MS IGLOO外伝「顎(あぎと)朽ちるまで」   作:三流FLASH職人

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第五話 新たな顎

サメジマを葬った後、エディとジャックは同じ部屋に軟禁された。

エディはサメジマを悼み、ジャックは呆然と運命の非情さを噛み締めている、

何故、こんなにも俺にばかり理不尽が起こる。いや、俺の周りの人間が、か。

自分はひょっとして死神の類じゃないのか、そんな妄想までよぎる。

 

ふと、軟禁部屋に設置されている連絡用のモニターが写る、何事かと振り返るエディ

呆然とモニターの明かりで顔を照らすジャック。

 

-ジオンの皆さん、いつも素敵な放送をありがとう、さて、今回のお話は・・・-

 

連邦軍のプロパガンダだった。その内容はチープで馬鹿馬鹿しく、彼ら二人にとっては

子供だましにも見えない低レベルな「言い訳」だった。

 

-かつてこのヅダはザクⅠとの正式化競争に敗北してるというのです-

-しかし改良とは名ばかり、実は中身は全然変わってないというのです、ヤレヤレ、こんな機体が新型とは-

 

ジオンが流したヅダの優位性を見せる放送、それを否定するためにわざわざ作ったのか、このチープな放送。

呆れるばかりだ、ヅダがザクⅠより劣る?そんなことはありえない、実際に戦ってその強さを見てきた二人にとって

その放送があまりに間違ってることは疑いなかった。いくら自分たちの正義や優位をイメージさせるとはいえ

この子供の言い訳のような説得力の無い、しかも先日のジオン放送に即反応してこのお粗末さ、

そうまでして前の自分たちの戦いを無かったことにしたいのか!

 

 

-まぁオデッサの戦いが連邦の勝利に決した今-

 

その一言が二人を覚醒させた。オデッサといえばジオンの地球最大の拠点、そこに詰めている人員は

数万じゃきかない、そこがもし本当に落ちたのなら・・・

ドア前に詰め寄るエディとジャック。

「おい、見張り!本当か、オデッサを陥落させたってのは。」

ドアの向こうにいる見張りに声をかける。

「ああ、この基地静かだろ。さっきみんな出撃したよ。脱出した敵も相当数いるようだしな、七面鳥狩りさ。」

宇宙へ緊急脱出するならHLVと呼ばれるカプセルで打ち上げられるのが基本だ、詰めれば百人以上が乗れるそれは

悲しいかな地球軌道への脱出しか出来ない。

無抵抗の彼らの元に、ジオン印のタクシーが迎えに来るか、連邦印の狼の群れが来るか、全ては時間との闘いだ。

 

ジャックは思う。ジオンの将兵は確かに憎い、しかし抵抗も出来ないカプセルに乗った彼らを撃つことは

戦闘ではなく虐殺ではないのか?兄貴と同様、自分の死に誇りさえ持てない、恐怖と阿鼻叫喚に包まれた死。

むろん彼も分かっている、もし数万の将兵を見逃せば、彼らは再びジオン兵として自分たちを殺しに来る、

ただでさえ兵力数で優位な連邦がここで数万のジオン兵を叩けば、今後の戦争は一気に連邦側に有利になるだろう。

それでも・・・コロニー落とし、プロパガンダによる兄貴の死、そしてこの七面鳥撃ち、ジャックは改めて

戦争の非情さに身震いした。

思えば兄貴があれだけ精力的に動いてたのは、そんな戦争の非情さをよく分かっていたからじゃなかったのか・・・

 

3日後、軟禁を解かれ司令室に連行される二人。そこで受けた命令はやや意外なものだった。

 

「エディ・スコット、並びにジャック・フィリップス、両名は本日付をもって任務に復帰、

モビルスーツ、ジムのパイロットとして訓練を受けた後、しかるべき所属に当てる。」

ワッケインから言い渡されたのは罰則ではなく厚遇だった。なぜ、と聞く前に司令が続ける。

「あの青い奴、ヅダとか言ったな。オデッサに急行した4個小隊が、わずか3機のヅダに全滅させられた。

その中にはジム2個小隊も含まれている。」

ああ、そういうことか、と思う二人。あんなプロバガンダを打った連邦の愚かさは、当然の報いを受けたわけだ。

あれを見てヅダを舐めてかかった者もいるだろう、そうでなくてもザク相手のマニュアルでの戦闘じゃ

とても歯が立つ相手じゃない、火消しに慌てた宣伝は逆に火の粉をあおっただけだった。

「オデッサの脱出兵は9割ジオンに持って行かれた、千載一遇のチャンスを逃したわけだ。

当然、こちらとしてもモビルスーツを操る精鋭は一人でも多く欲しい、そういうことだ。」

ワッケインは最後にこう言い添える、それは二人にとって救いだった。

「サメジマがいたら・・・良かったんだがな。俺が言うことじゃないがな。」

それは故人に対する悼みでもあり、彼らに対する期待の表れでもあった、サメジマの意思を継ぐ者として。

 

 

翌日から彼らのジムパイロットとしての訓練が始まった。基本動作の習得、武器の使い方、加減速、方向転換など

しかしそれは思っていたより遙かに簡単な操縦だった、下手をするとボールより扱いやすいのではないか・・・

その理由は3日目からの実践練習で明らかになった。2対2のジム同士での実践形式、成績は10戦全敗だった。

とにかく思うように動いてくれない、操作が簡単な反面、出来ることが異様に少ないのだ。

モビルスーツを巨人のイメージで操作していたらジムはまともに言うことを聞かない、内部にプログラムされた

動作をルーチンワークのように組み合わせることによって初めてまともに戦闘できる。

 

整備員やパイロットを問い詰めて、二人はその原因を突き止めた。

このジム内に入っている動きのルーチンは、「RX-78ガンダム」というジムの上位互換機が実践の中で

学習してきたプログラムだったのだ。

ザクの脅威に合わせて開発されたモビルスーツは、何より「操作の簡単さ」がまず求められた。

事実、鹵獲したザクは調べてみると、その操縦の難しさに誰もが驚いた。

逆にそこに連邦軍の開発部は活路を見いだした、性能は互角でも、より操縦しやすい機体を作れば

短期間で実践に耐えうるモビルスーツとなる、その為にまずザクに圧勝できる強力なモビルスーツ

すなわち「ガンダム」を作り、その実践データを流用、量産機に使えるデータのみを抜き出し搭載する

これが連邦軍のモビルスーツ量産作戦「V作戦」の骨子だったのだ。

 

しかし現実にはそううまくいくものではない。ガンダムとジムでは出力が数倍違う、同じように重力下を走っても

ガンダムではスムーズに走ってもジムではぎこちない走りになる。

全身強靱なルナチタニウム合金のガンダムと、盾だけルナチタニウム合金のジムでは防御の姿勢も違ってくる

ガンダムなら盾で半身を隠していればいい状況でも、ジムなら全身を縮めてすっぽり盾に隠さねばならない。

「どうやら、俺たちのやることは決まったようだな。」

「ええ、何しろ俺たちはオハイオ小隊、あの兄貴の部下なのですから。」

エディの提案にジャックが答える、やるべきコト、兄貴が生きていたならこうしたであろうコト。

 

翌日から、ルナツーのメカニックは二人の無理難題に悩まされる日々が始まった・・・。

 

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