「内海……いつも迷惑かけてごめん。勉強見てくれるのホント助かってるよ」
「友達が困ってんだから協力すんのは当然だろ?………それに裕太が進級出来ないと男友達いねーし…」
裕太が毎回のように申し訳なさそうにするのをみて思わず苦笑しながら俺は言った。切実な思いも少し混ぜながら。
今日はファミレスで勉強会。裕太の再試験に向けてラストスパートにさしかかっている途中だ。再試験がだめでも追試と再追試があるが、手を抜くことはできないと本人の希望もあってこうして俺は勉強を見ている。
六花は友達と新しく出来たドーナツ屋に行くらしい。そういやあのマスクも再試験があったはずだが……。
それにイツメンに加えてこの世界の新条アカネにそっくりのあの彼女も一緒らしい。
新条アカネが置き土産で置いていった新しく設定された人間なのか、それとも元々作った人の姿を新条アカネが使っていただけなのかそれは今でもわからない。
俺や裕太とも既に友達であり最初の頃は思わず『新条さん』と呼んでしまっていたが、最近慣れてようやく呼ばなくなったばかりだ。
彼女を見ると自分が未だに新条アカネのことを引きずっていると自覚させられる。彼女はもう戻ってこないとわかっていながらも、ある日ひょっこり彼女が帰ってくるんじゃないかと思わずにはいられない。
色々な事に想いを馳せてる俺の横で裕太はなにやらモジモジしながら………というには少し表情を強ばらせながら
「そういえばこの前六花の家にいた二人の子供って結局誰だったの?なんか二人で定期的にお風呂に入らせてもらってるみたいだけど」
怖い顔して何を聞いて来ると思ったらそんなことかよ!と思わず心の中でツッコミしながら俺は答える。
「あー、知り合い?」
適当か!と自分に心の中で再びツッコむ。
「いや、そりゃそうだろうけど……。俺の記憶がない時に知り合ったんだろ?二人とも俺の事知ってたし」
裕太はかつて自分の命を狙っていたヤツとこの世界の真実を教えてくれた怪獣の少女の事を忘れている。まあ、俺や六花が怪獣少女の事を詳しく知ったのは戦いの後なんだけど……
「まあ、お前が色々思い出してくれたらその時に話すよ」
「またそれ?内海も六花も記憶がない期間のこと全然教えてくれないじゃん。前教えてくれた時はすごく聞き慣れない言葉ばっかりで、からかわれてるのかと思ったし」
「そんなわけねーだろ!ただ、難しいんだよなぁ……」
裕太からすれば確かに不満だろうが、俺達からすればどう説明すればいいのかわからないのだ。裕太にグリッドマンや新世紀中学生の事を話しても思い出してはくれなかった。
グリッドマンは裕太の体に今までの戦いの日々が刻まれてると言っていたが、グリッドマンに関連するワードを裕太に言っても一向に記憶が戻る気配がない。
だから、俺と六花で裕太の記憶の事で作戦会議をするために二人でこのファミレスに通った時もあったなぁ。その時に六花さん軍団のしたっぱにみつかって
『あれ、六花もしかしてそっちが本命だったの!?』
『六花さん、ターボ先輩……お前らマジか……』
なんか変な勘違いされて慌てて否定したのを覚えている。
六花も『内海くんなんか絶対にありえないから!少しも魅力感じないし!』とさりげなく酷い言い様だったな……
「とにかく、いつか記憶は戻るはずだからあんま焦らなくていいんだよ」
「わかった……」
裕太は腑に落ちなさそうに言う。
「じゃあ最後に……ここのファミレスに六花と二人で来たってホント?」
おま、それをどこで……。
おそらく六花さん軍団のしたっぱ達の仕業だな……面倒なことしやがって……。
「別になんもねーからな?お前の記憶の事について二人で作戦会議してたんだよ」
変に嘘つくのはよくないと思い正直に話す。
「えっ、そうだったの!?ご、ごめん!二人とも俺のためにやってくれてたのに疑ったりなんかして!」
「まあ、わかってくれたならそれでいいさ。それより今は勉強だ!」
裕太はまた申し訳なさそうにする。
裕太からしたら死活問題だし誤解が解けてよかった。
それにしても六花もさっさと裕太との関係に決着させたらいいのに。変なところではぐらかしたり奥手なんだよな。
端から見てるとじれったいったらありゃしないんだ二人とも。
二人で目があった時目を逸らす癖に、目があってない時はずっと見つめ続けるし。裕太はともかく六花も自分で気付かないで見つめてることが多い。
あんま茶々入れないようにしてるけど寧ろ積極的に入れた方が良いのだろうか?
でもそれだと後が怖そうだな……主に六花さんが。
「あ、もうすぐ19時だ。ありがとう内海。今日も付き合わせてごめんね」
「気にすんなって。また明日な!」
裕太と別れファミレスを後にする。
って!今日ウルトラシリーズ最新作の主演がバラエティ番組に出る日じゃん!
ウルトラオタクにとって重大な事に気付いた俺は家へ駆け足で行く。
そういえば裕太は最近些細なことでもすぐ謝ったり自分を攻めたりする。今日も何回謝られたか覚えてないくらいだ。
記憶が無いこと影響してるのだろうがアイツはグリッドマンだったんだ。ちょっとやそっとでへこむような奴じゃないし、心配しなくても平気だよな…………………………………
………………………
………………
………
俺はまだ知らなかった。この小さな異変を特に気にも止めなかった事を後悔するのを……。
「将~、早く寝なさいよ~」
「わかったって。おやすみー」
「おやすみ~」
俺は部屋に入るとパソコンへ直行する。ほぼ日課と化したネットサーフィンでさっきのバラエティ番組のネットの反応を調べるためだ。
俺くらいのウルトラオタクはちゃんと出演者の番組以外の活躍もチェックするのだ。
いつか、握手会やタッチ会の時に「この前出演してた◯◯見ました!いつまでも応援します!」と、声を掛ける時のために。
そのため番組のやる一週間に一度だけでなく毎日がオタ活と言っても過言ではないだろう。
「あれ、おかしいな。パソコンの電源はつけたのに画面が真っ暗のままだ」
それもただの黒ではなく、より一層濃く吸い込まれそうな黒に見えていた。
その時だった。
画面に赤い眼が映ったかと思うと、禍々しいオーラを纏い始め画面から腕が伸びてきた。
「やあ、初めましてだね。内海将くん」
「なっ…!?」
画面に映るそれはまるでかつて新条アカネを自分のために利用しこの世界に混乱と破滅をもたらそうとした『アレクシス・ケリヴ』を連想させるような悪魔だった。
トレギアさんは一応R/B映画後という設定です。