第3試合 リューVSレイン
リザードマンであるリューはバランスのとれた総合力の高いプロレスラーである。もともと種族的な体の強さがある上に、性格が真面目。生真面目に鍛錬に励み、須永のテクニックを吸収しぐんぐん力をつけている。同期かつ同族の(ただし部族は違うらしい)ゼンがパワーを重視し攻めを重要視しているのと対照的に、リューは受け身を重要視している。ゼンの重い一撃を耐えるだけの受けを身につけたからこそ、常に1歩リードし続けている印象だ。元々デビュー前から得意だった打撃技に加え、サブミッションも上手くなり度々ゼンからギブアップを奪っている。鋭さが売りの投げに、全身のバネをいかした飛び技……どの技も高いレベルにある。
一方のレインは、人気レスラーであるティのサポート役、タッグパートナーとして有名ではあるが、彼自身はヒールではない。もっとも、ティはナチュラルヒール+アイドルという独特の立ち位置なので、完全にヒールと言うわけではないのだが。
レインのその纏う雰囲気はザ・サムライ。凛とした佇まいで、ティから一歩引いたような立場でリングに立ち続けている。しかしそのポテンシャルは高く、返し技のうまさと打撃技の鋭さには定評がある。
この2人は主にタッグで当たることが多く、今回は久しぶりのシングル対戦となる。 前回の対戦では、レインが必殺技のレイニーブルーを狙った際に、リューが前方回転エビ固めで丸め込んで勝利している。
「倒れろやっ!」
「お前こそっ!」
手が合う2人のシングルはお互いに意地の張り合いとなった。リューがいきなり激重なチョップを打てば、レインもそれに応えて激熱のチョップを打ち返した。ここからお互いの気が済むまで打ち合うことになる。
「だあああっ」
「せりゃっ」
これが何発目になるだろうか。2人はもう5分以上チョップを打ち合っていた。並の人間なら1発でノックアウトできる強力な一撃をひたすら打ち合い続けている。
はじまりは逆水平。その打ち合いからスタートし、袈裟斬りチョップ合戦にレインのローリング式に対抗したリューの逆回転式チョップ。唐竹割りにダブルチョップ。マシンガンチョップに、起き上がり小法師式チョップ。ありとあらゆるチョップが乱れ飛ぶ。
すでにレインの胸元は蚯蚓脹れで真っ赤に染まり、リューの肌は内出血しているのか黒くなっていた。なお、帝国プロレスにおいてチョップの使い手が多いのは、須永の影響もあるが、チョップの動きが剣を振るうような軌道を描くからだと思われる。
「こんだらあっ!」
「いやっしょっ!」
ついにお互いの右腕をチョップで狙い始める。それでも痛む腕を振り続ける2人。意地の張り合いは続いている。一撃一撃に想いを込めて。
返し技の達人と呼ばれるレインだが、この試合1度も返し技を出していない。デビュー以来初めて見せる真っ向勝負。負けたくない、いや勝つんだという気迫に溢れている。
試合開始以来チョップ以外の技が1度も出ていないが、それでも観客は一発一発に反応し、2人に声援を送り続けていた。派手さはないが、それでも観客を魅了する。これもまたプロレスである。
「倒せレイン!」
「やりかえせ、リュー!」
熱い声援に応え、さらに熱のこもったチョップを打ち合う2人。
「倒れやがれっ!」
2人同時に同じことを叫びながら右手で袈裟斬りチョップを放った。
「ぐあっ……」
2人同時にダウン。二人とも左手で胸をおさえ、右手を震わせながら倒れている。
「ダウンカウント! ワン! トゥー! スリー!」
2人同時にダウンとみなされダブルノックダウンカウントが入る。
「シックス! セブン! エイト!」
2人同時になんとか立ち上がり、フラフラしながらファイティングポーズをとる。
「続行だっ!」
レフェリーが合図し、ふたりはやや距離をとって向き合う。これはチョップの間合いではない。
「だらあっ!」
レインの右ハイキック!
「倒れやがれっ!」
リューも同時に右ハイキック。お互いの側頭部を蹴り抜いた。
「ぐっ……なぜ……」
だが、倒れたのはレインのみだった。
「すまないな……」
リューは片エビでフォール。レフェリーのカウントと一緒にリューの尻尾が3度リングを叩いた。
「只今の試合は、9分25秒ハイキックにより勝者リュー!」
試合終了のアナウンスが入る。あれだけチョップを打ち合ったにも関わらず、フィニッシュは1発だけ出した蹴りというのも面白い。
「くそっ……尻尾か……」
リューに引き起こされたレインは、勝負を分けた理由に気づく。
「ああ。尻尾でガードさせてもらった」
最後の攻防、蹴りが当たる瞬間に尻尾でガードを固めてダメージを最小限にしたリューが1歩上を行ったのだ。
「チッ……やられたぜ。準決勝頑張れよ」
「おう」
2人はガッチリと握手をかわした。
第3試合の勝者はリュー。第4試合の勝者と準決勝であたることになる。