GOD EATER AWAKENING   作:Carbon

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story13 ブラッド&第一部隊

 

 

 

 

 

 ところどころに雲が浮かぶ青空。暑くもなく、寒くもない。外出するには最適な環境だ。何度か眠りそうになるナギだが、耳障りな雑音がそれを邪魔する。それもそのはず。彼が今いる場所は贖罪の街。アラガミ討伐の真っ最中だ。では、なぜナギは余裕で胡坐をかいてそれを眺めていられるのか。その理由は彼の同行者にあった。

 

「お前らがいなければ……!絶対許さないからなぁぁぁぁ!!」

 

 怒りの雄叫びと共にロミオの神機がドレッドパイクの甲殻を打ち砕いた。標的が沈黙したのを確認すると即座に反転し、空中に浮かんでいるザイゴードを地面に打ち落とす。

 誰の目から見ても分かる通り、ロミオは怒っている。先ほどまでのユノと会話していた時間は、彼にとって至福の一時だった。だが、それはアラガミ討伐任務の発行により終わりを告げた。

 任務さえ無ければ。アラガミがいなければ。アラガミへの憎悪を力に変え、ロミオは一人で小型アラガミの群れを瞬く間に殲滅していった。

 

「優秀な部下がいるってのは、いいもんだねえ~」

「ですが、全く戦わないというのはどうかと……」

「あんだけ激しく動き回られたら割り込めんだろ?」

「そうですね」

 

 ナギの隣ではシエルも座っていた。時折自分の神機を不思議そうに眺めている。

 

「やっぱ変わってた?」

「はい。戦闘に悪影響はないのですが」

 

 極東に来る少し前。ナギは「自作バレットの検証実験に同行してほしい」というシエルの頼みを受けた。何の滞りもなく任務を終えたのだが、いくつかのバレットに変化が生じていた。それも編集しなかったものが。どれも良い変化であったため問題にはならなかったが、原因は今も分かっていない。

 

「とりあえず、後で整備班に聞いてみようぜ。極東なら優秀なスタッフが揃ってそうだしな」

「そうですね。今はロミオが終わらせてくれるのを待ちましょう」

 

 笑って答えたシエル。入隊当時の彼女なら「ふざけないでください」などと言っていたところだろう。ナギ達ブラッドのメンバーとの交流を通じて、シエルはより人間味のある少女になった。

 

「どうかしました?」

「いや、シエルも随分丸くなったな~って」

「丸く……?食生活には気をつけているつもりですが……」

「……そっちの意味じゃないんだよな……」

 

 時々話がかみ合わないこともあるのだが。

 ロミオの方を見ると、アラガミの数は激減していた。残りは五、六匹といったところだ。

 

「ロミオさ~ん、ユノがアナグラから移動したってさ~」

「なんだって!?もう怒った!お前ら一匹残らずボッコボコにしてやるからな!!」

 

 ナギの冗談を真に受け、ロミオの攻撃は更に激しさを増していく。遂にロミオは一人で全ての討伐対象を倒してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 任務を終えアナグラに戻ってきたナギ達は、ラウンジという場所に来ていた。そこは多くの人で賑わっていた。マイクを準備しているコウタ、慣れた手つきで紅茶を淹れているエミール、談笑しているナナとエリナ、そして極東の神機使い達。特に忙しそうに動き回っている少女は千倉ムツミ。九歳でありながら調理師の資格を持っている。

 出席できる人が揃ったところで、ブラッドの歓迎会が始まった。司会進行はコウタ。まずは彼の挨拶から始まり、次にジュリウスが喋ることとなった。突然の指名を受け少し驚いていたジュリウスだが、難無く挨拶を終えた。

 さらに、ナギまで出番が回ってきた。極東が誇る神機使い、淡島ナミの弟ということもあり、コウタとしては紹介しておきたかったのだろう。ジュリウスとは違い、その場で文章を作るのに苦労したナギだった。

 コウタの不意打ちはまだ終わらなかった。最後に呼ばれたのはユノ。このような挨拶には不慣れなユノは「お礼に一曲歌わせてほしい」と言い、コウタもそれを見越してピアノとマイクを準備していたため、ユノのソロコンサートが始まった。

 ロミオをはじめ一部の人達は感動のあまり涙を流していた。あまり音楽には詳しくないナギだが、彼女の透き通るような歌声と優しく勇気づけられる歌詞に、思わず聞き入っていた。

