普通の学生が「手違い」で異世界から来るそうですよ?   作:蘇我入鹿

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第8話 直談判するそうですよ?

――サウザンドアイズ東側支店・離れの家屋。

 

「うわお、ウサギじゃん!うわー実物初めて見た!噂には聞いていたけど、本当に東側にウサギがいるなんて思わなかった!つーかミニスカにガーターって随分エロいな!ねー君、うちのコミュニティに来いよ。三食首輪月付きで毎晩可愛がるぜ?」

 

中にいた男は黒ウサギの全身を舐めまわすように視姦してはしゃいでいた。

黒ウサギは脚を両手で隠し困惑している。

 

「分かりやすい外道ね。先に断わっておくけど、この美脚は私達のものよ」

「そうですそうです!黒ウサギの脚は、って違いますよ飛鳥さん!」

「そうだぜお嬢様。この美脚は既に俺のもんだ」

「そうですそうですこの脚はもう黙っらしゃい!!」

「よかろう、ならば言い値で買おう」

「売・り・ま・せ・ん!あーもう、真面目にしてください!!!」

「そうだぞ、お前達。真面目な話、黒ウサギの美脚はコミュニティみんなのものだ」

「もう!大輔さんまで!!!!黒ウサギも本気で怒りますよ!」

「馬鹿だな。怒らせてんだよ」

 

スパァーン!×4

 

やっぱり、いつぞやの前言は撤回だな。

黒ウサギを弄らずにフォローするなんて出来るはずがない!

だって、楽しいんだもん。

フォロー2割の弄り8割。

 

「あっはははははははは!え、何?“ノーネーム”って芸人のコミュニティなの。もしそうならまとめて“ペルセウス”に来いってマジで。道楽には好きなだけ金をかけるのが性分だからね。勿論、黒ウサギさんの美脚は僕のベッドで毎夜毎晩好きなだけ開かせてもらうけど」

「お断りでございます。黒ウサギは礼節も知らぬ殿方に肌を見せるつもりはありません」

 

黒ウサギはプイッとそっぽを向く。

 

「へえ?俺はてっきり見せる為に着てるのかと思ったが?」

「ち、違いますよ!これは白夜叉様が開催するゲームの審判ををさせてもらう時、この格好を常備すれば賃金を三割増しすると言われて嫌々……」

「おい、白夜叉」

「なんだ小僧」

「超グッジョブ」

 

ビシッ!

と親指を立てて語り合う2人。

俺も小さく見えないように親指を立てる。

代弁ありがとう十六夜。

ナイス白夜叉。

 

「へえ、大輔君もそういう風(・・・・・)に見てたのね」

「飛鳥、さん?」

 

見られてたああああああ!

飛鳥が俺達を冷ややかな目で見て、少し距離をお取りになられた。

異世界でも女の子に嫌われるとつらい。

男の真理だな。

 

「白夜叉、本題に入ろう、ぜ?」

「――“ペルセウス”が私達に対する無礼を振るったのは以上です。この屈辱は両コミュニティの決闘をもって決着をつけるべきかと思います」

 

謝罪ではなく直接的に罰を与えたい。

黒ウサギの提案に俺達も賛成だった。

 

「“サウザンドアイズ”にはその仲介をお願いしたくて参りました。もし、“ペルセウス”が拒むようであれば“主催者権限”の名の下に」

「いやだ」

「……はい?」

「いやだ。決闘なんて冗談じゃない。それにあの吸血鬼が暴れ回ったって証拠があるの?」

「それなら彼女の石化を解いてもらえば」

「駄目だね。アイツは1度逃げ出したんだ。出荷するまで石化は解かない。それに口裏を合わせないとも限らないじゃないか。そうだろ?元お仲間さん?」

 

一応の筋が通ってるだけに、コイツの嫌味な笑いが癇に障る。

 

「そもそも、あの吸血鬼が逃げ出した原因はお前達だろ?実は盗んだんじゃないの?」

「な、何を言い出すのですかッ!そんな証拠が一体何処に」

「事実、あの吸血鬼はあんたのところに居たじゃないか」

 

ぐっと黙り込んだ黒ウサギ。

悔しいが正論なので言い返せない。

 

「まあ、どうしても決闘をしたいのならちゃんと調査しないとね。……もっとも、調べられて1番困るのは全く別の人だろうけど」

「そ、それは……!」

 

