普通の学生が「手違い」で異世界から来るそうですよ?   作:蘇我入鹿

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第21話 そうですよ?

――“黒死斑の魔王”との戦いから1ヶ月。

俺達は今後の活動方針を話し合うため、本拠の大広間に集まっていた。

大広間の中心に置かれた長机には上座からジン、十六夜、飛鳥、耀、黒ウサギ、俺、レティシア、そして年長組筆頭に狐娘のリリが座っている。

“ノーネーム”では会議の際、コミュニティの席次順に上座から並ぶのが決まりになっている。

そしてリーダーであり旗頭であるジンはガチガチに緊張した面持ちで上座に座っていた。

そんなジンを、十六夜はヤハハと笑ってからかう。

 

「どうした?俺よりいい位置に座ってるのに、随分と気分が悪そうじゃねえか」

「だ、だって、旗本の席ですよ?緊張して当たり前じゃないですかっ」

 

戦果らしい戦果も挙げていないジンが引け目を感じるのはよく分かる。

 

「あのなあ、御チビ。お前は“ノーネーム”の旗頭であり名刺代わりなんだ。俺達の戦果は全て“ジン=ラッセル”の名前に集約されて広がっている。そのお前が上座に座らないでどうするんだよ」

「YES!十六夜さんの言う通りでございますよ!事実、この1ヵ月間で届いたギフトゲームの招待状は、全てジン坊ちゃんの名前で届いております!」

 

ジャジャン!と黒ウサギは自慢げに見せびらかす3枚の招待状と1枚の手紙。

そのうち2枚は参加者ではなく貴賓客として招待状だった。

 

「苦節3年……やっと我らのコミュニティにも、招待状が届くようになりました。それもジン坊ちゃんの名前で!だから堂々と胸を張って上座にお座りくださいな!」

 

黒ウサギはハイテンションで喜びはしゃぐ。

しかし、ジンは、

 

「だけど、それは……――」

「まあアレだぞ、ジン。この程度で緊張していたら今後、もっと凄い状況になったら困るぞ」

 

コイツらのポテンシャルを考えたら、短期間で上層に上がるだろうしな。

 

「だから、今のうちに十六夜程度で慣れたほうがいいぞ」

「そうだな。俺程度に慣れとけば、緊張することはなくなるぜ!ヤハハ!」

 

アハハ、とジンが作り笑いで返す。

 

「それで?今日集まった理由は、その招待状について話し合うためなのかしら?」

 

飛鳥が話を進めるよう、口を出す。

 

「はい。それも勿論あります。ですがその前に、農園区の復興状態をお伝えしようと思います。……リリ、お願い」

 

リリは顔を輝かせ、勢いよく報告を始める。

 

「は、はい!農園区の土壌はメルンとディーンが毎日毎日頑張ってくれたおかげで、全体の1/4はすでに使える状態です!これでコミュニティ内のご飯を確保するには十二分の土地が用意できました!田園に整備するにはもうちょっとかかりますけど、葉菜類、根菜類、果菜類を優先して植えれば、数ヵ月後には成果が期待できると思います!」

 

ひょコン!と狐耳を立てて喜んでいるリリ。

あの荒廃しきった土地を1ヵ月やそこらで復興させれたのは、奇跡といっても過言ではないだろう。

 

「当然よ。メルンとディーンが休まず頑張ってくれたのだもの。復興なんてあっという間よ」

 

飛鳥が得意そうに髪を掻きあげる。

開拓の霊格と功績を持つとんがり帽子の地精・メルン。

神珍鉄で造られた永久駆動の鉄人形・ディーン。

飛鳥が十六夜に次いで2番目に座っているのは、農園区復興に対する功績が大きい。

 

「そこで今回の本題でございます!復興が進んだ農園区に、特殊栽培の特区を設けようと思うのです」

「特区って?」

「YES!有りていに言えば霊草・霊樹を栽培する土地ですね。例えば、」

「マンドラゴラとか?」

「マンドレイクとか?」

「マンイーターとか?」

「………………はあ、」

「YES♪っていやいやおかしいですよ!!?“人喰い華”なんて物騒な植物を子供たちに任せることは出来ませんっ!それにマンドラゴラやマンドレイクみたいな超危険即死植物も黒ウサギ的にアウトです!あと、大輔さんは諦めないでくださいよ!!?」

 

いや、話の展開が途中で見えて面倒くさくて。

 

「……そう。じゃあ妥協して、ラビットイーターとか」

「何ですかその黒ウサギを狙ったダイレクトな嫌がらせは!?」

 

うがーッ!!とウサ耳を逆立てて怒る黒ウサギ。

レティシアが目配せでどうにかしてくれと訴えてきたので、俺は目を逸らした。

たまには休ませてくれ。

レティシアはガックリと肩を落とし、十六夜達へ率直に告げた。

 

