普通の学生が「手違い」で異世界から来るそうですよ?   作:蘇我入鹿

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すみません。
完成してないのに連続投稿していました。


第13話 ウィル・オ・ウィスプと戦うそうですよ?

「――ウィル・オ・ウィスプに関して、僕が知っている事は以上です。参考になればいいのですが……」

 

舞台袖でジンとレティシア、三毛猫と戯れている耀に対戦相手の情報を確認している。

ことを物陰から見ている俺。

ちなみに、十六夜達はサンドラの計らいで本陣営のバルコニーの特等席にいる。

 

「大丈夫。ケースバイケースで臨機応変に対応するから」

「本当に誰のサポートもいらないのか?万一の際を考えて行動した方がいいと思うのだが」

「大丈夫、問題ないよ」

 

あくまでも助勢を断る耀。

耀は気付いているだろうが物陰から出て、

 

「いや、駄目だな。俺がサポーターとして出る」

「……[私は好みじゃないって言ってたのに]……」

「ん?何だって?小声でよく聞こえなかったんだけど?」

「……必要ない。私1人で出場する」

「なら、俺をサポーターとして認めることで、昨日の貸しを返してもらおうか」

「そ、それはズルい[……でも嬉しい]

「あの後応援にも行けなかったし。それに、仇も取ってくれたんだろ?だから、そっちの借りも返させてくれよ」

「……分かった。でも、足を引っ張らないでね、大輔」

「善処はする」

 

まあ正直、どこぞの難聴野郎と違って途中の小声も聞こえてたんだが。

それに対して正しい答えが分からないからスルーした。

そうこうしていると、黒ウサギの入場の合図があったので通路から舞台に出る。

 

「そういうわけだから、耀のことは任せろ」

「お願いします、大輔さん」

「頼んだぞ、大輔」

 

俺も続いて舞台に出たが、その瞬間――俺達の眼前を高速で火の玉が横切った。

 

「YAッFUFUFUUUUUUuuuuuu!!」

「「わっ……!」」

 

ドスン、と2人仲良く尻もちをついた。

ことこどく男として格好つかないことには慣れた。

いや、慣れたくはないのだが。

 

「あっははははははははは!見て見て見たぁ、ジャック?“ノーネーム”の2人が無様に尻もちついてる!ふふふ。さあ、素敵に不敵にオモシロオカシク笑ってやろうぜ!」

「YAッFUFUFUUUUUUuuuuuu!!」

 

ドッと観客席の一部からも笑いが起きた。

昨日もそうだったがやはり“ノーネーム”が決勝まで残っていることが不満なのだろう。

俺は気にしてないが。

まあ、耀に至っては火の玉の正体に夢中だしな。

 

「その火の玉……もしかして、」

 

ツインテールにゴスロリのスカートを揺らしながらアーシャは高飛車な声で嘲った。

 

「はぁ?何言ってんのオマエ。アーシャ様の作品を火の玉なんかと一緒にすんなし。コイツは我らが“ウィル・オ・ウィスプ”の名物幽鬼!ジャック・オー・ランタンさ!」

 

火の玉は取り巻く炎陣を振りほどいて姿を現した。

燃え盛るランプと、実態の無い浅黒い布の服。

人の頭の数10倍はあろうかという巨大なカボチャ頭。

まさに、ハロウィンでよく見るカボチャのお化けだった。

 

「私の晴れ舞台の相手をさせてもらうだけで泣いて感謝しろよ、この名無し」

「YAHO、YAHO、YAFUFUUUuuuuuuuu~~♪」

 

俺は何事もなかったように立ち上がり、

 

「……審判、相手の挑発行為が目に余るので失格にして欲しいんだけど」

「ちょ、アンタ!なに、問答無用で失格にさせようとしてんの!」

 

黒ウサギは「決勝戦でそれはちょっと」ということで、アーシャには警告をしていた。

俺はアーシャを無視して耀に手を貸して立ち上がらせた。

 

「大した自身だねーオイ。私とジャックを無視するなんて。私達に対する挑発ですかそれも?」

「「うん」」

 

カチン!ときた顔をしているアーシャ。

俺は本当にただの戦略的挑発だが、耀は一見大人しそうに見えてかなり負けず嫌いだ。

さっきの挑発返しだろう。

それに見かねた黒ウサギがちゃっちゃとゲームを始める。

黒ウサギの合図で白夜叉の時みたいに景色が変わり、ゲーム盤へと移動した。

 

「この樹……ううん、地面だけじゃない。ここ、樹の根に囲まれた場所みたい」

「ということは、根の中ってことか」

「あらあらそりゃあどうも教えてくれてありがとよ、名無しのお2人さん!」

「「……」」

 

フイ、と2人でアーシャを無視する、

 

