普通の学生が「手違い」で異世界から来るそうですよ?   作:蘇我入鹿

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第9話 星の彼方に誓うそうですよ?

『ギフトゲーム“FAIRYTALE in PERSEUS”

 

・プレイヤー

 逆廻 十六夜

 久遠 飛鳥

 春日部 耀

 楠木 大輔

 

・ノーネーム ゲームマスター

 ジン=ラッセル

・ペルセウス ゲームマスター

 ルイオス=ペルセウス

 

・クリア条件

 ホスト側のゲームマスターを打倒

・敗北条件

 プレイヤー側のゲームマスターによる降伏

 プレイヤー側のゲームマスターの失格

 プレイヤー側が上記の勝利条件を満たせなくなった場合

 

・舞台詳細・ルール

 ホスト側のゲームマスターは本拠・白亜の宮殿の最奥から出てはならない。

 ホスト側の参加者は最奥に入ってはいけない。

 プレイヤー達はホスト側の(ゲームマスターを除く)人間に姿を見られてはいけない。

 姿を見られたプレイヤー達は失格となり、ゲームマスターへの挑戦資格を失う。

 失格となったプレイヤーは挑戦資格を失うだけでゲームを続行する事はできる。

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、“ノーネーム”はギフトゲームに参加します。 “ペルセウス”印』

 

「姿を見られれば失格、か。つまりペルセウスを暗殺しろってことか?」

「それならルイオスも伝説に倣って睡眠中だという事になりますよ。流石にそこまで甘くは無いと思いますが」

「YES。そのルイオスは最奥で待ち構えているはずデス。それにまずは宮殿の攻略が先でございます。伝説のペルセウスと違い、我々はハデスのギフトを持っておりません。不可視のギフトを持たない我々達には綿密な作戦が必要です」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。まだ“契約書類”を読んでないし理解してないから」

「ヤハハ。黒ウサギでも理解してるんだ。ウサギ以下なんて恥ずかしすぎるぜ」

「い、十六夜さん!?黒ウサギを舐めすぎでございますよ!飛鳥さんと耀さんもそう思いますよね」

「えっ……ええそうね。この程度ウサギでなくとも理解できるわ。ねえ、耀さん」

「うん。簡単簡単」

 

コイツら……。

 

「黒ウサギ、ハリセンを貸してくれ」

「えっ?はい。どうぞ――痛!痛いです!何をするのでございますか!?」

 

うるせえ!駄ウサギ!

 

「――役割を3つに分けよう」

 

・ジンと一緒にゲームマスターを倒す役割

・索敵、見えない敵を感知して撃退する役割

・失格覚悟で囮と露払いをする役割

 

「春日部は鼻が利く。耳も眼もいい。不可視の敵は任せるぜ」

「うん。任して」

「黒ウサギは審判としてしかゲームに参加することができません。ですから、ゲームマスターを倒す役割は十六夜さんにお願いします」

「あら、じゃあ私は囮と露払い役なのかしら?」

 

かなり不満そうにしている飛鳥。

確かに飛鳥のギフトがルイオス本人に効かなかった以上仕方がないことだ。

 

「悪いなお嬢様。俺も譲ってやりたいのは山々だけど、勝負は勝たなきゃ意味がない。あの野郎の相手はどう考えても俺が適してる」

「……ふん。いいわ。今回は譲ってあげる。ただし負けたら承知しないから」

「で、俺は何をすればいい?」

「「「何も」」」

「は?」

「は、じゃねえよ」

「逆に何が出来るの?」

「ううん。何も出来ない」

「「「大人しくしてろ」」」

 

勝手にまとめるなよ。

打ち合わせでもしたのかお前ら。

 

「俺にだって出来ることはあるだろ」

「お前の事は白夜叉からだいたい(・・・・)のことは聞いた。お前が黒ウサギ達に話してないから親切にも俺が話しておいた。感謝しろよ」

 

勝手に話すなよ!

