目視できるのはオウガテイルが一体。ダミーはこの種族をもとに作られていたため、攻撃方法などは大体頭に入っている。幸運なことに敵は捕喰に夢中なようで、こちらに背を向けたままである。
「ナギ、いけるか?」
ジュリウスの質問にナギは無言でうなずく。できるだけ静かに、できるだけ速く歩みを進める。間合いに標的を捉えると立ち止まり、チャージクラッシュの構えに入る。
「戦闘……開始だ!」
溜めた力を解放し、全力でオウガテイルを叩き斬る。返り血がかかり気持ち悪いと感じたが、気にしている暇はない。ナギに気づいたオウガテイルから反撃を受けないように一度後退した。
入れ替わるようにジュリウスの射撃がオウガテイルを襲う。さらにナナがハンマーに取り付けられたブースターを起動、その推進力を利用して突進。オウガテイルの頭部に強烈な殴打を見舞った。あまりの猛攻にオウガテイルはその場に倒れ込む。だが、そこには既にナギが捕喰形態で待機していた。
「隙だらけだな!」
巨大な顎がオウガテイルを命ごと喰らった。
「これで終わりか?」
『複数の小型アラガミの反応を確認!気をつけて!』
オペレーターのフランから通信が入った直後、三人から少し離れた地点にアラガミが現れた。緑色の甲虫のようなアラガミ、ドレッドパイクだ。三匹同時に地中から飛び出した。
「一人一匹でいくぞ!」
「はいよ!」
「あいあいさー♪」
ナギは骸となったオウガテイルのコアを回収し、一番手前のドレッドパイクに肉薄する。このアラガミとは交戦経験がないため、一撃を加えすぐに離脱し様子を見る。それほど強い攻撃ではなかったのだが、ドレッドパイクは大きくのけ反った。
「なんか……弱そうだな」
もう一度斬りつけると再度のけ反る。反撃されることはないと判断し、ありったけのバレットを浴びせた。結局ドレッドパイクはナギに一度も攻撃できずに動かなくなった。
二人の方を見ると、ジュリウスは既にコアの回収も済ませ、ナナは丁度とどめの一撃を放ったところだった。
「ふぅー、何とか倒せたー」
「ま、上出来なんじゃねえの」
ナナがコア回収を終え、あとが帰るだけと思われた矢先――
『アラガミ反応を確認!近いです!』
「種別は?」
『オウガテイルと思われます!』
「よし、迎撃するぞ」
神機を構え直す三人。ほどなくして三匹のオウガテイルがこちらに走ってきた。
「……いい機会だ、お前たちが目覚めるべき”血の力”をここで見せておこう」
そう言うとジュリウスは二人の数歩前に進み、ロングブレード使いの技の一つ、ゼロスタンスという構えをとる。この構えを攻撃の合間に挟むことでスムーズに連続攻撃ができるのだが、彼のゼロスタンスはそれだけでは終わらなかった。
「なんだ……!?」
「力が……みなぎる……!」
何もしていない二人が勝手にバースト状態になったのだ。
「これが俺の血の力、”統制”だ。そして、今から”ブラッドアーツ”を目標に対して放つ。少し離れていろ」
「ブラッドアーツ?」
「戦況を覆す大いなる力……。戦いの中どこまでも進化する、刻まれた血の為せる業……」
凛とした鈴のような音が響く。同時にジュリウスが一瞬でオウガテイル達の間を駆け抜けた。瞬速の居合切り。その後、ジュリウスの周りに斬撃の嵐が巻き起こり、全ての敵を八つ裂きにした。
「これが、ブラッドアーツだ」
かかった返り血を軽く払い、ジュリウスが振り返る。
(……ロミオさんが言ってた必殺技って、これのことか)
「俺たちブラッドに宿る血の力、そしてブラッドアーツ。これをどう伸ばし、どう生かしていくかは……、全てお前たちの”意志”次第だ。覚えておいてくれ、いいな?」
ナギとナナは力強く頷く。こうして実地訓練は無事終了した。
初陣の翌日、ナギの実戦投入が正式に認められた。これで彼はブラッド候補生ではなく、ブラッドの隊員となったのだ。
そこでナナ、ロミオと共にミッションを受注し、これからの戦闘に役立てるため、先輩であるロミオからアドバイスをもらおうということになった。帰投後、三人で反省会をしていたのだが……
「お前らさー、前に突っ込みすぎなんだよー。敵の動きちゃんと見極めてからさー」
「いや、でもロミオさん離れすぎじゃないですかね?いくら銃形態でも、あの距離じゃモルターもエミッターも当たりませんよ?」
「お、俺は、ほら、追尾弾がメインだからさ……」
どうもロミオの実力が疑わしい。二人はそう感じていた。
「えー、ロミオ先輩がビビりすぎなだけなんじゃない?」
「ちょっ、ちょっ、ナナ、近いよ!うわっ!?」
「おっと」
「あっ!」
あまりにもナナが接近してきたためバランスを崩したロミオ。そんな彼が倒れ込んできてのけ反ったナギ。そして、いつの間にかナギの後ろにいた少女にぶつかってしまった。
「やべっ、すんません」
「あ、すいません……うあっ!?」
慌てて謝ったナギとロミオ。なぜかロミオだけが少女の顔をみた瞬間に硬直する。
「全く貴様らは……ユノさん、本当にすみませんねえ」
「いえ、そんな……」
「フフッ、あんまりロビーでは、はしゃがないでね?大事なお客様にご迷惑でしょ」
いかにも偉そうな人といった出で立ちの太った男性、白衣を着た赤髪の女性、そして女性曰く大事なお客様なユノという少女。細かい事情はさておき、ぶつかったのはこちらに非があったので三人は頭を下げた。
「いやー不躾ですみませんねえ。戦うしか能のないヤツらで……」
「褒め言葉だ」
「皮肉も通じんのか……!」
素直に謝ったものの、ナギは太った男がなんとなく気に入らなかった。
「あれー、先輩、どうしたのー?」
エレベーターを待っている三人をロミオだけがずっと見つめている。恐らく彼が見ているのはユノだろう。
「ばっか、お前……アレ、アレ……ユノっ!」
「ユノ?知ってる?」
「いや?」
「マジで?葦原ユノだよ!ユノアシハラ!超歌うまいの!有名人!あー、カメラ持ってきてれば良かった!くっそー!」
それほど有名なのか、とユノの方を見ると目が合った。
(フライアに歌手、か……。なんか用でもあったのか?)
