異世界プロレスinオーバーロード   作:NEW WINDのN

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第11話 武王

 

「全力でいかせてもらうぞ」

 開始の挨拶と同時に武王は、巨体に似合わぬスピードで踏み込み、棍棒を振り下ろした。

 ゴォオオオ……というその風切り音は、最上段の観客にまで聞こえたという。

(むっ……速い……そして重そうな一撃ですな)

 須永はそれを避けようともせずにいつものように受ける。ものすごい衝撃音があがり、その凄まじい風圧で、地面の砂がぶわあっと舞い上がった。

「ぬおおおおっ!」

「ぐっ……重い……初撃にして、はやくもグリンガムどのの渾身の一撃をこえてきますかっ……」

 堪えきれずにがくりと片膝をついた直後、ブンっという音とともに下からアッパースイングで棍棒が襲う。

「ぬあおおっ」

 須永は後方へと縦に二回転してはね飛ばされた。

 

(さすがに、今までの相手とはスピードが段違いだ。レベルというよりもこれは……人とトロールの身体的なもの。基礎値の違いか……)

 冷静に思考しながら、バランスを整え綺麗に両足で着地してみせる。

「……大抵これで終わるんだがな……さすがだ。それにどうやらあまり効いていないようだ。これが、噂の"受け"か……)

 武王は、須永のダメージはあまりないと判断し、油断なく棍棒を構えている。その構えに隙はなく力だけでなく戦士として経験を積んでいることがよくわかる。

(種族として優れているものが、鍛錬を積むとやはり脅威だな。同レベル帯だったら大変だよ。……ま、私のこの身体も人に見えるだけなんだけどさ)

 須永は笑みを浮かべながら、円を描くように動きながらじわじわと距離を詰めていく。基本須永は接近戦というか密着戦でないと攻撃手段がないのだからこれは当然だろう。逆に武王は距離を離して棍棒が届く距離をキープしている。

 静かながらも、主導権を得るための大事な駆け引きである。そこで須永は1つ試しておこうと、足を止めて身構えた。

 

「<空斬>」

 須永は先日エルヤー戦でマスターした偽武技を試し撃ち。ぶんっ! と右袈裟斬りチョップで空を斬る。

「ぬっ……ぬうっ」

 衝撃があったか、武王の顔がわずかに歪む。

(多少は効果ありかな?)

 空気を切り裂く衝撃波は武王にも届いたように見えた。威力はともかく、手段があると思わせればそれでよい。

「もういっちょ!」

 今度は左手の逆水平を高速で放って、もう1度衝撃波を飛ばす。

 

「ぐっ、させるかっ」

 武王はそれを楽に耐えると、棍棒を横薙ぎに振るい須永の動きを止めに行く。

「とあっ!」

 須永はその棍棒を踏み台にして飛び上がる。ヘビーマッシャー戦でも見せた技だ。

「棍棒、踏んづけていった!?」

 須永は、そのまま空中で前方回転をし始めた。ここはお馴染みとなったあの技だろう。

 

「「ライダーキーック!」」

 ジルクニフの声と須永の声が、さらには観客の声とが重なりあう中、右足を伸ばして武王の分厚い胸板を蹴り飛ばした。

「ぬおおおおっ!」

 しかし武王は、それをなんと弾き返した! 

「なにっ?!」

 予想外の出来事に驚きながら、須永はくるんと宙返りをして着地……したところをフルスイングされた棍棒が襲う。

「ぐわらああっ!」

 須永の腹部にジャストミート! 

「おわっ?!」

 須永は、そのままギュイーンと壁まで吹き飛ばされていく。

「やります……なっ!」

 須永は壁を蹴って反転。勢いをつけて飛ぶ。

「ライダーキーック!」

 もう一度前方回転し、今度は両足で武王の胸板をぶち抜いた! 

(プロレスにおける同名の技は、同じ形とは限らないんだよね。ライダーキックも最低でも2つあるんだよ)

 2発目のは女子のプロレスラーで使い手がいたと資料で見たことがあった。

 

「……今度はいかがですかな」

「ぐぁっ……」

 武王が呻きながら、膝をついた。

「うおおおっ……」

 武王と呼ばれるようになってから膝をついたことはなく、初めての光景に場内がどよめく。

「やるナ……」

 しかし武王も直ぐに立ちあがってみせたが、装着している鎧は足型に凹んでおり、須永の蹴りの威力を物語っている。

 

「ぬん!」

 豪快なスイングで、棍棒が再び須永の腹部を捉える。

「おごっ!」

 須永は闘技場を囲む壁へと再び吹き飛ばされたが、途中で体を捻って両手をつき、バク転を加えてから壁を蹴ると、今度は腕を✕字に組んで突っ込んで行く。

「2度目はないぞっ! うおらっ!」

 壁を蹴ってくるのを予想していた武王は棍棒を振り下ろして迎撃したのだが、須永はクルリと体を旋回させてそれを回避。

「旋回式フライングクロスチョップ!」

「うがっ!」

 武王の首筋に叩き込み、巨体をそのまま跳ね飛ばした。

 

「とおっ!」

 須永は着地と同時にダッシュで武王を追い、倒れ込んだ瞬間にジャンプして前方に一回転。開脚しながら体重を乗せた右足を武王の喉元に叩きこんだ。

 

「今のは、ローリングギロチンか?」

「ですね。セントーンは背中から尻もち着く感じですし」

「ふむ。なるほどな。高い位置から飛ばなくても出せるのか。それにしても今日は縦回転が多いな……」

「確かに。いつもは横回転のが多いですからね」

 ジルクニフとバジウッドは、そろそろ放送席に座れるかもしれない。

 

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