普通の学生が「手違い」で異世界から来るそうですよ?   作:蘇我入鹿

11 / 21
仕事が忙しい。。。


第11話 北のフロアマスターに会うそうですよ?

『ギフトゲーム名 “造物主達の決闘”

 

・参加資格、及び概要

 

・参加者は創作系のギフトを所持。

・サポートとして、1名までの同伴を許可。

・決闘内容はその都度変化。

・ギフト保持者は創作系のギフト以外の使用を一部禁ず。

 

・授与される恩恵に関して

 

・“階層支配者”の火龍にプレイヤーが希望する恩恵を進言できる。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、両コミュニティはギフトゲームを開催します。

 “サウザンドアイズ”印 “サラマンドラ”印』

 

 

「創作系のギフト?」

「今、説明したばかりなのだが。簡単に言うとだな、製作者が存在するギフトのことだ」

「いや、俺持ってないし。参加資格ないんじゃないの?」

「ふっふふ、私は“主催者”だぞ。その権限を使えば1人や2人“招待客”として参加させるのは簡単だ」

「権力の乱用だろ……で、参加出来るのは分かった。けど、何でサポーターじゃなくて参加なんだ?」

「私がお願いした」

「理由を聞こうか、耀?」

 

参加したところで、必ず耀もしくは耀以上の強い奴と戦うわけだから、少なくとも絶対に優勝は出来ない。

それだったら俺が耀のサポーターをして優勝出来るように援助した方が効率がいい。

 

「私達が活躍すれば“ノーネーム”の宣伝になる。それと……大輔とも1度戦ってみたいから」

「え?俺と戦いたい?」

 

以外だった。

十六夜はしょっちゅう戦いを挑んでくる。

俺をサンドバッグにしようと。

だが、耀はそんな素振りすら見せたことがない。

 

「大輔だって優勝すれば念願のギフトが手に入るし、損はない。それに、参加はさっきの罰だから」

 

そういえばそうだったな。

だったら最初から考える必要なんてなかったな。

 

「分かった。参加する」

 

ギフトゲーム1回戦。

契約書類によれば決闘内容がその都度変わると書いてあったはず。

それなら内容次第では耀に勝てる可能性がほんのわずかだけある。

そう思って気合いを入れ直したのだったが……。

ゲームの会場はいわゆるコロシアムみたいなところだ。360度観客席で囲まれている。

今まさにゲームが始まろうとしている。

 

「はあ、マジかよ……」

 

審判から発表された決闘内容は“押し合い”だった。

ルールは円形のフィールドから出たら負け、といういわゆる相撲のようなものだった。

そして、相手は石垣の自動人形で、大きさが10メートルほどあった。

さらに、優勝候補らしい。

無理だろ。

案の定客席からは、

 

『こんなの勝負にならねえ』

『とっとと降参しろ』

『ノーネームが調子に乗るな』

『ノーネームは引っ込め』

 

などの罵詈雑言が飛び交っていた。

少し燃えてきた。

審判の「よーい」の掛け声で両足に力を入れる。

 

「始め!」

 

俺は全力で石垣の自動人形の足に突っ込んだ。

だが、案の定……、

 

「くぅッ!?びくともしないッ!!」

 

駄目だ。

全然駄目だ。

このルール下では漆黒の力が上手く発動しない(・・・・・・・・)

生物でもない人形相手では敵意とかを感じ取れない上に、少なくとも命が保障されているこのルール下では漆黒の力の出力が上がらない。

しかも、こんなデカい相手に勝ち目なんてあるわけ――

 

「っ!?漆黒が消える……!」

 

ドオーンッ!!

 

俺の体を守る、自称『絶対防御』分以外の漆黒の力を使い切ったため、俺は勢いそのままに反対側の客席の下の壁に頭から激突し減り込んだ。

会場内には笑い声だけが響き続けた。

 

「大丈夫、大輔?」

 

俺は今、控え室で耀に治療されている。

まあ、激突する瞬間に絶対防御が前方に展開されたから無傷だったので、治療といってもただのメンタルケアなんだけど。

 

「ごめん、大輔。私が無理に参加させたばっかりに恥をかかせちゃって」

 

恥か。まあそうだよな。

頭から激突して壁に突き刺さって、会場は爆笑の渦だったからな。

俺としては諦めずに頑張ったって達成感があるから、そんなんでもないのだが。

それに良くか悪くか負けるのには慣れたしな。

 

