普通の学生が「手違い」で異世界から来るそうですよ?   作:蘇我入鹿

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第4話 白夜叉に会うそうですよ?

「な、なんであの短時間に“フォレス・ガロ”のリーダーにケンカを売る状況になったのですか!?」

「しかも、ゲームの日取りは明日!?」

「それも敵のテリトリー内で戦うなんて!」

「準備している時間もお金もありません!」

「一体どういう心算(つもり)があってのことです!」

「聞いているのですか3人とも」

「「ムシャクシャしてやった。今も反省はしていない」」

「本当に悪いと思っている。心から反省しています」

「黙らっしゃい!!それと、大輔さんは自分で提案して1番反省しているってどういうことですか!!!」

 

結局、俺もハリセンで叩かれた。

ギフトゲームを提案した時の俺は、最高に冷静だった。

飛鳥と耀、それにリーダーがいれば勝てると確信したからだ。

だから、ガルドに罰を与えるためには最善の方法だと思った。

しかし、リーダーや黒ウサギに指摘されて気付いた。

俺はギフトゲーム自体に関して何も知らない。

知らないということは、いくら冷静になったところで意味が無かった。

結果、圧倒的に不利なルールで戦う可能性が出てきた。

そして、もう何度めかのこの答えに行き着く。

俺には恩恵が無い。

かなりヤバいと。

 

「別にいいじゃねえか。見境なく選んでケンカを売ったわけじゃないんだから許してやれよ」

「い、十六夜さんは面白ければいいと思っているかもしれませんけど、このゲームで得られるものは自己満足だけなんですよ? この“契約書類(ギアスロール)”を見てください」

 

“契約書類”は“主催者権限(ホストマスター)”を持たない者達が“主催者”となってゲームを開催するために必要なギフトだ。

内容は、

・参加者が勝利した場合、主催者は参加者の言及する全ての罪を認め、箱庭の法の下で正しい裁きを受けた後、コミュニティを解散すること

・参加者が敗北した場合、罪を黙認すること

本当に自己満足しかない。

 

「はぁ……仕方がない人達です。まあいいでしょう。フォレス・ガロ程度なら十六夜さんが1人いれば楽勝でしょう」

 

黒ウサギから聞いた話によると、逆廻は世界の果てで水神を殴り飛ばしたとのことだった。

黒ウサギ曰く「人間とは思えないデタラメな強さ」とのこと。

このゲームを提案した俺としては、責任も感じているので是非参加して欲しいのだが。

 

「何言ってんだよ。俺は参加しねえよ?」

「当り前よ。貴方なんて参加させないわ」

 

と、参加しない、参加させないで話がまとまってしまった。

 

「だ、駄目ですよ!御二人はコミュニティの仲間なんですからちゃんと協力しないと」

「いいか?このケンカは、コイツらが売った(・・・)。そしてヤツが買った(・・・)。なのに俺が手を出すのは無粋だって言ってるんだよ」

「あら、分かっているじゃない」

 

黒ウサギが早々と落胆して諦めたが、当事者である俺は責任があるし、自分の命が危ない可能性もあるので、飛鳥に再び逆廻を参加させようと出来る限りの説得をしつつ提案したが、ただ睨まれて断られた。

そして、明日のギフトゲームのために、

 

「“サウザンドアイズ”?」

 

