普通の学生が「手違い」で異世界から来るそうですよ?   作:蘇我入鹿

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補足……楠木大輔は漆黒の闇の力で守るという観点から、特に死に至るような病気になりません。


第16話 1つ覚悟を決めるそうですよ?

『ギフトゲーム名 “The PIED PIPPER of HAMELIN”

 

・プレイヤー一覧

・現時点で3999999外門・4000000外門・境界壁の舞台区画に存在する参加者・主催者の全コミュニティ(“箱庭の貴族”を含む)。

 

・プレイヤー側・ホスト指定ゲームマスター

・太陽の運行者・星霊 白夜叉(現在非参戦の為、中断時の接触禁止)。

 

・プレイヤー側・禁止事項

・自決及び同士討ちによる討ち死にを禁ず。

・休止期間中にゲームテリトリー(舞台区画)からの脱出を禁ず。

・休止期間の自由行動範囲は、大祭本陣営より500メートル四方に限る。

 

・ホストマスター側 勝利条件

・全プレイヤーの屈服・及び殺害。

・8日後の時間制限を迎えると無条件勝利。

 

・プレイヤー側 勝利条件

1.ゲームマスターを打倒。

2.偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ。

 

・休止期間

・1週間を、相互不可侵の時間として設ける。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。 “グリムグリモワール・ハーメルン”印』

 

大祭運営本陣営、客室。

俺はベットで寝ている少女を見ながら、1人今後の事を考える。

そして、俺を呼んだという魔王の関係者であるフロンは俺にギフトと霊格の一部を預けたことで無害認定され、感染者や怪我人の治療にあたっている。

ちなみに、俺を呼んだ魔王に関しての情報はこのゲームをクリアしたら教えるということになった。

 

「……ん。大輔?」

「やっと起きたか、耀」

「あれ、私は……なんで寝てたの?」

「ラッテン、白装束の女の魔笛で気を失ってこの客室に運び込まれたんだ」

「……そういえば、そんな気がする。あれからどうなったの?ギフトゲームは?魔王は?」

「今は中断中だ。あれから2日経っている」

「2日も!?……ごめん。みんなの足を引っ張ってばかりで。今度こそ“ノーネーム”の為に役に立とうと思ってたのに……」

「今度こそ?今までだって、」

「違う。私は何もしてない。ガルドの時も大輔と飛鳥の2人が頑張ってたのに私は何も出来なかった。“ペルセウス”の時もそうだった。だから、今回の魔王は私がと思ったのに……悔しい」

 

耀は布団を握りしめ、俯く。

俺から顔を逸らす瞬間、目に涙が浮かんでいたのが見えた。

こんな状態じゃ飛鳥達の事も言えない。

 

「まだゲームは終わってないんだし、これから挽回すればいいだけだろ?落ち込んだって仕方ないぞ」

 

俺は耀がそんな風に思っていたなんて知らなかった。

俺からしたら、十六夜・飛鳥・耀のそれはただの贅沢な悩みだとさえ思う。

だが、俺も含めた周囲の期待と、思うように活躍出来ない自分にギャップを感じているのかもしれない。

それは同じ立場の者にしか分からない感情なのかもしれない。

もしかしたら、飛鳥も……。

 

「とりあえず、今はゲームの再開までにしっかりと体調を調えよう。俺もリベンジしたいし協力するぜ」

「本当にありがとう。なんか大輔には世話になってばっかりで……。大輔は兄弟とかいたの?」

「いや、いない。急にどうしたんだ?」

「兄弟とかいたらこんな感じなのかなって。十六夜を怒ってる時とか、ジンを励ます時とか少しお母さんも入ってるけど、お兄ちゃんみたいだしね」

「おいおい勘弁してくれよ。あんな弟もいらないし子供も欲しくないぜ。強いて言うなら、姉を甲斐甲斐しく世話する弟がいいな、俺は」

「弟とか似合わない」

「うん?そうか?」

 