視線が白夜叉に移る。

みんな口には出さない。

レティシアが商品として扱われていた。

商業コミュニティが商品に逃げられるような杜撰な管理をするわけがない。

そこから逃げ出したとなれば答えは1つ。

誰か(・・)が手引きをした。

これ以上迷惑をかけたくない黒ウサギの気持ちも分かるし。

 

「じゃ、さっさと帰ってあの吸血鬼を外に売り払うか。愛想のない女って嫌いなんだよね、僕。特にアイツは体も殆んどガキだしねえ――だけどほら、あれも見た目は可愛いから。その手の愛好家には堪らないだろ?気の強い女を裸体のまま鎖で繋いで組み伏せ啼かす、ってのが好きな奴もいるし?太陽の光っていう天然の牢獄の下、永遠に玩具にされる美女ってのもエロくない?」

 

分かりやすい挑発。

に、飛鳥が乗ろうとするのを止める俺。

で、黒ウサギは十六夜が止め……ず、

 

「あ、貴方という人は……!」

 

怒りで震える黒ウサギが今にもキレそうだ。

ここで手を出したら、

 

「しっかし可哀想な奴だよねーアイツも。恥知らずな元お仲間さんの所為でギフトまでも魔王に譲り渡す事になっちゃったんだもの」

「……なんですって?」

 

やっと落ち着かせた飛鳥が声を上げる。

レティシアの状態を知らなかったから当然ではあるが。

 

「報われない奴だよ。“恩恵”はこの世界で生きていくのに必要不可欠な生命線。魂の一部だ。それを馬鹿で無能な元仲間の無茶を止めるために捨てて、他人の所有物っていう屈辱を受けてまで駆けつけたってのに、その元仲間はあっさり自分を見捨てやがる!目を覚ましたこの女は一体どんな気分になるだろうね?」

「……え、な」

 

顔面蒼白になる黒ウサギ。

黒ウサギは、いや、俺達は絶句する。

レティシアのキフトネームが暴落していた理由……。

クソッ。

無粋なことを聞いちまった。

ルイオスは笑いながら黒ウサギにスッと右手を出す。

 

「ねえ、黒ウサギさん。取引をしよう。吸血鬼を“ノーネーム”に戻してやる。代わりに、僕は君が欲しい。君は生涯、僕に隷属するんだ」

「なっ、」

「一種の一目惚れって奴?それに“箱庭の貴族”という箔も惜しいし」

 

再度絶句する黒ウサギ。

ワードワードだけを取ればプロポーズにも聞こえる。

それはそれで許さないが。

と、目を離した隙に、

 

「外道とは思っていたけど、此処までとは思わなかったわ!黒ウサギ!こんな奴の話を聞く義理は無いわ!」

 

とうとう我慢出来ず飛鳥が怒鳴った。

 

「ま、待ってください飛鳥さん!」

 

まさか……黒ウサギ。

 

「ほらほら、君は“月の兔”だろ?仲間の為、煉獄の炎に焼かれるのが本望だろ?君達にとって自己犠牲はって奴は本能だもんなあ?」

「……」

「ねえ、どうしたの?ウサギは義理とか人情とかそういうのが好きなんだろ?安っぽい命を安っぽい自己犠牲ヨロシクで帝釈天に売り込んだんだろ!?箱庭に招かれた理由が献身なら、種の本能に従って安い喧嘩を安く買っちまうのが筋だよな!?ホラどうなんだよ黒ウサ

黙りなさい(・・・・・)!」

「っ……!?…………!!?」

 

この流れはまずい。

 

「貴方は不快だわ。そのまま地に頭を伏せてなさい(・・・・・・・・・・)!」

「おい、女。そんなのがつうじるのは――格下だけだ、馬鹿が!!」

 

激怒したルイオスがギフトカードから変な鎌を取り出して飛鳥目掛けて振り下ろす。

 

「女の子にそんな危ない物を向けるなよな、お坊ちゃん」

「な、なんだお前……!何で腕が斬れていない(・・・・・・)!?これには“星霊殺し”の恩恵があるんだぞ!!」

 

ルイオスだけでなく白夜叉も驚いていた。

とっさに腕を出して庇ったわけだが、その鎌ってそんなに凄いギフトだったの?

