異世界プロレスinオーバーロード   作:NEW WINDのN

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第39話 裸の王族

「こ、降伏だとぉ?」

 バルブロは声がひっくり返っていた。

「ええ。どうみてもそちらに勝ち目はないですぞ。完全に包囲しておりますし、貴方には援軍もいない。ああ、言い忘れてましたね。先程第9軍団から連絡が入りましたが、貴方の義理の父親をはじめとした主な貴族は捕らえましたよ。民忠が低いらしく、ほとんどの方が民兵に離反されたそうですよ」

 バルブロはあまりの事態の変化に頭がついていかない。

「潔く降伏するのであれば、兵は見逃しますし、御自身はそれなりの待遇で扱わせていただきますが。ま、王位は無理でしょうがね」

 白銀鎧の軍団長ロビーは、バルブロの弱みを的確につく。

「ぐっ……貴様っ……いや、兵はどうでもよいから私だけを逃がしてはくれまいか?」

 バルブロは本音を口にした。兵はどうでもよい……酷い発言である。

「それが貴方の本音か……そういう思いでいたから、今こうなっていることに気づいていないのですよ。バルブロ・アンドレアン・イエルド・ライル・ヴァイセルフ……」

 ロビーは呆れた声を出した。

「貴様っ。この私の名を呼び捨てるとは……許されんぞ」

「本当に許されないのはどなたでしょうなぁ……最後にもう一度だけ伺いましょう。リ・エスティーゼ王国第一王子、バルブロ・アンドレアン・イエルド・ライル・ヴァイセルフ。あなたが降伏すれば大勢の兵が救われます。私は降伏をおすすめしますが……返答はいかに。これがファイナルアンサーですぞ?」

 ロビーは低い冷徹な声で最後通告する。

「答えは変わらん。兵などどうでもよい。兵はいくらでも補充はきくが、私の代わりなどいない。だから私を見逃せ。このバルブロ・アンドレアン・イエルド・ライル・ヴァイセルフをな」

 バルブロは本音のままにそう答えてしまった。当然彼の周りにいた兵も聞いているのに。

 

「……今の中継できてますかな?」

「中継?」

 バルブロは不審に思う。

「ええ。今のやりとりは王国各都市へ流れていますよ。民の命を軽んじる貴方の発言がね」

 ロビーはそう告げ、兜の下で嘲笑う。

「何っ……」

「……もちろん、この場にも流れていましたぞ? あなたは頭に血が上り、まったく気づいていないようでしたが。……おや、理解されていないようですね。では証拠をお見せしましょうか。陛下お願いします」

 ロビーは中継先にいる皇帝ジルクニフへ呼びかける。

「うむ。聞いていた通りだ。まだこの愚物に尽くすつもりかな? 抵抗しないのであれば、この私……皇帝たるジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスの名のもとに命を許そう」

「さて、どうしますかな?」

 ガランガランと音がして全員が武器を捨て、ひざまずいて降伏の意を示す……。

 

「さて、バルバロいや、バルブロでしたな。ご覧の通りです、可哀想に……敵軍の中にひとりぼっちですな」

「な……」

「さて、降伏はしないということでしたので、せめて最後は潔く縛につけ!」

「嫌だっ!」

 バルブロは剣を抜く。

「仕方ないですな。では参ります。雑兵に召し取られたというのもあれですから、せめてもの手向けに私が自らお相手しましょう」

 白銀の鎧が動く。まず、バルブロの剣へ向けて左ナックルパート! バルブロの煌びやかな美術品として価値の高そうな剣は粉とかす。

「なあっ……」

 唖然とするバルブロの足甲を左右のローキックで蹴り砕く。

「せいっ!」

 篭手と兜を手刀で真っ二つに割ると、両足を揃えたドロップキックで鎧を砕き、バルブロをぶっ飛ばす。

「ぐあっ……」

 何も出来ないバルブロは、あっという間に全ての装備品を失いうつ伏せに伏せた。

「では、これで裸の王族は終わりです」

 ロビーは、バルブロをうつ伏せの形で肩に担ぐ、いわゆるファイヤーマンズキャリーの体勢に入った。

「何をするっ……」

「王族の失墜を技で表現しようと思いましてなぁ……」

 ロビーは穏やかな声である。

「その声……貴様あの時のっ?」

 バルブロはこの後を続けられない。高速でロビーが回転し始めたからだ。

「おおおおおわぁぁっ!」

 そして天高く投げあげられた。

「とあっ!」

 ロビーはあとを追いジャンプ。真っ逆さまに落ちてくるバルブロの首に自らの足を4の字で引っ掛けて、そのまま落下していく。

「王家の失墜!」

 そのまま両手で着地し、衝撃をバルブロの首へ……。

「ゲハアッ……」

 バルブロは意識を失った。

 

「ちょっと派手すぎましたかなぁ……」

「スナっちゃんが派手じゃないことなんてあったっけ?」

 副官の1人、ボブカットのクレアが呆れたようにいう。

「こら、私は軍団長のロビーですぞ?」

「ヘイヘイ。私もティじゃなくてクレアだもんね。ね、レイ?」

「なんか俺だけ名前雑じゃないか? だんだん名前短くなってるだけな気がするんだが」

 蒼の蜘蛛覆面レイが愚痴る。

「でもさ、なんでか知らないけどクレアって呼ばれ方懐かしい気がするのよね……」

「ああ、俺もちょっとそれあるな。レイなんて呼ばれたことなかったはずなのに」

「ま、名前なんてそんなものですよ、さて今日の任務は終わりましたな」

「じゃあ、勝どき上げちゃおうよ」

「そうですな。敵軍総大将、バルブロ王子は第10軍団長ロビーが捕縛したぞ! 我が軍の勝利だ!」

 見事初陣を飾った第10軍団と第9軍団は勝鬨をあげ、レエブン軍らはやや戸惑いながらそれに続いた。

 

 開戦からわずか60分というメインイベント並のタイムで、戦争は終わる。王国に深すぎるダメージを残して。

 






次回、第3章最終話となります。

エ・ランテルの変も、いよいよ終幕です。

なお、クレアとレイについては、わかる人がニヤリとしてくれたら良いな。
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