まあ、気まずくて話せなかった俺も悪いが。

確かに俺じゃ囮にもならないし露払いも出来ない。

見えない敵の索敵も出来ない。

ルイオスにも勝てない。

ルイオスに辿り着くまでのジンのボディーガードも十六夜の方が適任だ。

それでも何かしらあるはずだ。

 

「それを踏まえて、今回の作戦でお前が出来ることはない」

「分かってはいるけど、何か」

「勘違いするな。今回の作戦(・・・・・)でって話だ。作戦外ならある」

「一体何なんだ、十六夜?」

「それはな……――」

「話を戻しますが、必ず勝てるとは限りません。非常に厳しい戦いになると思います」

 

半分耳を疑いながら黒ウサギに注目が集まる。

 

「……あの外道、それほどまでに強いの?」

「いえ、ルイオスさんご自身の力はさほど。問題は彼が所持しているギフトなのです。もし、黒ウサギの推測が外れていなければ、彼のギフトは――」

「隷属させた元・魔王様」

「そう、元・魔王の……え?」

「もしペルセウスの神話通りなら、ゴーゴンの生首がこの世界にあるはずがない。あれは戦神に献上されているはずだからな。それにも関わらず、奴らは石化のギフトを使っている。――星座として招かれたのが、箱庭の“ペルセウス”。ならさしずめ、奴の首にぶら下がっているのは、アルゴルの悪魔ってところか?」

「「「アルゴルの悪魔?」」」

 

十六夜の説明に俺達は首を傾げる。

 

「十六夜さん……まさか、箱庭の星々の秘密に……?」

「まあな。この前星を見上げた時に推測して、ルイオスを見た時にほぼ確信した。あとは、手が空いた時に調べて答えを固めたってところだ」

「もしかして十六夜さんってば、意外に知能派でございます?」

「おいおい黒ウサギ。何をいまさら」

 

つくづく思う。

問題児(こんなん)とタメなんて。

 

――宮殿正面の入り口

 

「そうだぜ、黒ウサギ。俺はドアノブを回さずに開けられるからな」

「………………参考までに、方法をお聞きしても?」

 

十六夜はそれに応えるかのようにヤハハと笑い、

 

「そんなもん――こうやって開けるに決まってんだろ(・・・・・・・・・・・・・・・)ッ!」

 

轟音と共に白亜の宮殿の門を蹴り破った。

白亜の宮殿は五階建ての作りとなっている。

最奥が宮殿の最上階にあたり、進むには絶対に階段を通らねばならない。

敵が配置されているのは間違いない。

十六夜の門を蹴破った音で遠くから敵の号令や足音が聞こえる。

正面の階段前広間は、囮役の飛鳥の奮戦で大混戦となっている。水樹のギフトを使って。

飛鳥は見られた時点でゲームマスターへの挑戦権を失っている。

そのこともあってか、飛鳥は真紅のドレスを靡かせ八つ当たり気味に白亜の宮殿の破壊に勤しんでいた。

一方、十六夜、耀、ジンと俺の4人はその隙に息を殺して奥へと進んでいた。

 

「人が来る。皆は隠れて」

 

耀は緊張した声で指示する。

耀の高性能な五感は不可視のギフトでも感知出来る。

さらに、感知して見えない敵に奇襲を仕掛ける。

 

「な、なんだ!?」

 

敵の驚愕の声が上がる。

すると虚空から兜が現れ気絶した敵も現れた。

 

「この兜が不可視のギフトで間違いなさそう」

「ホレ、御チビ。お前が被っとけ」

 

十六夜が兜を拾い上げてジンに被せた。

ジンの姿がは一瞬で姿を隠す。

ルール上ジンが見つかったら即敗北になる。

記憶が確かなら。

耀がジンのいたところを見ながら、

 

「やっぱり不可視のギフトがゲーム攻略の鍵になってる。どんなに気を付けたところで姿を見られる可能性は排除できないもの。最奥に続く階段に護衛をつけなければ、どうやってもクリア出来ない」