サウザンドアイズは特殊な瞳のギフトを持つ者達の群体コミュニティで、自分のギフトの正しい力を知るために鑑定してもらおうということになった。

正直、俺は不安もあったが僅かな期待もしていた。

俺には自分の恩恵に心当たりがない。

しかし、もしかしたら、俺が知らない、認識していないだけでギフトがあるかもしれない。

ガルドとのやりとり、黒ウサギの話から、逆廻、飛鳥、耀の3人はとんでもないギフトがあることが分かった。

ならば、一緒に召喚された俺だけがギフトが無いなんてそんなことはない、あるはずがない、と思いたい。

だって、同時に召喚されたんだから。

現に、俺はここまで何もしてないし、見せてないが、別に黒ウサギにも、飛鳥にも、耀にも、リーダーにもギフトが無いとは疑われてはいないはずだ。

逆廻だけは、疑うよりも好奇心からかしつこく聞いてくるが。

逆に、黒ウサギにはどうやら若干のヘタレながらも自分のギフトを簡単に人前で見せない思慮深い人みたいな感じているみたいだし。

だから、俺は本の少しだけギフトがあると信じている。

たとえ、それがどんなギフトでも。

そうでなければ、俺が呼ばれたのはただの間違いになる。

そうこう考えたりしていると(他は立体交差並行世界論?とかいうちんぷんかんぷんな話をしていたみたいだが)店に着いた。

すると割烹着の女性店員と黒ウサギが何やら口論を始めた。

どうやら入れてもらえないようだが、

 

「“名無し”はお断りです」

 

はっきりと分かりやすく門前払いをくらっていた。

なるほど、ノーネームというのはこういう対応がされるのか。

名前が無いというのはこういうハンデがあるのか。

すると、店内から着物風の服を着た真っ白い髪の少女が爆走してきた。

 

「いぃぃぃやほおぉぉぉぉぉぉ!久しぶりだ黒ウサギイィィィィ!」

 

爆走少女は黒ウサギに体当たりして共にクルクル回りながら、浅い水路に落ち、黒ウサギがその少女をひっぺはがして逆廻の方に投げ飛ばし、逆廻が足で受け止めた。

さらに飛鳥にも堂々とセクハラ発言をしてドン引きさせていた……無茶苦茶だな、この世界は。

何はともあれ、この少女がサウザンドアイズの幹部の白夜叉ということだ。

とにかく、残念な奴だった。

 

「そこのもう1人の小僧、今、バカにしたろう」

 

白夜叉の和風な私室に案内されて、

箱庭の外門とかいうものを超巨大バームクーヘンに例えながら説明され、白夜叉が東側の最強の“階層支配者(・・・・・)”だと自慢され、

 

「……ではつまり、貴方のゲームをクリアできれば私たちが東側で最強ということになるのかしら?」

「そりゃ景気のいい話だ。探す手間が省けた」

 

なぜ、誰彼構わずコイツらはケンカを売るんだ? 

ガルドの時も俺がケンカを売ったとはいえ、何もしなくても結局ケンカにはなっていたはずだし、逆廻の方も水神にケンカを売ったらしいし、バカじゃないのか。

ケンカしたって何にもならないのに。

黒ウサギは止めるが白夜叉がケンカを受けた。

ちなみに「おんしはどうする?」と聞かれたので、丁重にお断りした。

 

「おんしらが望むのは、“挑戦”か――もしくは、“決闘”か」

 

一瞬で爆発的な変化が起きた。

様々な情景が頭の中で回転する。

記憶に無い場所が何度も流れて、白い雪原と凍る湖畔――そして、水平に太陽が廻る世界だった(・・・・・・・・・・・・・)

 

「……なっ………!?」

 

箱庭に来た時とは違う、なんて言えばいいか分からない感覚だった。

 

「今一度名乗り直し、問おうかの。私は“白き夜の魔王”――太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への“挑戦”か?それとも対等な“決闘”か?」

 

魔王・白夜叉。

少女の笑みとは思えぬ圧倒的な凄味に、息を呑む。

 

「“挑戦”であるならば、手慰み程度に遊んでやる。――だが、しかし“決闘”を望むなら話は別。魔王として、命と誇りの限り闘おうではないか」

 

よりいっそうな凄味で白夜叉は返答を待つ。

さっきまで、逆廻は白夜叉ののことをぶつぶつと、解説していたが流石に返事を躊躇っている。

俺もと飛鳥と耀は、ただ茫然としている。

怖さで言えば、ガルドなんて比べるのも烏滸がましい。

しばらくの静寂の後、諦めたように笑う逆廻が、

 

