異世界プロレスinオーバーロード   作:NEW WINDのN

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第46話 ティVSX改め.......

「まじ?」

 ハムスタの登場以降言葉を失っていたティは、ここでようやく言葉を発する。短い言葉にいくつもの感情がこもっている。発表された対戦相手はまさかの魔獣……いや聖獣である。白い毛皮? が神々しく光を放ち、見るものを畏怖させる……そんな強大さを感じさせる存在だった。

 ティは、トブの大森林に君臨する森の賢王の名は聞いたことがあったが、それがまさか"森の拳王"となってあらわれるとは思ってもみなかった。リングという狭いフィールドの中で、装備なしで明らかに同格クラスの相手。これは正直なところかなり不利に思えた。

 だが、逆をいえばここはリング上だ。ルールのない命の奪い合いをするわけじゃない。ルールのあるプロレスをするのだ。

 

「面白いじゃないの。かかってきな……ルーキーボーイ」

「あのぉ……」

 挑発するティに対し、申し訳なさそうにハムスタが声をかける。

「なによ。サインなら後であげちゃうけどー」

「違うでござる……それがしメスでござるよ?」

「えっ? そうなの?」

 ここでゴングが打ち鳴らされ試合が始まった。

 

「いくでござるよっ」

 いきなりハムスタの蛇のような長い尻尾が、若干呆けていたティの視界外から襲いかかる。

「ぐぎゃっ」

 左頬を痛打し、耐久力の高いティをコーナーまで軽々と吹き飛ばす。

「どどーん! でござる」

 ハムスタの巨体が飛ぶ。びゅおーんと飛んで、どどーんとぶつかる。うーん、フライディングボディアタック……なのだろうか。

「うぎゃっ」

 ティは悲鳴をあげる。さすがにこのサイズ感だと重いと見える。

「いくでござるよぉぉ」

 ティの顔を踏んずけたハムスタは、ロープを掴みながら軽くジャンプして踏みつけ、さらにそれを繰り返す。

「ふぎゃっ、ぎゃっ、くぎゅ」

「これはなんだか楽しいでござるなぁ」

 もはやティは人間トランポリン状態になっている。

「よっ、ほっ、とっ」

「こらーロープだ。離れろ。ワン、トゥ、スリー、フォー」

 ハムスタはカウントフォーでばびょんと飛び上がる。一応離れたことでカウントは止まる。

「ハムストン!」

 ハムスタは背中から尻もちをつくように落下。いわゆるセントーンのはずだが、なんだか違う技にみえる。技というよりはハムスターが転げ落ちたように思えるのは気の所為だろうか。

「重っ!」

「むーうでござるよ? これが某の種族の平均でござる」

 やはりハムスタは女の子なので、重いと言われるのは嫌らしい。なお、彼女の同族はいないので、彼女イコール平均で間違ってはいない様子。

「平均だかなんだか知らないけどさぁ、重いんだよっ!」

 言葉のわりには軽々と頭上までリフトし、そのままリフトアップスラムで叩きつける。一見細身に見えるティだが、パワーは相当高い。

「いたっ。やるでござるなっ!」

 ハムスタは素早く宙返りで起き上がり、サッと反動をつけてデデーンとボディアタック。巨体に似合わず素早い動きだ。

「にゃろー舐めんなっ」

 それを強烈な前蹴りで蹴り飛ばす。

「ムンっ! でござる」

 ハムスタは毛を硬化させてその蹴りを受けとめる。

「硬って」

「ふふんでござる。その程度は某には効かぬでござるよ」

 ハムスタは腹をつき出した。いや違う……わかりにくいが胸を張ったらしい。

「その程度の壁ぶち破ってやるよ」

 ティはムキになって打撃を連打する。鋭い蹴りに強烈な突き。肘も膝をも打ち込み続ける。そして身を翻して回し蹴りも決めた。

 

「ゼェゼェ……ど、どうだ」

「や、やるでござるなぁ……」

 攻めに攻めたティはスタミナを消耗。肩で大きく息をしており、珍しく大量の汗を流していた。そして硬いハムスタの体を攻め続けた両手両足はかなり痛めている。

 そして、受けまくったハムスタは、こちらも相当のダメージを受けており、あちらこちらが痛みを訴えていた。

 本気になったティの力はハムスタの硬い防御……受けを上回っていたようだ。

 

「ハムスタ頑張れっ!」

「どうしたティ! 攻めろっ!」

 両者に大きな声援が送られる。

(不思議でござるなぁ。師匠の言う通り、痛む体も萎える心も、観客とやらの某を呼ぶ声が癒してくれるでござる。何やら力も湧いてくるでござる。……某はもう1人ではないのでござるな)

 ハムスタは産まれた時から1人で生きてきた。同族を知らず友達も家族もしらずに。

「うぉぉぉぉおお! やるでござるよーっ!!」

 やる気が溢れ出たハムスタの叫びに、客席がわく。

「いくでござるよぉぉ、ハムのメリーゴーランド!」

 ハムスタは前方宙返りから体の硬度を上げて突撃する。それを連続してクルクルクルクルと回り出す。

 

「ハムスターが回るんですなぁ……」

 須永の感覚ではハムスターが回すのがしっくりくるのだが。そしてここでひとつ疑問が生まれた。

(技を名付けたのは私だけど、メリーゴーランド……この世界にはないよなぁ)

 久々に素の須永英光としての思いだった。

 

「どぇ、ぐえっ、うえっ」

 コーナーに追い詰められた覆面美女が巨大なハムスターに蹂躙されている。これは止められない、逃げられない。ティは大ピンチであった。

(これは不味い……せめてスティレットがあれば……)

 思わず腰に手を伸ばすが、そこにはスティレット(かつての愛用品)はない。今のティは武器に頼らないプロレスラーなのだから。

(いつまで、過去の私を引きずっているんだ……もうあの頃とは違うんだっ!)

 ここはプロレスラーのティとして耐える。耐える……たえ……る。

(やっぱムリー)

 さすがに受けきれる威力ではなかった。飛びそうになる意識を懸命に食い止め続けていた。

「ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるでござる」

 ドガガガガってとティをコーナーに埋め込むかのように回り続ける。

(ん? ……コーナー?)

 一気に意識が覚醒する。

「って、レフェリー! これロープじゃね?」

 ティが気づいてアピールするが、ハムスタの巨体に隠れてレフェリーからは見えない。見えないから、反則かもわからず当然カウントは取れない……。

(そんなのアリ? ズルくない?)

 普段ズルい戦いをするくせにこれである。

(しかし、参ったねこりゃ……)

 ティはさすがに諦めはじめていた。

「ぐるぐる………………」

 だが、ここでハムスタの回転が急に止まった。

「目が回ったでござるぅぅ」

 フラフラっとしたハムスタは、ぽてんと仰向けに倒れてしまう。

「えっ?」

 一瞬呆けたティだったが、とりあえずカバーしてみることにした。

「OK。ワンッ! トゥ! 」

 反応がない。

「スリー!」

「えっ?」

 びっくりしたのはティだった。まさかの3カウントが入ってしまったのだから。

「8分6秒、体固めにより、勝者タイガー・ジェット・ティ!」

「ええっ?」

 まさかの決着であった。

 

 なお、須永のこの結末に対するコメントは……。

「所詮は獣か……なんていいませんよ。私の指導不足です。鍛え直しておきます」

 厳しい目であったと伝えられている。

 

 準決勝第1試合は、超神・ジーニアス・カイザーVSタイガー・ジェット・ティの人気者対決に決定である。

 

 

 

 

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