「連中が不可視のギフトを使っているのを限定しているのは、安易に奪われないためだろう。……なら最低でもあと1つ、贅沢言えば2つ、万が一を考えたら3つは欲しいところだが……」

 

確実に最奥に進むためには2つ必要だ。

もう1つあればルイオスとの戦いを優位に進められる。

 

「けど、高望みはしないで堅実にいったほうがいいんじゃないか?」

「まあ確かにお前の言う通り、欲をかいて失格になっちまったら元も子もねえしな……。よし!御チビ、作戦変更だ。俺と春日部で透明になってる奴を叩いてもう1つ奪う。ギフトを渡せ」

「は、はい」

 

何もないところからジンが現れて十六夜に兜を渡し、

 

「本命はルイオスだ。春日部には悪いが」

「気にしなくていい」

「いいとこ取りみたいで悪いな。これでもお嬢様や春日部にはソレなりに感謝しているんだぜ。今回のゲームなんかは、ソロプレイで攻略出来そうにないし」

「だから気にしなくていい。埋め合わせは必ずしてもらうから」

「俺もな、十六夜」

「ヤハハ。お前は今後の働き次第だな」

「そうか。期待してるぜ。じゃあジン、俺達は隠れるぞ」

 

俺とジンはそれぞれ柱の後ろに隠れる。

鏡で状況を見る。

十六夜の姿が消えるのを確認する。

しばらく、襲いくる敵を倒し続ける。

 

「どうだ、春日部。分かるか?」

「ううん……飛鳥が暴れている音や、他の音が大きすぎてちょっと……わ!?」

 

突然、耀が吹き飛んで壁に叩きつけられた。

耀はさっきまでは五感で感知していた。

それが出来なかったってことは、ついに俺の出番か。

 

「おい春日部!一度引くぞ!」

 

十六夜の声がしたと思ったら、倒れていた耀が空中に浮いた。

が、その所為で透明になっていることが敵にバレて2人とも吹き飛ばされた。

俺は見えない敵の注意を引こうと俺は柱から飛び出して走った。

とりあえず、走り続けたが何もなかった。

 

「俺は眼中にないと……はあ。なら仕方ない。先に進んで撹乱でもするか」

 

十六夜は言った「それはな……囮、身代わり、楯、言い方はいろいろあるが。つまり、お前の役目は都合のいい捨て石だ」。

ショックはショックだけど分かっていたことだしそこまでは……やっぱり悔しい。

とはいえ、俺は俺の出来ることをするだけだ。

俺は敵に見つからないように息を殺して進んだ。

結果、

 

「まさか、俺が1番乗りとはな」

 

偶然にも抜け道を見つけたわけだが。

おそらく、暴れている耀や飛鳥、最奥へのメイン階段の方へ敵は集中しているのだろう。

運よく俺はまだ見られていない(・・・・・・・)ようだし。

ならば十六夜、俺はお前にこの言葉を送る。

俺は最奥、最上階へ通じるドアを開けて、

 

「別に、ルイオスを倒してしまっても構わんのだろう?」

 

最奥は天井はなく教科書とかで見たことのある闘技場のようなところだった。

 

「だ、大輔さん!?」

 

もの凄く予想外だったらしく、素っ頓狂な声を上げている。

 

「よう、黒ウサギ。ソイツに変な事されなかったか?」

「いえ、そのようなことは……って、十六夜さんとジン坊ちゃんは?」

「あの2人なら順調にここに向かってるはずだ」

「――ふん。まさか辿り着くとはね。でもまあ、僕1人がいれば十分だけどね」

 

ルイオスが椅子から立ち上がり口上を述べる。

 

「ようこそ白亜の宮殿・最上階へ。ゲームマスターとして相手をしましょう。……あれ、この台詞を言うのってはじめてかも」

 

