「なんだよあのグリッドマン!?」
「なみことはっすは安全な所へ逃げて!私達は行かなきゃいけない所があるから!」
私と内海君は急いで私の家に行く。なみことはっすを巻き込むわけにはいかない。
二人とも何が起きたか理解できずに私達を見送っていた。でも何が起こっているのかわからないのはお互い様だ。
私達の目の前に現れたグリッドマンの姿をした黒い巨人は町を見渡している。漆黒のボディを身に纏い赤黒く光る瞳。
グリッドマンの真の姿ではなく私達に馴染み深いグリッドマンの姿が黒くなった様に見える。しかし、本物と決定的に違うのは…
「お、おいあのグリッドマン町を破壊しているぞ!?」
黒いグリッドマンは周りの建物を蹴りで破壊し始めた。
「あれはグリッドマンじゃないみたい!」
「てことはあれが侵略者か!グリッドマンと同じ格好しやがって!」
私達が出来ることは少ないが、いざという時は私の家に集まると内海君やアンチ君と約束してあった。
もしかしたら、グリッドマンが来てくれているかもしれない。そこには当然、響君も……。
「そうだ!響君に電話しなきゃ!」
私は黒のグリッドマンに気を取られててすっかり忘れてたが、響君の携帯へかける。
だが、響君は電話には出なかった。
「裕太……あいつ大丈夫かな?あいつ昨日電話してきたみたいなんだ。母さんにも連絡あったみたいだし」
「昨日?」
「あいつ、昨日俺と六花で一緒にいたこと気にしていたのかもしれない。説明は学校ですればいいかって思ってたんだけど……」
響君は学校には来なかった。響君の不在に黒のグリッドマン……何か嫌な予感を感じながら私達は走る足を更に速める。
次の瞬間、黒いグリッドマンがバランスを崩して倒れる。何故ならグリッドナイトが巨大化しキックをお見舞いしたからだ。
「アンチ君!」
「グリッドナイト!」
黒いグリッドマンは倒れた状態から跳ねて起きると、破壊活動から標的をグリッドナイトへと変えた。
まるで二人のグリッドマンが戦っている様な状況だ。
そしてついに私達は家に着いた。
急いでジャンクを確認するが電源が入っているだけで画面は真っ暗のままだった。
「グリッドマン?そこにいるの?」
私はそう声をかけると、画面が禍々しいオーラを纏い赤い眼がこちらを覗くように現れる。
「やあ、また会ったね。二人とも」
アレクシスを連想させるような悪魔がジャンクの中から私達に喋ってくる。
初めて見るはずなのに既視感を覚えている。
画面から腕が伸びてくると、私達の前で指を鳴らした。
その音を聴いた瞬間、私に忘れていた記憶が一斉に頭の中に押し寄せる。頭が痛くなり、心に不安を覚え、冷や汗をかいてしまうようなオーラを感じながら私は鮮明に思い出してくる。
恐ろしい悪魔との……トレギアとの記憶を。
「お前は…!」「あなたは…!」
「記憶のロックを解除した。思い出していただけたかな?」
内海君の様子を見る限りトレギアを知ってるらしい。きっと私と同じように記憶を封じられていたのかもしれない。
「あの黒いグリッドマンはお前の仕業か!」
内海君はトレギアに問い詰める。
「そんな言い方はよしてくれ。私は一人の少年の願いを叶えただけだ」
「一人の少年……?」
嫌な予感ほど当たるものだが、これだけは絶対に当たって欲しくないと心から思った。
「この世界でグリッドマンと一体化出来るのは彼しかいないだろう?」
「うそ……」
「まさか……あれが裕太……?」
私の予感は当たってしまった。
絶対に当たってほしくなかったのに。
「皮肉な事にヒーローだった彼が今は自ら街を破壊している。しかも色以外全く同じ姿で。楽しくて仕方ないねぇ」
トレギアは私達を嘲笑うかのように言う。
「響君がそんなことするはずない!」
「お前が勝手に変えたんだな!裕太を返せ!」
私と内海君はトレギアに問い詰める。
「私は夢を提供してるだけさ。それに、彼自身がそう望んだのだ。だから私は『力』を与えたのだ」
トレギアはあくまでも響君が望んだ事で自分は協力しただけという姿勢を崩さない。
「何が夢だ!裕太がそんなもの望むはずがないだろ!」
内海君がそう言うと、はぁとため息をつきながら呆れた様子でトレギアは言う。
「響裕太がそんなことをするはずがない、『力』を望むはずがない……。君達は彼の何を知っている?」
「俺達は裕太の友達だ!お前なんかより裕太の事を……うおっ!?」
内海君の話を遮るようにトレギアは指の先を内海君の眉間にあてる。
「内海将、響裕太が何故『力』を求めたか教えてやるよ。それは君達二人のためだ。彼をあんな姿にしたのは君達のせいさ」
「私達の……」「ため……?」
響君が求めた『力』と私達の何が関係あるのだろう。
「彼は勉強に限らず日常的に君達二人の迷惑になってないかずっと悩んでいたのさ。君達は気づいてなかったみたいだけど」
私達は思わずトレギアの言葉に聞き入ってしまう。
……いや、聞くことしか出来なかった。
「彼は間違った事をしない、グリッドマンだから。君達はそう言っていたな。だが彼にはその時の記憶などない普通の少年だ。残念ながら君達の知っている響裕太とは別人みたいなものさ」
「彼は泣いていたよ。二人の足枷になりたくない、迷惑をかけないようにするにはどうすればいいとね。友達面するのは結構だが無意識に彼を傷つけるのはよしなよ」
トレギアに指摘される度に心当たりがあって胸が苦しくなる。私はさも当然のように響君をグリッドマンが入ってた頃の響君と同じ様に見てしまっていた。
「お、俺はそういうつもりじゃ……」
「『俺はお前なんかより裕太の事を知っている!』とかなんとか言おうとしてたけど、響裕太は私に君が知らない本心を晒けだしていたぞ。友達が聞いて呆れるね」
内海君は震えた声でトレギアに反論しようとするが直ぐにトレギアに返されてしまう。
すると今度は私にトレギアは語りかけてくる。
「君も響裕太が自分を好きって知ってるのに答えをあやふやにしたままだったね。親友と想い人が仲良くやってる姿を見たら悪い感情なんていくらでも出るだろうに」
「そんなつもりじゃ……」
「友達と口で言いながら彼を追い詰めて楽しかったかい?」
何も言えなかった。情けなくて、悔しくて。トレギアに言いたいことが沢山あるはずなのに言葉が出ない。
「仮に彼が元に戻ったとしたらどうする?どんな言葉をかける?まあ、どんな言葉をかけようが彼を傷つけるのは変わりないだろうがね」
「ナイト爆裂光破弾!」
グリッドナイトの胸から放たれた光弾が黒いグリッドマンに直撃する。
しかし、黒いグリッドマンにはダメージどころか傷一つつかない。
グリッドナイトがもう一度放とうとしたその時、目にも止まらぬ速さで黒いグリッドマンが接近しそのままグリッドナイトの首を両手で掴みながら地面に叩きつけた。
「グハァ…!」
グリッドナイトは倒されたまま首を絞められ続ける。
すると、黒いグリッドマンから微かに声が聴こえるのに気が付く。
「早く……俺を……」
「響裕太なのか……?」
グリッドナイトは黒いグリッドマンが裕太であることを認識したのだった。
次回の話はなるべく明日に投稿出来るようにします。