「参った。やられたよ。降参だ、白夜叉」

「ふむ?それは決闘ではなく、試練を受けるという事かの?」

「ああ。これだけのゲーム盤が用意できるんだからな。アンタには資格がある。――い

 

いぜ。今回は黙って試されてやるよ(・・・・・・・)、魔王様」

「……ええ。私も、試されてあげていいわ」

「右に同じ」

 

ここで決闘を受ける奴は、勇者ではなくただのバカだ。

力の差なんてとても口で説明できない程あるだろう。

それでも、負け惜しみとはいえあそこまで言える逆廻は凄いと思った。

 

「おんしはどうする?」

「ん?俺?」

 

威厳に満ちた目で、まっすぐに確実に俺を見ている。

さっき、断ったのに、なんでまた?

俺は再び丁重にお断りした。

 

「――そうか」

 

より威圧して俺を見ていた。

えっ、なんか最強に目をつけられたのか。

胡麻でも摺ろうかな。

しばしの黒ウサギの説教があり挑戦が決まった。

というか、これでこれだけの力を見せながら元・魔王らしい……考えるのを止めた。

 

『ギフトゲーム名 “鷲獅子の手綱”

・プレイヤー一覧

 逆廻十六夜

 久遠飛鳥

春日部耀

 楠木大輔

・クリア条件 グリフォンの背に跨がり、湖畔を舞う。

・クリア方法 力・知恵・勇気の何れかでグリフォンに認められる。

 

・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。 “サウザンドアイズ”印』

 

「私がやる」

 

結局、俺も入ってるし。

まあそれはいいとして。

やるき満々に自分でやるということで、逆廻と飛鳥、一応俺も耀に譲った。

耀は命を懸けてゲームを行い見事にクリアした。

クリア後に空を飛んでいる?耀のギフトを逆廻が解説してくれた。

あと、分かったのはそれはペンダントにしていた木彫り細工の御蔭らしい。

耀のギフト強すぎだろ。

詳しくは分からないが、友達にさえなればその生き物の特有のギフトが貰えるらしい。

単純に、ファンタジーの王道、ドラゴンと友達になればドラゴンの力が使えるということになる。

男のロマンじゃないか。

それと逆廻の頭はどうなってんだ。

頭良すぎだろ。

学があるだけならば、そんなに驚かないけど、何だよって言いたいくらいの知識量。

それで水神を殴り飛ばすギフト。

無茶苦茶じゃないか。

まあ、飛鳥はガルドとのやりとりで分かってるし、

3人まとめて全員チートじゃねえか。

これって、クリアできないギフトゲームなんてあるの?

一方、黒ウサギは当初の目的であるギフト鑑定を白夜叉に依頼する。

かなり困ったように俺達の顔を見ている。

 

「う~ん。……おんしらは自分のギフトの力をどの程度に把握している?」

「企業秘密」

「右に同じ」

「以下同文」

「以下同上」

「うおおおおい?いやまあ、仮にも対戦相手だったものにギフトを教えるのが怖いのは分かるが、それじゃ話が進まんだろうに」

 

おっと、ボケたのに誰もツッコんでくれない。

 

「ふむ。何にせよ“主催者”として、星霊のはしくれとして、試練をクリアしたおんしらには“恩恵ギフト”を与えねばならん。ちょいと贅沢な代物だがコミュニティ復興の前祝としてはギフトカードをやろう」

 

「ギフトカード!」

 

黒ウサギが驚いて、叫んだ。

 

「お中元?」

「お歳暮?」

「お年玉?」

「ライフを回復?」

 

「ち、違います!というかなんで皆さんはそんなに息が合ってるのです!?それと、大輔さんはこっち側ではないのですか!?……ギフトカードとは顕現しているギフトを収納でき――」

