普通の学生が「手違い」で異世界から来るそうですよ?   作:蘇我入鹿

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少し小説情報を編集しました。


第17話 怒り怒られるそうですよ?

「アイツ、思いっきり殴りやが……まあ手加減はしてくれたんだろうけど」

 

俺は十六夜に1キロ程ぶっ飛ばされ、いくつもの壁に激突しやっと止まったところだ。

とはいえ、漆黒を展開していたので痛みなどはあまり無いが。

 

「いつから見てたんだ、十六夜?」

 

既に俺の元へ追い付いた十六夜。

だが、俺の質問には答えない。

暫く沈黙が続いた。

その間にサンドラも追い付いた。

 

「今回の件はさっきので勘弁してやる。だから、次にこんなフザケたことしやがったら、お前を“ノーネーム”から追い出す」

「十六夜にしては寛大だな。俺としてはもっと色々と言われると思ったんだがな」

「まあ、今回の件は未だに謎を解けていないこと、それに伴うこの現状を放置していた俺にも責任がある」

「相変わらずの上から目線だな」

 

十六夜は何でも出来る。

故に、出来たはずのことが出来なかった時、自分の責任にする。

それは責任感が強いと言えるかもしれないが、裏を返せば自分以外に期待をしていないということだ。

このことは俺達全員が心の奥底で感じている。

だが、決して口には出さない。

俺達の弱さが十六夜をそうさせているのだから。

 

「だがこうなった以上、最大までに利用しないとな」

「え?」

 

十六夜の瞳が鋭く光る。

 

「そうだな。魔王を率いれた大悪党様には大罪人。となると民衆の批判を1人に向けさせるには市中引き回しの上、目立つところに晒して、鞭打ち1000回ってところか?」

「えっ、ちょ、ちょっと十六夜さん!?」

「当然、こんくらいの覚悟はあったんだろう?」

「あ、いや、それは……」

 

そこまでの覚悟あるわけないだろ、と言いたい。

実際にそんなことになったら、痛みはどうにか出来るが、どう考えても精神が死ぬ。

普通ならそこまではしないと思うのだが、十六夜ならやりかねない。

 

「それは同士に対してすることではないと思うのですが」

 

サンドラがフォローに。

頑張ってくれ。

 

「フロアマスター様は他所のコミュニティに意見するのか?」

「これはフロアマスターとしてではなく、ジンの友達としての意見です。コミュニティの為に、皆の為にした自己犠牲に対してそこまでの仕打ちは必要ないと思います」

 

よく言ったサンドラ!

 

「ご立派な意見だな。じゃあお前は、また今回みたいな事が起きたら毎回誰かを人身御供にするってわけだな?」

「そんなことはしません!もし、次に同じような事があっても別の方法を、」

「いや無理だな。1度この方法で乗り切ったら、次も絶対に同じことをする。する方もさせる方も仲間だけは理解しているからと、逃げ道を作って何度も何度もする」

「そ、それは……」

「言っとくが、自己犠牲を否定してるんじゃないぜ。俺は自己犠牲が慢性かするのが駄目だって言ってるんだ。だから、次に同じような事をさせないために見せしめも兼ねて厳しくすべきだって、言ってるだけだ」

「……」

 

おーい、サンドラさん!?

 

「まあ、これは俺の意見だ。実際の当事者はお前だ。お前がどうするか決めろ」

 

十六夜はぶっきらぼうにそう告げて、サンドラから顔を背けた。

サンドラは何度か俺と十六夜を見て、

 

「今回の件で楠木さんには悪役になってもらいます。そのため、非常に心苦しいのですが楠木さんには独房に入って頂きたいのですが……どうでしょうか?」

「俺は別にそれで構わない。そのくらいは覚悟していたからな」

 

十六夜の案に比べたら何100倍もマシだ。

俺とサンドラはその十六夜を見る。

 

「俺の仲間の迷惑極まりない行動に対して寛大な処置に感謝するぜ、フロアマスター」

 

お前が言うか。

 

「楠木。御チビ達には俺から言っといてやるが、黒ウサギとレティシアの説教には覚悟しとくんだな。お前がどれだけ迷惑をかけたか身を持って知りな。ヤハハ!」

 

十六夜は笑い飛ばした。

アイツらの説教は嫌だな。

仲間を本当に心配しての説教は心にガンガン響くからな。

 