 コウタの企画(全てナギ達のアドリブ任せ)が終了し、食事や談笑を楽しむ時間となった。任務を終えたばかりで空腹なナギは食べ物を取りに行きたかったのだが――

 

「ブラッドってどんなことをしているんですか?」

「必殺技が使えるってホント!?」

「普段ナミ先輩はどんな感じ?」

「ナミ隊長って彼氏いますか!?」

「わわわ」

 

 質問攻めにあって身動きがとれないでいた。助けを求めようとして周囲を見る。ジュリウスはサカキ支部長と会話中。ギルはかなり離れたところにいる。ロミオはユノ、ナナは食べ物以外見ていない。シエルはなんとかしたいとは思っているようだが、まだここの環境に慣れていない彼女にとって、知らない人に包囲されているナギのもとへ行くのは容易なことではなく、どうしたらいいのか分からないといった様子だった。

 

「はいはい、皆さん落ち着いて。彼も困ってるじゃないですか」

 

 そこへ二人の男女が近寄り、青年が声をかけた。彼のおかげでナギは人混みから解放された。

 外へはねた茶色の髪を持つ青年は、ナギを囲んでいた人達に爽やかな笑顔で優しく注意している。笑っているというよりは、普段の表情がにこやかに見えるといった感じだ。

 その間に少女がナギに寄ってきた。青っぽい灰色という珍しい色の髪。染めているのかは分からない。こちらも人懐こい笑みを湛えている。

 

「いきなり疲れさせちゃって、ごめんね?」

「まあ、そこまで気にしてないさ。で、どちら様?」

「信太サコンです。僕達は第一部隊に所属しています。よろしくお願いします」

「わたしは犬上アヤメ。よろしくね♪」

 

 話によると、アヤメはナミと同じ日、サコンはそのしばらく後に入隊したという。そのためナミとはかなり長い付き合いだ。

 

「弟がいるってことはナミちゃんから聞いてたけど、こんな形で会うなんて思わなかったなぁ。それに、副隊長ってすごいじゃない!」

「大したことねえよ。戦闘経験はまだまだ少ないしな」

 

 二人は既に神機使いとして三年の経験を積んでいる。実力で言えばナギの先輩だが、そんなことは全く気にせず友達のように接していた。

 その後もナギは様々な人達と親睦を深め、歓迎会が終わるまで充実した時間を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 歓迎会から一夜明け、現在ヘリで作戦エリアへ移動中だ。今回はブラッドと第一部隊の合同任務。ナギはシエル、サコン、アヤメと組むことになった。

 

「……要するにですね、血の力による感応現象の影響で、ブラッドアーツのように進化する”ブラッドバレット”というものが生まれたんです」

「なるほど、やっと分かった」

 

 任務に出る前、シエルのバレットの変化の正体が判明した。それはよかったのだが、説明内容がナギにとっては難しすぎた。シエルも彼を納得させるのに苦労しただろう。

 ちなみに、サコンはある程度理解したようだが、アヤメは最初から理解することを諦めていた。

 

「お、目的地についたみたいですね。それじゃあ皆さん、張り切って行きましょう!」

「はーい♪」

 

 四人が降り立った場所。そこは荒廃しきった居住区のような場所だった。人類安息の地となるはずだった人工島、エイジス島。

 三年前、極東支部ではある計画が進められていた。その名は”エイジス計画”。超巨大なアラガミ装甲壁に囲まれた島を造り、そこに人々を移住させるというものだった。

 しかし、強大なアラガミの急襲を受けエイジス島は崩壊。計画は事実上凍結した。そして、人が住むはずだったそこはアラガミが闊歩している。

 

「もう三年経つんですね」

「そうだね。元気にしてるかな、あの子」

 

 サコンとアヤメがなにかを懐かしむような顔で頭上を見上げていた。それが少し気になったナギとシエルだが、聞く前にアラガミの気配を感知した。そして、シエルが血の力を発動する。

 

「すごいですねー!敵の位置はもちろん、体力やこっちに気づいているかどうかまで分かるなんて」

 

 シエルの血の力は”直覚”。アラガミの状況を感じ取り、感応現象を通じて味方に伝えるというものだ。シエルから伝えられた情報をもとにアラガミのもとへ向かう。ほどなくして小型アラガミの群れに遭遇した。

