GOD EATER AWAKENING   作:Carbon

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story10 初めての友達

 

 

 

 

 

 鉄塔の森に降り立ったナギ達。今回の標的はオウガテイル堕天種と、遅れて作戦エリアに侵入するであろうヤクシャの討伐だ。スタート地点からしばらく直進すると、三匹のオウガテイル堕天種が一か所に集まっていた。

 

「そんじゃ、始め――」

『ブラッドβ、そちらにヤクシャが接近中。注意してください』

「思ったより早かったな。こっちから片付けに行くぞ」

「待ってください」

 

 ヤクシャの侵入予測地点はスタート地点の近く。放っておくと標的に挟まれる可能性があった。それに気づいたギルがヤクシャを迎え撃とうとしたが、シエルが制止した。

 

「ヤクシャが接近した場合は一時退避、という内容の作戦だったはずです」

「俺たちの仕事はアラガミの討伐だ」

「作戦通りに行動できないようでは、より強力なアラガミとは戦えません」

「状況に応じて臨機応変に戦うべき局面もある」

 

 事前に決められた作戦通りに動こうとするシエルと、今までの戦闘での経験をもとに動こうとするギル。ある程度のメンバー間の衝突は覚悟していたナギだったが、任務開始直後にこうなってしまったことに戸惑いを隠せない。

 

『落ち着け、二人とも。現場での指揮権は副隊長にある』

 

 別働隊として行動しているジュリウスからの通信でようやく二人の言い争いが終わった。そのまま二人の視線はナギへと集まる。少し考える時間が欲しいところだが、こうしている間もヤクシャが近づいている。

 

「ギルさんは先にヤクシャのとこへ向かってくれ。俺とシエルはオウガテイルを片付けてから向かう」

「了解だ」

 

 自分の思う通りに動いていいと言われたためか、ギルは微笑を浮かべて来た道を戻って行った。反対にシエルは驚いた様子でナギを見ている。

 

「副隊長」

「理由なら後で話す。とりあえずアレを片付けようぜ」

 

 シエルの返事を聞く前にナギは一番近くにいたオウガテイル堕天種に接近する。基本種と違い堕天種は黒色の皮膚に覆われており、その硬度は基本種よりも堅い。実際に斬りつけてみるとその違いがよく分かった。

 三度ほど斬撃をたたみこみ一旦距離をとる。そこへ間髪入れずにシエルの狙撃がオウガテイル堕天種を襲う。一発目が命中したところに二発目、三発目が寸分たがわず命中する。恐ろしい命中精度だ。

 

「あと二匹!」

 

 ナギはこちらに向かってくる二匹の間に火属性のモルターを放つ。寒冷地の環境に適応したその皮膚は火に弱い。高熱の爆風に包まれた二匹は大きくのけ反った。

 その隙を逃さず、ショートブレードを構えたシエルが近接攻撃を仕掛ける。先ほどの狙撃と同じように、一度斬りつけた場所へ吸い込まれるように斬撃が叩き込まれていく。

 

「俺も負けてられねえな……!」

 

 ナギは剣形態へと移行しチャージクラッシュの準備に入る。一度後ろを振り返ったシエルが不思議そうにナギを見ていたが、気にしない。彼女にとって、標的と異常に距離をとって力を溜めこんでいるナギはおかしく見えたのだろう。

 

「はああああぁぁぁぁ!!」

 

 だが彼のチャージクラッシュは普通のものとは違う。斬り上げと同時に撃ちだされた紅い衝撃波がオウガテイル堕天種を真っ二つに切り裂いた。

 

「よし、次いくぞ」

 

 シエルが相対していた一匹も絶命し、残すはヤクシャを倒すのみとなった。

 

『ナギ、そっちにヤクシャが逃げた。お前らが今いる場所で迎撃してくれ。直に見えるはずだ』

「はいよ。シエル、また援護射撃頼むわ」

「了解です」

 

 二人の前に姿を現したヤクシャ。その体型は極めて人に近いもので、右腕の一部となっている重火器を抱えながら走る様子は人間の兵士のようだった。

 

「命中確認」

 