十六夜のあの意見は俺に釘を刺すためだろう。

今後、二度とこんなことはするなと。

やっぱりツンデレだな。デレないが。

いや、十六夜がデレを見せる時は尋常じゃないくらいヤバい時だけだろうな。

 

俺は独房に連行された。

 

「本当に申し訳ございません」

 

連行する間、ずっと平謝りしっぱなしのサンドラ。

俺はサンドラにデコピンをした。

 

「っ!?」

 

「別に気にするな。魔王に勝つ為にやったことだし。それより、十六夜の事は変な誤解をしないで欲しい。アイツはアイツなりに俺の事を考えての発言だからな。まあ、過激過ぎて怖かったけど」

「楠木さんはお優しいのですね……。私なんて頑張ると決めたばかりなのに、このようなことになって……」

「過ぎたことを気にしても仕方ないだろ?」

「…………」

 

十六夜に怒られたばっかりで、かなり気が引けるんだが……仕方ない。

さっきの延長ってことで勘弁してくれよ。

 

「よし分かった。そんなに責任を感じたいなら好きなだけ俺が責めてやる。……現状を見れば一目瞭然だ。お前は無能で馬鹿で間抜けで役立たずだ!お前はフロアマスターになって調子に乗ったんだ!そんな力も無いくせに血筋だけで選ばれただけなのにな!挙げ句の果てに、魔王との交渉の時は馬鹿なのにでしゃばりやがる!ジンが止めなければどんな条件を押しつけられたことか!フロアマスターになったからって自分が有能になったわけじゃないんだ!お前はガキで弱虫で泣き虫な虫けらのまんまなんだぜ!」

 

本格的に泣き始めたサンドラ。

よくもまあ、俺もこれだけ心にもないことが口から出たな。

心が……心がもの凄っく痛い。ズキンズキンする。

それでも心を鬼にして言うしかない。

 

「泣いてる暇があったら、俺のことを晒すなり辱めたりして悪役に仕立て上げろ!そして、皆を纏め上げて必ず魔王に勝て!!」

「ぐすん、ぐすん……」

「返事は!」

「……は、はい」

「返事が小さい!!」

「はい……ぐす。あ、あのひっく、く、楠木さん……」

「俺のことは大輔でいい。あんまり苗字は好きじゃないんでな」

「は、はい。大輔さんの、えっぐ、犠牲をひっく、無駄にしないためにぐす、頑張ります」

「分かったらさっさと行け!!」

 

サンドラは涙を思いっきり拭い、

 

「はい!」

 

駆けて行った。

そして、俺は壁に何度も何度も頭を打ち付けた。

 

「…………ああ、死にたい」

 

どんな事情があったにしても、女の子を泣かせるなんて恥ずかしくて、情けなくて、悔しくて、最低だ。

そんな自己嫌悪に陥っていたら、

 

「楠木大輔!!!サンドラに何をした!!!」

 

怒りに満ち満ちた絶叫が建物内で木霊した。

激高しているマンドラが数十人を引き連れて独房に押し寄せた。

全員が凄まじい殺気を放っていた。

あれ、けっこうヤバイかもしれない。

 

「兄様、これは違うんです!」

「ええい!サンドラは黙っていろ!今ここでこの“ノーネーム”を血祭りに上げてやる!!」

 

怒りの赴くまま、抜刀するマンドラ。

すると、

 

「いい加減にしてください!!」

「サンドラ!?」

「今すぐに此処から出ていかなければ全員拘束します!!!」

「しかし、サンド――」

「聞こえませんでしたか?今すぐにと言ったのですよ?マンドラさん(・・・・・・)

 

サンドラの低い声が耳につく。

お陰で拷問も受けずにすみそうだが、それよりもマンドラを始め全員が呆然唖然とした。

そんな顔も、声も、態度も出来るとは。

馬鹿みたいにポカンと口を開けているマンドラを部下達は半ば引きずる感じで出ていった。

 

「ごめんなさい。兄様が変な誤解したみたいで、本当にごめんなさい」

「別にそんなに謝んなくていいぞ。まだ、何もされてないし」

 

まだ、だけど。

 

「そんなことより、」

 

ドンガラガッシャーン!

キャー!!

