異世界プロレスinオーバーロード   作:NEW WINDのN

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第35話 急報

「せいや、せいっ!」

 食後の軽い運動をしていた皇帝ジルクニフの下に、急報が入った。

「ほあたああっ!」

 それは、ちょうど藁人形の顔面をトラースキックでぶち抜いたところだった。

 

「陛下、一大事でございますぞ!」

 秘書官の1人がひっくり返らんばかりの勢いで駆けてくる。

「一大事か。さて、どのようなことかな?」

 ジルクニフは汗を拭きながら穏やかに尋ねる。

「はっ……お、王国領エ・ランテルより救援要請が入っております」

 王国の……しかも王家の直轄領であるエ・ランテルが、帝国に救援を求めているとのこと。これはハッキリ言って異常事態である。

 

「ほう……エ・ランテルからだと?」

「はっ。正確に申し上げるのであれば、エ・ランテル市民からの救援要請でありますが」

「市民からか……いったいなにがあった?」

 ジルクニフは詳細説明を求めた。

「あの地にいる手の者によると、どうやらエ・ランテルで大規模な反乱が起きたようです」

「反乱とは穏やかではないな。まあ、察するに食糧だろうな」

「さすがは陛下。ご明察のとおり、ここのところ続いていた食糧不足……またそれによる値段の高騰を不満に思う民達が、食糧を扱う商会と都市の備蓄倉庫を襲ったのが始まりです」

 民を飢えさせるのは、1番やってはいけないことだ。

「聞くところによると守備隊もそれに同調し、とめるものはいなかったそうです。都市長は離脱に失敗したとか」

「そうか。守備隊といっても、平民の出身だろうからな。まあ、そうなるだろうよ。ふむ。私は反面教師にしないといけないな……」

 ジルクニフは真顔で呟く。

「陛下は、この国をよき方向へ導く存在です」

「そうあり続けるようにしよう」

「はっ。私も微力ながら、お力になれるようにいたします。……王国の対応ですが、第一王子バルブロ自ら討伐軍を指揮し、エ・ランテルを攻めているようです」

「……愚策だな。どうせ王家の威光を振りかざし、名前のみで制圧するつもりだったのだろうが……」

 ジルクニフは蔑むように笑う。秘書官も似たような笑みを浮かべている。

「はい。すでに王家の威光など……」

「……存在していないことに気づいていないのだな。哀れなことだ」

「王国では、このような話が流布しているようです」

 

 兄王子 脳が足らない バカ息子

 弟は 力がなくて 役立たず

 黄金は パンのかわりに ケーキ勧め

 王様は 決断出来ず 年寄りに

 

「黄金だけ違和感があるが、他はその通りだからな……それにしても、あの都市は城塞都市だ。簡単には落ちぬだろうに」

「確かに。しかし、援軍なき籠城は……」

「わかっている。王子自らとあっては王国には援軍の期待はできぬからな。我々に求めるのはわからぬ話ではないがな。まあ、食糧も少ないだろうし、一刻を争うな」

 ジルクニフは顎に手をあて、口元を覆いながら呟く。

「では……」

「当然、援軍を出す。民が助けを求めるなら、大義名分には十分だ。私自ら出るぞ」

「陛下自らでございますか?」

 秘書官はさすがに驚きを隠せない。

「当然だ。帝国軍が来たというのと、皇帝みずから救いに現れたというのは印象がまるっきり違う。足の速い馬を用意しろ。すぐにでる。たしか、近くには行軍演習をしている軍があるな?」

「はい。新設の第10軍団がおります。また、そこから1日の地点に第9軍団」

「よし、私が合流次第その2軍団で先に攻める。各軍から足の速いものを選抜し、先にむかわせろ。守備は2軍団のみで構わん。4騎士は全員私と同行だ」

「御意」

「速さが命だ。急ぐぞ。ところでダンディはどこにいる?」

「は。たしか……"村おこしプロレス"を開催しております」

「そうか。たしか、エ・ランテルに近いな」

「はっ。2日かからないほどの距離かと」

「よし、移動しながら連絡をとる。まずは私の鎧を持て! それと例のものもだ」

 

 ジルクニフは快活に命令を下した。

 

 そしてメイド達に手伝わせて装備を整えながら、用意された湯漬けを立ったまま食す。食事自体は先程すませているが、これは儀式的なものである。

「人間の一生など儚いものさ、夢か幻か……だからこそ、我々は今をいき、時を惜しむ……よし、出るぞ、続け!」

 ジルクニフは、獅子をイメージした黄金の鎧、サークレットのような兜を身に纏い、用意された真っ赤な駿馬に飛び乗ると、一騎がけで城を飛び出した。

 ちなみに、小手の下には専用オープンフィンガーグローブを着用している。右に皇、左に帝が刻まれた皇帝仕様の特注品だ。

 

「陛下が御出陣なされた!」

 この一報に各軍の動きが慌ただしさを増す。

「遅れるなっ!」

「まったく、ずいぶん行動的になったものですわね」

「早く追いましょう」

「…………」

 4騎士がすぐに続き、さらに各軍団から精鋭が飛び出す。先陣は1000騎足らずというところだ。

 

「敵はエ・ランテルにあり! 都市を解放するぞ! 」

 この疾風のような出陣をきっかけに、後にエ・ランテルの変と呼ばれる戦が始まる。

 




プロレスの匂いがあまりしない……。トラースキックくらいじゃないかと。

第3章も残り5話となりました。


帝国プロレスに参戦して欲しいキャラクターは?

  • ガゼフ・ストロノーフ
  • 森の賢王
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