普通の学生が「手違い」で異世界から来るそうですよ?   作:蘇我入鹿

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謎クロスオーバー。
何か分かる人はいますかね・・・。


第12話 色々とあるそうですよ?

「あっ!耀のこと忘れてた……今さら戻れないな」

 

冷えきっていった頭が暖まったことで思いだした。

過去のあのことで本当に頭に来たら逆に冷静になることは自分でも分かってはいた。

ただ、こうも簡単に他人のことでなるとは思ってもいなかった。

人としては悪くないかもしれないが、実力以上の事をしてしまったらあとが大変だからな。

分不相応な期待をされても困るし、とブツブツ考えながら赤壁の歩廊を散歩した。

 

「おーい、そこの少年君ー」

 

突然、後ろから話しかけられた。

振り返ると、ピンクを基調とした可愛らしいフリルを着た中学生くらいの女の子がいた。

 

「何かご用で?」

「あなたは楠木大輔君、ですよね?」

「……お前、何で俺の名前を知ってるんだ?」

 

俺はすぐに漆黒を展開して臨戦態勢を取り始めた。

 

「そう警戒しなくても大丈夫ですよ。私は戦う気はありませんから。私はある人から楠木大輔君の様子を見てくるように頼まれただけなので」

「様子だと?」

「見たところ、問題なく使えているようですね。やっぱり愛の力は偉大ですね」

「愛?いったい何の話だ!」

「それは大輔君を守っている力のことです」

「んっ!?ってことは、お前が言うある人というのは、俺を呼んだ奴のことか!!」

「そうですよ。ずいぶんと心配していましたよ。では、大輔君の様子も確認できたので、失礼します」

 

ペコリと丁寧に頭を下げて女の子は走り去っていった……――

 

「って、逃がすかよ!!」

 

俺は漆黒の翼を展開して、歩廊を駆け抜けていく女の子を飛んで追いかけた。

そして、洞穴には入られた。

洞窟内にはキャンドルグラスや銀の燭台、紅い巨人などがあり、名前や作品名が書いてあるので、ここは展覧会場のようだ。

 

「クソッ!アイツ、どこに行った!」

 

箱庭に呼ばれてやっと向こうから接触してきたのに。ここで逃がすわけにはいかない。

しばらく探し回っていると、突然、蝋燭の火が一斉に消えてパニックになった人々が騒ぎだした。

 

「このままじゃ、人混みに紛れて逃げられる……」

 

だが、止める手段がない。

と、頭を働かせていたら聞きなれた声がした。

 

いいから協力し合って逃げなさい(・・・・・・・・・・・・・・・)!!!」

 

逃げ惑う人々を一喝して統率している、

 

「飛鳥!大丈夫か!」

 

ネズミ相手に剣を振り回している飛鳥がいた。

 

「大輔君!?ええ、私は大丈夫よ。でも、この子が狙われているの!」

 

飛鳥の服の中に何かいた。

 

「この子?……妖精?いや、精霊か?まあ、とりあえず、俺の肩につかまれ。飛んで逃げるぞ!」

 

飛鳥を肩に抱えて飛ぶ。

俺の漆黒の翼は俺以外の生物などを抱えて飛んでも何故かスピードが落ちない。

守るというために、必要ならば出力が上がるらしい。

そして、ネズミに追われたまま出口が見え始めたその時、黒い影が這い寄り無数の刃がネズミを襲った。

 

「――鼠風情が我が同胞に牙を突き立てるとは何事だ!?分際を痴れこの畜生共ッ!!」

 

無数の影はネズミを悉く斬り刻んでいく。

俺と飛鳥は地面に降りて、声でレティシアが駆けつけたのだと思っていた。

だが、そこにいたのは普段の幼い容姿のメイドではなく、妖艶な香りを纏う美麗な大人の女性だった。

俺は以前、黒ウサギが言っていた言葉を思いだし納得した。

 

「術者はどこにいるッ!?姿を見せろッ!!このような往来の場で強襲した以上、相応の覚悟あってのものだろう!?ならば我らが御旗の威光、私の牙と爪で刻んでやる!コミュニティの名を晒し、姿を見せて口上を述べよ!!!」

 

激昂したレティシアの声だけが洞穴内に響く。

まあ、とりあえず、飛鳥が確認がてら、

 

「貴女……レティシアなの?」

「ああ。それより飛鳥と大輔。何があったんだ?多少数がいたとはいえ、鼠如きに後れを取るとは……らしくない」

「レティシア。別に俺に気を使わなくていいぞ」

「そんなことより、貴女、こんなに凄かったのね」

「あのな主殿。褒められるのは嬉しいが、その反応は流石に失礼だぞっ。私はコレでも元・魔王にして吸血鬼の純血!誇り高き“箱庭の騎士”!神格を失ったとはいえ、畜生を散らすのは造作もない事。あの程度なら幾千万相手しても間違いないっ」