 

「だ、大輔さん?大輔さん!」

 

見覚えのあるウサギがドタバタあたふたして跳んできた。

 

「大輔さんどういうことですか?ジン坊っちゃんに聞いたレティシア様に聞かされた耀さんに教えられた十六夜さんから聞きましたよ。年端もいかない女の子に手を出して捕まったって。嘘ですよね?嘘と言ってください!そのような劣情が溜まっていたことに気付けずにすみませんでした。それに、他所様のコミュニティに手を出すくらないなら黒ウサギに言ってくれれば。これでは飛鳥さんや耀さんにも顔向け出来ません。大輔さんが悩んでいたことも露知らず、ちょっと挑発的な格好していた黒ウサギにも責任があります。だから、こうなってしまった以上、私も一緒に謝り倒しますのでどうか早まったことはしないでください。コミュニティに残った子供達も――」

「おい、黒ウサギ!何を口走っているんだ!」

「大輔さんと黒ウサギは、そ、その……大人の関係だったのですね」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。凄い勘違いをしているぞ、サンドラ。ほら、黒ウサギも何か言ってくれ!」

「――大輔さんは十六夜さん達の問題行動をいつも怒ってくれていました。黒ウサギも気づかない内に大輔さんに甘えていたみたいです。その所為で大輔さんのストレスが知らず知らずの内に溜まってこのようなことに。天真爛漫にして温厚篤実、献身の象徴とまで謳われる黒ウサギならその程度のストレスなら問題はありませんが。大輔さんは仲間思いで優しくて、たまに黒ウサギをやらしい目でみたりするビビりでチキン野郎でございますので、いくらヘタレでもストレスに負けてそのようなことをするかもしれないという懸念を持つべきでした。あの時も――」

 

俺は初めて思った。

駄ウサギ許すまじ!

 

ゴツン!

 

「痛い!?大輔さん、いきなり殴るなんて酷いでは――」

 

ゴツン!

 

「2度も!?……大輔、さん?お顔が怖いですよ?」

「駄ウサギ!!黙って正座!!」

「は、はいでございます」

 

黒ウサギを説教した。

本来、この件で説教されるのは俺のはずはんだがと、考えながら今までの鬱憤を晴らすように説教した。

それと同時に事情を説明した。

分かったことは、

 

「十六夜……。覚えてろよ」

 

アイツが適当なことを黒ウサギに吹き込んだばっかりに、あまり知りたくないことも知るはめになった。

 

「本当に本当に申し訳ございませんでした」

「もう謝んなくていいから。疲れたし」

「大輔さんは何を仰っているのでございますか?」

「は?」

「大輔さん♪静かに正座しましょうね♪」

「……ああやっぱり」

 

ここからは黒ウサギのターンだった。

十六夜に怒られた件をよりクドく、より感情的に説教された。

 

「それと先程話したことは忘れてください」

「黒ウサギが代わりに、体を――」

「あー、あー、聞こえませんよ」

「ガキかよ」

「あの御2人は本当に恋人とかではないのですよね?」

「そうだけど。なあ黒ウサギ?」

「ここここここ恋人だなんて……」

 

おい、ウサ耳まで赤くするなよ。

こっちが恥ずかしいだろ。

 

「……[まだチャンスはある]」

 

……。

サンドラ、俺はどこぞの難聴野郎じゃないんだぞ。

普通に聞こえてるのだが。

 

「話は終わったか?とうしろう共?」

「ん?十六夜、いつからいたんだ?」

「つい、さっきだ。本当はもっと速く着くはずだったんだが、そこの駄ウサギが速すぎて見失ってな。で、どうせ追いつけないならとコイツを探してたんだが、少し手間取った」

 

薄々思っていたが、黒ウサギの方が速いのか。

あの十六夜に1つでも勝てるものがあるなんて“箱庭の貴族”って凄いんだな。

まあ、そのスピードでいざ勝負をしたところで黒ウサギが十六夜に勝てるとはこれっぽっちも思わないけど。

まあそれはそれとして。

 

「それはどういう状況なんだ?」

「それは今から話す」

 

なぜか十六夜は超ふくれっ面のフロンをわきに抱えていた。

 

「それでだ。サンドラ、駄ウサギを連れて場を外してくれ。今からコイツと大事な話をする」

 

 




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