というか、ジンはともかくアイツらの世話するくらいなら、黒ウサギを世話する方が何100倍もマシなんだが。

 

「2日ぶりにしゃべったからかな。少し体が重い。ごめん、大輔。私少し寝るから、次に起きたと――」

 

ベットから上半身だけを起こしていた耀は急に後ろに倒れた。

 

「だ、大丈夫か?」

「う、うん。だいじょ……ばないかも」

 

顔色が悪い。

それに呼吸が荒い。

 

「ま、まさか……」

 

頭の中に最悪の展開が駆け巡る。

 

「待ってろ!今すぐ黒ウサギを呼んで来るから!」

 

黒ウサギの治療中、部屋の外で待つ。

部屋から出てきた黒ウサギはウサ耳を伏せる。

 

「……やっぱりか」

「はい。感染しています」

 

クソッ。

飛鳥に続いて耀までもが俺の目の前で。

 

「黒ウサギ、俺が耀を看病するから、レティシアは黒ウサギに任せる」

 

重症を負ったレティシアはまだ目覚めていない。

 

「ですが、耀さんは女の子ですし、黒ウサギが耀さんも看病した方が、その、よろしいと思うのですが」

「違うな黒ウサギ。少なくとも俺は感染しないんだから俺の方が適任だ。まあ、俺が感染したところで戦力の低下には繋がらないし」

 

黒ウサギが万が一感染しようものなら、このギフトゲームに勝つ確率は大幅に低くなる。

あの十六夜ですら認める黒ウサギの力はかなりのものだからな。

 

「それと何か言い淀んだが、別にやましいことなんてしないからな。体を拭いたりとかは他の奴に、フロンあたりに頼むから」

「……分かりました。それでは耀さんのことはよろしくお願いします」

 

こうして俺は耀の看病をすることに。

それからは大変だった。

激しく呼吸が乱れたり、凄い汗をかいたりと症状が出始めた。

耀が言うには元々体が弱いらしい。

だから、俺は耀の部屋に泊まり込み一段落つくまで看病を続けた。

 

「いったん落ち着いたし、誰かに頼むか」

 

コンコン。

 

部屋をノックする音。

俺はノックの主を招き入れた。

 

「大輔、耀は大丈夫か?」

「レティシア!?意識が戻ったのか!?っていうか、もう動いて大丈夫なのか?」

「皆に心配をかけてすまない。それに、これでも純血の吸血鬼だ。もう動く分には問題ない」

 

俺は耀の部屋に籠っていたので、外がどうなっているのか詳しく聞いた。

 

「外は酷い有り様だ。黒死病の感染が止まらず、どんどん増えている。それに従ってフロアマスターであるサンドラの求心力も弱まって、批判が出始めている」

 

批判の内容はまんまと魔王の侵入を許した上に、黒死病による感染者が増えている事に対するものらしい。

確かにこれが俺達の世界の話なら、こんな状況にしてしまった時の政府は解散せざるを得ないだろう。

 

「レティシア、耀の事を頼んでいいか?俺は書庫にいる十六夜に会ってくる」

「それは構わないが、……なるべく人と会わないようにな主殿」

「ん?ああ分かった」

 

黒死病の蔓延と魔王のギフトゲームということで、みんな気が立っているってことか。

暫く歩いた後、どうやら道を間違ったみたいで書庫が見つからない。

仕方ないが誰かに聞くしかないな。

 

「あの、すみません。書庫への道を、」

『お、お前は!?』

『何しに来やがった!』

『さっさとここから出ていけ!』

「俺はただ道を聞きたいだけなんですけど」

 

その辺にいた人間や獣人が俺を何故か睨んでいる。

 

『お前みたいな魔王の手先はクタバレ!』

『そうだそうだこの裏切り者!』

『ルールさえなければ殺してやるのに!』

 

魔王の手先!?裏切り者!?