 

「そう……けど、私は……」

「あすかっ!」

 

おお。

飛鳥の胸元という羨ましい場所から、さっきのとんがり帽子の精霊が飛び出てきた。

泣きながら、嬉しがりながら飛鳥の顔に抱き着いている精霊。

 

「いいじゃねえか。その子を助けられたんだし」

「やれやれ。すっかり懐かれたな、飛鳥。日も暮れて危ないし、今日のところは連れて帰ろう」

「じゃあ、2人は先に帰ってくれ。俺はもうちょっとここら辺を散歩してから帰る」

「そうか。大輔のあの力があれば大丈夫とは思うが、気を付けるのだぞ」

 

俺は2人と別れて、さっきの女の子を探した。

けっこう長い時間探し続けたが見つからず、完全に日も暮れたので仕方なく宿に帰ることにした。

 

 

宿に帰ってからは、まあ大変だった。

俺の本職にして天職である説教(ツッコミ)が火を吹いた。

まず、はた迷惑なおいかけっこをしていた十六夜と黒ウサギに説教。

その後に謎の(ちょっとイタそうな)女の子のことを相談しようと思っていたが、説教のせいで時間が無くなり、女性陣は露天風呂に入りにいった。

残された俺達は、それを真面目に覗くかどうかと十六夜が言い出したので、俺とジンで説教タイムに突入。

そして、

 

「……おお?コレはなかなかいい眺めだ。そう思わないか楠木?」

「……」

「黒ウサギやお嬢様の薄い布の上からでもわかる二の腕から乳房にかけての豊かな発育は扇情的だが相対的にスレンダーながらも健康的な素肌の春日部やレティシアの髪から滴る水が鎖骨のラインをスゥッと流れ落ちる様は視線を自然に慎ましい胸の方へと誘導するのは確定的にあ――」

 

スパァーン!

スパァーン!

 

黒ウサギと飛鳥によるダブルハリセン炸裂。

 

「まあまあ、2人とも。十六夜の言い方はともかくとして。その何だ……2人のことが奇麗だって褒めてるんだし」

 

俺のもう1つの天職である、フォローをしっかりこなした。

こなしたハズだ。

 

「男ならお前もそう思うだろ、楠木?まあお前がマニアックなロリとか熟女とか男のほうが好みっつーんなら別だけどな」

「俺の好みはいたってノーマルだ。なんなら黒ウサギとか飛鳥はストライクゾーンど真ん……っておい!何を言わせんだよ、お前はッ!!」

「別に健全でいいじゃねえか。ヤハハ!」

 

十六夜に乗せられたせいで、めちゃくちゃ気まずい。

黒ウサギと飛鳥は顔を真っっっ赤にして目を背けている。

耀は「私は……」と呟きながら、なぜか残念そうにうつむいている。

そんな空気に耐えられず、俺は逃げるように露天風呂に向かった。

 

その後、来賓室にて問題児3人と、白夜叉、黒ウサギと俺が集まっている。

さっきの一件で気まずい俺は十六夜と白夜叉の黒ウサギ弄り(ぼうそう)を延々と止められず、ジンとレティシアが来るまでそれが続いた。

 

「――ええ本題に入るが、明日の決勝の審判を黒ウサギに依頼したいのだ」

「は、はい。分かりました。明日のゲーム審判・進行はこの黒ウサギが承ります」

「ついては審判衣装なのだが……いや、私からの話は終わりだ」

 

何か言いかけていたが、レティシアが白夜叉をひと睨みして白夜叉は黙った。

楽でいいな。

 

「白夜叉。私が明日戦う相手ってどんなコミュニティ?」

「すまんがそれは教えられん。“主催者”がそれを語るのはフェアではなかろ?教えてやれるのはコミュニティの名前までだ」

 

パチン、と白夜叉が指を鳴らす。

現れた契約書類を見て、飛鳥が驚いて声を出した。

 

「“ウィル・オ・ウィスプ”に――“ラッテンフェンガー”ですって?」

 

どっちもどっかで見たような気がする……。

 

「うむ。この2つは珍しい事に六桁の外門、1つ上の階層からの参加でな。格上と思ってよい。詳しくは話せんが、余程の覚悟はしておいた方がいいぞ

白夜叉の真剣な忠告に、頷く耀。

一方の十六夜は、“契約書類”を睨みながら物騒に笑っている。

 

