電光超人グリッドマン ヒカリノキズナ   作:消しゴム

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ここからオリジナル設定がどんどん出てくるのであしからず。


第20話 英・雄

セットしてない目覚まし時計の針の音が聴こえる。

 

こうやって布団の中で過ごしてとうとう朝を迎えてしまった。

嫌なことから逃げているだけなのに、凄く体が重く感じる。

 

私は無力だ。

今もこうして布団の中で時間が過ぎるのを待っている。

昨日トレギアが来てから結局一度も部屋の外に出ることはなかった。

 

私が神様だった世界の親友がLINEでメッセージを送ってくれてもなお嫌なことから目を瞑ろうとしている。

 

……でも以前の私と違うのは心のどこかでこの状況ではいけないとわかっていることだ。

以前の私だったらこのまま逃げることに無理矢理理由をつけて納得したフリをしていただろう。

現実の世界を生きるために私の友達は力を合わせてアレクシスを倒してくれたのに、なにもしないでこの部屋にいていいわけがない。

 

でもトレギアが私の横に立っていた時、私は恐怖ですくみあがっていた。

アレクシスに悪意を向けられた時よりも、怪獣にされた時よりも遥かに震える恐怖を。

 

私はその時点で立ち向かうことを諦めてしまったのかもしれない。

いくら勇気を振り絞ろうと行きたくない、怖いという感情がどうしても出てきてしまう。

 

後一歩を踏み出せれば……そう考えている時点で私は本質的には何も変わっていないのだろう。

アレクシスに唆された時から、何一つ。

 

そんな時だった。

またLINEの通知が来た。

 

メッセージを見た方がいいのかな。

六花からだったらどうしよう。

見ずにいたら気づかなかったって事で許して貰えるのかな。

そんな事を考えてしまう私が情けなく、どうしようもなく弱い人間であることを自覚させられる。

 

その時、ふと定期入れが目に入る。

あれは六花が私にくれたものだ。

 

 

 

 

-----私はアカネとずっと一緒にいたい。どうかこの願いがずっと叶いませんように-----

 

 

 

 

私の設定からではなく六花自身から出たあの言葉。

彼女は私が敵だと知っても救おうと、友達でいようとしてくれた。

 

私があの世界でしたことは許される事ではない。

だからこそ私が前を向くために背中を押してくれた。

 

それなのに届いたメッセージを読まなくていいのだろうか。

……いいわけがない。

 

来て欲しくないと思われていてもそんなこと関係ない。

 

私は意を決してそのメッセージを見る。

やはり六花からだった。

 

 

 

 

「こっちの世界は危険だから絶対に来ちゃダメだよ」

 

 

 

 

メッセージを見た私は今までウジウジしていた事が馬鹿らしく感じてしまった。

 

私は自分の事しか考えていなかったんだ。

このメッセージで六花が今まで通り私の心配をしてくれているのがわかった。

 

そうだった。

私が現実に戻って来た時、六花や響君や内海君みたく人のために全力になれる人間になりたいと思っていたではないか。

 

友達のために懸命に現実を生きて成長しようと思ったから、仮に何かの間違いでまた会ったとき安心させられるような人間になろうと思っていたのに。

 

トレギアなんかの言葉に落ち込む必要なんか全く無かったんだ。

コンピューターの前に私は立つ。

私がすべきことは一つ。

 

「………ごめんね六花。あなたの約束を守れなくて」

 

そう私が呟いた瞬間、私の腕が光る。

 

私の腕には以前響君がしていたような腕輪が装着されていた。

 

するとコンピューターの電源が入り、画面が映し出される。

そこにはグリッドナイトがいた。

 

「遅かったな……新条アカネ」

 

「アンチ……どうして?死んじゃったはずじゃ……」

 

「今はグリッドナイトだ」

 

グリッドナイトが私とアクセスフラッシュするために来てくれたのだ。

 

「俺はお前の歪んだ心から作られた怪獣だった。お前の心そのものだ。でも、そんな俺でもグリッドナイトになれた」

 

「お前の心も同じだ。怪獣のように醜くてもヒーローに、グリッドナイトになれる。そのナイトアクセプターはお前の成長の証だ」

 

私は腕のナイトアクセプターを見る。

私の成した証は紫色に輝いている。

 

「お前の心が正しくあろうとする限り、お前の心から産まれた俺は何度でも蘇る」

 

「アクセスフラッシュと叫べ新条アカネ!ツツジ台を、俺達の大切な仲間を守るために!」

 

もう覚悟は出来ている。

大切なものを守るには自分から動かなきゃダメなんだ。

 

