普通の学生が「手違い」で異世界から来るそうですよ?   作:蘇我入鹿

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第22話 そうですよ?

報告会当日。

問題児たち3人と審査役のジンとレティシア、俺が席に着く。

 

「細かい戦果はあとに置いておくとして。まず皆さんが挙げた大きな戦果から報告しましょう。まず始めに飛鳥さんですが、牧畜を飼育するための土地の整備と、山羊10頭を手に入れたそうです。飼育小屋と土地の準備が調い次第“ノーネーム”に連れてくる予定です」

 

フフン、と後ろ髪を掻きあげる飛鳥。

 

「次に耀さんの戦果ですが……なんと!火龍誕生祭にも参加していた“ウィル・オ・ウィスプ”主催のゲームに勝利しました!そこでジャック・オー・ランタンが製作する、炎を蓄積できる(・・・・・・・)巨大キャンドルホルダーを無償発注したそうです」

「これを地下工房の儀式場に設置すれば、本拠と別館にある大輔から寄付された“ウィル・オ・ウィスプ”製のギフトなどの備品に炎を同調させることができる」

「なのでこれを機に、竈・燭台・ランプといった生活必需品を“ウィル・オ・ウィスプ”に発注することになりました。これで本拠内は恒久的に炎と熱を使うことができます」

「……へえ?それは本当に凄いな」

 

十六夜が素直に感心していた。

飛鳥と耀もこれで少しは見返せただろう。

 

「知らない間にそこまで設備の強化プランが進んでいたとはな。やるじゃねえか、春日部」

「うん。今回は本当に頑張った」

 

何時になく得意気な微笑みを浮かべる耀。

実際、並々ならぬやる気でゲームに臨んでいたしな。

 

「いや、意外だったぜ2人とも。楠木の手も借りずに中々大きい戦果を挙げたみたいじゃねえか」

「それで、十六夜君はどんな戦果を挙げたのかしら?」

 

飛鳥は逸らすかのように十六夜に話を向ける。

 

「それじゃ、今から戦果を受け取りに行くとしようか」

「……受け取りに行くだと?何処へだ?」

 

十六夜は不敵な笑みを浮かべて答える。

 

「“サウザンドアイズ”にさ。黒ウサギも向かっているらしいし丁度いい。主要メンバーには聞いておいて欲しい話だからな」

 

 

――噴水広場を抜け、サウザンドアイズの支店に向かう一同。

店先には何時もの女性店員が竹箒でせっせと掃いていたが、十六夜たちの顔を見るや嫌そうな顔で、

 

「……また貴方達ですか」

「それじゃ、御邪魔します」

「帰ってくださいッ!!」

 

相変わらずの反応だな。

十六夜が無理矢理に入ろうとするのを、竹箒を振り回して抵抗する女性店員。

だが、店内からの白夜叉の一言で面倒なことにもならず、すんなり入れた。

 

「や、やめてください白夜叉様!!黒ウサギは“箱庭の貴族”の沽券に掛けて、あれ以上のきわどい衣装は着たくないと言ったではありませんか……!!!」

「く、黒ウサギの言う通りです!この白雪も神格の端くれとして……こ、このような恥ずかしい格好をして人前に出る訳には……!!!」

「ふふふ、その豊満でエロイ身体にエロイ事を仕込みたいというエロイ欲求が爆発したエロイ暴徒がおんしらを姦策に嵌めてエロエロにしたいだけだ!よいではないか!よいではないか!」

「「黙れこの駄神ッ!!!」」

 

障子に映る影絵は、時代劇のまさにソレだった。

無遠慮に十六夜が障子を開けようとした瞬間、竜巻く水流と轟雷が障子を突き破った。

ついでに白夜叉も吹っ飛んできた。

 

「てい」

 

足で受け止める十六夜。

デジャブだな。

 

「ゴバァ!!お、おんし!いい加減にせいッ!!足で受け止めるなと言っておるだろう!!」

「なら吹っ飛んでくるなよ。つか何をやったら――」

「どうした十六――」

 

水煙の向こうに見える黒ウサギたちの姿に、思わず言葉を無くしたのだ。

 

「……黒ウサギ?どうしたんだその格好」

「ゃ、やだ、なんで大輔さんたちが此処に……!!?」

「いや、それは十六夜の戦果のことで来たんだけど……」

 

黒ウサギと話に聞いた白雪姫は水煙を腕で払う。

途端、黒ウサギと白雪姫は自分の身体を抱きしめるようにへたり込んだ。

 

