電光超人グリッドマン ヒカリノキズナ   作:消しゴム

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第18話 開・戦

「全員集まったな」

 

六花の家に集まった一同をマックスが見渡す。

誰一人として覇気の無い顔をしておらず来る決戦に向け緊張感が高まっている。

 

「俺と直人と武史はいつでも準備OKだよ」

 

裕太の言葉に直人と武史が頷く。

 

「俺達だって!サポートは任せてくれよ!」

 

一平の言葉にゆか、内海も頷く。

しかし六花だけは少し浮かない顔をしていた。

その様子を横で見ていた裕太は恐らく新条アカネのことだろうと推測していた。

 

無理もない。彼女からしたら仮に新条アカネが来てしまっても相手は今まで戦ってきたどんな敵よりも強い存在だ。

彼女の優しい性格からして新条アカネだけでなく裕太達を含む大勢の人達が危険に晒される事を心配しているのだろう、と裕太は思った。

 

裕太は口パクで大丈夫?と六花に伝えると、六花は微笑んで頑張ってと口パクで返した。

 

「六花のママさん、今日は外出禁止だからな」

 

「も~、朝一で買い物済ませちゃいたかったんだけどねぇ。ま、皆の様子見てたら冗談って訳じゃなさそうだし。素直に従いますか」

 

ボラーの言葉に素直に従ってリビングへ行く六花ママ。

 

「や、奴がいつ来るか……油断は禁物だ」

 

「うむ、一旦リラックスという訳にもいかない。皆気を引き締めろよ」

 

キャリバーとマックスの言葉に一同はまた気を引き締めた。

トレギアが言うには怪獣軍団がこのツツジ台にやって来る。

それでもグリッドマンとグリッドマンシグマ、そしてそこに新条アカネとグリッドナイトが加われば自分達が有利に戦える。

 

トレギアの気まぐれなんかに負けてたまるかと直人が言ったその直後、

 

 

 

 

 

 

 

 

「危ない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴィットが直人の前へ出て雷撃を盾となって受ける。

雷撃が来た方向にはトレギアが立っていた。

 

「ヴィット!?」

 

直人が直ぐにヴィットを抱き抱える。ヴィットは肩に大きな風穴を開けられてしまっていた。

 

「ほう……今の一瞬でよく反応出来たものだ」

 

「トレギア!」

 

ほぼ全員が同じ単語を発する。

ヴィット以外の新世紀中学生はこの一瞬でそれぞれの武器をトレギアに向けた。

 

「フフフ……物騒だなぁ。開戦の挨拶に来ただけだよ」

 

「物騒?不意打ちしてきてよく言えたもんだな!」

 

ボラーの怒りの声を聞いてトレギアは気分を良くしていた。

 

「おやぁ?新条アカネがいないねぇ?もしかして神様に見捨てられちゃったのかい?」

 

トレギアは六花の方を向いて言う。

 

「あなた……アカネに何かしてないでしょうね!?」

 

「おいおい、私に当たらないでくれよ。見捨てられて傷ついたのかもしれないけどさぁ」

 

トレギアが六花を煽っているその瞬間、マックス、キャリバー、ボラーが一斉にトレギアへ攻撃をする。

 

だがどの攻撃も直撃したにも関わらず全くといってダメージが入っていない。

トレギアはそのまま三人に雷撃を撃ち込んだ。

 

トレギアの不意打ちにより新世紀中学生が負傷してしまった。

 

「やれやれ、血の気が多い事だ。最後の仕上げが終わっていないし、君達はさっさと怪獣達と戯れてもらうよ」

 

トレギアがそう言うとツツジ台の空に大きな闇のゲートが開く。

するとそこから無数の闇の塊が降ってきたかと思うと塊が怪獣へと形を変えたのだった。

 

「では、失礼」

 

そのまま闇に消えるトレギア。

 

「4人とも!早くジャンクの中へ!」

 

ゆかがそう言うと新世紀中学生がジャンクの中に入ってく。

新しく作った救急プログラムを使うことで短時間で回復することが出来るのだ。

 

「見ろよあの怪獣!武史が作った奴ばっかりだ!」

 

「ネオカーンデジファーの怪獣もいるわ!」

 