「別に耀の所為じゃない。俺の詰めが甘かっただけだ。それにそろそろ耀の番だろ?俺のことはいいから行ってこいって」

「……うん。………でもやっぱり」

 

責任を感じてかなり落ち込んでるな。

根は優しい子だからな。

 

「分かったわかった。じゃあ、これは貸しだ。あとで返してもらうから。それでいいな?」

「……うん。大輔はこれからどうするの?」

「そのなんだ、さすがに居心地は悪いからその辺をぶらぶらしてくる。すぐに戻って来るから耀は負けんなよ」

「私は大丈夫。勝ち続けて絶対に大輔の仇も取るから!」

 

耀と別れてから、何かするでも見るでもなく、気晴らしに会場周辺を散歩することにした。

すると、遠くで人だかりが出来ていた。

近づくたびに野次馬の叫び声が聞こえて、

 

『アレを見ろ!“月の兔”が誰かと戦っているぞ!』

『2人が建物の上で止まったぞ』

『凄い!アレが“月の兔”の力か!』

『おい!?何をする気だ!?』

 

『『『あ、あの人間滅茶苦茶だああああああ!?』』』

 

その理由は分かった。

というか、途中から見えていた。

十六夜が派手に時計塔をぶっ壊すところが。

 

「十六夜はともかく、黒ウサギまで何やってんだか」

 

いつものことながら、このあとどうする気だよ。

あ!十六夜と黒ウサギが警察っぽい奴らに連行されていった。

俺は2人を追いかける。

これはアレだな。

 

「後デタップリ御説教タイムダナ。フフフ、覚悟シロヨ、黒ウサギ」

 

――“サラマンドラ”本拠

 

「随分と派手にやったようじゃの、おんしら」

「ああ。ご要望通り祭りを盛り上げてやったぜ」

「胸を張って言わないで下さいこのお馬鹿様!!!」

「それはお前もだ黒ウサギ!!」

 

スパァーン!

 

黒ウサギと十六夜をハリセンでしばいた。

遅れてやってきたジンは頭を抱えている。

 

「ふん!“ノーネーム”の分際で我々のゲームに騒ぎを持ち込むとはな!相応の厳罰は覚悟しているか!?」

「これマンドラ。それを決めるのはおんしらの頭首、サンドラであろ?」

 

北側の新しい階層支配者。

お飾りってわけか。

実質は兄のマンドラが仕切っているということだろうな。

 

「“箱庭の貴族”とその盟友の方々。此度は“火龍誕生祭”に足を運んでいただきありがとうございます。貴方達が破壊した建造物の1件ですが、白夜叉様のご厚意で修繕してくださいましいた。負傷者は奇跡的に無かったようなので、この件に関して私からは不問とさせて頂きます」

「へえ?太っ腹な事だな」

「お前はもっと反省しろよ」

「うむ。おんしらは私が直々に協力を要請したのだからの報酬の前金とでも思っておくが良い」

 

白夜叉様様だな。

あんな巨大な時計塔の弁償なんてマジで俺達のギフトを売るくらいしないと払えないだろうし。

ホント十六夜は反省しろよな。

 

「ふむ。いい機会だから、昼の続きを話しておこうかの」

 

白夜叉の目配せでサンドラとマンドラ以外を下がらせた。

この場に残ったのは、十六夜・黒ウサギ・ジンと俺の4人。

 

「ジン、久しぶり!コミュニティが襲われたと聞いて随分と心配していた!」

 

サンドラは人が居なくなると、硬い表情と口調を崩し、満面の笑みでジンに駆け寄った。

 

「ありがとう。サンドラも元気そうでよかった」

「魔王に襲われたと聞いて、本当はすぐに会いに行きたかったんだ。けど、お父様の急病や継承式のことでずっと会いに行けなくて」

 

仲睦まじい光景だな。

ノーネームのリーダーと、片やフロアマスター。

文字通り桁違いの差はあるが同じような立場の2人。

思えば11歳でコミュニティのリーダーをしているジンには気兼ねなく話せる同年代の友達がいない。

だから、もの凄く新鮮に感じたし思うところがある。

 

「それは仕方ないよ。だけどあのサンドラがフロアマスターになっていたなんて――」

 

突然……ではない。

 

「その様に気安く呼ぶな、名無しの小僧!!!」

 

