普通の学生が「手違い」で異世界から来るそうですよ? 作:蘇我入鹿
忙しくて時間がかかりました。
やや短いですがどうにか投稿できました。
「――もうひどいです、プンプン!」
超ふくれっっっ面で怒っているフロン。
十六夜に無理矢理連れてこられたことより、まるで物を運ぶように小脇に抱えられたことが『乙女心が傷ついた』と嫌だったらしい。
「んー……そのなんだ。それは、まあ悪かったとは思っている」
十六夜は十六夜で黒ウサギについていけなかったことに腹が立っておりその結果、フロンの扱いがかなり雑になったらしい。
「まあ私も大人なので、そのことは許してあげます」
「で、それはそれとして。こっち側についた以上、お前にも協力してもらうぞ」
「わかってます。ペストさんたちの好きにはさせません!」
フロンは協力する条件の1つに黒死病をばらまかないことを約束していたが、その条件を破られ、多くの人が苦しんでいるのは見捨てることができないとのこと。
そのため、中断以降は献身的に感染者や怪我人の治療などにあたっていることもあり、もうすっかり仲間と認識されている。
普通に良い奴だった。
「で、お前には当日――」
この後、十六夜とフロンと対魔王の攻略を話しあった。
――当日。
ゲームの再開と同時に激しい地鳴りが起きて、煌焔の都が全く違う別の街並みに変わった。
俺も含めて参加者達は出鼻をくじかれて動揺する。
「まさか、ハーメルンの魔道書の力……ならこの舞台は、ハーメルンの街!?」
「おいおいマジか!」
ジンの叫びに俺以外も反応する。
「うろたえるな!各人、振り分けられたステンドグラスの確保に急げ!」
動揺している参加者達をマンドラが一喝するが動揺は止まらない。
それに、街並みの変化のせいで、
「ジン!これじゃあ、ステンドグラスの場所が分からない。どうする?」
「あっているかどうかは分かりませんが、予測はついています」
「よし分かった」
俺は漆黒の闇を真上に直線状に展開した。
それにより、一時的に注目が俺とジンに集まる。
ちなみに、先日の俺の一件における疑惑はサンドラが表立って強引に否定したのでとりあえずは有耶無耶になっている。
「み、みなさん!教会を捜してください!ハーメルンの街を舞台にしたゲーム盤なら、縁のある場所にステンドグラスが隠されているはず。“偽りの伝承”か“真実の伝承”かは発見した後に指示を仰いでください!」
ジンの声が響き渡る。
けど、何人かしか動き始めていない。
「マンドラ!!」
「ッ!何をしている!教会だ!教会を捜せ!」
マンドラの号令でやっと動き出す。
それからしばらくして、ステンドグラスが見つかり始める。
ジンは素早く判断して指示をする。
けど、順調に攻略が進むこともなく、
「ジン、魔王一派のお出ましだ」
屋根の上にネズミを操る悪魔ラッテンが立っていた。
「飛鳥さんはどこにいるんだ!?」
ラッテンはジンの叫びに返事もせず、魔笛を奏で始める。
操られた何10匹もの火蜥蜴が襲ってきた。
「ラッテン、お前には1週間前苦汁をなめさせられた。けど、今の俺はあの時とは一味違うぜ!」
――昨日。
「――堕天使フロンが奉ります。彼我の国の魑魅魍魎、月光の百鬼夜行、氷血、絢爛、灼熱、絶花、兎兎、渇血、葬霊、毒、魔ッシュルー夢、牙竜、ドゴール、etc……願わくは、かの者に力を与え給え。あと、世界が愛で満たされますように――」
「……その適当な口上はなんなんだよ?」
「ただの趣味です。それよりも、これで大輔さんのあの力がかなりパワーアップするはずです、明日には」
「明日?その時間差はどういうことだ?」
「さあ?なんででしょう?」
と、小首を傾げて疑問符を頭に浮かべるフロン。
と、首を垂れて溜め息混じりに頭を抱える俺。
突っ込みどころが多すぎて何から言えばいいのか。
「まあまあ。わからないことはいくら考えてもわからないですよ」
「……はあ」
ああ、これはアレだな。
無駄に可愛いからちょっと目を背けていたが、こいつははアホだ。かなりのアホだ。