 ヤクシャが二人に気づくより早く、シエルの狙撃が頭部に命中した。続いてナギがヤクシャの脚を全力で薙ぎ払う。ギルとの戦闘で蓄積されたダメージが効いたのか、ヤクシャはその場に崩れ落ちた。普段は高所にある頭部が目の前にある。すかさずヤクシャの頭部を捕喰しバースト。休まず神機をヤクシャの頭部に叩きつけ結合崩壊を発生させた。

 

「出来るじゃねーか」

 

 立ち上がったヤクシャの背後からギルが突進。不意打ちを受けギルに狙いを定めようとするが、正確無比なシエルの狙撃がそれを許さない。流れは完全にナギ達にきていた。

 

「終わりだっ!」

 

 ヤクシャの死角からナギがCC・ディバイダーを放つ。ヤクシャにそれを回避する術はなく、直撃を受け亡骸と化した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帰投ヘリの中はあまり居心地がいいとは言えなかった。ヘリが悪いのではない。雰囲気の問題だ。

 任務開始直後に対立するような形になってしまったギルとシエル。なんとかしたいナギだったが、ギルを擁護したともとれる指示をだしたためかどうしたらいいのか分からずにいた。

 

「副隊長、なぜあのような指示を……?」

 

 シエルの質問で重い沈黙が途切れた。ナギの指示は事前の作戦とは異なったものだったため気になるのも当然だ。

 

「まず、ヤクシャは聴覚が優れてる。退避したっていつか気づかれるだろうし、アイツが接近する度に移動してたらオウガ堕天の討伐に時間がかかっちまう。んで、二手に分かれることにした。ギルさんなら実戦経験長いから一人でも大丈夫だろうって思ったし、俺は今後のためにシエルの立ち回りを見ておきたかった。だからあの組み合わせにした。これじゃ不満か?」

 

 ナギはなんの考えも持たずに指示したのではない。アラガミの情報、メンバーの実力などを考えた上での作戦だった。

 

「……理に適っています」

「別にお前のことが嫌いなわけじゃないからな?だからこれからもドンドン作戦だしてきてくれ。ギルさんも次からは気をつけてくれよ?」

「どうだろうな」

 

 ギルの返答はナギにとって少し予想外だった。ロミオと喧嘩したときは、まだ完全に仲直りしたかどうかは疑わしいが、その日の内に素直に謝っていた。だが。今回は違った。

 

「戦術の重要性は否定しない。だがな、現場の空気ってものもある。どれだけ作戦を練ったって所詮は机上の空論だ。それを守り通せって言われるのはごめんだ」

 

 言い返そうとするシエルをナギが止める。ここでまた言い争いになるのは避けたかった。

 

「まあ、そんなこと言わずに。二人ともブラッドにとって大事な存在なんだからさ。というか、ブラッドは一人一人が重要な役目を持ってんだ。仲悪いままだったら実力を発揮できないだろ?今すぐは無理でも、少しずつ慣れてこうや」

 

 二人とも何か言いたいことはあっただろうが、ナギの言葉に頷いた。それ以降また沈黙が続いたが重苦しいものではなかった。

 副隊長となった以上、全ての仕事を隊長であるジュリウスに任せるわけにはいかない。ならば、メンバーの関係を向上させるのは自分の役目。ナギはそう考えていた。副隊長としての初任務は順調ではなかったが、そこまで悪いものでもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ~……」

 

 ナギは深くため息をついた。ロビーのソファーを占領して寝転がっていることも相まって、かなり疲れているように見える。

 

「おーい、生きてるかー?」

 

 そこへロミオが近づいてきた。それを見て起き上がったナギだが、その際の動作といい、表情といい、なんとも気怠そうだった。

 

「どうかしたのか?」

「いや~、さっきフランに『最近、ブラッドの戦闘効率が低下しています』って言われてね~」

「うっ……。俺も頑張らないといけないってことだよな……」

 

 ロミオまで暗くなってしまった。戦績が悪いと言われれば誰でも落ち込むだろう。

 

「そういうときもあるさ。お前たちは自分の思うように動けばいい」

「あ、隊長」

 

 いつの間にかジュリウスも来ていた。彼もフランから報告を受けているだろうが、あまり気にしていない様子だった。確かに、この程度で一喜一憂していたらきりがない。

 