 

「見―つけた♪観念しなさい!」

「今日のお仕事、始めますか!」

 

 ナギとアヤメが駆け出し、シエルとサコンはその場から狙撃をする。サコンが使用している”SNピーコック”はシエルと同じスナイパー。次々とアラガミの急所を撃ち抜いていく。狙撃の腕はシエルに引けを取らない。

 第二世代型神機使いであるサコンと違い、アヤメの神機は第一世代型。得物はオウガテイルの素材で作られた桃色のブレード、”尾刀トドメキ”。抜群の切れ味でコクーンメイデン堕天種の甲殻を易々と切り裂いた。

 

『大型種が接近しています!注意してください!』

「今からか?まあいい。なんとかしてみるさ!」

 

 ヒバリからの通信を聞き戦闘のペースを上げる。小型アラガミの討伐はすぐに完了し、緊張に満ちた沈黙が場を支配した。

 

「っ、来ます!」

 

 シエルの一声で三人は彼女の視線の先を見る。現れたのは巨大な蠍。鎧のような甲殻、槍を想起させる尻尾の針、ハサミにあたる部位には盾。ボルグ・カムランと呼ばれるアラガミだ。

 

「ナギさんは盾の破壊をお願いします。僕達三人は足を狙います」

「了解!」

 

 ナギは銃形態に神機を切り替え、ボルグ・カムランの盾に狙いをつける。サコンは素早く刀身”SBヘッジホッグ”に変形し標的の前足へ肉薄する。これもシエルと同じショートブレードだ。

 接近する三人に対し、ボルグ・カムランは前方の地面に針を突き刺す。目にも留まらぬ速さで何度も襲い掛かる針を前に三人は一度距離をとる。だが、ナギにとっては攻撃のチャンス。その場で止まっているボルグ・カムランにバレットを放つ。狙い通り全て盾に命中した。

 ナギに注意が向いた隙にシエル達の斬撃がボルグ・カムランを襲う。同じ部位に三人の攻撃を受け、ボルグ・カムランの前足は結合崩壊を起こした。

 

「キシャアアアアアアァァァァ!!」

 

 生物から発せられたとは思えない奇妙な声をあげ、ボルグ・カムランは怒り狂った。全身の甲殻が硬化し、どこを斬りつけても弾かれる。さらに、攻撃を弾かれ体勢を崩したところに針が襲い掛かった。

 

「そろそろ盾が壊れるはず……!」

 

 弾切れを起こしたナギは近接攻撃での破壊を試み接近する。あと一歩というところでボルグ・カムランは体勢を低くした。

 

「うおっ!?」

 

 次の瞬間、ボルグ・カムランは尻尾を伸ばし自分の周囲を高速で薙ぎ払った。シエルは範囲外にいたため無傷。アヤメは”尾盾オンギョウキ”を展開して防いだ。しかし、ナギとサコンは直撃を受けてしまった。ナギとサコンが使用している装甲、”ミツカケ”と”TSドンキー”はタワーシールド。展開が間に合わず、立ち位置の関係上回避も間に合わなかったのだ。

 二人を吹き飛ばした後、ボルグ・カムランはサコンに狙いを絞り飛び掛かった。直撃は免れたサコンだが、ボルグ・カムランが再び薙ぎ払いの構えを見せていた。

 

「サコンさん!!」

 

 少しでも注意を彼から逸らそうと、シエルは必至に狙撃したが、効果はなかった。ボルグ・カムランの影になってサコンの姿は見えないが、あの位置では回避は不可能。――のはずだった。

 

「キシャアアアア!?」

「残念、当たってませんよ?」

 

 回転を終えたボルグ・カムランが崩れ落ちた。サコンは追い詰められた状況で敢えてボルグ・カムランに接近。胴体の真下に潜り込むことで攻撃をやり過ごし、ゼロ距離射撃で反撃したのだ。

 

「砕けろ!!」

 

 ナギが撃ったロケット弾がボルグ・カムランの盾を粉砕。身を守るための最強の防具が最大の弱点となった。

 

「見苦しいから立ち上がらないで」

 

 アヤメが放った上段からの一撃。研ぎ澄まされたその一太刀でボルグ・カムランを葬り去った。

 

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