深呼吸をしてお腹の底から声を出す。

 

「アクセース……フラッーーーシュ!」

 

私はグリッドナイトと一体化し、コンピューターワールドの中に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ツツジ台の空を眩い光が包む。

 

「な、何あれ!」

 

「眩しっ……!」

 

なみことはっすは空を見上げるとそこにはグリッドナイトが現れていた。

三人のヒーローがここに集結したのだ。

 

「き、来たか……グリッドナイト、新条アカネ!」

 

「アンチも無事だったのかよ!心配させやがって!」

 

キャリバーとボラーが喜ぶ。

 

「新条さん!」

 

「おっ!待ってました!」

 

「強力な助っ人登場だね!」

 

裕太、直人、武史も新条アカネの登場に喜ぶ。

 

グリッドナイトは早速上空からナイト爆裂光破弾を放ち、ゴッドゼノンやパワードゼノン、ドラゴンフォートレスから怪獣達を追い払う。

 

「ナイトヒール!」

 

グリッドナイトから放たれた光を浴びたグリッドマン達はみるみるうちにエネルギーが回復される。

 

「無事かグリッドマン、グリッドマンシグマ」

 

「それはこっちの台詞だ。よく生きてくれていた、友よ」

 

グリッドマンナイトとグリッドマンはお互いの腕を交差させる。

 

「だが状況は最悪に近いぞ」

 

「今の俺なら真の力を発揮できる。二人はフィクサービームの準備をしていてくれ」

 

シグマの言葉ににグリッドナイトが応えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グリッドナイト!?もしかして……!」

 

「アカネ……!?」

 

「新条さんが……新条さんがグリッドナイトとして来てくれた!」

 

ゆかちゃんと内海君が喜ぶ一方で私はみるみる不安な顔になってしまっているのがわかる。

そんな私に一平君が話しかけてくれる。

 

「……六花俺さ、さっき六花が新条アカネに送ったメッセージ見ちまったよ。でもよ、その不安そうな顔はやめろよな」

 

「でも……!」

 

「信じて欲しいって言ったのはお前だぜ六花。新条アカネだって相当覚悟してなきゃここに来ねーよ。一番の親友が信じてやれなくてどうすんだ」

 

一平君に言われて私はハッとする。

 

私との約束を守って今まで来なかったアカネがこの危機的状況に来てくれたのだ。

危険だとわかっていても私達のために来てくれたというのに私ときたら。

 

「……頑張れ。頑張ってアカネ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グリッドマンとシグマはフィクサービームの準備をする。

 

しかし怪獣達がそれを見逃すはずが無かった。

ウルトラ怪獣達は一斉にグリッドマン達へ攻撃を始めた。

 

突進にしてくるもの、炎を吐くもの、光線を撃つものなど様々な攻撃を一斉に放つ怪獣達。

 

「グリッドナイトシールド!」

 

グリッドナイトが両腕を盾のようにして構えると大きな光の壁が現れてあらゆる攻撃を防いでみせた。

 

「すげぇ!グリッドナイトは『守る』力なのか!」

 

内海は興奮して大きい声を出す。

 

怪獣達がこれ以上の攻撃を無駄だと判断し攻撃をやめる。

そのタイミングこそグリッドナイトが狙っていたものだった。

 

「今だ!俺達三人のフィクサービームだ!」

 

グリッドナイトの掛け声と共にグリッドマン達はフィクサービームを怪獣達にかける。

グリッドナイトは新条アカネとアクセスフラッシュしたことでフィクサービームを撃てるようになったのだ。

 

一人の力がダメなら二人で。二人でダメなら三人で。

 

トレギアによって対策をされていた怪獣達も超高出力のフィクサービームによって穏やかな気持ちを取り戻しトレギアによって増幅した闇は完全に消え去った。

 

「何か……憑き物が取れたみたいだ」

 

「さっきまで感じていた憎いという感情が……」

 

問川の父とやまとも落ち着きを取り戻す。

 

問川達や有井達も正気を取り戻していた。

 

「「よっしゃーーー!」」

 

一平と内海がハイタッチをして喜ぶ。

 

「良かったわね、六花ちゃん」

 

「うん……うん……!」

 

ゆかが優しく六花に寄り添う。

六花も感極まりそうなのを抑えながら親友の勇姿を見守っていた。

 

 

 

ウルトラ怪獣達の前にグリッドナイトが立つとそのまま頭を下げた。

 

「貴方達は私のせいで沢山辛い思いをしてきた。こんなことで返せるとは思ってないけど……元凶を倒したらきっと貴方達の姿も元に戻る。私もいなくなる。だから、この世界で生きて欲しいです」