 

「ええい、やめんか戯け共!話し合いで解決できぬなら門前に放り出すぞ!」

「……。ちっ。けどその女が先に手を出したんだけどね?」

「ええ、分かってます。これで今日の1件は互いに不問という事にしましょう。……後、先ほどの話ですが……少しだけお時間をください」

「ま、待ちなさい黒ウサギ!貴方、この男の物になってもいいというの!?」

「……仲間に相談する為にも、どうかお時間を」

「黒ウサギ、お前……」

 

飛鳥から顔を背ける黒ウサギ。

黒ウサギがいなくなればレティシアが帰ってくる。

レティシアを諦めれば黒ウサギは残る。

それを知ったレティシアは何かしらの犠牲を払ってでも黒ウサギを取り戻すだろう。

そして、黒ウサギもまた……。

2人は会うことも出来ずに繰り返す。

そんな結末にしてたまるか!

どうにかして、決闘に持ち込まなければ……。

 

「オッケーオッケー。こっちの取引ギリギリ日程……1週間だけ待ってあげる」

 

クソッ!

何も思い浮かばない。

 

「ところで、“ペルセウス”のリーダーってお前か?」

 

長いこと黙っていた十六夜が口を開けた。

こうなったら十六夜(もんだいじ)頼みだ。

いつもみたいに、喧嘩を売ってくれ。

 

「あぁ?そうだけど、今さら何聞いてんの?」

 

ほら、何か言ってやれ、十六夜。

 

「はあ」

「――ちょっと待てよ。今のため息ははなに?」

「名前負けしすぎ。期待した俺が馬鹿だった。……そういう意味さ」

「はっ。今なら安い喧嘩でも安く買うぜ?」

 

そうだ買え、十六夜。

そのためにわざわざ挑発……を?

再度、ため息をついた?

本当に興味がなかっただけ?

え?

ルイオスは帰った。

 

「十六夜、どうするんだ?このままってわけには」

「まあ、考えはある。だが今はあっち(・・・)だろ?」

 

現在進行形で黒ウサギと飛鳥がヒートアップしていた。

 

「どういうつもりなの黒ウサギ!」

「……」

「私達を呼びだした貴方がコミュニティを離れるのは、責任の放棄に他ならないわ!」

「……そんな、つもりは」

「いいえ、嘘よ!貴方は仲間の為に自分を売り払っても構わないって思っている!だけどそんな無駄なこと、私達が絶対に許さないわ!」

「む、無駄って……仲間とは何物にも勝る、コミュニティの宝でございます。ましてや魂を削ってまでコミュニティの窮地に駆け付けたレティシア様を見捨てては、我々の義が立ちません!」

「だけどそれは貴方が身代わりになる事じゃない!そんなの無意味だわ!」

「仲間の為の犠牲が無意味なはずがない!」

 

ああもう、

 

「うるせえ!!」

「「えっ!?」」

「俺はまだ白夜叉に用があるからお前らは帰れ!十六夜、あとは任せた」

「……はあ。今回だけだからな。お嬢様、駄ウサギ帰るぞ」

「ちょっと、お待ちを!!」

「い、十六夜君!?」

 

十六夜は2人を無理矢理引きずって帰って行った。

白夜叉の自室にて、

 

「何か分かったのか?」

「“箱庭”の上層に掛け合って分かったのは、おんしは間違って召喚されたのではなく、正当な方法で正しく楠木大輔が召喚されたということだけじゃ」

「そうか」

 

間違いじゃない、か。

 

「それより、おんし、さっきのはどういうことだ?」

 

ガスパーとのゲームでのこと、ゴーゴンの光を浴びたこと、コケて血が出たことなどを説明した。

 

「ゲーム中にコケるとは」

 

と、憐れみの目で見られたりした。

 

「ふむ、やはり原因は“魔王の契約書類”であろうの。その効力で攻撃から守られ……おんし、さっき黒ウサギから叩かれていたの?」

「ん?ああ。そういえば……痛かったな」

「ということはおそらく……おんしに向けられた敵意がある攻撃全ては“契約書類”によって守られる。だが、敵意が無い、もしくはおんしが敵と認識いない者の攻撃からは守られない。うーん、かなりデタラメの効力だの」

 

黒ウサギのツッコミは愛情がこもっていると。白夜叉談。

否定はしない。

 

「それで守りはいいが、俺には攻撃の手段が無い。だから、すぐにでも受けられるギフトゲームはないか?」

 

おそらく、攻撃で死ぬことはない。

だが、敵を倒す手段が無い以上勝つことも出来ない。

足手まといにはならないかもしれないが、ギフトゲームに参加している意味もない。

 

「おんしには悪いが、無害ではあると分かっていてもここまで異例だと“主催者”にも教えねばならん。それでも参加出来るゲームとなると必然的に難易度が上がる。それに、さっきの説明で小僧の鎌を知らなかったことから鑑みると……おんしの知識でクリア出来るゲームはほぼ無い」