――数分後。

激闘になることもなく、複数の武具のあるルイオスに一方的にボコボコにされた。

まあ痛みは無いからいいんだけど。

ただあちらさんは、

 

「名無し風情が調子に乗るからだ」

「どうなってる?」

「一体お前は何なんだ!?」

 

と、分かりやすく動揺してくれているのでやり甲斐はあった。

当然、黒ウサギはぎゃあぎゃあ騒いでいたが。

十六夜に言われた通りに時間稼ぎも出来たことだし、十六夜曰く「ルイオスを最奥から出すな。万が一出てこられたら俺は問題ないが御チビが駄目だ」。

ルイオスの性格上無いとは思うが、時間が経っても勝利の知らせがなくて、業を煮やしその不可視のギフトを使い奇襲され、石化のギフトを使われたら勝てないだろう。

だから、時間稼ぎ自体は納得した。

ちなみに本音はと聞き「それじゃ面白くねえだろ?」と

十六夜らしい答えが返ってきた。

でもまあ、そろそろ心が限界なので、

 

「場も暖めたことだし。じゃあ、俺はギブアッ――」

 

ドカァーン!

 

俺が丁寧に閉めたドアを頼もしい問題児によって蹴り破られた。

 

「よう、十六夜。お先だぜ」

「ヤハハ!楠木、お後だぜ」

「準備運動くらいはさせたから存分に戦えると思うぞ」

「ヤハハ!それはありがてえ。長すぎる前哨戦にイライラしてたとこだ。さあ、楽しく戦おうぜ!ルイオス!」

「いいだろう。お前にもそこの馬鹿と同じ目に合わせてやる!」

 

俺はルイオスから離れ避難する。

振り返るとルイオスは空飛ぶ靴で空中にいた。

 

「そこの馬鹿の所為で僕は疲れたんでね。お前らの相手はコイツだ。目覚めろ――“アルゴルの魔王”!!」

 

光は褐色に染まり、白亜の宮殿に甲高い女の声が響き渡る。

 

「ra……Ra,GEEEEEEYAAAAAAaaaaaaa!!!」

 

耳をつんざく不協和音を発している魔王アルゴール。

体中に拘束具と捕縛用のベルトが巻かれており、女性とは思えない乱れた灰色の髪を逆立たせて叫び続ける。アルゴールは両腕を拘束するベルトを引き千切り、叫びが大きくなる。

「ra、GEEEEEEYAAAAAaaaaaa!!」

「な、なんて絶叫を」

「避けろ、黒ウサギ!!」

 

え?

十六夜が黒ウサギとジンを抱き抱えるように飛び退いた。俺もアルゴールからさらに離れた。

直後それはいくつか落ちてきた。

 

「いやあ、飛べない人間って不便だよねえ。落下してくる雲も避けられないんだから」

「く、雲ですって……!?」

 

落下物をよく見ると雲っぽい形をしていた。

死なないとはいえ、こんなギフトを持ってる奴と俺は戦ってたの?

……もうマジ無理。

 

「今頃は君らのお仲間も部下も全員石になっているだろうさ。ま、無能にはいい体罰かな」

 

不敵に笑うルイオス。

俺達が石化してないのはルイオスが手を抜いたんだろう。

っていうか、反則だろソレ!?

どうやって勝てっていうんだよ!?

マジで普通の力しかない俺は足手まといにしかならない。

ならせめて、

 

「下がってろよ御チビ。守ってやれる余裕はなさそうだ」

「すいません……本当に何も出来ず……」

「御チビ、お前の目論見はレティシアが戻ってくることで魔王に対抗するつもりだったんだろ?」

「……はい。でも、僕らにはまだ貴方がいます。貴方が本当に魔王に打ち勝てる人材だというなら――この舞台で、僕達にそれを証明して下さい」

 

ジンの決意を聞きながらやっと駆け寄った俺は、

 

「ジンのことは任せろ。お前はとっとと勝て」

「OK。よく見てろよ、お前ら」

 

