GOD EATER AWAKENING   作:Carbon

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まだ序盤なのに約5ヵ月も空いてしまった……。
スローペースになるとは思いますが、これから更新していきたいです。すみません。


story14 ある日のアナグラ

 

 

 

 

 

アナグラのロビーは今日も多くの人で賑わっている。そんな中、ギルは黙々とターミナルを操作していた。

 

(……極東では確認されていないのか)

 

 画面には様々なアラガミのデータが映し出されている。コンゴウやシユウといったお馴染みのアラガミや、今までに見たことのないアラガミの情報もあった。しかし、彼の知りたかったものはない。

 

「ギルさん、なんかあったのか?顔怖いぞ?」

 

 いつの間にか隣にナギが立っていた。少し心配そうにギルを見ている。

 

「いや、なんでもない」

「ならよかった。ナナが心配してたぞ。いつもと少し違うとか言って。なんにせよ、あんまり無理はするなよ?」

「その言葉、そのままお前に返すぞ」

「聞こえないなー」

 

 ブラッド副隊長、淡島ナギ。神機使いになったのは割と最近で、豊富な知識を持っている訳でも高度な戦闘術を身につけている訳でもない。だが、常に落ち着いた態度で戦闘を進める冷静さ、メンバーや標的の状況を考えた上での臨機応変な立ち回りなど、副隊長として十分な力を持っている。

 しかし、特に仲間の危機となると無茶な行動を起こすこともある。神機兵運用テスト以降はそのようなことはないが、いつまた同じようなことをするか、ギルは不安に思う時もあった。

 

「ギル?」

 

 開いたエレベーターから聞こえた声。その方を向くと二人の神機使いがいた。一人は男性。他の神機使いと比べると年長者に見える。彼の後ろには桃色の髪が特徴的な女性が立っている。男性とギルは互いを見て驚いているようだった。

 

「ハルさん……!?」

「やっぱりギルか!極東に来てんなら言ってくれりゃいいのに」

「いや、ここにいるって知らなかったっすよ」

「あれ?言ってなかったっけ?」

 

 再会を懐かしむ二人。話から察するにグラスゴー支部で共に活動していた時期があったのだろうか。

 

「ハルさん、博士への報告先に行ってますね」

「へいよー。おっと、こっちの少年には自己紹介がまだだったな。俺は真壁ハルオミ。極東支部第四部隊隊長だ」

「ハルさんとはグラスゴー支部でチームを組んでいたんだ」

「なるほどな。俺はブラッド副隊長、淡島ナギです」

「淡島……?ああ、ナミちゃんの弟か!」

 

 名乗ると「ナミの弟か」と言われる。極東に来てから何度も繰り返したやりとりだ。

 

「ハルさん、さっきの人は?」

「第四部隊の隊員、台場カノンちゃんだ。まあ、いろいろと頼りないんだが……」

 

 一旦そこで話を切ると、嬉しそうな表情で言葉を続けた。

 

「出るとこ出てるからまあいいかなー、的な」

「……またセクハラで査問会に呼ばれますよ」

「おっと、そいつは勘弁だ」

(……この人にスナイパー持たせたらダメな気がする。スコープとかステルスフィールドとか)

 

 ナギがこれまでに会った極東の神機使い達に負けず劣らず個性的な人だった。しばらく会話した後ハルオミは支部長室へ、ナギは「腹減った~」などと言いながらラウンジへ向かった。

 一人残ったギルはハルオミが乗り込んだのを見届けた後も、無意識にエレベーターの方を眺めていた。あのアラガミに関する情報を集めていた時にハルオミと再会。ギルの脳裏にあの日の記憶が嫌でも蘇ってきた。

 

――分かってるよね、ギル……。私を…………――

「…………ケイトさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナギさ~ん。起きてくださ~い」

「んあ?」

 

 名を呼ばれて目が覚める。重たいまぶたを開けると、ナギが頼んだサンドイッチを運んできたムツミが立っていた。

 

「お~、ありがとな」

「寝不足なんですか?」

「いや、どうも長時間座ってると眠ってしまうんだよな」

「のんびり屋さんですね」

「俺もそう思う」

 

 ナギに料理を渡し、ムツミはキッチンへ戻っていく。サンドイッチを食べようとしたナギだが、不意に伸ばした手が止まった。

 

「……?」

 

 目をこすって前を見る。食材の確認をしているムツミ。バーチャルアイドル・シプレが出演している神機兵のCMを見て盛り上がっているコウタとロミオ。カピバラに触れるか触れないか真剣に悩んでいるシエル。いつも通りの風景だ。

 

「…………??」

 

 何かを振り払うかのように頭を振り、もう一度周りを見る。もちろん何も変わっていない。

 

「……あれだな、俺は疲れてるんだな。そうだそうだ。だっておかしいだろ?ウサギの着ぐるみがストローでジュース飲んでるなんて……」

「ナギ君お疲れー♪……ああ、キグルミが気になってるのかな?」

「現実だったー」

 

 ラウンジに入ってきたアヤメの言葉で、ナギの視線の先では本当にウサギのキグルミがストローでジュースを飲んでいることが判明した。

 

「アヤメ、あいつ何者なんだ?」

「わたしも分からないの。いつの間にかアナグラにいたし……」

 

 キグルミと目(?)が合った。まるで友達に会ったかのように手を振ってくるキグルミ。その腕にはなんとゴッドイーターの証である腕輪が装着されていた。

 

