異世界プロレスinオーバーロード   作:NEW WINDのN

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第35話と对になる話です。


第36話 一大事

「殿下、一大事でございます」

 食後の昼寝をしていたリ・エスティーゼ王国第一王子バルブロは、側近の声に不快そうに目を開けた。

「なんだ……どうした……敵襲以外は起こすなと言ったはずだが……そもそも敵襲など……あるわけがない。都市は閉じこもっているし、そもそもここは我が国の領土なのだぞ? ……ふあぁあ……では何かあれば声をかけろ。敵襲ならな」

 バルブロは欠伸をし、もう一眠りしようとする。まったく緊張感がない。いくら自国領内とはいえ、指揮官としては失格だろう。

「残念ながら、その敵襲でございます」

「なんだと?」

 さすがに暢気にしているわけにもいかず、バルブロは起き上がってきた。眠そうに目をこすりながら。

「ここ数日静かだったのに急にどうしたわけだ?」

 バルブロ率いる討伐軍は、現在エ・ランテルを囲んでいるが、市民たちは鉄壁の城塞を頼みにし立て篭り一切出てこようとはしない。わざわざ出る必要などないのである。食料がある限りは。

 バルブロは数度攻略を試みたが矢や落石で抵抗され、失敗に終わり以後攻めあぐねていた。城壁に囲まれたエ・ランテルを力攻めするのはかなりの損害がともなうし、今後も重要拠点として使うことを考えれば、都市へのダメージは抑えたい。

 そう考えたバルブロは、好みの戦略ではないが、都市の入り口を押さえ周囲をとり囲み物流をとめる兵糧攻めを選択した。先日エ・ランテルを訪問した際に都市の備蓄状況が芳しくないことは確認しており、長くは持たないことは把握済みだった。籠城は援軍あっての策であり、援軍なき籠城は愚策である。

 

「ですから、敵襲です」

「だから、どういうことだと!」

 側近の報告が要領を得ないことに苛立つバルブロ。まったくもって話が進んでいかない。

(こいつも使えんな……)

 バルブロは交代させると決めた。

「敵襲なんです。帝国軍です!」

 側近はようやく大事なことを告げた。

「バカモノー、それをはやく言わんかっ!」

 バルブロは一瞬で目が覚めた。帝国軍が来るとは、まったく予想していなかったのだ。

「それで、敵はどこだ?」

 敵襲にしては静かすぎた。

「はい。ここからほど近いあたりに集結。兵力はおおよそ3万です。先程布告がありました」

 側近は羊皮紙を差し出した。

「よこせ!」

 バルブロは乱暴に奪い取り、目を通した。

 

 布告内容は以下の通りだ。

 

 王国に対し宣戦を布告する。

 

 リ・エスティーゼ王国による、圧政、重税に苦しみ、食糧供給すらままならない無能な王家の支配によって飢えに苦しみ、さらにはその王家から剣を向けられた、エ・ランテルの無辜の民から救援要請を受けた。

 よって我々バハルス帝国は、その苦しみから解放すべく立ち上がり、民を解放することを決めた。これは善意によるものである。

 民の安寧を考えるのであれば、直ちに兵を引くことを勧める。抵抗するのであれば、相応の覚悟をせよ。

 

「他国の問題に勝手に首を突っ込んで何をいうか。捻り潰してやる」

 バルブロはバハルス帝国の援軍を先に潰すことを選択した。

「ところで、どの軍団が出てきているかは掴めているのか?」

「もちろんでございます。旗印から察するに第9軍団、第10軍団のようですが」

「9と10? やつらは8軍団までではなかったのか?」

 バルブロもちゃんと教育は受けているし、敵対国家の軍団数くらいは把握していた。

「私もそのように記憶しておりますが……」

「チッ、増強していたのか。ふむ……新設軍団か……まあ、新兵の慣らしのつもりだろう。それに指揮官も、指揮官としては初陣だろうな。とすると本気ではないのかもな」

 バルブロの肩の力が抜ける。新兵中心なら12万の討伐軍で十分だろうと。これがレエブン侯であれば違う判断をしただろうか。

 

「あ、それと一つ。中央には皇帝の旗印が見えました」

「なんだとぉ?!」

 この報告にはさすがに驚いた。新設軍団に皇帝の組み合わせ……とは。

「よし、これは絶好の機会だ。皇帝ジルクニフを討て! 討ち取ったやつは貴族にしてやると通達せよ! 敵は寡兵であり、また新米の弱兵揃いだとも伝えよ」

 バルブロは高揚していた。ここで皇帝を討ち取れば、自分が後継者として相応しいことを内外に知らしめることができるのだから、当然だろう。

 

「よし、出るぞ。ここの抑えは、昨日到着したレエブンの部隊に任せておけばよい」

「かしこまりました。レエブン侯にはそのように申し伝えます」

 側近は頭を下げ退出していった。

 

「ふはははは! (ザナック)よ、歯噛みして悔しがるがよいわ。この戦いが終われば、私が次の王に決まるのだから」

 

 バルブロは、玉座に座る自分の姿を想像し、笑みを浮かべた。

 

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