 

確かに神話などの話はほとんど知らない。

ペルセウスも名前くらいしか知らない。

ゴーゴンも石化する目があるってことしか知らない。

やっぱり生きにくい世界だ。

 

「すまんな。何も力になれんで。今は仮に“契約の力”とでも名付けるが、まずはそれを深く知ることが重要だ」

「そうか……そうか」

 

俺は帰ろうと立ち上がる。

 

「本当にすまない。その、なんだ、相談ならばいつでものるぞ」

 

俺は白夜叉に顔を合わせずに、

 

「じゃあ、白夜叉。さっき、俺の召喚は間違いじゃないと言ったが、俺からしたら手違い(・・・)であって欲しかった」

「……」

 

おそらく、困惑しているだろう白夜叉に礼を述べて帰路に着いた。

 

 

――翌日。

楠木大輔の朝は早い。

朝、風呂に入ろうと浴室に行くと飛鳥と遭遇し引っ叩かれる。

昼過ぎ、耀に会おうと部屋に行き、部屋に入ると包帯の巻き替え中で物を投げつけられる。

夕方、黒ウサギを励まそうと部屋に行き、ちゃんとノックして黒ウサギがドアを開けようとしたので避けようとしたらバランスを崩して胸を触りぶっ叩かれる。

昨夜のことで神様が慰めようとしてくれたのか。

完全にいらん世話なんだが。

 

――翌々日。

現在の状態ではギフトゲームの役に立たない俺は、ノーネームの子供達と一緒に掃除に励む。

この無駄に広い本拠の掃除は骨が折れる。

そして、3人には謝るタイミングを逃してしまった。

 

『大輔さんはゲームには参加しないの?』

『大輔さんはギフトがないらしいよ』

『可愛そうな人なの?』

『それに変態だよ』

 

「おーいチビ共、聞こえてるぞ。俺は変態じゃないし、ゲームには一応参加するぞ」

 

『でも、ギフト無いんじゃないの?』

『そんな。危ないよ』

『仲が悪いの?』

『触ったらしいよ』

 

「よし、1つ良いことを教えてやる。“能ある鷹は爪を隠す”。俺が本気を出すとゲームにならないからな(・・・・・・・)。だから、アイツらの成長のために今はゲームへの参加を控えてるだけだ」

 

『へえ、そうなんだ』

『格好いい』

『じゃあ、黒ウサギのお姉ちゃんより強いの』

『でも、変態なんでしょ?』

 

「ああ、当然だ。黒ウサギにだって十六夜にだって、俺は負けはしない(・・・・・・)ぜ」

 

『『わあ、凄い!』』

『『女の敵だって』』

 

こうして、俺の朝は始まる。

嘘はついてないからな。

決して変態じゃないからな。

それに、天に誓って見てはないし。

あれから、5日。

俺は子供達と掃除をしたり、料理を作ったり、クッキーを作ったり、勉強していた。

黒ウサギと飛鳥はギスギスしている。

耀はそんな2人をどうすればいいのか分からずあたふたしている。

俺はその3人とろくに会話もしてない。

というか、避けられている。

ジンは部屋にこもって勉強中。

十六夜は4日前から本拠に帰ってきていない。

こんなバラバラな状態である。

どうするか……。

 

ドガァン!

 

この音は!

アイツしかいない!

案の定、十六夜がドアを蹴り破っていた。

テーブルの上には大きな球が2つ。

 

「ん?それ何だ?スイカか?」

「そのくだりは終わった」

 

何でも戦利品だそうだ。

 

「逆転のカードを持ってきたぜ。これでオマエが“ペルセウス”に行く必要はない。後はオマエ次第だ、黒ウサギ」

「ありがとう……ございます。これで胸を張って“ペルセウス”に戦いを挑めます」

「とりあえずは、これで元通りだな」

「「「大輔(君/さん)は言う事があるでしょう」」」

「ごめんなさい」

 

本当に元に戻った。

 

 

――ペルセウス本拠

 

「名無し風情が、海魔(クラーケン)とグライアイを倒したのか!?ハッ……まあいいさ。2度と逆らう気が無くなるぐらい徹底的に……徹底的に潰してやる」

「我々のコミュニティを踏みにじった数々の無礼。最早言葉は不要でしょう。“ノーネーム”と“ペルセウス”。ギフトゲームにて決着をつけさせていただきます」

 

 

 

 

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