、親友だと思っているのは私だけかもしれない……。本人の声で直接聞いたら私……』
そうだよな……。
六花が電話を躊躇するのは当然かもしれない。
俺達には新条さんが考えている事はわからない。
言葉にしなきゃ……想いは伝わらない。
「大丈夫だよ、新条さんはきっと来てくれる。仮に来なかったらトレギアを倒して一緒に会いに行こうよ。言葉は直接伝えないと真意がわからないかもしれないから」
『ふふ……ありがとう響君。ちょっと勇気出たかも』
好きな人が落ち込んでいるのを慰める事が出来て一安心する俺。
『響君、あの……ずっと前にしてくれた……の事なんだけど……』
「え、今なんて?」
消え入りそうなくらい小さな声で喋るので聞き取れない。
『だから!ずっと前に響君が告白してくれた返事を言いいたいの!』
「えっ!?」
突然の事に頭が追いつかない……そうだ!
俺告白したけど有耶無耶のままだった!
『あのね……その……』
「………」
『やっぱトレギアを倒してからでいい?』
「えっーー!?」
な、なんだよそれ!
すごいモヤモヤするぞ!?
『ご、ごめんね!でも絶対明日勝ってよ!それじゃないとあたしが響君へ返事できないから!』
そのまま六花は電話を切ってしまった。
な、なんと強引な……。
「おいおい、裕太ぁ~。なにイチャイチャしてんだよ~。で、どうだったんだよ?」
「告白したのか?されたのか?まさかもう付き合ってたり?ていうか耳赤いぞ!」
「宝多さんからだよね?馴れ初めも含めてその辺詳しく。僕達友達だろ?」
決戦前夜にて直人達による質問攻めという名のからかい、いじり大会の被害を受けてしまったのだった。
誰だ……私に問いかけてくる……?
何故?封印された私には意味がないことを知らないのか?
耳障りだから消そうと思ってもこの状態では私は何も出来ない。
声を聞くことも発することも今の私には出来ない。
「聞こえるか、アレクシス・ケリヴ」
「何……!?」
アレクシスにとって久しぶりに聞いたハッキリとした言葉だった。
そして同時に自分も発声する事が出来るのに気付く。
体の自由どころか実体もある。
いつの間にか封印が解かれ完全復活を果たしたのだった。
目の前には自分と同じような悪魔がいる。
アレクシスはこの悪魔が自分の封印を解いたのだとすぐ理解した。
「何者だ?どうして私の封印を解いた?」
「なぁに、君のそのカラッポの心を満たしてやろうと思ってね」
アレクシスは身構える。
強者が故に目の前にいる悪魔がただ者ではないと言うことがすぐにわかる。
このハイパーワールドに厳重に警備されていた筈の自分の封印を一人でいともたやすく解いたのだから。
「ツツジ台を破壊するのさ。当然そこにはグリッドマン
、そして新条アカネがいる」
「……私がお前に従うとでも?」
アレクシスは剣を出現させる。
かつてアンチを刺してグリッドマンに壊された赤黒い剣を。
「私に従えば一つ願いを叶えてやる。それに君が好きそうな脚本もあるんだ」
「願い……ねぇ」
下らないと一蹴し目の前の悪魔へ一瞬のうちに詰め寄り滅多刺しにする。
だが刺した感触はなく全てを避けられていた。
悪魔はアレクシスの後ろへワープした後、黒い稲妻をアレクシスに流し込む。
不死身の体にダメージが入るのにアレクシスは驚愕した。
「おいおい、いきなり攻撃する事はないだろ?」
「私の渾身の不意討ちを避けておいてよく言うよ」
アレクシスはこの短時間でこの悪魔に敵わない事を悟った。
不死身なため負けはしないが勝つことも出来ない、と。
「君の願いを叶えにやってきたというのに。君の願い……それは死だ」
「はっ、馬鹿を言うな。私は死ぬことはない」
「死さえあれば君の心が満たされない事などない。死から君の心は満たされる。私の言う事を聞けば死ねる体にしてやるさ」
そう言って悪魔は手に持っている二つのエネルギー体をアレクシスに見せる。
「これはこれは……、ククク……悪趣味な脚本だな」
アレクシスは二つのエネルギー体を見て悪魔に協力することにした。
「君の名前は?」
「トレギア。明日にはツツジ台のフィナーレが始まるんだ。そのため君もこの姿になってもらうよ」
そう言うとトレギアはアレクシスの額に指を当てると、そのままアレクシスをエネルギー体にした。
「友達……絆……そしてそれを信じた者が見る絶望……」
トレギアは笑いながら闇へと消えていった。