異世界プロレスinオーバーロード   作:NEW WINDのN

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ここから第4章スタート。



第4章 王座争奪戦
第41話 ティタイム


 

 

「ふーっ……こんなもんかな」

 帝国プロレスの鍛錬場、通称道場にてタイガー・ジェット・ティは汗を流していた。

 誰もいない時間帯こそがティの時間ともいえる。専用の人形……ダミーくんを相手に技を一つ一つ確認し、まだ見せていない技を繰り出す。帝国プロレスは日々進化している。メンバーも個々にレベルアップしているし、新たなメンバーが加わってくることもある。

「油断大敵ってね……しっかし、私ってこんなマジメキャラでしたかねー」

 独り言ちながら、ファンからの差し入れで貰った果物を頬張る。

「んーおいちー」

 もぐもぐしながら喜んでいる姿は普通の女の子のような……。

「へー、嬉しいじゃん。意外と似てるし」

 小さな女の子からもらった、ティの似顔絵に和み微笑みを浮かべる。男性人気が高いと思われているが、意外と同性からの人気がある。1番人気の須永には及ばないものの、カイザーと互角。人気2番手を争っている。

 

「ん?」

 道場の扉が開いたことに気づき、振り返る。そこには須永の姿があった。

「なに、スナっちゃん? もしかして私を襲いにきたー? 性的な意味デ」

 チラリと胸元をアピールしてみるが……。

「ないですな……」

 速攻で否定された。

「つれないなー。私はウエルカムだよー」

「遠慮しときますかな」

「うわ、かぶせ気味できたよ。傷つくんですけどー」

 まるっきり傷ついてなさそうに見えるが……。

「ティ、この子の面倒を見て貰えますかな?」

 須永は無視して、1人の少女を道場に誘った。

「ゲッ? スナっちゃんの趣味って……まさかロリ?」

「……違いますな。私はおしとやかな大人の女性好みですよ。貴女とは真逆ですな」

「……あっそ。なんかムカつくんですけどー。じゃぁ、なに? まさか……隠し子? ぜんぜん似てないけど」

「違いますな……」

「ふーん。ま、冗談はここまでにするけどー……ちょっと前に見たことあるよね、この子。たしか村おこしの時に1番前にいた子だよねー」

 須永は驚きを隠せない。

「なーにーその顔? 私を甘くみてるでしょー。ちゃんとお客さんを意識してプロレスしてるんだよー。ふっふーん」

 胸を張ってこれでもかとドヤ顔をする。

「……やりますな。それができるのは一流の領域ですぞ」

「あったりまえじゃん? 私は英雄の領域に両足入ってんだから」

「両足って……もはや英雄……」

 黙っていた少女が呟く。

「わかってんじゃん。このタイガー・ジェット・ティ様はもはや英雄なんだよ」

 ティは満面の……しかも穏やかな優しい笑顔を浮かべ少女の金色の髪を撫でた。

「良さそうな子だネ。で、私に預けてどうすんの? オネーサンのテクニックでもおしえればいいのかなぁ」

 ニヤニヤとしているところを見ると、明らかによからぬテクニックの話だろう。

「まあ、内容は違いますがね。彼女は女子プロレスラーのタイガー・ジェット・ティに憧れて入門してきました。格闘技の経験はないようですが、体力的な下地はあります」

「へえ。ますますいい子じゃん。スナっちゃんじゃなくて私ってとこが見どころあるよねー。いつまでもスナっちゃんの時代じゃないしー」

 ティはご満悦だった。

「まあ、いつまでも私の無敗が続くとはおもっていませんよ。ティにも早く私のレベルまできて欲しいですがね」

「うわーなんかよゆーですねぇ。なんかムカつくけど、倒しがいがあるのはいい事だよね? あなたもそー思うでしょ?」

 いきなり話を少女に振る。

「は、はい。簡単な壁より面白いと思います」

 目をぱちくりしながら質問に答える。

「ますますいいねー。スナっちゃん、いい子連れてきたね。気に入ったよ」

「それはよかった。そう言ってくれるとおもいましたよ」

 須永は穏やかな笑みを浮かべる。

(初めてあった時とはティも随分と変わりましたね。もちろん良い意味でですが……)

 須永は入門前の出来事を思い出す。

 

「ところで、スナっちゃん」

「なんでしょうかな?」

「好きに育てていいってことだよね?」

 ティは真面目な顔である。

「もちろんです。血に塗れるヒール路線、王道を進み、覇をとなえるもよし。どちらにも導けるのがあなたでしょう? ティ」

「わかってるねー。……私そんなヒドイことしてないけどねー今は」

「では預けますよ。女性ナンバー1の貴女にね」

「あいよー。で、この子なんてーの?」

 まだ名前を聞いていないことにきづく。

「では、自己紹介を」

 須永に促され、まだ幼さの残る少女──数年先には美人に育ちそうではあるが──はペコリと頭を下げてから、自己紹介をする。

「正式にお会いするのは初めてです。リングネーム……ライオネス・エンリです。よろしくお願いします」

「獅子……の名をつけるってマジ? バハルス帝国の紋章だよ?」

「へ、陛下にはご、ご許可を頂いています」

「陛下は快くご許可くださいましたぞ」

 二人の言葉にティは驚く。

(タダの村娘じゃないってことかな……これは面白くなりそー)

 ニヤっとした笑みを浮かべる。

「そっか。なら面白くなるね、よろしくねエンリ」

「はい。よろしくお願いします、ティ姉様」

「姉様……!? いい響きだわ……よろしく妹」

「はい。よろしくお願いします」

 二人はガッチリと握手をかわし、ハグする。

 

 姉に憧れた妹と、実は姉が欲しかった姉。利害は見事に一致したらしい。

 ニューフェイス、ライオネス・エンリの進む道は覇道かはたまた血塗らた裏街道か。すべては、姉……タイガー・ジェット・ティに託された。







本来は次話が4章の最初になる予定でしたが、3章でのティ人気により追加されたエピソードになります。

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