「……まさかあの恰好で戦うとか言わないよな?」

「戦うよ」

「何だと……!?」

「しかも結構強いんだよね。あの子謎が多すぎるから、あんまり深く考えないほうがいいよ?」

「そうするわ」

 

 ロミオやシエルはキグルミを見て何も思わなかったのだろうか。二人とも目の前にあるものに夢中になっているため、キグルミが見えてすらないのかも知れないが。

 落ち着いたところでようやく食事に入った。歓迎会のときもそうだったが、食材をはじめあらゆる物資の入手が容易ではない現状でよくここまで料理できるものだと、ナギはムツミの腕前に感心していた。

 

「ところで、ナギ君ってブラッドの制服しか着ないの?」

「言われてみりゃそうだな。他に持ってるのは戦闘に着ていけるようなもんじゃないしな。どうかしたか?」

「ブラッドで制服着てるのってナギ君だけだな~って思って」

 

 確かにその通りだ。ナギも他のメンバーが制服を着ているところを見たことがない。以前ロミオが「俺のと交換だ」と言ってきたことを考えると、他のメンバーも持ってはいるのだろう。

 

「よかったら作ってあげよっか?」

「作るって、服を?」

「もちろんわたし一人で、じゃないけどね。わたし裁縫とかデザインとか好きだから、開発部の人達の手伝いとかよくやってるの。あ、開発部ってゴッドイーターの服とか作ってるとこね」

「そいつはすげえや。じゃあ、折角だし頼もうかな」

「お任せ♪」

 

 アヤメは持っていたバッグからペンとノートを取り出し、その場でナギの服を考え始めた。手慣れた様子で素早く簡単な人の絵を描くと、時折ナギの姿を確認したり独り言をつぶやきながら作業を進めていく。

 

「色はどうする?好きな色とかある?」

「ん~。赤と黒、かな。神機もこの色だし、学校の制服もそうだったしな」

「なるほどね。黒と赤の組み合わせってかっこいいよねー」

 

 あらかじめある程度考えてあったのか、ナギが思ったより早く完成図が出来上がった。ナギが見ようとすると「完成してからのお楽しみ♪」と隠されてしまったが。

 

「あとは材料ね。やっぱりアラガミ糸は多めにいるかなー。ナギ君持ってる?」

 

 アラガミ糸とは主にコクーンメイデン系のアラガミからとれる糸のことだ。それほど珍しいものではなく簡単に入手できるのだが――

 

「あ、この前よろず屋に売っちまった……」

 

 使い道が分からなかったナギは全て売却してしまったのだった。

 

「あちゃー。わたしも蓄えがないんだよねー。仕方ない、任務ついでにとって来よ」

「すまんな。俺も行くわ」

 

 今度からはどんな素材も簡単に売らないでおこうと決心したナギだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 任務を終えアナグラに戻ってきたエリック。エントランスへ行くとソファーでぐったりと横たわっているナギを見つけた。

 

「相当疲れているようだね」

「あ~お疲れさん。ちょいと面倒な任務だったもんで」

「大型種かい?」

「いや、コクーンメイデン三十匹。堕天種入れたらもっとかな」

「そ、それは大変だったね」

 

 アラガミ糸を手に入れるためナギとアヤメは大量発生したコクーンメイデンの掃討にあたっていた。単体ならそれほど苦戦しない相手だが、数が多すぎた。死角から次々と砲撃が襲い掛かり、倒したと思うとすぐに新手が湧いてくる。大型種討伐の方が楽だったかもしれない。

 

「しっかし、アヤメはどうなってんだ?あんだけ暴れといて『物足りなーい』とか言ってまた出てったぞ」

 

 疲れ切ったナギとは対照的に、アヤメは開発部に素材と設計図を渡した後、また任務を受注してアナグラを出発していった。もちろん、疲れた様子は微塵も感じられなかった。

 

「彼女はいつも戦うことを楽しんでいるからね。味方ながら恐ろしく感じることもあるよ。そういえば、ナミ君は一人でシユウを三十匹倒したとか」

「は!?」

「他にもハガンコンゴウ、セクメト、テスカトリポカ、ディアウス・ピターを一人で討伐したとも聞いたことがあるね」

「ど~なってんだ極東は…………」

 

 出現するアラガミの規模も違えば、神機使いの力量も想像以上。一度極東を離れたことで、ナギはいかに極東が厳しい場所であるかがよく分かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後。ナギはアヤメから貰った服を着てエントランスへ向かった。最初に会ったのはロミオだった。

 

「お、新しい服か!よく似合ってると思うぜ」

「ならよかった。まだ少し慣れてないんだがな」

 

 色は黒をメインにし所々に赤が使われている。コートを動きやすいようにアレンジしたトップスと、少し大きめにも見えるニッカー。ブラッドの制服を着ているときと大きく印象が変わった。

 

「でも、男のへそ出しなんて需要あんのか?」

 

 唯一ナギが気になった点は露出した腹部。袖の長さなどは丁度よかったため、サイズを間違えたということではないだろう。そういうデザインなのだと思ってしまえばそれまでなのだが。

 

「気にしなくていいんじゃない?エリックもやってるじゃん」

「あれはその域超えてるだろ。ベスト羽織ってるだけだし」

 

 ロミオはファッションなどにも詳しいようで、ナギは色の組み合わせやら最近の流行やらいろいろと教えてもらった。

 任務に出て帰ってくる頃にはほとんど忘れてしまっていたが。




ナギの新衣装はジューダスコート&ニッカーです。個人的に赤クロガネとこれの組み合わせが気に入っています。
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