オリ主が一人転生しただけの簡単な二次創作です 作:騎士貴紫綺子規
めでたく
「……しまったな。確かに書かれていたが」
「兄さん何が?」
「いや、なんでもない」
黒神めだかがそうであったように、
しかし今日はいつもと何やら様子が違うようだ。和が病院に入ると、医者や看護師たちが慌ただしく院内を走り回っている。大丈夫なのだろうか。
「看護師が倒れたぞ!」
「黒神さんが!」
「院長を呼べ!」
「急いで分娩室に!」
看護師、黒神、院長、分娩室。この単語から考えるに、恐らく陣痛が始まったのだろう。ということは、今日か明日には黒神めだかが生まれるのだろうか――
「……まあだからなんだという話だが」
ストレッチャーが目の前を通り過ぎていくのを見て、和は一人ごちた。ちらりと見えたのは恐らく黒神鳩だろう。それを追うようにゆっくり歩く
和には「物語」に関わる気はなかった。須木奈佐木咲に双子の兄がいたなんて描写はなかったが、いないという描写もなかった。すなわち、もともと「めだかボックス」には、
そう考えた和だったが、一応
作中登場人物が百を超えるめだかボックスだ。流石に月下氷人会、略して月氷会のメンバーや、黒神
そう考えた和は、今まで以上に周りに注意を払った。そして、今日ようやく黒神鳩と鶴喰梟の二人に合えたのだ。
人吉瞳には学園で会えるだろうし、あとは生徒たちだけだ、と一人頷いた。
目指せ、キャラ制覇!
この目標で、和は生きていくことにした。何が悲しくて死亡フラグがそこら中に立っているこの世界で戦いに身を投じなければならないのか。便利なスキルは貰ったが、だからと言ってもわざわざ自分から火の中に飛び込まなくてもいいだろう。そういうのは
もとより和は「めだかボックス」は好きだったが、「黒神めだか」も「人吉善吉」も嫌いだった。作中で一番好きだったのは、「不知火半纏」だ。他にも「
所詮自分は
そして検査を終え帰る和たちと一方で、分娩室では「黒神さん!」と叫ぶような声が聞こえたような気がするが、それは恐らく、多分、気のせいだ。
☆ ☆ ☆
黒神鳩が死亡し、黒神めだかが生まれたであろう日から数年後、和はめでたく「異常なし」と判断され、退院した。ちなみにその間、一度も黒神めだかにも人吉善吉にも、人吉瞳にも会っていない。
そして現在、あのキャラと知り合い、仲よく(?)遊んでいた。
「にひひ。実に楽しいものだな」
「だろ?」
和は
喜界島れぽーとあぶのーまるこれくしょんでは『とうそつたいぷ』と判断されたり、めだかブックスでも「マイナス寄りのスキルだったんだろうなあとは思う」と敢えて情報開示を防ぐ曖昧な表現がされていた。
黒神めだか然り、箱庭学園然りと、どうやら
そんな気持ちが自分の中を巡って、ふと家を飛び出してきた。がむしゃらに走って着いた先が公園で、そこには一つのサッカーボールが転がっていた。
「…………」
ふとそれを拾って辺りを見回してみたが、誰もおらず。仕方ないのでポーンポーンとリフティングしてみた。前世では十回もいかなかったが、今世ではいとも簡単に操れる。これも
「お? 誰だ?」
声を掛けられたので振り向くと、まだ幼いが面影のある糸島軍規がいた。どうやらこのサッカーボールは彼のらしい。
そうして今では二人でリフティングしている。――当人たちにとっては。
「いいかげん! あきらめたらっ、どうだ!?」
「はっ! その台詞、そっくりそのままっ、返してやるよ!」
傍から見るとボールの軌道がすべて線になるほどのスピードで激しく蹴り合っているように見えるだろう。先天的だろうが後天的だろうが、
「っあ!」
そんなことを考えていると蹴り損なってしまった。それを見た彼は口元を歪ませた――が、甘い!
「うぉりゃ!!」
「む!?」
ゆっかり油断していた軍規はろくな反応もできないままボールに当たる。当たったボールは地面に落ちた。彼の負けである。
「油断大敵ってか?」
先ほど彼が浮かべていたように口元を歪ませながら皮肉ってやる。俯いてプルプルと震えていたかと思うとガバッと顔を上げた。その瞳は爛々と輝いている。
「オマエすごいな! オモシロイな! 私は糸島軍規だ。お前は!?」
矢継ぎ早に発せられる言葉に戸惑いつつも名を名乗る。
「須木奈佐木和だ。お前はすさまじい奴だな」
「そうか!? ありがとうな!」
――これが後に裏世界を牛耳る王、【死番長】となる糸島軍規と、世界をまたにかける天才犯罪プランナー、【狂(KYO)】となる須木奈佐木和の初遭遇である。
あまり糸島君と知り合いの二次創作ってありませんよね。私は大好きです。
最後の一文は何となく思いついただけです。糸島君の進路は明かされませんでしたし。くじらちゃんが言っていたようにパーティメンバーは全員フラスコ計画的な進路に進んだそうですけど。
ほとんど全員スキルを成人前後で失ってますし、スキル使えば世界は牛耳れると思いますけど。一応糸島君も成人あたりでスキルは失います。でもスキルを悪用している人間を粛正する、ということで裏世界のドンにでもなればいいんじゃないかなと。元パーティメンバーですし。
和君のスキルはもう少しお待ちください。糸島君の【死番長】は献体名から付いていますよ。