異世界プロレスinオーバーロード   作:NEW WINDのN

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第21話 走れ!

 

 

「つーっ……いやーしっかし、すっげー効くなーっ! アンタの手刀、国宝級の武器よりすげーんじゃねーのか? …………たった一発で、体の芯までガーンと響いたぜ」

 ガガーランは、打たれた部位を右手で抑えながら立ちあがる。足元はしっかりしており、そこまでのダメージはなさそうだ。そして、彼女の顔には笑みが浮かんでいた。強者と戦える喜びからだろうか? 

 

「貴女も''なかなかの一撃"でしたな」

「"なかなか"かよ。チッ……ま、これは挨拶がわりさ」

 2人はお互いにニヤリとする。手応えがある相手と、お互いが確信したからだろうか。

 

 

「さ、ここからだ。ガンガンいくぜーっ!」

「よいでしょう。こいっ!」

 須永はやや腰をおとして身構える。

「オラああっ!」

 ガガーランは、助走をつけて左肩からショルダータックルでぶち当たる。

「ぬっ」

 それを須永も肩で受け止めたが、わずかに……そう半歩ほど後退してしまう。あのダンディが押し負けるのかっ……と、客席がザワっと反応する。

「よーし、もう1度行くぞー!」

 ガガーランは、先程よりも助走距離をとり、勢いをつけてタックル! 

「ぐっ」

 今度は、2歩後退させる。

「ロープへ走れ。こいや」

 須永は、左手でロープを指し示し、反動を使って助走をつけろと促す。

「なにっ? そんなこと知らねーし、お前が走れ、こらぁ」

 ロープに囲まれた戦場は初めてなのだから、当然の反応だ。ガガーランは須永とは反対側のロープを指し示す。

「走れ!」

「お前が走れ!!」

 もう1度同じやり取りを繰り返す。

「……いいでしょう」

 須永はロープへと走り、反動をつけて同じように肩からタックルにいく。

「うおっ」

 ガガーランはそれを耐えきる。下半身が安定しており、少々のことでは揺らがないようだ。

 

「おおっ、なんだあの女」

「ありゃ人間ですかい?」

 場内のどこかから、そんな声が聞こえる。

 

「はん、その程度かい?」

 ガガーランはやり方はわかったとばかりに、ここでロープへと走った。

(ふふ……返し技を出したくなりますが……)

 久しぶりのロープを使った攻防に、須永のプロレス心が疼き、一瞬の間に返し技を何種類も思い浮かべる。

 

「痛……硬いんだな」

 ロープへ飛んだガガーランは、試合前に触ってはいたが、勢いをつけた時のロープの硬さに驚いていた。

 ロープは中に金属製のワイヤーが入っており、なれない人には痛いものだ。戦いなれているガガーランでも意識していないような、不意をつかれた痛みには弱い。

(……やるなら、こっちかな)

 さすがに初めてロープに走った相手に対して、返し技は酷いかな……という思いで、須永は別の選択をすることにした。

「でやあああっ」

 反動をつけスピードと威力を増加したタックルが、須永を襲う。

「せいっ!」

 それを受け止め、須永は1歩も下がらずに弾き返した。

「なっ! なにいっ?」

 自信を持って放ったタックルを返され、ガガーランは思わず尻もちをついてしまう。

 

「その程度ですかな?」

 先程の意趣返し。須永は見下ろしながらニヤリと笑ってみせる。

 

「いいぞ、ダンディー!」

 観客からの声援に須永は右手を軽くあげて反応を示す。余裕がある証拠だった。

 

「チックショー」

 ガガーランは、ガンとマットを殴りつけて悔しさをあらわにし、ギロリと睨みつけたが、須永は相手にしない。

「コノヤロウ!」

 ガガーランは、怒りに燃えた表情で、すっくと立ち上がると、両拳を握りしめて、エネルギーを手に宿す。

「おら、おら、おら、おら、おらああああっ!」

 チョップを連打連打連打。左の逆水平と右の振り下ろしをランダムに打ち込み、須永の体を揺らし続ける。

「ぬっくっ、つぉっ」

 軽く20発を超えるチョップの連打。その間一切スピードも威力も落とさない──いや、むしろ上がっている。──これは凄いスタミナだ。後半になるにつれ、場内の歓声が大きくなっている。

 

「シュッ!」

 大きく両手を振り上げ、同時に振り下ろす。

 ……いわゆる"モンゴリアンチョップ"だが、この世界にモンゴルという地名はない。きっと名称も違うものになるだろう。

 

「ぐおっ」

 渾身のダブルチョップで、須永は体勢を崩し、右膝をついた。

「どおぁぁりゃああ」

 体重を乗せた右エルボーが顔面へと打ち込まれ、須永は背中からマットへと沈む。

 

「フォールだあっ」

 先程、須永が見せたように両肩をおさえつけ、レフェリーにカウントを促す。

「OK、ワンっ!」

 マットを1回叩くよりもやや早いタイミングで、須永はあっさり肩をあげ、フォールを返す。

「チッ、足りねえか。噂通りだな、こりゃ」

 ガガーランに落胆の色はなかった。

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