 

黒ウサギの説教を白夜叉が遮り、

 

「ええい、黙っとれい黒ウサギ。……では」

 

白夜叉がパンパンと柏手を打つと、俺達の目の前に光り輝く4枚のカードが現れた。

カードにはそれぞれの名前と、体に宿るギフトを表すネームが記されていた。

 

・コバルトブルーのカード

 逆廻 十六夜

 

ギフトネーム

“正体不明”

 

・ワインレッドのカード

 久遠 飛鳥

 

ギフトネーム

“威光”

 

・パールエメラルドのカード

春日部 耀

 

 ギフトネーム

“生命の目録”

“ノーフォーマー”

 

「そのギフトカードはですね、ギフトを収納できる超高価な――」

「つまり素敵アイテムことでオッケーか?」

「あーもうそうです、超素敵アイテムなんです!」

「そのギフトカードは、正式名を“ラプラスの紙片”、即ち全知の一端だ。そこに刻まれるギフトネームとはおんしらの魂と繋がった“恩恵”の名称。鑑定は出来ずともそれを見れば大体のギフトが分かるというもの」

「へえ?じゃあ俺のはレアケースなわけだ?」

「ん?……いや、そんなバカな」

「“正体不明”だと……?いいや有り得ん、全知である“ラプラスの紙片”がエラー起こすはずなど……。他のおんしらは何と出ておる?」

「私は“威光”よ。漢字の意味からしたら正しく出ていると思うわ」

「……私のは“生命の目録”と、よく分からないけど“ノーフォーマー”って出てる」

「…………」

「大輔さんのはなんと、出ているのでしょうか?」

「……俺のは………………たぶん、正しくは出ているとは思う」

 

全員が、俺のギフトカードを覗き込む。

 

・アッシュグレイのカード

 楠木 大輔

 

ギフトネーム

 

やっぱりか。

やっぱり無いか。

やっぱり手違いか。

 

「え?どういうことでございますか?」」

「何も書いてないじゃない」

「……これもエラー?」

「いや、そんなことはありえん。たとえ、エラーでも生意気な小僧のように何かしら(・・・・)出るはずだがの」

「ヤハハ、答えはもっと単純だろ?楠木にはギフトがない。そんなところだろ」

「…………」

「ちょ、ちょっとお待ちを。そのようなことは有り得ないのですよ。主催者からは『人類最高クラスのギフト所持者』だとお墨付きをもらったのですよ!?」

「楠木以外の俺達3人はちゃんとギフトを持っている。つまり、主催者の言う『人類最高』がどの程度を指しているかは別として、嘘は言ってないだろ」

「しかし、大輔さんが、」

「まあ、待て黒ウサギ。俺達4人は同じタイミングで落下した、これは間違いない。だが、イコール同一の主催者が召喚したとは限らないだろ」

「?」

「ようは、楠木だけが違う主催者によって同じタイミングで召喚された」

「まさか!?そんなことが」

「方法はさすがに分からねえが。お前なら知ってんじゃねえのか、白夜叉?」

「…………」

「さっきから黙ってるが、何か心当たりでもあんだろ?

「そうなのですか、白夜叉様?」

「……楠木と言ったな、おんしはどうやって“箱庭”に来たか分かるか?」

「……ああ。手紙を読んで、気付いたら空にいた」

「もっと詳しく、手紙の特徴(・・・・・)その周辺(・・・・)のことは分からんか」

「えっーと……部屋に入ると、机の上に手紙があって、それで……!」

「それで、何かあったか」

「…………そうだ、紙があった。手紙の下に紙が1枚」

「して、紙の色は何色だった(・・・・・・・・・)?」

「紙の色?確か……真っ黒だった」

「……そうか。……楠木よ、心して聞け。おんしを箱庭に召喚したのは――“魔王”だ」

 




毎週か隔週の金曜日に投稿する予定です。
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