マンドラは怒りを露にして剣を抜きジンに向かって降り下ろす。

マンドラは最初から俺達をよく思ってはいない。

時計塔の1件を置いといても、箱庭では“ノーネーム”はこんな扱いを受けることが当たり前だと身を持って体験をしている。

故にある意味敵地であるここに来たときから警戒していた。

俺は剣がジンに届く前に守ろうと身体を差し出したが、その前に十六夜が受け止めた。

 

「……おい、知り合いの挨拶にしちゃ穏やかじゃねぇな。止める気無かっただろオマエ」

「当たり前だ!サンドラはもう北のマスターになったのだぞ!この共同祭典に“名無し”風情を招き入れ、恩情を掛けた挙げ句、馴れ馴れしく接っされたのでは“サラマンドラ”の威厳に関わるわ!この“名無し”のクズが!」

 

箱庭では真っ当な言い分かもしれない。

だが、仲間を殺そうとした、この事実を看過出来るはずがない。

 

「マンドラさん、アンタはどうやって責任を取るつもりだったんだ?」

 

俺は十六夜を押し退けて、侮蔑するでもなく、挑発するでもなく、ただ冷静になり冷徹に判断して冷厳に告げた。

 

「責任だと!名無しの小僧1人を殺したところで何の責任があるというのだ!!」

「そんなの決まってるだろ?“火龍誕生際”の中止だ!」

「何!?どういう意味だ小僧!」

「うちのリーダーとそちらのフロアマスターは見た限りかなり仲がいい。そんな友達を目の前で殺されて、アンタの補佐が必要な11歳の子供が耐えられるわけがない。そうなればフロアマスターは戦えない。フロアマスター無しでどうやって戦うのかと」

「戦うだと!?貴様ら名無し如き、サンドラ無しでも相手にならんわ!」

「まだ誰を敵に(・・・・)回したのか分からないのか?」

 

俺は表情も声音も変えず続けた。

 

「俺達は白夜叉に、東側最強のフロアマスターにわざわざ依頼された。つまり“ノーネーム”は最強のお墨付きのコミュニティ。そのコミュニティのリーダーが殺されて、そこの金髪も含めた3人の問題児が黙ってるわけがない。こっちには“箱庭の貴族”もいる。それに共同の主催者である白夜叉も少なくともアンタ達に味方することもない。元はと言えば、俺達は白夜叉の依頼でここに来た。だから、依頼の最中にこっちの誰かが死んでもそれは自己責任だ。だが、義理堅くお優しい白夜叉様が責任を感じないわけがない」

 

俺は一呼吸つきマンドラに冷酷に問いかけた。

 

「アンタ達は最強の問題児と最強のフロアマスターに勝てるのか?」

 

ここで始めてマンドラは事の重大さに気づいたようだ。

 

「クッ……、」

「大輔よ、気は済んだか。マンドラも剣を収めて下がれ」

 

マンドラは渋々引き下がる。

それを見て俺も引き下がった。

黒ウサギとジンは普段とは違う俺に戸惑っていたが、

 

「ヤハハ。最高に似合ってなかったぜ。だいたい、お前は甘過ぎる。俺なら有無を言わさず、“サラマンドラ”を叩き潰すぜ?」

「だからこそ、そんなことにならないように俺はただ現実的な事実(・・・・・・)を警告しただけだ。そうだろ十六夜?」

「……ったく、よくお分かりのようで」

 

十六夜は肩を竦めて、やれやれと引き下がった。

 

「さて、本題に入らせてもらおうかの。おんしらにはこの封書を見てもらいたい。そこに依頼した理由が書かれておる」

 

十六夜が手紙を受け取る。

 

「――……、」

「“サウザンドアイズ”も余計な事をしてくれたものだ。『南の幻獣・北の精霊・西の英雄・東の落ち目』とはよく言ったもの。此度の件も東が北を妬んで仕組んだ事ではないかと皆が思っておる」

 

マンドラの呟きを無視して内容を確認した十六夜は背中越しに俺達に渡した。

其処にはただ一文、こう書かれていた。

 

『火龍誕生際にて、“魔王襲来”の兆しあり』

「……なっ、」

 

黒ウサギとジンは絶句しているが、俺は冷静なまま頭を整理していた。

 

