さて今回のフィニッシュ・ホールドは……。
「……レーザーブレード」
須永は斜め前にのばした右腕に左手をあて、肘のあたりから指先へ沿うようにすっと動かす。これは闘気を腕に込めるという予備動作であり、これも含めて技であったのだが、須永の右腕は青白い光を放ち始めた。
(あれ? 確かにギミックとしては設定したけど……まさか反映されてる?)
須永は内心戸惑ったが、これもプロレスだと納得しそのまま続けることにした。
「ダンディダイナミック!」
そして、闘気を込めた右腕を振りかざし、半円を描いて斬りつけるように腕を振る。
「ずあっ」
ガガーランは両腕でガードするが、耐えきれずガードごと首を狩られた。
「くあっ」
これまでとは違う重い一撃に、ガガーランはたまらずダウンしてしまう。
「まだ、ダウンは、はやいですぞ」
須永はロープにもたれかかりながら、ガガーランの様子を見る。
「くそっ……なんだ今のは……」
「そうですな……
単なるの部分を強調する。そう、あくまでもバリエーションの中のひとつにすぎず、助走無しで放つため威力も控えめのはずだった。たぶん。技名を叫んだのは、単なる気分である。
「馬鹿にすんなっ!」
ガガーランは右脚で思いっきり須永の股間を蹴りあげる! というつもりで、蹴りを放ったが、ガッチリと須永の左腕で足を掴まれてしまう。
「それは反則てすぞ。少々お仕置きが必要ですかな?」
須永は右腕をスっとあげ、技の入りをアピールする。
「出るか、ドラゴンスクリュー」
ジルクニフが立ち上がって拳を振り上げる。
「いえ、
須永は、右腕を巻き付けるのではなく、足首をとり、両手で、時計回りに回るドラゴンスクリューと反対側に捻る。"曼荼羅捻り"と呼ばれる技である。
「うがっ……」
ガガーランの体が足首を中心に一回転。そして普通なら倒れ込むところをそのまま元の体勢にまで引き戻す。
「せやっ!」
今度は時計回りの正調ドラゴンスクリュー!
「ギアッ……」
ガガーランの右足が悲鳴をあげた。
「表裏……のドラゴンスクリュー……か」
「あれは……ヤバイっすね、陛下」
バジウッドがジルクニフを見ると、早速今の技のフォームを真似していた。
「ぐうっっ」
右膝を手で抑えながら呻くガガーラン。
「どうやら、研究してきていたようですな」
須永は感心していた。初見ではタイミングを取りにくいのに、ガガーランが対応していたからだ。それも、初公開の曼荼羅捻りまでタイミングを合わせてくるとは、なかなか出来ることではない。
「知っているかい? この街じゃな、アンタの技を解説する本が山ほど売られてるんだよ……」
ガガーランはふらつきながらも立ち上がってくる。
「もちろん知っていますが、よく初めて出した曼荼羅捻りにも対応できましたな」
「……アンタはこう言っていたはずだぜ。『同じ入りかたから別の技というのもテクニックですよ』とな。だから、逆回転というのはあり得ると俺は思っていたんだ」
ガガーランは一見して、頭まで筋肉にみえるが、そのようなことはない。考えてなさそうに見えて、しっかり研究していたのである。
「なるほど。どこまで対応できますかな!」
須永はその場から足を揃えて飛ぶ。
「ドロップキックかっ」
咄嗟に顔をガードするガガーラン。
「ぐやあっ」
たが、須永はガガーランの左膝をドロップキックで撃ち抜く。
右膝を痛めていたため、ガガーランは左を支えにしていた。そこにこれである。さすがに耐えられるはずがなかった。
「くそっ、下か……」
「まだですぞ?」
須永は仰向けにダウンしていたガガーランの右足を掴むとスっと自分の左足を差し込みクルンと回転。気がつくと、ガガーランの足は4の字に固められていた。
「ギアああああああああああああああ」
痛めた両足への容赦ない追撃に、ガガーランは堪らず悲鳴をあげた。
「ガガ、
