異世界プロレスinオーバーロード   作:NEW WINDのN

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この章の、ファーストマッチにして、ラストマッチ……試合開始です。


第20話 試合開始

 試合開始のゴングが鳴った。なお、このゴングは、当然須永が提供したものだが、複製は容易な品なので返還される予定になっている。

 

 試合は始まったものの両者は動かない。まずは、お互いに鋭い眼光を飛ばし合いながら、しばしの間睨み合った。

 やがて……目線は逸らさず睨みあいを続けながら、ゆっくりと時計回りに円を描きながら、お互いの距離をじわじわと詰めていく。

 

 どう動くか……固唾を飲んで見守る観客の間に、ピンと張り詰めた空気が流れ、場内は静かになる。

 キュッ、キュッ……と須永のアマレスシューズがマットを擦る音のみが聞こえてくる。

 

「せあっ!」

「たあっ!」

 沈黙を破って、両者が同時に動き、リング中央でがっちりとロックアップ。ガチンという硬いものがぶつかり合う音がする。

 

「くうっ……こいつ、なんて力なんだよ……いや、凄い力ですわね」

「それは、こちらのセリフですが……」

 両者互角の力比べとなり1歩も動けない。

「ぬおおおおっ」

「くおおおっ」

 徐々に押し込んでいくのは、なんとガガーランの方だった。少しずつだが。確実に須永の腕を押し込んでいく。

「どっせええええい!」

 雄叫びとともにグィンと一押しがきまり、一気にガガーランが押し込む。それを須永はブリッジすることで耐えている。

 

「なんて馬鹿力なんだ。ありえん」

「さすが、アダマンタイト……化け物だわ」

 ジルクニフとバジウッドの2人は、目の前の光景に驚きを隠せない。

 

「やりますなぁ……」

 当の須永は、冷静を通り越して呑気に呟く。

「ヘッ、こんなもんかよ」

 ガガーランはニヤリと笑う。

「ふふ、まだまだですよ」

 須永はそこからなんと腹筋の力で押し返しはじめ、あっさりと元の位置まで戻してしまった。

 

「なんだとぉっ!?」

 ガガーランはこれには驚いた。あの体勢から返されるほど腕力はヤワではないつもりだったのだから。

 

「……武王を軽々投げ飛ばしたってのは伊達じゃないわね……無事に帰ってきてよ」

 ラキュースは仲間を心配そうな眼差しで見守っている。

 

「なら、これはどうだい?」

 ガガーランは腕を振りほどくと、左手を広げ顔の前でタメをつくった。

「おらあああああっ!」

 そして、叩きつけるような力強い逆水平チョップを須永の胸へとぶち込んだ。

 バッチーン! といういい音が闘技場に響く。

「くおっ」

 須永の顔が歪む。

「おら、おらっ、おらあああああっ」

 続けざまに、一発、二発……そして大きくふりかぶっての三発目! 

 バッチーンというより、ドッカーンに近いようなより大きな衝撃音が響く。

「くおおおっ!」

 須永は両拳を握りしめ、苦痛に耐えた。

(へえ、この体でも跡が残るのか……これは驚いたわ)

 なんと、その白い肌には、バッチリ手刀の跡が残っている。

「どーでい。俺様の……いやワタクシのちょっぷの、お味はいかがかしらん?」

 まだ演技するつもりだったらしい。須永はそのことに苦笑する。

「ふふ。いいチョップですな……嬉しくなってきますぞ。では、こちらもいきますぞっ」

 須永は、ガガーランとは違い、胸元に左手を引き寄せると、スナップを効かせて逆水平を打ち返した。

 

「ぐはああああああああっ」

 衝撃を吸収しきれず、ガガーランはそのまま背中からリングへと沈んでしまう。

「フォール」

 須永はガガーランの両肩をおさえつけ、レフェリーにカウントを要求する。

「オーケー、カウント ワン!」

 トニー・カンレフェリーが、マットを右手で叩く。

「トゥー!!」

 2回目。まだガガーランは反応しない。

「次のカウントが入ると、ビューティ・イチ・ガガ選手の負けとなります」

 ここで、すかさずルール説明のアナウンスが入る。

 

「返せ、ガガー」

 客席の最前列に陣取る仲間から声援が飛ぶ中、一瞬ためを作ってからレフェリーの右手が振り下ろされる。

「スリ」

「うあーっ」

 3つ目が入る寸前で、ガガーランが反応し、ブリッジで須永を跳ね除けた。彼女は必死で返しただけであり、知るわけもないことだが、これは女子プロレスの返し方だった。

 

「おおおっ!」

 観客がどよめきがおき、ガガーランがフォールを返したことに対し、拍手を送る者もいた。

 

「カウント2.8 ……試合続行です」

 このアナウンスに大きな拍手が送られた。アナウンスをわざわざ流しているのは、ルールをわかりやすくするための措置であった。

 

「ダンディさんは、このチョップで3カウントとりたいと話してましたからねぇ」

 中継席には先日須永の取材をした、シン・カ=ザマが座っており、広報担当として得た知識を披露している。

 

 少し話が戻るが、先程の須永がチョップを放った瞬間、中継先で食い入るように見慣れない中継モニターを見つめていた人々は大歓声をあげたという。

 

 その昔……街頭テレビに映る空手チョップに歓声をあげた人々と同じように。

 

 

 

 

 

 

 





3章で使って欲しい技などありましたら、活動報告へリクエストください。
表現できるかは別として、どこかで出せればなと思っています。
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