会釈しながらそう思ったナギだが、深く考えないことにした。
「んー、何かまだユノの香りが残ってる気がするよ。今日は風呂に入らないようにしとこう……」
「えー……先輩、お風呂ぐらいは入ろうよー」
「ロミオさん、俺の制服、ユノにぶつかってますよ」
「くれ!俺のと交換だ!!」
「100000fcです」
「高っ!?いや、でも……!」
「行こうぜナナ」
真剣に迷っているロミオを放置してナギとナナは去っていった。
ユノのことはあまり気にしないようにしようと思っていたナギだったが、やはりフライアに歌手がいるということに違和感があった。そこでフランに聞いてみることにした。
「葦原ユノ様にはフェンリルの広報活動にご協力いただいております。おそらく、その打ち合わせではないかと」
「ナギ!」
フランから話を聞いているとロミオが階段を駆け上がってきた。
「制服くれって言ってもあげませんよ?」
「いや、直接ユノに会いに行こうぜ!今ならグレム局長の部屋にいるはず!」
戦闘中と違って、こういうときは積極的に動くようだ。
「考えときます」
「そう言わずに!考えてる時間も惜しいだろ?」
「……分かりましたよ」
「よし、これはミッション連携の練習だ!お前は局長室を奇襲して、グレム局長に入室許可をもらってくれ。入室許可が出たら、俺が一気に突入する!」
終始フランの視線が冷たかったのは言うまでもない。一応行く途中でナナも誘ってみたが断られた。
「頼んだぞナギ。俺はここで様子見て……」
「失礼しま~す」
「ちょっ、いきなり!?」
局長室の前まで来ると、ナギは迷わず扉を開けた。慌ててロミオも後へ続く。局長室に入れたはいいが、肝心のユノが見当たらない。
「あ……あれ?ユノさんは!?」
「ヘリで飛行中、かしらね。極東支部へ向かって」
赤髪の女性、レア博士の言葉にロミオは肩を落とす。
「ええっ!遅かった……!」
「貴様らはなんだ?ラケル博士の使いか?」
「さっき神機兵のことを聞いたんですけど、すごいもんらしいですね」
ナギの頭に咄嗟に浮かんできた言葉、神機兵。フライアがブラッドと並行して研究している、神機技術を応用した人型機動兵器である。最大の利点は民間人でも搭乗可能である点だ。さらに、その性能は並の神機使いを上回ると言われている。
「有人制御になるか、無人制御になるか……。いずれにせよ神機兵が世界を救う、それが来たるべき未来だ。その神機兵を量産できる工場は、この俺が用意する……。全部俺のプロジェクトだぞ?」
「すごいですねー」
やはりナギはグレム局長に好感を持てなかった。しかし、神機兵の研究において重要な役割を担っていると知り少し印象が変わった。
「そんじゃ、俺はこれで失礼します。用件は済んだんで。あと、ロミオさんが聞きたいことがあるみたいですよ~」
「え!?」
ロミオを置いて素早く退室する。すぐにでもここから出たいロミオだが、場の空気がそれを許さない。
「グ、グレム局長はモテるんですね……!ユノさんとも仲がイイとか、ハンパないっす!」
「馬鹿者、仕事だ、仕事。俺が公私混同する男に見えるか?え?」
「見え……ないっす!」
危うく「見える」と言うところだった。
「さあ、おしゃべりは終わりだ!任務に戻れ!」
「失礼しましたあ……!」
「面白い子達ね。フフッ」
ロミオはアラガミから逃げるかのように全速力で退室した。いつかナギに仕返ししてやろう、と固く決意したのであった。
「あ、ナギ。どうだったー?」
「分断の重要性を学んだ、って感じだな」
ナギのモデルです。
ヘアスタイル:6
ヘアカラー:黒
フェイス:3
アイカラー:1
スキンカラー:初期設定
ボイス:15
服装:ブラッド制服