『ギフトゲーム名 “アンダーウッドの迷路”

・勝利条件

1.プレイヤーが大樹の根の迷路により野外に出る。

2.対戦プレイヤーのギフトを破壊。

3.対戦プレイヤーが勝利条件を満たせなくなった場合(降参含む)

 

・敗北条件

1.対戦プレイヤーが勝利条件を1つ満たした場合。

2.上記の勝利条件を満たせなくなった場合。』

 

「――“審判権限”の名において。以上が両者不可侵で有ることを、御旗の下に契ります。プレイヤーの方は、どうか誇りある戦いを。此処に、ゲームの開始を宣言します」

 

ゲーム開始後、しばしの沈黙のなか、アーシャが口を開いた。

 

「睨み合っても進まねえし。先手は譲るぜ」

「……?」

「ま、さっきの1件があるしね。後でいちゃもん付けられるのも面倒だし?」

 

ツインテールを揺らしながら余裕を見せるアーシャ。

 

「そこのゴスロリは“ウィル・オ・ウィスプ”のリーダーなのか?」

「え?あ、そう見える?なら嬉しいんだけどなあ♪けど残念なことにアーシャ様は、」

 

リーダーと間違われて嬉しかったのか、満面の笑みで質問に答えてくれた。

その隙に耀を先に行かせた。

 

「オ……オゥェゥウウケェェェイ!とことん馬鹿にしてくれるってわけかよ!そっちがその気なら――」

「なあ、そろそろ正体を現したらどうなんだ、ジャック・オー・ランタン?」

「YAHO?」

「お前のことはジンから聞いている。ちゃんと意思があるんだろ?」

「ヤホホ!そうですか。知っていましたか」

 

ジンが言うには、ジャックはもしかしたらただの名物幽鬼ではなく、かなり厄介なギフトを持っているかもしれないとの話だった。

となれば、俺じゃ勝てるわけもないし、

 

「俺と決闘(1VS1)で勝負しようぜ」

 

時間稼ぎするしかない。

耀のギフトならこのカボチャを足止めさえすれば、あっちのゴスロリはどうにかなるだろう。

 

「さあどうする?カボチャ野郎!」

「ヤホホ……成程成程、そういうことですか。ならば、ここは敢えてその決闘は断らせて頂きます」

「何!?」

「現状、我々は貴人方のゲームメイクに乗せられています。そして、私の正体を知ってなお決闘を挑むということは私を攻略できるだけの恩恵、もしくは何らかの対抗手段を貴方は持っているのでしょう」

「ああそうだ。お前を倒すだけのギフト(とっておき)を持っているからな!」

 

このカボチャ、頭が良すぎるな。

 

「倒すですか。失礼ながら、先ほど尻餅をついた貴方がですか?」

「さ、さっきは驚いてびっくりしただけだ。けど、マジで戦えばお前に勝てる」

 

恥ずかしいことを思い出させんなよ、カボチャ野郎。

 

「不死にも勝てると?」

「か、勝てるとも……――っ!?」

 

はあッ!?

というか、不死!?そんなこと聞いてないぞ、ジン!

 

「ヤホホ、一瞬躊躇いましたね。正直なことは美徳ですが、ことギフトゲームにおいては命取りですよ」

 

クソッ、しまった。

余計な事を考えてて素が出た。

だが、

 

「まあ、バレたもんはしょうがない。けど、こうやって時間稼ぎも出来たことだし、まだ俺達が有利だ」

「ヤホホ。私がこうして会話をしているのは貴人方に敬意を表してのことです」

「敬意?」

「私の正体を知っていたのだから不意討ちも出来たはず。しかし、それを良しとせず、目的はどうであれ正々堂々と挑まれた。ですので、私もその心意気に応えたというわけで御座います」

 

さすがは上層のコミュニティ。

ほぼ読んだ上で、敢えてってか……。

 

「さらに言うならば、紳士を自称しているこのカボチャめの性格を利用して、こうなる(・・・・)ことも作戦の範囲内なのでは?」

「……いったい何のことやら」

 

そう。

ジャックの言っていることは当たっている。

今回のこの作戦の概要は俺とジンが立てた。

この作戦はこのカボチャを足止めすることに特化している。

そのためにカボチャのいくつかの性格をシミュレーションして、それを利用するところまで考えている。

そして、最終手段。

 

「本当に自分の弱さが嫌になるな……。それでどうする?俺はここを通す気はないぜ?」

 

力づく。

これしか俺には残されていない。

 

「そうですね。ここまでのゲームメイクをしているとなれば、あちらのお嬢さんにはアーシャでは勝てないでしょう。ならば、私は追いかけざるをえないため、そこを通らせてもらいますよ」

 

手に持つランタンが揺れる。

その瞬間、俺の回りを火柱が取り囲んだ。

 