「新条さんが作ったのもありやがる。今までの怪獣オールスターってわけか!」

 

一平と内海が怪獣達の分析をする横でグリッドマン達が変身の準備をする。

 

「行くぞ!裕太、直人!」

 

「私達も行くぞ武史!」

 

グリッドマンとグリッドマンシグマの言葉にそれぞれのアクセプターを掲げる三人。

 

「「「アクセース………フラーーシュ!」」」

 

グリッドマンが裕太と直人、グリッドマンシグマが武史とアクセスフラッシュした。

 

轟音と共にツツジ台に降り立つ二大ヒーロー。

 

「雑魚はさっさと片付けるとしようか」

 

「了解だ」

 

早速向かってきたボランガ、メカバギラ、デバダダン。

 

二人はジャンプをして腕を組むとそのまま回転して三体を真っ二つにしてしまう。

 

「強い!」

 

「見たか!これぞ『電光回転切り』だ!」

 

二人のグリッドマンは電光回転切りを空中で解くと、そのままダブルグリッドビームで怪獣達を一気に殲滅する。

 

今の攻撃で沢山いた怪獣も半分近くに減っていた。

 

「いける……!」「やったぜ!」「油断は禁物だよ二人とも!」

 

裕太、直人、武史も手応えを感じつつも冷静に状況を見る。

 

ナナシBが二人の間を狙って光線を、マッドテキサスが銃を放つと二人のグリッドマンは離ればなれになってしまった。

 

ナナシBは抜き手に蹴りと連続攻撃をするがグリッドマンに全てを防がれる。

 

「あの時のようにはいかないぞ」

 

グリッドマンは一度距離を取りスパークビームを放つがナナシBに避けられながら詰められてしまう。

しかし、それこそグリッドマンの狙いでナナシBが近づいて来た瞬間にグリッドライトセイバーで真っ二つにした。

 

一方シグマの方にはマッドテキサスにスピード勝負を挑まれていた。

 

「私とスピード勝負をする気か?」

 

マッドテキサスは超スピードで動き銃を放つがシグマのスピードは更にその上をいく。

 

マッドテキサスがシグマを見失った次の瞬間、シグマスラッシュでマッドテキサスをズタズタに切り裂いた。

 

「早撃ち勝負は得意でね」

 

再びグリッドマンとシグマが一緒になるとダブルグリッドパンチ、ダブルグリッドキックで次々と怪獣を倒して行く。

二人のグリッドマンのパワーは正に無双状態だった。

たった数分で怪獣をほぼ殲滅してみせたのだ。

 

「よっしゃーいいぞグリッドマン、グリッドマンシグマ!」

 

「いいぞ裕太!」

 

「グリッドマン、グリッドマンシグマ!響君に直人君、武史君!頑張って!あと少し!」

 

一平と内海、六花が応援してる中、ゆかがトレギアの最後の言葉を気にかけていた。

 

(最後の仕上げって何なのかしら……?)

 

闇のゲートが再び闇の塊を出現させる。

 

8つの塊は怪獣へと姿を変えたがその怪獣を見て内海は驚愕をした。

 

「なっ……ウルトラ怪獣!?」

 

内海の大好きなウルトラシリーズの怪獣達がツツジ台に降り立ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「早く逃げるんださきる!あんたたちもだ!」

 

問川父が娘と客に店の裏から出るように促す。

 

「怪獣が来やがった……」

 

客はArcadiaだった。やまとは怪獣の中に他の三人の命を奪った怪獣がいることに気づく。

 

「なあ、あの怪獣……俺達どっかで……」

 

三人はゴングリーを見て何かを思い出そうとしていた。

その様子を見ていたやまとは慌てて三人を怪獣から遠ざけようとする。

 

「あたしも……知ってる……あの怪獣……」

 

グールギラスを見た問川。

 

すると頭の中に何かが語りかけてくる。

 

 

思い出せ……

 

お前はあの怪獣に殺された……

 

お前は既に死んでいるのだ……

 

思い出せ……

 

問川はその声を聞いた瞬間、全てを思い出した。

グールギラスの火球に巻き込まれて死んだ自分を。

 