と、それはさておき――
「だ、駄目です大輔さん!参加者と戦っては、」
「……同士討ちは失格になる、か。ちゃんと分かってはいる」
「ふふふ♪でも殺さなかったらいいんじゃない?殺さないように手加減しながら、自分も殺されないようにすれば、ほら。万々歳って奴よ」
ラッテンは笑みを浮かべて見下している。
「ああ、だからその手でいくんだよ」
「はい?それ本気で言ってるの、坊や?」
「そ、そうですよ!それで大輔さんが失格になったら、もう……、」
ジンの言いたいことは分かる。
だからこそ、これ以上アイツらのペースに乗せられるわけにはいかない。
「マンドラ!お前ら“サラマンドラ”は人間ごときに
「当然だ!我ら“サラマンドラ”の同士にそんな軟弱者はおらん!」
「ってわけだ。教えてくれてありがとう。オ・バ・サ・ン」
俺は漆黒の闇の
もちろん、漆黒の闇の基本能力は絶対防御なので、攻撃といっても槍のように尖らせて小突いて隙を作り捕まえる。
いうならば、アタック&キャッチといったところか。
まあ、こうでもしないと急ごしらえでは火蜥蜴のスピードやパワーに対抗できないから、ただの苦肉の策なのだが。
それからしばらく――
「……うん。もう無理」
最初はパワーアップした漆黒を使う練習とか、ストレス発散もできて一石二鳥だと張り切っていた。
けど今は、
「きっつい」
全然集中力も体力も持たない。
漆黒の闇のコントロールが超疲れる。
細かい操作は途中で諦めて、大雑把な形状変化で適当に捕まえていたが、付け焼き刃ではこれ以上は無理だ。
なので、、いつものように俺を覆うように漆黒の闇を展開して打開策を考えることにした。
すると、
「見つけたぞ、ネズミ使い!」
黒い翼を広げ見下す、煌々と靡く金髪の超美少女、
「レティシア(大人モード)!」
「ネズミ使いの道化。飛鳥を返してもらうぞ!」
「フフフ。“箱庭の騎士”の力、見せてもらおうかしら?」
レティシアの影がどんどん大きくなり巨大な龍へと形を変える。
ラッテンも魔笛を奏でる。
「我が同士を傷つけた報い、今此処で、」
「レティシア、待て!お前、怪我がまだ治ってないだろ!」
「そのようなことは関係ない!私はその為に……今、立ち上がらず、いつ立ち上がるというのだ!」
レティシアは体に鞭打って立ち向かう。
本来ならば、自分の恩恵を、霊格を、失ってでも“ノーネーム”の、昔の仲間の元へ駆けつけたレティシアに俺達がとやかく言うのは筋違いというものだ。
だがそれでも、今の仲間である俺達には、
「レティシア、お前の覚悟は分かった。だから、死ぬことだけは俺が絶対に許さない。そこでだ。妙なことに今の俺達はお互いの弱点を補いあえるとは思わないか?」
「ふむ。確かに絶妙だな」
「ってなわけで攻撃〔防御〕は頼んだぞ!!」
俺達は同時に戦闘体制に入った。
レティシアは無数の影を、龍を模した数十もの全ての影を火蜥蜴に向かって繰り出す。
その影は次々と火蜥蜴の意識を刈り取っていく。
そして、その影をすり抜けて討ち漏らした数匹の火蜥蜴が無防備のレティシアに迫る。
「やらせない!」
漆黒の闇を展開し、レティシアを覆う。
もちろん、全ての攻撃を容易に防ぐ。
攻防連携の影と闇のコラボレーション。
「防御に専念すれば、たとえ魔王の攻撃でも防げると、お墨付きももらってる。さあ、どうする?」
「あらあら、中々良いコンビネーションね。……そうね。なら、もう蜥蜴には頼らないわ――」
すと、魔笛のリズムが変わり、曲調も妖しさを増し、ラッテンの霊格が膨れ上がった。
「現れなさい。シュトロム!」
「「「「「BRUUUUUUUUUM!!!」」」」」
全身に風穴が開いた陶器の巨人が無数に各地に現れた。
「あの時、遠くで見えていた奴か」
色んなところのステンドグラスの捜索隊から悲鳴が上がっている。
「さあ、ここからが正念場だ!」
ディスガイア勢の設定はそこそこいじって、箱庭の世界に無理矢理合わせたりしてます。