「……着物?」

「えっと、ミニスカの着物?」

 

見通しが良くなった事で、後ろにいた飛鳥と耀も黒ウサギたちの姿を確認した。

 

「いいや、ワンサイズ小さいミニスカの着物にガーターソックスだな」

 

うむ、と白夜叉が自慢げに語る。

黒ウサギたちが着せられていたのは、身体のラインがハッキリと分かるよう小さめに着付けられた着物を、股下でバッサリと切り取った奇形の着物だった。加えて肩から胸まで大胆に開き、肌の露出を多くさせている。二人のように豊満な肉付きをした女性がこれほど布地の少ない衣装を着ていれば、いくら俺でも饒舌に表現してしまう。

はぁあ、と深いため息を吐いた飛鳥は、

 

「十六夜君と大輔君は見すぎよ!それと2人とも、とりあえず着替えなさい。そんな全身濡らした格好では、」

「何ッ!!黒ウサギが濡れ濡れだと!!?」

 

ズドォォォォン!!!

 

と、追撃の轟雷が白夜叉を貫いた。

 

「「「新しい施設?」」」

 

黒ウサギの着ていた服から急に真面目な話に戻った。

 

「うむ。十六夜の発案もあって、“階層支配者”の権限で大規模な水源施設の開拓を行おうというわけだ。十六夜には白雪の元に水源となるギフトを取りに行ってもらったのだが……よもや隷属させてくるとは思わなんだ」

 

ニヤニヤと白雪姫を見る白夜叉。

着物に着替えた白雪姫は、ムスッとした顔でそっぽを向いた。

 

「さあ、ゲームはクリアしたんだ。例のものを渡してもらおうじゃねえか」

 

十六夜は不遜な顔で、片手を出し報酬を要求した。

 

「ふふ、分かっておる。“ノーネーム”に託すのは前代未聞であろうが……それだけの功績を立てたのだ。他のコミュニティも文句はあるまい」

 

この2人のやり取りに飛鳥と耀に緊張が走る。

この報酬次第で収穫祭の参加が決まる。

白夜叉がパンパンと柏手を打つと座敷は光に包まれ、1枚の羊皮紙が現れる。

羽根ペンを虚空から取り出した白夜叉は文末にサインを書き込み、ジンに目をやる。

 

「それでは、ジン=ラッセル。これはおんしに預けるぞ」

「ぼ、僕ですか?」

「うむ。これはコミュニティのリーダーが管理するもの。おんしがその手で受け取るのだ」

 

ジンは促されるまま、白夜叉から羊皮紙を受け取り目を通す。

直後、ジンは硬直したまま動かなくなった。

 

「こ、これは……まさか……!!?」

「どうしましたジン坊っちゃん?」

 

ピョンと、ジンの後ろに回り込む黒ウサギ。

すると黒ウサギも、動かなくなった。

羊皮紙には次のようなことが書いてあった。

 

『― 2105380外門 利権証 ―

 

*階層支配者は本書類が外門利権証であることを保証します。

*外門利権証の発行に伴い、外門の外装をコミュニティの広報に使用する事を許可します。

*外門利権証の所有コミュニティに上記の“境界門(アストラルゲート)”の使用料の80%を納めます。

*外門利権証の所有コミュニティに上記の“境界門(アストラルゲート)”を無償で使用することを許可します。

*外門利権証は以後“      ”のコミュニティが地域支配者レギオンマスターで在ることを認めます。

 

“サウザンドアイズ”印』

 

「が……外門の利権証……!僕らが“地域支配者”!?」

 

外門証とはやられたな。

詳しくは知らないが、箱庭の外門に存在する様々な権益を得ると聞いている。

ジンと黒ウサギはこの上なく喜んでいる。

黒ウサギに至っては、ウッキャー♪と奇声を上げて十六夜に抱きついている。

……クタバレ十六夜。

 

「……やっぱり、私達の負けなのかしら?」

「……そうなるかな。ごめんね、飛鳥」

「いいのよ。耀さんこそいいの?」

「うん。だって仕方がないよ。黒ウサギもジンも……あんなに喜んでるんだから。大輔にも謝らないとね」

 

座敷の後ろの方で落胆している2人。

俺は何も言えず、喜んでいる黒ウサギ達を複雑な気持ちで見ていた。

 

「こんな状況で俺は無条件で行くのか……。今更、断ってもあの2人は聞かないだろうし……はぁ」

 

 

 

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