「熱ッ!!これは……!」

「無闇やたらに動かなければ何のことはありません。それでは、ゲーム終了まで暫しの間、大人しくしていて下さい」

 

そう言い残すとカボチャの姿が消えた。

そういえば、ジンが“ウィル・オ・ウィスプ”のリーダーは、『生と死の境界に現れた悪魔』とか言ってたな。生と死の境界、狭間の世界がどうとか……。

 

「限定的な瞬間移動のようなものが使えるのか。だけど、考えたところで仕方がない!」

 

轟々と燃え盛り続けら炎。

俺は深呼吸をして、身体の前面だけを覆うように漆黒を展開する。

 

「じゃあ、行きますか」

 

俺は一思いに炎へ突っ込んだ。

 

「アチッ!!」

 

かなり熱かったがどうにか炎を越えられた。

漆黒の密度を高めて前面に展開していたから、ダメージとは別の純粋な熱さに耐えることが出来た。

マジで修行しておいて良かった。

俺はそのまま漆黒の翼を出現させて、フルスピードで追いかけた。

途中「え?ちょ、ちょっと!?」というゴスロリの声も無視して追いかけた。

 

「見えた!」

 

勢いに任せて、

 

「とおりゃ!!」

 

ライダーキックをかまして、カボチャを吹っ飛ばした。

 

「だ、大輔!?」

「耀!大丈夫か!?」

「私は大丈夫」

 

ところどころにかすり傷はあるが目立ったケガはない。

 

「予選でも使用していた闇と形容すべき力ですか。少し驚きましたよ。ヤホホ」

 

あれだけスピードが合ったのに無傷か。

だが、勝利条件は野外に出ることだ。先に出さえすれば……。

 

「1つ御伺いしたいのですが、どうやって炎の壁から出たのでしょうか?」

「まあ、勇気と気合いってとこだな」

 

間違ってはいない。

 

「ヤホホ。いやはや、死なない程度に加減はしていましたが地獄の業火を受けて無傷とは、非常に驚きで御座います」

「「地獄の業火!?」」

 

俺と耀の声が洞窟内を木霊する。

そんな、炎に俺は突っ込んだのか?

事実を知った今、たとえ無傷だろうともう1回突っ込む勇気が全然湧かない。

とはいえ、それはおいといて、

 

「俺が足止めするから、耀は先に行け」

「……うん」

「話が纏まったようなので、改めて名乗りを上げましょう」

 

ジャック・オー・ランタンは腕を大きく広げ、轟々と燃え盛る炎を背に叫ぶ。

 

「己が系統樹を持つ少女、並びに、闇に魅入られし少年よ!生と死の境界に権限せし大悪魔!ウィラ=ザ=イグニファトゥス製作の大傑作にして、聖人ぺテロに烙印を押されし不死の怪物――このジャック・オー・ランタンがお相手しましょう!」

 

業火の炎で燃え盛り、大炎上する樹の根の空洞。

あの炎の瞳が放つ威圧感に押し潰されそうになる。

それでも、俺は怯まず下がらない。

ここまできたら、諦めたくない。

そう思った矢先、

 

「――降参」

 

そんな消え入りそうな耀の声が聞こえた瞬間、元の舞台に戻ってきた。

 

「勝者、アーシャ=イグニファトゥス!!」

「……耀」

「ごめん、大輔。色々してくれたのに」

「けど、何で……」

「こんなゲームで命を、心を削るようなことは……仲間として……許すわけにはいかない」

 

自分を責めるかのように俯く耀。

声をかけられない俺を見かねてか、ジャックが、

 

「春日部嬢に、楠木君。素晴らしいゲームでした。惜しむらくは、両者の気持ちが一致していなかったことでしょう」

 

確かにそうだ。

俺は多少の無茶をしても耀を勝たせてやりたかった。

だが、耀は仲間が傷つくくらいなら勝てなくていいと思っていた。

これじゃ、勝てなくて当たり前だな。

 

「これから先、同じようなシチュエーションもあるでしょう。その時に後悔しないためにもしっかりとコミュニケーションを取ることをお薦めしますよ。ああいや、どうにもお節介が過ぎましたね。ヤホホ」

「おい、オマエら!名前は何て言うの?出身外門は?」

 

不機嫌そうなアーシャと耀が話しているとジャックは俺に近付いて来た。

 

「先程、御自身の事を弱いと仰りましたが、与えられた作戦を遂行し成功させた(・・・・・)事は御立派だと思いますよ」

 

それは、本気を出さざるを得なかったということだろうか。

 

「…………まあ、今は素直にその言葉を受け取っておくかな」

 

俺達に必要なことも俺に必要なことも分かったし。

 

「俺達はまだまだ弱い。これから強くなってやる」

 

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