「そこで1つ重大な発表をしようと思う。帝国プロレスにハマっている諸君らにとっては、エ・ランテルが我が領土になるよりも大きな話題かもしれないな」
月に一度の帝都興行のメイン終了後、いつものようにバルコニーに姿を現した皇帝ジルクニフは、超満員札止めの観客を前に気になることを口にした。
「では、今日はこれまで……」
気になることをいうだけ言って帰ろうとするジルクニフを4騎士達が慌てて制す。
「お、お待ちを陛下」
「陛下、気になりますわ。ここはしっかりとお話の続きをお聞かせくださいませ」
「そうそう。ちゃんと聞いとかねぇと女房達に怒られるわ。家に帰れねえよ、陛下ぁ」
場内もウンウンと頷く。ジルクニフの話術は回を追うごとに巧みになっている。
「そうか……聞きたいなら仕方がない。それでは今ここで発表するとしようか」
まだ発表したわけでもないのに大きな拍手がわき起こる。
「それではだ。諸君も気になることだろうが、帝国プロレスには多くの選手が在籍しているのだが、誰が1番が決めてみたくはないか?」
確かにと皆が頷く。
「ダンディ須永が1番という声がほとんどだろう。彼は武神として闘技場の頂点に立ち、またダンディ・ドラゴンとしてこの帝国プロレスを率いる立場だ。現時点における帝国プロレスのエースだ。しかし、その証があるわけじゃあない。……まあ、全員に勝っているのは事実ではあるが、証ではない。そこで、私は帝国プロレスにおける1番である証として、皇帝認定帝国プロレス王者のチャンピオンベルトを創設することに決めたよ」
チャンピオンベルト……初めての言葉に場内がザワつく。
「チャンピオンとは頂点に立つもの。この場合は、帝国プロレスの頂点すなわち最強を意味する。ところで、諸君。帝国プロレスの頂点が意味することがわかるかい?」
言葉は返らず皆考え込んでいた。
「帝国プロレスの頂点、チャンピオンであるということは、この世界のチャンピオンということだよ」
帝国プロレス以外にプロレス団体はない。言い過ぎな気もするが間違ってはいないのだ、
「そして、そんなチャンピオンを決めるベルトをかけた試合をタイトルマッチというんだが……タイトルマッチか。うん、いい響きじゃないか」
チャンピオンベルトにタイトルマッチ。初めての言葉、ワクワクする言葉。場内は一気に熱気に包まれる。
「対戦カードだが、1人は決まっている。皆も当然わかっているだろうが、ダンディだ。これに異論はないよな? では、もう1人は……そうだな8人参加の勝ち抜き戦……これをトーナメントというのだが、その優勝者としよう」
このジルクニフの一言により初代王者決定戦出場をかけたトーナメント開催が決まる。
「では、この私が直々に選んだ参加メンバーを発表しよう」
おおっという声があがり、場内は緊張感に包まれた。
「かな。どうしようか?」
まさかのフェイント。皆が皇帝の掌で華麗なダンスをさせられた。
それをジルクニフは時間をかけて眺め、ニヤリと笑う。
「それでは発表しようか。名前が呼ばれたら……出てこいや!」
久々となる皇帝の独特のイントネーションに、観客はわいた。
「まずはミスター・ゼン。続いてリュー。まあ、ゼンが選ばれたら当然だな」
右腕が異常に発達した青いショートスパッツを履いたリザードマンと、バランスの取れた体格の赤いスパッツのリザードマンが揃って入場してくる。2人はデビュー戦で当たっており、2分ちょいという短いタイムでリューが勝利している。決まり手は腕ひしぎ逆十字。ゼンの太い右腕を極めてみせた。以後1歩先ゆくリューをゼンが追いかける形で競いあっている。
「続いて、レイン。そしてタイガー・ジェット・ティ」
お馴染みとなりつつある蒼のロングタイツ姿のレインが登場。ストイックな雰囲気を醸し出し、険しい表情でリングへ上がる。
「はぁぃ~」
対照的に愛嬌を振りまいて入ってきたのは女虎覆面のティである。もはや帝プロのアイドルであり、人気・実力ともに須永に次ぐ存在であり、立派なメインイベンターの1人だ。トーナメント制覇の有力候補だろう。
「5人目は超神・ジーニアス・カイザー」
金銀の派手な色遣いのマスクマンが登場すると子供達から大歓声が送られた。正義の味方として子供人気が異常に高い。ヒーローらしく前半はピンチに陥るが、子供達の声援を受けるとパワーアップ。後半は別人かと思うような力を出す。そんなレスラーだ。
「あとの3人だが、1人はわかるよな?」
客席から武王の名が叫ばれる。
「その通りだ。武王ゴ・ギンが参加する。今日は明日の闘技場参戦のために欠場しているが、当然トーナメントには参加してもらう。さて、残る2枠だが……」
誰だろうという空気。客席からはスメラギ、カスミノと言った声が上がる。
「後のふたりは後日発表するとしよう」
実力的には、スメラギ、カスミノの2人がこの6人に次ぐ存在だが、そんなに単純な話にはならない……と思われた。
「では、今日はここまでだ。GOOD LUCKだ」
今日もジルクニフ劇場は大盛り上がりのうちに幕を閉じる。
試合を楽しみにしている層がほとんどだが、中には帝国劇場での皇帝降臨を楽しみにしているものも多いという。