再試験前日。響君は学校には来なかった。
先生によると珍しく体調不良らしいし、今日の帰りにお見舞いでも行こうかな。
ふと内海君の方を見てみると見事にぼっちになっていた。まあ、響君が元気になるまでの間我慢してもらおう。
「ねぇ六花~、今日駅に新しくケーキバイキングのお店出来たの知ってる?行こうよー!」
なみこは私を後ろから抱きつきながら誘ってきた。
「あ、ごめん。今日はちょっと……」
「お、旦那の所にお見舞いですか?」
断ろうとすると、はっすがマスクをしていてもわかるくらいニコニコしながら冷やかしてくる。
「あー、やっぱし友達より男の方に行く感じ?友達としては応援したいけどちょっと複雑ー」
「仕方ないよなみこ。六花さんこうみえて一途だし」
「はいはい、わかりましたから」
二人は私をからかい始める。好き勝手言われてるがこう言うときは流すのが一番だ。
「じゃ、私達三人で行っちゃう!?響君も元気無いときに女の子三人が家に来たらきっと喜ぶよ!……まあ、私はサボりだと睨んでるけど」
なみこは私が流してるうちに話を大きくし始める。
「流石に可哀想だからターボ先輩連れて四人で行こう」
「賛成~!」
「ちょっと!?」
何が可哀想なのかよくわからない理論で4人で行こうとするはっすとなみこ。
「話は聞いたぜ。俺も裕太の家に行くよ」
突然話に入ってくる内海君。
「え、今までの話聞いてたの?マジでキモ……」
思わず心の中の言葉がそのまま出てしまった。
「キモいって言うのやめろよ……マジで傷つく」
「いや、キモいから内海君。そんなんじゃターボ先輩って呼ばれないぞ?」
「『ターボ先輩、そういう人だったんスね……。俺、信じてたのに!』」
「そのターボ先輩ってやつお前らしか言ってないだろ!」
内海君がいじられる形でワイワイしている。……まあ、私も一人よりかは4人で行った方が気は楽かな。
再試験前日、俺は学校を休んだ。
理由はトレギアに会うためだ。
しなくてはいけないはずの試験勉強をしないまま俺は六花の家に着いていた。
そこには六花のお母さんがいた。
「あーら響君、学校どうしたの?」
「あの、えっと……」
思わず俺は言葉に詰まってしまう。
「あーいいのいいの。誰だってサボりたくなるときあるもんね。六花だってたまにサボってんだから。それより丁度良かったわ、ちょっと出掛けてくるから店番しててくれる?学校もうすぐ終わるし六花が帰ってくる少しの間だから。ね?お願い!」
「はい。わかりました」
ママさんからの思いがけない言葉に俺は快く承知したように見せた。
「じゃ、お留守番頼むね~」
ママさんはそう言ってどこかに行ってしまった。
俺はジャンクの前に立った。すると勝手に電源が入ったかと思うと画面に禍々しいオーラが纏い始める。
するとあの赤い眼が俺を見つめたかと思うと腕が伸びてきて俺に語りかけてきた。
「待っていたぞ……響裕太」
「トレギア……。俺を呼んでたよな?」
この悪魔の姿を見ていると改めて本当にこんな奴の言うことを聞いて良いのだろうかと思う。
「答えは出たかい?」
「……まだ、決まってない」
昨日からずっとトレギアの選択について考えていた。果たして心の弱さを克服するためにこんな方法で解決して良いのだろうかと。
「恐れる必要はない。『力』を手に入れたらきっと内海将や宝多六花の君を見る目は変わる」
「……でも」
「それにだ。君は『力』が欲しくなかったらこんな場所に来ていないはずだ。そうだろ?私の事なんか無視すればいい。でも君はここに来た」
「………」
「それは心の中で既に決めていたからさ。『力』さえ手に入れば弱い響裕太と決別出来る」
トレギアは一つ一つ丁寧に俺の心の紐を解こうとする。俺はなされるがままにされてしまう。
「君がもしここで選択しなかったら二度と『力』は手に入らない。お人好しの二人の事だ、彼らは君を放っておかずに助けようとするだろう。君はこの先の人生、ずっとあの二人に迷惑をかけ続けていいのかい?」
「……俺はどうしたらいい?」
「『力』が欲しいのなら自ら選択をしろ。心に強く願え。そしてその心を私に委ねるのだ……」
俺の……響裕太の答えは………
「いい子だ。約束通り君に『力』を授けよう」
トレギアの声が聞こえると俺は漆黒の闇に包まれる。
だんだん体の自由が利かなくなる。自分が自分でなくなるような感覚に陥っていく。
「君にピッタリの姿にしてやるよ。ククク………フハハハ!ハーッハッハッハッ!」
トレギアの笑い声が店に響いていた。
「ひゃー、ここのマンションエレベーター無いとか聞いてないよ……」
「死ぬ……」
「たかが四階でしょ?しっかりしなよ二人とも」
なみことはっすを気にかけながら響君の住む階に着く。
「だめだ。裕太、家にいないみたいだ」
内海君は先に行ってインターホンを鳴らしたが人がいる様子はなかったらしい。
「うそ、なんで?」
サボりでも家で勉強でもしてるのかと思ってたけど、どうやら違うみたいだ。
「えーせっかく来たのになぁ。つまんないのー」
「死ぬ……」
ガッカリするなみこと今にも死にそうな運動不足のはっす。
しょうがないので響君にどこにいるのか電話をしようとしたその瞬間だった。
空が眩ゆく光る……いや光ると言うには余りにも黒く禍々しいものだった。
「きゃっ!?」
「ななななな、何事!?」
「うおっ!?」
轟音と共に地鳴りが起き、私達はバランスを崩してしまう。
するとはっすが何かに気づいた。
「あ、あれ!見てあれ!」
その方向を見てみると
「なにあれ……」
「あ、あれは……」
「黒い……グリッドマン……!?」
漆黒を身に纏った黒いグリッドマンがツツジ台に現れたのだった。