帝国プロレスのエ・ランテル大会も大盛況のうちに試合が進み、メインイベントを迎えていた。
メインイベントは、ダンディ須永&超神・ジーニアス・カイザー組VSタイガー・ジェット・ティ&レイン組によるタッグマッチである。
「うぐあっ……」
「ほらほら、どーしたの?」
上下に別れたセパレートタイプのコスチューム……色は黒地に赤ラインの女虎覆面ティが、豪華な金・銀デザインの覆面に、同色のコスチュームで全身を覆っているカイザーの顔面を右足で踏みつけ、グリグリとシューズを擦りつけ痛ぶっている。
「どこが
ティは手応えのなさに呆れながら、この数分間カイザーを痛ぶっていた。
「カイザーっ! 返せ」
須永はコーナーから動かず檄を飛ばす。
「無理~だよ、スナッちゃん。コイツ弱いもんね。ねぇ、そろそろ降参しちゃう?」
さらに体重を掛けて踏みつける。
「誰がするか……」
「おんやーいきがっちゃって。可愛ー。でもぉ、お姉さんそういうの見るとさらにいじめたくなっちゃうんだー」
きっと素顔は美女なのだろうが、口を歪めてニンマリと笑う様は、獰猛な動物……虎のようだった。
「あのおねーちゃん、怖い」
客席の子供達が半べそになり、ガタガタと震え出す。
「カ・イ・ザー! カ・イ・ザー!」
須永はコーナーポストの上部を叩きながら、声を張る。
「カ・イ・ザー! カ・イ・ザー!」
半べそをかいていた子供が真っ先に声を張り上げ、さらにそこから会場全体に伝播していく。
「説明しておこう。カイザーは声援を力に変える力を持っているのだ。さあ叫ぼう。力の限りカイザー! と」
アナウンスが入ると、一気に声援のボルテージが上がる。
「うっさいなー。いくら叫んだって無理だよムリー」
ティは明らかにイライラし始めたようだ。見えないはずの虎覆面の下で青筋がピクピクとうごめく様がハッキリわかる。
「死ねよ、カイザー」
足を振り上げ踵を落とす。
「らあっ!」
その足をカイザーは掴み、肩で息をしながら立ち上がった。
「カ・イ・ザー! カ・イ・ザー!」
「声援は力になるんだ。いくぞ、猫娘!」
「虎だよっ!」
ティの抗議の声と同時にその体が時計回りにくるんと回転する。
「いったっ」
ドラゴンスクリューである。
「まだまだっ」
カイザーは手を離さず、
「あぎいっ」
「いけーカイザー!」
子供が声を張り上げる。
「まだまだって言ったじゃないかっ!」
さらにドラゴンスクリュー!
「くあっ……」
「せりゃさあ!」
さらにもう一度モーションに入る。
「やらせないよっ!」
ティは空いてる左足で跳びカイザーの延髄を蹴る。
「甘いね」
咄嗟に手を離し左足をキャッチし、一回転。さらにもう1回回して、最後は……。
「リバースドラゴンスクリュー!」
いわゆる曼荼羅捻りである。逆回転してティのタイミングを外す。須永の
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」
「いくぞっ!」
カイザーは天を指差し、ティの痛めている両足を掴む。
「ま、まさかお前えええええええええ」
「ふん、私を痛ぶるのに時間をかけたんだからな。私も少々やり返すだけださ」
ティの両足の間に、カイザーは自分の右足を差し入れながら踏み込み、ティの両足を膝でクロス。一瞬ためを作ってから、ステップオーバー!
「あぎゃああああああっ」
ひっくり返されたティが悲鳴をあげる。
「カイザー・スコーピオン!」
見栄を切ってから腰を落とす。これでカイザー・スコーピオンの完成だ。いわゆるサソリ固めなのだが、見栄を切るのがオリジナルポイントである。
「カイザー!」
ちびっこから大人までカイザーに声援が集中する。
「くっ。くそっ、クソがー!」
ティはロープににじり寄ろうと必死に手を伸ばすが、場所が悪い。ここはリング中央ど真ん中。調整して10メートル四方となっているためまだ4メートル近くある。
「仕方ない」
青コーナーにゆらりとたっていた青いロングタイツのレインがサッとリングに飛び込む。
「介錯!」
と言っても、ティを楽にするために首を切るわけではない。カイザーの左頬を右足の甲でバチーンと蹴り抜いた。
「ぐああ」
「いぎぃっ」
悲鳴は2つ。蹴られたカイザーは当然として、技をかけられていたティも、衝撃で一瞬技が強まり悲鳴をあげた。
カット──捕まっていた仲間を助ける──にしては強烈すぎる1発にカイザーは赤コーナーまで転がっていく。
「交代ですな。あとは私が」
「頼むぞ、ダンディ」
赤コーナーはタッチして選手交代。須永が素早くリングに入る。
「こっちも代わるか?」
「早く代われよ、お前」
「仕方ないな」
レインはティの腕をつかむと、青コーナーへとぶん投げた。
「いったいなあ。何すんのさ」
「代わるためだ」
レインは自コーナーに設置されているタッチロープをつかみながら、ティとタッチする。
「頭固いなー。おい、氷」
リングサイドに控えていたセコンドに要求し、本人は場外へ転げ落ちた。
(意外とやるネ……)
膝を冷やしながら、天を仰ぐ。
リング内は、須永VSレインとなっている。
「せいっ!」
「しっ」
須永の右ストレート掌打をわかっていたかのように躱し、その腕を掴んでアームホイップで投げ飛ばす。
しかし、須永もそれを予期しており、両手をついた反動で体勢を戻しながら、空中で体を捻りオーバヘッドキック!
「ぐっ……やるナ……俺の領域なのに」
レインは後頭部に手を当てながら立ち上がる。
「返し技を返す技もあるのですよ」
しばらくの間、須永の攻撃→レイン返し技か、レインの返し技→須永返す。のどちらかの攻防が続くも、徐々に須永が圧し始め、抱えてあげてから回転しながら背中から落とす旋回式スパイン・バスターで叩きつけた。
「グオオッ……」
レインはダウンしたまま動かない。須永は、その頭側に仁王立ちになる。
「決めますぞっ!」
左右のサポーターを客席に投げ入れた後、人差し指を立てて両手を交差させ、腕を開くとロープへと走る。
"何をやるかは知らないが、とにかくなんかやるぞ! 叫んどけっ! "という感じで、大歓声があがる。
「いけっ、ダンディ!」
エプロンサイドからカイザーが叫ぶ。須永はロープの反動をつけるとそのままレインを飛び越え、反対側へ走り再度反動。
「そこだっ!」
「ダンディー!」
客席からの声援が上がる中、須永はレインの前で急停止。5メートルほど飛び上がると、右肘を震わせながら落下、レインの胸元へ肘を突き刺した。
「フォール!」
「やばい、させるかっての」
フォールをカットすべくティがリングイン。
「ダンディ、決めとけよっ!
ティがロープを跨いだ瞬間にカイザーが走り、前に出した膝を踏み台に顔面蹴りを放った。
「ちっきしょー」
2人は縺れるように場外へ落下。
その間に3カウントが入った。
次回、帝国劇場inエ・ランテル。
プロレスは試合後も含めてプロレスです。
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