確かに少し心当たりはあるが、その事を知っている人はこなり少ないはず。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。人違いじゃないのか?」

『とぼけんじゃねえ!あんときのゲームで言ってたじゃねえか!』

「ゲーム?」

『あの黒い力が何よりの証拠だ!』

「は!?いったいなんの事を言っているんだ?」

『しらばっくれてもムダだ!どうせあんとき一緒にいた小娘も仲間なんだろ!』

『なんだあの小娘は死んじまったのか?』

『ざまあみろ!』

『死んで当然なんだよ!』

『どうせならオマエもあんときに一緒に燃やされれば良かったのによ!』

 

数10人からの罵詈雑言。

俺は思い出した。

確か、ジャックが俺の事を「闇に魅入られし少年」と評した。

それが、今の混乱と不満と不安で曲解されて広まったってわけか。

ふざけんじゃねえ!!

十六夜達は魔王を倒すために努力してるんだ!

飛鳥はお前らを助けるために捕まったんだ!

耀は一生懸命に黒死病と戦ってるんだ!

それを馬鹿にしやがって!!

大事な仲間を馬鹿にしやがって!!

ヒーローの背負う宿命なんてクソ喰らえ!!

 

『出ていけ!』

『仲間の命を返せ!』

『絶対に許さねえ!』

 

漆黒の闇に守られている、怪我もせず血も出ない身体に無数の石がぶつけられる。

より一層、怨嗟の声が上がる。

こんな奴等のために戦う十六夜が、黒ウサギが、ジンが不憫でならない。

だから、俺は自分を捨てる。

仲間が祝福されるために。

悪いな十六夜、みんな。

今が俺にしか出来ない事をする時みたいだ。

俺は漆黒の翼を最大までに展開し、飛翔し見下す。

 

「ゴミ共が今更何を言う!!お前らがいくら喚こうと魔王の手によって滅びる運命は変わらん!!」

 

俺は大仰に大袈裟に高らかに叫んだ。

 

「お前ら弱者は生きている価値すらない!!」

『言わせておけばこの野郎!』

『ぶっ殺してやる!』

『仲間の仇!』

「殺れるものなら殺ってみろ!!この俺、“大悪党”楠木大輔に傷の1つでも負わせてみろ!!フハハハ!!」

 

俺の嘲笑に怒り狂い投げられる物なら何でも投げている。

俺はそれを空中で躱し続ける。

その時、

 

「みなさん!落ちついてください!」

『サンドラ様!』

『フロアマスター様!』

『アイツに死の制裁を!!』

「みなさんは巻き込まれないように遠くへ避難してください!」

 

民衆は全てサンドラに押し付けて逃げる。

誰1人戦おうとしない。

 

「それでどうする?フロアマスター?」

「ジンの同士である貴方が、何故このようなことを!」

「ジンの為でもある。聞いた話だと民衆の統制に苦労してるみたいだな」

「……はい。私が未熟なばかりに、皆には迷惑をかけています。だからこそより一層の努力を」

「たぶんそれじゃ駄目だ。もう努力どうこうじゃ間に合わない」

 

1度失った求心力はそう簡単には取り戻せない。

真っ当な方法ではの話だがな。

 

「だから、俺が悪役を演じて批判の矛先を全て俺に向けさせる。とんだ茶番たけど、そうすればゲーム再開までに間に合うぜ?」

「しかし、それは……」

「迷うなサンドラ!フロアマスターならどんな手を使ってでも魔王を倒す!そうじゃないのか!!」

「……」

「覚悟が出来たら俺を倒して捕まえろ!それで魔王に勝てるんだ!」

 

魔王に勝ちさえすればみんなも救えるし、俺も救われるのだから。

 

「さあ来い!フロアマスター!!」

「――なら、代わりに俺がぶっ飛ばしてやるぜ!」

「十六夜!?」

 

 

 

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