「今のところ、付近にアラガミの反応はない。今の内にしっかり休んで気持ちを切り替えておけ。ところで、シエルの様子はどうだ?」

「まだ連携がうまくいかないとことかありますね~。ま、なんとかしてみますよ。仮にもリーダーですからね」

「そうか。頼りにしているぞ」

 

 そう言うとジュリウスは去っていった。彼はブラッド内のことはもちろん、フライアの研究の手伝いなど任務外でもかなり忙しい身だ。彼の負担をこれ以上増やさないためにも、自分がしっかりしないといけないとナギは感じていた。

 

「シエルか~。なんか親しくなり辛いんだよな……」

「ロミオさん、こういうの得意じゃなかったか?」

「まあ、人と仲良くするのは好きだけどさ。この前……」

 

――なあシエル、もうちょっと肩の力抜いたほうがいいと思うぞ?――

――そうですね。神機は慣性を利用して振るべきです――

 

「……ってことがあってさ。そういう意味で言ったんじゃないんだけどな……」

「……エリートってすごいな」

 

 結局、いい考えは見つからなかった。ロミオと別れた後、ナギは一人でいろいろと考えてみた。

 

「……俺シエルのこと全然知らねえな」

 

 なにをするにも情報不足。それが彼の辿り着いた結論だった。彼女についていくつか知っていることはあるが、他のメンバーに比べると少ない。

 

「よし、情報収集だ。……その前に休憩~」

 

 ナギは庭園に向かった。やはり休むにはここが一番だ。さっきまで寝転がっていたのは休憩に含まれていないらしい。

 庭園に入ると先客がいた。シエルだ。何か考え事をしているようで、まだナギには気づいていない。

 

「よお。悩み事か?」

「副隊長……。私は戸惑っています。ブラッドは戦術理解度が高いわけでも、規律正しく連携しているわけでもない。その一方で、高い戦闘能力と汎用性を兼ね備えている。まるで私が今まで蓄積してきたものが全て否定されているようで……」

「いや、皆お前を全否定してるわけじゃないぞ?まあ、そう思われてたんなら謝るわ」

「あ、いえ、嫌な気持ちではないんです!それどころか……ええと……少々お待ちください」

 

 一生懸命に言葉を探すシエル。その様子は見ていてなんだか可愛らしい。考えがまとまったのか、ナギに向き直った。なぜか少し赤面している。

 

「ブラッドが高度に機能しているのは、貴方が皆を繋いでいるからなんです」

「そう……なのか?」

「はい。そこで……折り入ってお願いがあります」

 

 シエルの顔がまた少し赤くなった。

 

「あの……わ、私と……」

(どんな状況だこれ?あれか、いわゆる告白ってやつ?いや待て、相手はシエルだぞ?めっちゃハードなトレーニングに付き合ってくれとか言い出す可能性も……)

「私と、友達になってください!」

「…………はい?」

 

 シエルは深々と頭を下げた。ここまで真剣に友達になってくれと頼まれたことがあっただろうか。

 

「あの……どうでしょう?」

「あ、ああ。いいぞ。というかブラッドに入った時点で似たようなもんだろ?」

「本当ですか……?」

「本当」

「ありがとうございます!」

 

 今までに見たことのない笑顔で喜ぶシエル。見ているとこちらも微笑ましくなってくる。

 

「あ、もう一つ不躾なお願いがあるんですけど……」

「何?」

「貴方を呼ぶとき、君って呼んでいいですか?」

「何でもいいぞ~」

「ありがとう……!君が私にとっての、初めての友達です」

 

 シエルは笑顔でそう言ったが、ナギはそれにかなり驚いた。当然だろう、目の前の少女が十六歳で初めて友達ができたと言ったのだから。

 

「少しだけ、皆と仲良くなる自信がついた気がします」

「それはよかった。またなんかあったらいつでも言ってくれ」

「はい!」

 

 これで他のメンバーもシエルと接しやすくなるだろう。あとは自分がその繋がりを強くしていけばいい。さっきまでは気怠そうにしていたナギだが、いつも通りのリラックスした表情に戻っていた。

 





年上には敬語を使うナギですが、親しくなってくると使わなくなります。ギルとロミオがそうですし、後で出てくるエリックとエミールもそうなると思います。(ジュリウスは上官なんで、しばらく敬語かな)
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