 

アカネは深々と頭を下げながら謝罪した。

 

「……私は今でも君がさきるにしたことを許せないよ」

 

「……俺もだ。友達を失うことがどんなに辛いことだったか」

 

覚悟はしてきた。どんな事を言われても仕方ないことをしたのだから。これが贖罪になるのであれば、と。

 

「でも、君が私達のために命懸けで助けてくれたのも私達はちゃんと知っている。ありがとう」

 

「ありがとう、神様」

 

問川の父とやまとはアカネにお礼を言った。

アカネは思わず涙ぐんだ。

 

「よかったね……アカネ」

 

六花もアカネは決して許された訳ではないとわかってはいた。それでも彼らからこんな言葉をかけてもらえるなんて想像もしていなかっただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハーハッハッハッ!素晴らしい、私の想像以上だ新条アカネ。親友との絆を信じてヒーローとして帰還するとは。

一時的にグリッドナイトを始末した甲斐があるものだ。

もっと絆を信じろ。グリッドナイトの光の力に酔いしれるがいい。そうすればより深い甘美な絶望を味わえる……」

 

トレギアは笑いながらグリッドナイトを見る。

 

「少し脚本が変わってしまったのが癪だが……」

 

そう言った途端、ツツジ台の空に空いた闇のゲートからトレギアが現れた。

 

「フフフ……フハハハハハハハッ!」

 

笑いながらトレギアは自分の爪から引っ掻き傷のような光線を放ちゴモラ、レッドキング、エレキング、グドン、バードン、ゴルザ、眼Q、マガバッサーの八体を、問川さきるの同級生とやまと以外のArcadiaメンバーを切り裂く。

 

「おと………さ……」

 

「や………ま………」

 

問川達は涙声で最後の言葉を言えずにそのまま爆散させられた。

 

「さきるーーー!!!」

 

「みんな!!」

 

二人の悲痛な叫びがツツジ台中をこだました。

 

「うそ……」

 

「信じらんねぇ……トレギアの野郎!」

 

六花と内海とゆかが絶句するなか怒りに燃える一平。

 

トレギアはとうとう巨大化し、グリッドマン達の前に立ちふさがった。

 

「どうして殺す必要があったんだ!!」

 

「直にわかるよ。……ホラ」

 

直人の怒りの声にトレギアは応えると、ゼットンとギャラクトロンから怒りの、憎しみの闇のオーラが物凄い勢いで溢れでているのに裕太は気づいた。

 

「よくもさきるを!」

 

「お前を信じた俺がバカだった!くらえ!」

 

二体の怪獣が火球と光線をトレギアに放つ。

トレギアはその攻撃を避けると後ろに回り込み背中から黒い稲妻を流し込みゼットンとギャラクトロンを爆散させた。

 

「憎しみや闇のオーラは充分に集まった。もう用済みだ」

 

「トレギア!!」

 

淡々と怪獣達をいとも簡単に殺戮する姿に怒りを覚える裕太。

 

「本当は君達グリッドマンが迷いながらも彼らを倒すはずだったが……まさか警戒していたフィクサービームで突破されるとはな。まあおかげで闇のエネルギーは予定よりも多く手に入った」

 

「黙りやがれトレギア!」

 

「お、お前はこの世界にはいさせない」

 

「先程のようにはいかんぞ!」

 

「お前の体にも風穴を開けてやるよ」

 

新世紀中学生達がパワードブレイカーで攻撃をしようとした瞬間、トレギアは闇のエネルギーと共に3つの塊を空に投げた。

 

すると3つの塊は粉々に砕け散り、それぞれのグリッドマン達の目の前に闇のオーラが現れる。

 

やがてオーラは実体に変わり姿を現した。

 

「久し振りだな……武史。ふん、忌々しい姿だ」

 

「カーンデジファー!?」

 

「やあアカネくん。似合わないねぇ、その姿」

 

「アレクシス……!」

 

「忘れたとは言わせんぞグリッドマン……!」

 

「ネオカーンデジファー!?どうなってるんだ!?」

 

グリッドマンシグマの前にカーンデジファーが。

 

グリッドナイトの前にアレクシス・ケリヴが。

 

グリッドマンの前にネオカーンデジファーが。

 

かつての強敵が復活し自分達の目の前に現れたのだ。

 

 

 

「さあ、私は少し見物させてもらうとしよう」

 

 

 

トレギアは近くのビルに膝を組ながら座ったのだった。

 

 

 


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