散々威張ってたんだ。

絶対に勝てよ。

 

「さ、それじゃ準備はいいかよゲームマスター」

「ん?全員でかかってこないのかい?」

「おいおい自惚れるなよ。オマエ如き、時間稼ぎもいらねえし、うちのリーダーが戦うまでもねえ」

「――は!名無し風情が、精々後悔するがいいッ!!」

「ra、GYAAAAAaaaaaa!!」

 

ルイオスはアルゴールよりさらに上空に飛び、陰に隠れながら炎の弓で攻撃する。

 

「喝ッ!!」

 

一喝で炎の矢を弾き飛ばした。

もう漫画だろ。

 

「チッ!押さえつけろ、アルゴール!!」

「RaAAaaa!!LaAAAA!!

 

甲高い叫び声を上げながら両腕を降り下ろす。

それを簡単に受け止めた十六夜は、真正面から力比べをしている。

 

「ハッ、いいぜいいぜいいなオイ!!いい感じに盛り上がってきたぞ……!」

 

押し合いにならず、十六夜はアルゴールをねじ伏せた。

その隙をついてルイオスが、

 

「図に乗るな!」

「テメェがな!」

 

ルイオスはハルパーを片手に斬りかかるも逆に空に蹴り飛ばされた。

さらに、十六夜は跳躍して追いつく。

怒りに任せてハルパーで斬りかかるるが、十六夜は難なく受け止めて地面に向かって投げ飛ばす。

 

「ガッ!」

「Gya……!」

 

ルイオスはアルゴールに重なるように叩きつけられた。

 

「い、今のうちにトドメを!石化のギフト使わせては駄目です!」

 

おい、審判が口を挿んでもいいのかよ。

と思ったが、

 

「だそうだ。とっとと終わらせろ、十六夜!」

 

さっきの褐色の光を使われたらヤバい。

 

「アルゴール!宮殿の悪魔化を許可する!奴を殺せ!」

「RaAAaaa!!LaAAAA!!」

 

謳うような不協和音が響き渡り、壁は生き物のように脈を打つ。

地面から蛇の形をした石柱が十六夜を襲う。

 

「ジン!逃げるぞ!」

 

俺とジンは全力で十六夜から離れる。

 

「もう生きては帰さないッ!この宮殿はアルゴールの力で生まれた新たな怪物だ!貴様にはもはや足場一つ許されていない!貴様らの相手は魔王とその宮殿の怪物そのもの!このギフトゲームの舞台に、貴様の逃げ場は無いものと知れ!!!」

 

ルイオスの絶叫と、アルゴールの不協和音が響く。

白亜の魔宮は変幻し続けて、無数の蛇となった宮殿に十六夜は呑み込まれた。

 

「そうかい。つまり、この宮殿ごと壊せばいいんだな(・・・・・・・・・・・・・・)?」

「「「え?」」」

 

俺達は嫌な予感がした。

十六夜はその拳を魔宮に向かって振り下ろした。

直後に宮殿全体が震え、闘技場が崩壊し、4階、3階と落下する。

 

「わ、わわ!」

「ジン坊ちゃん!」

 

崩れゆく地面に巻き込まれないように逃げる。

ジンが落ちそうになるところを突き飛ばして俺は落下する。

とはいえ、いい感じに瓦礫が崩れたので階段にして登る。

 

「おい、ゲームマスター。これでネタ切れってわけじゃないよな?」

 

登り切った俺が見たのは上空で激しく顔を歪めていたルイオスが、突然、凶悪な笑顔を浮かべるところだった。

 

「…………もういい。終わらせろ(・・・・・)、アルゴール」

 

アルゴールが褐色の光を放とうとしている。

さっきのより明らかに光が大きい。

 

「黒ウサギ!お前がジンを、俺達を助けたら反則になる!」

 