「へえ……“ラッテンフェンガー”?成程、“ネズミ捕り道化(ラッテンフェンガー)”のコミュニティか。なら明日の敵はさしずめ、ハーメルンの笛吹き道化だったりするのか?」

 

え?と俺と飛鳥が声を上げたが、その隣に座る黒ウサギと白夜叉の驚嘆の声にかき消された。

 

「ハ、“ハーメルンの笛吹き”ですか!?」

「まて、どういうことだ小僧。詳しく話を聞かせろ」

 

黒ウサギと白夜叉が驚愕の声を出す。

 

「ああ、すまんの。最近召喚されたおんしは知らんのだな。――“ハーメルンの笛吹き”とは、とある魔王の下部コミュニティだったものの名だ」

「何?」

「魔王のコミュニティ名は“幻想魔道書群(グリムグリモワール)”。全200篇以上にも及ぶ魔書から悪魔を呼び出した、驚異の召喚士が統べたコミュニティだ」

「しかも一篇のから召喚される悪魔は複数。特に目を見張るべきは、その魔書の1つ1つに異なった背景の世界が内包されていることです。魔書の全てがゲーム盤として確立されたルールと強制力を持つという、絶大な魔王でございました」

「――へえ?」

「けどその魔王はとあるコミュニティとのギフトゲームで敗北し、この世を去ったはずなのです。……しかし、十六夜さんは“ラッテンフェンガー”が、“ハーメルンの笛吹き”だと言いました。何かご存じなら万が一に備えご教授して欲しいのです」

「なるほど、状況は把握した。そういうことなら、ここは我らが御チビ様にご説明願おうか」

「え?あ、はい」

 

ジンは分かるの?

俺なんて昔、読んだはずのハーメルンの笛吹きの話の流れくらいしか思い出せないんだけど。

 

「“ラッテンフェンガー”とはドイツという国の言葉で、意味はネズミ捕りの男。このネズミ捕りの男とは、グリム童話の魔書にある“ハーメルンの笛吹き”を指す隠語です。大本のグリム童話には、創作の舞台に歴史的考察が内包されているものが複数存在します。“ハーメルンの笛吹き”もその1つ。ハーメルンとは、舞台になった都市の名前のことです」

「ふむ。ではその隠語が何故にネズミ捕りの男なのだ?」

「グリム童話の道化師が、ネズミを操る道化師だったとされるからです」

 

ネズミを操るか。

飛鳥が驚いているが考えていることは一緒だろう。

だが、俺はこの事に触れたら色々聞かれるから黙っとくしかないな。

第一、そうと決まった訳じゃないし、飛鳥の判断に任せるか。

 

「……となると、滅んだ魔王の残党が忍び込んでおる可能性が高くなってきたのう」

「YES。参加者が“主催者権限”を持ち込むことが出来ない以上、その路線はとても有力になってきます」

「うん?なんだそれ、初耳だぞ」

「おお、そうだったな。魔王が現れると聞いて最低限の対策を立てておいたのだ。私の“主催者権限”を用いて祭典の参加ルールに条件を加えることでな。詳しくはコレを見よ」

 

光り輝く羊皮紙が現れた。

 

『§火龍誕生際§

・参加に際する所持項欄

1、一般参加は舞台区画内・自由区画内でコミュニティ間のギフトゲームの開催を禁ず。

2、“主催者権限”を所持する参加者は、祭典のホストに許可なく入る事を禁ず。

3、祭典区画内で参加者の“主催者権限”の使用を禁ず。

4、祭典区域にある舞台区画・自由区画に参加者以外の侵入を禁ず。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

“サウザンドアイズ”印

“サラマンドラ”印』

 

確かにこのルールなら魔王が襲ってきても“主催者権限”は使えない。

 

「けど驚きました。ジン坊っちゃん、どこで“ハーメルンの笛吹き”を知ったのです?」

「べ、別に。十六夜さんに地下の書庫を案内しているときに、ちょっとだけ目に入って……」

 

照れくさそうに答えるジン。

十六夜と一緒にいつも書庫に籠ってはいたが、ここまで知識を蓄えていたとは。

頼もしいリーダーになってきたな。

 

「ふむ。何にせよ、万が一の際はおんしらの出番だ。頼むぞ」

 

さて、難しい話も終わったし、本来なら謎の女の子ことを相談したいんだが、

 

「それでは夜も遅いですし、この辺で御開きということで」

 

と、黒ウサギの一言で寝ることになった。

そして、布団に入り重大な事を思い出してしまい、俺は絶賛後悔中。

 

「結局、耀に謝ってない。はあ……」

 

 

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