3月、ツツジ台に春の季節がやってくる。
人との別れや出会いの季節である春はこの特殊な世界であっても現実と変わらず訪れる。
このツツジ台はかつて新条アカネという一人の少女が現実から逃げるために作ったコンピューターワールドのほんの一角である。
街も人々もこの世界のものは全て新条アカネが創造したものであったが、彼女が現実と向き合い心を開いたおかげで世界は広がり彼女が設定していないものまでもが誕生したことで、新たな一つの世界としてこれからも続くだろう。
そしてこの世界と彼女を救った三人は学校の帰り道の途中であった。
「裕太ぁ~、お前大丈夫なのか?進級テストで赤点何個かあったんだろ?まさかもう一回一年生やる気か?」
内海君はちょっかい半分、心配半分といった様子で響君の肩に手を置く。
「そんなわけないだろ!……他の教科は平均以上だったのになぁ」
内海君の手を払った後、わかりやすく落ち込む響君。
それもそのはずで、響君にはかつてグリッドマンが入ってた影響でグリッドマンと共に過ごした期間の全ての事を忘れていた。(そもそもグリッドマンの事を覚えているのは私と内海君とこの世界の守護者であるアンチ君と怪獣の女の子だけみたいだけど)
そしてその期間の授業分がごっそりと抜けてしまっていた。当然、その期間中もグリッドマンのおかげで赤点だらけ。
彼はあのとき目覚めてからなにも思い出せないでいる。
それは私達の関係も例外ではなく、あの戦いの日々も、アカネのことも、あの恐ろしい怪獣達も、怪獣少女やアンチ君も、新世紀中学生のことも、そして一心同体となって一緒に戦ったグリッドマンでさえも、彼の記憶にはない。
………当然、あの時の記憶もないのだろう。
響君が私の家まで来て私に告白したあの日。
突然のことでビックリしたけど、返事をしようとしたそのときに倒れてしまったので慌てて家にあげて寝かしてあげた。
今思えばその時にグリッドマンが響君の体に入って来ていたのだろう。タイミングが悪すぎるというかなんというか……。
私自身、未だにあの時の事に整理がついていないし響くんが思い出すまで待っててもいいかな……。
………とにかく響君は大変な状況なので内海君と私で勉強を教えてあげている。
地頭自体は悪くなく、むしろいい方だけど空白期間が長すぎたせいでほぼ一から教えることになっていた。
彼はそれを物凄く申し訳なさそうにしていたけど、私達からすればグリッドマンとして戦っていた彼の負担を考えればこの程度では返せないものだ。
「でもまあ、ウチの学校自称進学校の手前留年させることなんて極力しないはずだし、再試験が駄目でも追試と再追試ってあるんだから焦らなくてもいいんだよ?」
「でも………」
響君は今にも消え入りそうな声で言う。
「そんな心配なら三人で勉強だ!六花さん家で!」
そうそう、再試験に向けて勉強しないとね。
「って、あたしの家かよ!……別にいいけどさぁ」
すこし気だるく聞こえるように言う。どーせ暇だからいいんだけどね。
「いいの?お店やってるんじゃないの?」
心配性な人が一人。まあ、普通の反応とも言うけど。
「あの店なんてやっててもやってなくても一緒だろ」
「後でママに言いつけておくから」
「それだけはご勘弁を!あのほうじ茶ケーキは食いたくない!」
「冗談だってば!マジにしないでよー」
「アブねー、命の危険に晒される所だったぜ」
「人の店の商品をそこまで言う、普通?軽くショックなんですけど」
「そんな微笑みながら言われても説得力ゼロっすよ六花さん」
内海君とのやり取りでいつの間にか笑ってしまっていた。
グリッドマンと出会うまでは彼とこんなやり取りするなんて想像もしなかっただろう。
彼も私も、グリッドマンの一連の事件を乗り越えて一回り、二回りも成長出来たように感じた。
「じゃ、行こっか。響君」
「あ、うん……。」
テストの結果が良くなかったせいか響君は少し元気のない声で私に返事を返すのであった。
「フフフ………。面白い世界があったものだ。あの三人はこれから始まる悲劇の登場人物にピッタリだ。
主演は……元グリッドマンの響裕太君で決定だな
所詮作り物の世界だが、余興には充分だろう。早速悲劇の根回しといくか……」
タイトルで◯・◯みたいなのは極力避けます。理由はいい感じの言葉が思いつかないからです。