黒ウサギの助けを止めさせる。

だけど、さっきのとは違い本家本元をくらったらゲーム中は動けなくなるだろうし、今度は身体の痺れだけで済むかどうか。

俺が動けなくなったらジンを守る奴がいなくなる。

 

「クソッ!どうする!?」

 

下に落ちてもさっきは宮殿中を石化させたから意味が無い。

 

「足場も無茶苦茶だし、もう逃げ場は空しかないか……」

 

十六夜みたいな跳躍力はねえしな。

空を見上げて、

 

「アイツみたいに飛べたなら」

 

そうすれば守れるのに。

その瞬間、世界を石化させた光が放たれる。

そして、俺は空を飛んでいた(・・・・・・・・・)

 

「は!??」

 

ルイオスみたいに靴から漆黒の翼が生えて飛んでいた。

何で飛べたかは全く分からないけど、考えるのは後だ。

慌ててジンを抱えて空に逃げる。

 

「――……カッ。ゲームマスターが、今さら狡いことしてんじゃねえ!!!」

 

十六夜が褐色の光を、踏みつぶした(・・・・・・)

 

「ば、馬鹿な!?」

「“星霊”のギフトを無効化――いえ、破壊した!?」

「ありえません!あれだけの身体能力を持ちながら、ギフトを破壊するなんて!?」

 

何が何だかさっぱり分からない。

十六夜が凄いってことしか分からない。

 

「さあ、続けようぜゲームマスター。“星霊”の力はそんなものじゃないだろ?」

「残念ですが、これ以上のものは出てこないと思いますよ?」

「何?」

「アルゴールが拘束具に繋がれて現れた時点で察するべきでした。……ルイオス様は、星霊を支配するには未熟すぎるのです」

「――ハッ。所詮は七光と元・魔王様。その程度ってことか」

「それでは、このギフトゲーム、勝者はノー――」

「待て。黒ウサギ!」

「何ですか大輔さん……って!?どうして空を飛んでいるのですか!?」

「ヤハハ。お前の方がよっぽど面白いぜ!今から勝負しねえか?」

「絶対嫌だ!」

 

お前の攻撃じゃ契約の力で守れないし!

ただただ痛いだけだし。

 

「それより、ルイオス。俺と素手で勝負しろ!」

 

黒ウサギが何か言っているが、十六夜がウサ耳を引っ張り黙らせた。

 

「もし、お前が勝ったらレティシアを返すことだけで許してやる。ただし、俺が勝ったら……そうだな、“旗印”でももらおうか」

「な、何!?」

 

俺は空から見下して挑発した。

さっきのボコボコにされた恨み、晴らさでおくべきか!

 

「クソォ。舐めるなよ名無し風情が!」

 

ルイオスがふらふらと空に舞い上がり俺に殴り掛かる。

こいつは今まで“ペルセウス”という名の下で好き勝手にしてきたのだろう。

だから、殴り合いとかしたことがないようだ。

その拳は馬鹿みたいに一直線にとんできた。

だから、軽く躱して俺はルイオスの顔面を殴り、そのまま腕を掴んで漆黒の翼頼みに地面に叩きつけた。

 

「俺は気が済んだ。あとは、好きにしていい」

「ヤハハ。やっぱお前おもしれえな。じゃあ、ペルセウス。次はお前達の“名”をもらおうか」

「や、やめてくれ……」

「そうか。嫌か。なら来いよ(・・・)命懸けで――俺を楽しませろ!」

「負けない……負けられない、負けてたまるかあ!!」

 

翌日。

レティシアの石化を解き、

 

「「「じゃあこれからよろしく、メイドさん」」」

「「「え?」」」

「え?じゃないわよ。だって今回のゲームで活躍したのって私達だけじゃない?貴方達はついてきただけだったもの」

「うん。私なんて力いっぱい殴られたし。石になったし」

「それ私も」

「つーか挑戦権を持ってきたの俺だろ。所有権は俺達で等分、3:3:4で話はもう付いた!」

「何を言っちゃってんでございますかこの人達!?大輔さんからも何か言ってくださいよ」

「いや……っていうか俺は!?別にいらないけど、俺の所有権は!?」

「話を聞いて冷静に考えたら大輔君は何もしていないじゃない」

「結局、倒したのは十六夜だし」

「にも関わらず、なぜかパワーアップ」

「「「逆にふざけるな!」」」

 

アレ?