トニー・カンレフェリーが顔を顰めながらガガーランへ尋ねる。
「だ、誰が……うぎゃぁぁぁぁああああ」
須永が上半身を1度起こしてからバァンという音とともに後ろに倒れ込む。
「ロープまで逃げれば技は外されブレイクとなりますが、そのまえにビューティ・イチ・ガガ選手が
初のプロレスルールでの試合のため、わかりやすいアナウンスが入る。
「逃げて、ガガーラン!」
心底不味いと思ったラキュースが思わず名前を叫んでしまう。
「あっ……」
「あっ……」
双子と3人で顔を見合わせる。
「俺は、ビューティ・イチ・ガガだあああっ!」
ガガーランは、泣く子がさらに泣き叫ぶような鬼の形相でロープへとにじり寄る。
「逃がすな、ダンディ!」
「ダーンディ! ダーンディ!」
ホームである須永の人気は絶大。観客は須永の勝ちを望んでいた。
「うぉぉっ!」
しかし、ガガーランの右手が1番下のロープ──サードロープ──を掴む。
「ブレイク!」
須永はあっさりと技をとき、リング中央でガガーランを観察する。
「ど、どうでい」
声が枯れ、さらにハスキーになった声が弱々しい。
「では、終わりにしましょう……スライディング
ダンディは勢いよく走り込むと、上体を起こしたガガーランの胸元へスライディングしながら、右の逆水平チョップ!
「ぎょはっ」
そして、そのままフォールする。
「OK、ワン、トゥ……」
3つ目はややタメてから振り下ろす。
「スリ」
「ぐべらああっ!?」
カウント2.97でガガーランは、謎の雄叫びとともにかろうじて返した。
「……素晴らしい……」
須永は素直にそう思った。しかし、すでに限界は見えている。
「手は抜きませんぞ」
須永はガガーランをひょいっと軽々と持ち上げ、ボディスラムでリング中央へ叩きつけると、自らはトップロープを飛び越えてエプロンサイドへ降り立った。
「これがスワンダイブ式です」
須永はトッブロープへ飛び上がると、反動をつけて前方一回転。ガガーランへ背中から落ちる。"スワンダイブ式ローリングセントーン"だ。
「くべあっ」
これは効いたようだが、須永はもう一度エプロンへ。
「ドラゴンダイブ行くぞ!」
須永は両手の人差し指で天を指し示し観客を煽ると、その場飛びでロープを掴まずに、一番上のロープへと飛び乗った。
反動をつけて、一旦真上に3メートルほど飛ぶと体を反転させリングへ背を向ける。
もう一度ロープの反動を使って背中向きにリングへと飛び、クルクルと2回転月面宙返りを決めてガガーランへと落下し、フォールする。これが"ドラゴンダイブ式ダブルスピンムーンサルトプレス"である。
あまりの大技に観客達は声をあげることを忘れていた。
バン! バァン! とレフェリーがマットを叩く音が響く。
「……スリッ」
カウント2.999で、ガガーランがフォールを返した。
「まさか……」
須永はビックリしたが、これが本能であり、無意識に返していた事に気づく。
「ふふっ……ビューティ・イチ・ガガ、貴女は立派なレスラーなんですな。この1戦のみというのは実に惜しい。敬意を評して私の魂を込めた一撃で終わりにさせていただきます」
ガガーランが上体を起こすのをみた須永はロープへと走り、右膝をガガーランの
「ワンッ! トゥッ! 」
ジルクニフを筆頭に場内は大声でカウントを合唱。
最後の手を振り下ろす前にレフェリーは「こりゃ、だめだ」とばかりに首を左右に振ってからマットを叩く。
「スリー!!」
試合終了を告げるゴングが鳴り響き、そして……。
「ただいまの試合は、33分33秒……33分33秒……"魂のスリーカウント"により、勝者ダンディ須永!」
勝者を告げるアナウンスが入った。
試合終了です。
次回第2章最終話 となります。
今回のサブタイトルをみて、フィニッシャーがわかった方はいたかなぁ。
前回閃光が膝じゃなくて肘だった理由は、今回のフィニッシャーがあったからです。