異世界プロレスinオーバーロード   作:NEW WINDのN

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第22話 ラッシュ

 

 

「足らねえってことなら、いくらでも足してやる。ああ、釣りはいらねえぜっ!」

 ガガーランが再び攻勢にでる。左手で須永の首をおさえつけると、右のエルボーを連打、連打、連打。

 一撃、一撃に体重の乗ったエルボーが、須永の左頬へ何度も何度もめり込んでいく。

 

「どおりゃああ!」

 この1発は、ぶつけるというよりは、飛び上がって落下しながら肘を叩きつけ、さらに体重を預けて押し潰すという感じに見えた。名付けるなら……エルボーと、体で押しつぶすボディスプラッシュを合わせた"エルボースプラッシュ"だろうか。

 

「カウントっ!」

 そのまま押さえ込み、カウントを要求。トニー・カンレフェリーが素早く須永の頭側に、飛び込むように回り込みカウントをいれる。

「ワンッ! ト」

 カウント2より前に須永はブリッジで返し、そのままガガーランを跳ね飛ばす。

 

「軽々と!?」

 ラキュース達3人の声が重なる。

 

「クソッ、まだ足りねえかっ!」

「まずまずのエルボーですな」

 須永はわざとらしく笑みを浮かべた。

 

「こんのやろーっ! 」

 もう一度須永に掴みかかると、エルボーをまたもや連打する。

「まだまだまだまだまだまだまだまだまだァ!」

 怒涛のエルボーラッシュだ。気迫溢れる連打が止まらない。

 

「いけーガガ!」

 ラキュースが声を出す。

「それいけ、ビューティーッ!」

 "戦う私は、世界でイチ番美しい"……その言葉通り、一心不乱なエルボー連打が、美しく光り輝く……ような気がする。

 

「シャアっ」

 30を超える連打の末、ガガーランがタメを作って放つ渾身の一撃……だが須永は倒れない。

 

「おおっ!」

「エルボーは色々な打ち方があります」

 須永が繰り出したのは、ガガーランの顎を下から、かちあげるように打ち抜く"エルボースマッシュ"。

「がはっ」

 脳を揺らされ、ガガーランはたった一発で片膝をついてしまう。ここで倒れないところが、彼女の耐久力の高さ、そして体幹の強さを示しているのだが、彼女は知らない。この思わずついてしまった片膝の意味を。

 

 なんとか倒れずに、片膝をつく。または、立ち上がるために片膝をつく……この動きは、自然に発生するものであり人間なら誰しも起こす行動だ。

 しかし、そこに目をつけたある天才によって、ある時期以降のプロレスでは"片膝をつく"というのは危険なサインとなっているのだ。

 

緑の閃光(シャイニングエメラルド)

 ガガーランの左太腿を踏み台にし、野球のトルネード投法のように右腕を捻ってから、叩きつけるように放つ右エルボー! ! 

 

「ぐはっ」

 まともにもらったガガーランは、ズズンという音とともに、リング中央に大の字に沈む。

 

 須永の反撃に場内と中継モニターの前で歓声があがる。

 

 

「いくぞっ!」

 須永は、青コーナーを指差す。そして、ダッシュしてコーナーポストを華麗に駆け登る。

「飛ぶぞっ!」

 須永は右腕で力こぶを作ると、左手で肘を叩いてアピール。

「とおっ!」

 場内に背を向けたまま飛び、ダウンしているガガーランの喉元へ右肘を突き刺した。

 

「出たあ! ダンディ須永の空中殺法、ダイビング・エルボードロップだあっ!」

「これは背面式ですね」

 進行役と解説によるわかりやすい実況が入る。

 

「ぐえっ……」

 呻くガガーランを無視するかのように須永は、今度は赤コーナーへと駆け上がった。

 

「行きますぞっ!」

 右腕をクルクル回してアピールすると、またまた背中を向けて今度は高めに飛び、くるりと後方に一回転。

 

「出たぁムーンサルト!」

 これは実況ではなく、皇帝(ジルクニフ)の声だった。

 

 しかし、これは単なるムーンサルトプレスではない。腹部からプレスするのではなく、1回目のダイブと同じ体勢になって、再び肘を落としたのだ。つまり、半回転多い。

 

「ぐああっ」

 須永のムーンサルトエルボードロップが決まり、ガガーランの動きが止まった。

 

「悔しいけど、強い……」

「あの体であの動き……只者じゃない」

「化け物かもしれない」

 あのタフなガガーランが、ここまでボロボロになることが、3人には信じられなかった。しかも、今受けた技は、武器や魔法によるものではない。……様々な形の肘打ち4発だけなのだ。

 

「いいぞ、ダンディっ!」

「さすがだぜ。同じ入りから別の技……か」

 ムーンサルトプレスを応用したムーンサルトエルボー。須永ならではのバリエーション技である。

 

「レフェリー、ダウンカウントを」

 須永は3カウントではなく、ダウンカウントを要求する。

「オーケー、ダウン。カウント、ワンっ!」

「ダウンカウント。10カウント以内に立ち上がらないとビューティ・イチ・ガガ選手の負けとなります」

 ルール説明のアナウンスが入る。須永はその間にニュートラルコーナーへ移動し、コーナーポストに背中を預けてガガーランを見下ろす。

 

「フォー、ファイブ」

 まだガガーランは動かない。

「シックス、セブーン、エーイト」

「ガガっ」

 ラキュースが大声で声援を送る。

「ナイン」

 あとひとつ。

「テ……」

 カウント9.5というところで、いつの間にか歩み寄った須永が、ガガーランを引き起こした。

「まだ終わるには早いですからな」

 まだ足元が覚束無いガガーランへ、須永は逆水平チョップを叩き込む。

「ぐうっ」

呻くことしかできないガガーラン。

「……先程までの勢いはどうされたのですかな……その立派な大胸筋が泣きますぞ?」

 この瞬間、地獄の門が開く音が、ラキュースには聞こえたという。

 

 

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