いつから俺は黒ウサギのポジションに成り下がった!?

おい、黒ウサギ!

仲間が出来たみたいな顔をするな。

 

「俺が悪かった。すみませんでした」

 

実際には何の努力も無しにパワーアップ。

はたから見たら狡いな。

パワーアップというか漆黒の翼については、白夜叉曰く「全ての攻撃から『守る』。全てだから、空中に逃げることでしか守れない時は空も飛べるだろうよ」とのこと。

自分でも思うが、相変わらずデタラメな効力だな。

つまり、『守る』とは直に攻撃を受けて守った方がいいのか、空に飛んで躱して守った方がいいのか。

常に最善の方法で契約の力が守ろうと発動するというわけだ。

圧倒的な防御能力と思えるが攻撃力は全く無いので、ギフトゲームの直接的的なクリアはほぼできない。

使い勝手は何とも言えない――

 

「今回の件で私は皆に恩義を感じている。君達が家政婦をしろというなら、喜んでやろうじゃないか」

「箱庭の騎士がメイドさん!?レ、レティシアさまあ……」

 

黒ウサギの悲痛な叫びと共にレティシアのメイドが決まった。

 

“ペルセウス”との決闘から3日後の夜。

子供達を含めた“ノーネーム”一同は水樹の貯水池付近に集まっていた。

 

「えーそれでは!新たな同士を迎えた“ノーネーム”の歓迎会を始めます!」

「だけどどうして屋外の歓迎会なのかしら?」

「うん。私も思った」

「黒ウサギなりに精一杯のサプライズってところじゃねえか?」

「そこは素直に楽しいでいいだろ」

 

問題児(ツンデレ)共が。

 

「それでは本日の大イベントが始まります!みなさん、箱庭の天幕に注目してください!」

「……あ!」

 

箱庭の夜空を飾る満天の星空に連続した流れ星、いや、流星群が流れていた。

 

「この流星群を起こしたのは他でもありません。我々の新たな同士、異世界からの4人(・・)がこの流星群のきっかけを作ったのです」

「「「「え?」」」」

「先日、同士が倒した“ペルセウス”のコミュニティは、敗北の為に“サウザンドアイズ”を追放されたのです。そして彼らは、あの星々からも旗を降ろすことになりました」

 

俺達は絶句せざるを得なかった。

そして、箱庭凄すぎるの一言に尽きる。

 

「星座の存在さえ思うがままにするなんて……ではあの星々の彼方まで、その全てが、箱庭を盛り上げる為の舞台装置という事なの?」

「そういうこと……かな?」

 

飛鳥と耀の2人は茫然としている。

 

「……アルゴルの星が食変光星じゃないところまでは分かったんだがな。まさかこの星空の全てが箱庭の為だけに作られているとは思わなかったぜ……」

「何を言ってるかさっぱりだけど、本当に凄いな」

「ふっふーん。驚きました?」

「やられた、とは思ってる。世界の果てといい水平に廻る太陽といい……色々と馬鹿げたものを見たつもりだったが、まだこれだけのショーが残ってたなんてな」

「ああ。星座は見るもので、上げたり下げたりするなんて普通は思わないしな」

「お?それいいな。いい目的が出来た」

「おや?なんでございます?」

あそこに(・・・・)、俺達の旗を掲げる。……どうだ?面白そうだろ?」

「それは……とてもとってもロマンがございます!」

 

この世界に無理矢理呼ばれていろいろあったけど、今はとりあえず。

 

「面白いな“箱庭”は」

 

 

 

 




次から新章に入ります。
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