「それで、俺達に何をさせたいんだ?魔王の首を取れっていうなら喜んでやるぜ?つーかこの封書はなんだ?」

「うむ。ではまずそこから説明しようかの。まずこの封書だが、これは“サウザンドアイズ”の幹部の1人が未来を予知した代物での」

「未来予知?」

「うむ。知っての通り、我々“サウザンドアイズ”は特殊な瞳を持つギフト保持者が多い。様々な観測者の中には、未来の情報をギフトとして与えておる者もおる。そやつから誕生際のプレゼントとして贈られたのが、この“魔王襲来”という予言だったわけだ」

 

実質、魔王からのプレゼントか。

 

「それで、この予言の信憑性は?」

「上に投げれば下に落ちる、という程度だな」

「それ、予言なのか?上に投げれば下に落ちるのは当然だろ」

「予言だとも。何故ならそやつは“誰が投げた(・・・・・)”も“どうやって投げた(・・・・・・・・)”も“何故投げた(・・・・・)”も解っている奴での。ならば、必然的に“何処に落ちてくるのか”を推理することが出来るだろ?これはそういう類の予言書なのだ」

「はい?」

 

黒ウサギ達はもちろん、マンドラとサンドラに至ってはその事実に愕然としている。

頭が冷静なままの俺は、犯人も、犯行も、動機も、全てが分かっている事実を理解し思考する。

 

「ふ、ふざけるな!!全て把握しておきながら、なぜ魔王の襲来しか教えない!!」

「に、兄様……!これには事情があるのです……!」

 

憤るマンドラをサンドラが必死に宥めている。

 

「つまり、今回の“魔王襲来”を仕組んだ人物は当事者にも教えることが出来ない立場(・・・・・・・・・・・・)の人物ってことか、白夜叉?」

 

白夜叉は俺と目を合わさず、歯切れの悪い返事をする。

 

「まさか……他のフロアマスターが、魔王と結託して“火龍誕生祭”を襲撃すると!?」

 

ジンの叫びに白夜叉は申し訳なさそうに悲しげに深く嘆息した後、

 

「まだ分からん。だが、誕生祭の共同主催候補が東のマスターである私に回ってきたほどだ。北のマスター達が非協力的だった理由が“魔王襲来”に深く関与しているのであれば……これは大事件だ」

 

再び絶句する黒ウサギとジン。

だが、首を傾げていた十六夜は、

 

「それ、そんなに珍しいことなのか?」

「さ、最悪の事ですよ!秩序の守護者で下位のコミュニティを守るはずのフロアマスターが魔王と結託するなんて」

「けど所詮は脳味噌のある何某だ。秩序を預かる者が謀をしたいなんてのは、幻想だろ?」

 

ジンの気持ちは分かる。

だが、俺と十六夜がいた世界では権力者が道を踏み外すことは珍しい話ではなかった。

 

「なるほど、一理ある。しかしなればこそ、我々は秩序の守護者として正しくその何某を裁かねばならん」

「けど目下の敵は、予言の魔王。ジン達には魔王のゲーム攻略に協力して欲しいんだ」

 

魔王襲来の予言があった以上、これはノーネームの初仕事でもある。

ジンは事の重大さを受け止めて、

 

「分かりました“魔王襲来”に備え“ノーネーム”は両コミュニティに協力します」

「うむ、すまんな。協力する側のおんしらにすれば、敵の詳細が分からぬまま戦うことは不本意であろう。……だが分かって欲しい。今回の1件は、魔王を退ければよいというだけのものではない。これは箱庭の秩序を守るために必要な、一時の秘匿。主犯には何れ相応の制裁を加えると、我らの双女神の紋に誓おう」

「“サラマンドラ”も同じく。――ジン、頑張って。期待してる」

「わ、分かったよ」

 

ジンが緊張しながら返事をすると白夜叉が哄笑を上げた。

 

「そう緊張せんでもよいよい!魔王はこの最強のフロアマスター、白夜叉様が相手をする故な!おんしらはサンドラと露払いをしてくれればそれで良い。大船に乗った気でおれ!」

 

実際、白夜叉が1人いればなんとかなるのだろう。

だけど、こんなことを言われて十六夜が黙っているはずがない。

 

「今回は露払いでいいが――何処かの誰かが偶然に(・・・・・・・・・・)魔王を倒しても、問題は無いよな?」

「よかろう。隙あらば魔王の首を狙え。私が許す」

 

2人の交渉が成立したようなので、

 

「黒ウサギ、俺は……あ!耀のこと、忘れてた」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。