「つまり主達には、農園の特区に相応しい苗や牧畜を手に入れて欲しいのだ」

「牧畜って、山羊や牛のような?」

「そうだ。都合がいいことに、南側の“龍角を持つ鷲獅子(ドラコ・グライフ)”連盟から収穫祭の招待状が届いている。連盟主催ということもあり、収穫物の持ち寄りやギフトゲームも多く開かれるだろう。中には種牛や希少種の苗を賭けるものも出てくるはず。コミュニティの組織力を高めるには、これ以上ない機会だ」

 

なるほどと頷く。

 

「今回の招待状は前夜祭から参加を求められたものです。しかも、旅費と宿泊費は“主催者”が請け負うという“ノーネーム”の身分では考えられない破格のVIP待遇!場所も南側屈指の景観を持つという“アンダーウッド”の大瀑布!それを彩る大樹と河川の舞台!皆さんが喜ぶことは間違いございません!」

 

黒ウサギが胸を張って紹介する。

 

「へえ……“箱庭の貴族”の太鼓判付きとは凄い。さぞかし壮大な舞台なんだろうな……お嬢様はどう思う?」

「あら、そんなの当たり前じゃない。だってあの“箱庭の貴族”がこれほど推している場所よ。目も眩むぐらい神秘的な場所に違いないわ。……そうよね、春日部さん?」

「うん。これでガッカリな場所なら……黒ウサギはこれから、“箱庭の貴族(笑)”だね」

「“箱庭の貴族(笑)”!??な、何ですかそのお馬鹿っぽいボンボン貴族なネーミングは!?我々“月の兎”は由緒正しい貞潔で献身的な、」

「はいはい分かったから、話を進めような黒ウサギ(笑)」

 

黒ウサギは拗ねた様に頬を膨らませてそっぽを向く。

そんな愛らしい黒ウサギを見て俺達はニヤニヤしていた。

 

「そこでなのですが、1つだけ問題があります」

 

苦笑いを浮かべていたジンは、コホンとわざとらしく咳払いをして注目を集める。

 

「問題?」

「はい。この収穫祭ですが、20日ほど開催される予定で、前夜祭を入れれば25日。約1ヵ月にもなります。この規模のゲームはそう無いですし最後まで参加したいのですが、長期間コミュニティに主力が居ないのはよくありません。そこでレティシアさんと共に1人残って欲し――」

「「「嫌だ」」」

 

即答だった。

問題児共はさも当たり前だと言わんばかりに平然とした顔でジンを見返す。

 

「まあ、俺は別に残っていいけど」

 

“フォレス・ガロ”みたいな奴らもいるし、コミュニティを空にするのは不味いからな。

 

「それでは、大輔さんには悪いですがコミュニティに残って――」

「駄目よ!」

 

え?と、ジンは飛鳥に驚き向き直る。

 

「大輔君には“アンダーウッド”に行ってもらうわ!」

「うん。大輔は“アンダーウッド”に行くべき!」

「いやいや、どうした?急に……?」

「大輔君、自分の事情を話してから落ち込んだり、悩んだりしてるじゃない。ツッコミも雑だし。だから、気分転換も兼ねて行きなさい!」

「大輔の元気が無いと子供達もこっちも調子が狂う。フォローも雑だし。だから、特別に譲ってあげる。文句はないよね、十六夜?」

 

う~んと腕を組んで十六夜は唸る。

 

「……はあ。仕方ねえ。今回は譲ってやるよ」

「あら?十六夜君にしては素直ね?」

「よくよく考えたら、コイツが残っても戦力にならねえしな」

「「それもそうね(か)!」」

「おい!」

 

相変わらずだな。

 

「えーっと、それで大輔さんはどうしますか?」

「そうだな――」

 

俺は北側から帰ってきたあと、全てではないが皆に過去のことを話した。

まさか、その事で飛鳥と耀、それに十六夜までも気を使っていたなんてな。

そんなつもりで話したわけじゃなかったのだが。

 

「――ここはその好意を受け取って置くかな」

「分かりました。それでは申し訳ないのですが、大輔さん以外は日数を絞らせてくれませんか?」

「というと?」

「前夜祭を2人、オープニングセレモニーからの1週間を3人。残りの日数を2人。……このプランでどうでしょうか?」

 

むっ、と顔をしかめる問題児たち。

まあ、ジンのプランだと1人だけ全参加出来るからな。

 

「――なら前夜祭までの期間で、誰が何日行くのかをゲームで決めるのはどうだ?」

「あら、面白そうじゃない。どんなゲームをするの?」

「……そうだな。“前夜祭までに、最も多くの戦果を上げた者が勝者”ってのはどうだ?期日までの実績を比べて、収穫祭で一番戦果を挙げられる人材を優先する。……これなら不平不満はないだろ?」

 

十六夜の提案に飛鳥と耀は頷く。

 

「わかったわ。それで行きましょう」

「うん。……絶対に負けない」

 

んー……。

不敵な笑みを見せる飛鳥。

珍しくやる気満々な耀。

 

 

「これは面倒なことになりそうだな……」

 

 

 

 

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