隣にいたArcadiaの今井、有井、タカトも一緒だった。

自分達がゴングリーに喰われたのを思い出したのだ。

 

「ごめんねお父さん……私……全部思い出しちゃった……」

 

涙を流しながら言う娘の言葉に問川父が驚愕したのも束の間、そのまま闇となって問川さきるは消えてしまう。

 

無論有井、タカト、今井もそのまま闇へと消えてしまった。

 

「う、うわあああああああ!!!」

 

「嘘だ……さきる……嘘だと言ってくれ……」

 

絶望する問川父とやまと。

 

「言ったじゃないか……死んだ事を認識したら消える、と 」

 

トレギアが二人の前へ現れた。

 

「ち、違うんだ…怪獣のせいなんだ!怪獣が現れたからさきるが……」

 

「俺もだ!俺のせいじゃないんだ!」

 

問川父とやまとはトレギアに必死に訴える。

 

「約束は約束だ。私も万能ではないんだよ、すまないね。……ただ、あの怪獣は恐らく新条アカネによるものだ」

 

新条アカネ……それはこの世界の神であり、二人の憎むべき相手だった。

 

「新条アカネが怪獣を呼んだせいで君達の大切な人達が死んでいったのだ……私も心苦しいよ」

 

二人は俯いて声を殺して泣く。

 

目の前の悪魔が心の中で大笑いをしているのも知らずに。

 

すると空の闇のゲートから降ってきた闇の塊がまた怪獣に変身する。

数は8体……丁度グールギラスとゴングリーによって犠牲になった人の数だった。

 

「何てことだ……見ろ、新条アカネは君達の大切な人達を怪獣にしてしまったぞ!このままではグリッドマンに殺されてしまう」

トレギアが手から出した映像を二人に見せる。

そこには怪獣の中に問川さきるやその同級生、Arcadiaの他メンバーが入っていたのだ。

 

「そんな……さきる!」

 

「ど、どうすればいいんだよ!」

 

狼狽する二人。

するとトレギアは両手で二人の額に指を当てる。

 

「私は憎しみを力に変えられる。ひたすら新条アカネを憎むのだ。そうすれば君達も怪獣になってしまうが……このまま大切な人達がグリッドマンに殺されるよりかはマシだろ?」

 

トレギアの言葉を二人は素直に受け入れてしまう。

 

元はと言えば新条アカネのせいなんだ……

 

あいつが俺から仲間を奪った!

 

あの女の子がさきるを奪った!

 

憎い……新条アカネが憎い!

 

「フフフ……」

 

トレギアは不敵に笑うと二人を闇のオーラに包んだ。

そしてそのまま二人は闇に消えた。

 

「愚かな人間どもだ……いや人間ですらない作り物だったな。たまたま中華屋で怪獣犠牲者が一緒になるなんて普通は考えないものだけどねぇ……フフハハハハ!!」

 

トレギアが高笑いすると手を銃に見立てグリッドマンを狙う。

 

「これが最後の仕上げだ……。響裕太、一度闇に堕ちた者がそう簡単に光に戻れると思うなよ……」

 

銃に見立てた手で撃つ振りをするトレギア。

 

 

するとグリッドマンが突然苦しみだした。

 

 

 

 

 

 

「どうしたグリッドマン!?」

 

シグマが駆け寄るとグリッドマンがそのまま突き飛ばした。

 

「直人、裕太!?どうしたんだよ!?」

 

武史はグリッドマンの目が黄色から赤黒く光るのを目撃する。

 

「まさか……操られたのか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「裕太、直人!どうしちまったんだよ!?」

 

「……駄目、タイピングで呼び掛けても反応しない!」

 

「トレギアの言っていた最後の仕上げってこれの事だったのよ!」

 

内海と六花が困惑する中、ゆかがトレギアの悪意に気づいた。

 

「まずいぞ!グリッドマンシグマ!武史!」

 

一平の声にも焦りが見える。

 

順調に行っていたと思われていた戦いは一瞬にして窮地に陥った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「形勢逆転だ……どうする?グリッドマン達よ……、少しは楽しませてくれよ」

 

そう言ってトレギアは闇の中に姿を消したのだった。

 

 


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