第4試合 武王ゴ・ギン対ガガーラン
「ぬおおおおっ!」
「ぐおおおおっ!」
二匹の怪獣……いや、力自慢の対決は、予想通りというべきだろう。まずは力比べから始まった。最初は両手で組み合って互角の攻防を見せていたが、力比べ開始から1分ほどすぎたところで、突如武王が左を外し右腕一本になる。そして貫禄をみせた武王は片手を遊ばせたままで、あのガガーランの両手をねじ伏せてみせた。
「おおおっ……」
あのダンディ須永をも押し込んだ女丈夫が片手で……。武王のパワーに大きな歓声があがる。
「なんてパワーだ……これが武王……か……ぐぐっ」
倒れまいとブリッジで耐えるガガーランの上に武王がドスンと乗る。
「グおおおおおおおお……!」
体重をかけられ、ミシミシとガガーランの背骨が軋む音が聞こえるが、それでも耐える。
「……タフだな」
押し込んだ腕を軸に武王は片手で逆立ちし、両膝をガガーランの腹部へ落とす。
「グゲッ……」
それを強靭な腹筋と鍛えられた首の力で耐えるガガーラン。
「ならば……」
武王は一発でダメなら……と二発三発と技を重ねていく。それでも耐える……耐えて耐え抜くガガーラン。
「諦めろ!」
六発目でついにガガーランは崩れた。そのまま体重をかけてフォールする。
「ワンッ! トゥ!」
カウント2で返すとガガーランはダメージを感じさせない速さで立ち上がり正対する。
「チッ。やってくれるじゃねえか」
ダンディ戦でも見せた強烈な逆水平チョップ。
「なにかしたのか?」
しかし武王は平然としている。基本スペックの違いがここに出る。
「馬鹿な……ダンディ須永にも効いたのに……」
ガガーランは唖然とするが気をとり直してもう一度打ち込む。
「どうした?」
「チッ……奥深いな強さってやつは」
ガガーランは苦笑いする。
「気持ちはわかる。俺もまだ高みがあることを知っている」
ともに須永に敗れたという過去のあるふたりだ。共通する思いはあるのだろう。一度負けたからこそ、もう一度負けたくはない、その想いが2人を強くする。
「だからなぁ、負けるわけにはいかねえんだよ」
今度は右腕で袈裟斬り!
「ぐぁっ……」
これは効いたようだ。チャンスと見て二発三発と繰り出していく。
「武王! 武王!」
劣勢になった武王を見て客席から声援が飛ぶ。やはりここは武王のホームグラウンドだ。圧倒的な声援が後押しする。
「チッ、さすがだよ」
ガガーランは武王の腕を掴むと豪快にロープへと振った。ロープの反動で戻ってくる武王へ向けて、自らも反対側のロープへ飛び勢いをつけてショルダータックル!
2人はガチっという音とともに、両サイドに弾け飛ぶ。
「ぐっ……なんて重さだい」
「やるナ……」
今度はお互いにロープの反動をつけタックル!
「グギッ」
「グオッ」
威力は互角。両者ともに呻きながら、たたらを踏む。
「なろっ!」
「ぐろあっ!」
もう1回。今度はガガーランが打ち勝つ。
「これでもくらいやがれっ。地獄の晩餐をご馳走してやんぜ、ガルムズディナー!」
反動をつけて放つ、全体重を乗せた叩きつけるようなショルダータックル。武王の巨体が浮き上がり、マットへと倒れこんだ。
「よっしゃぁ! 殴るぞ!」
ガガーランは両拳を突き上げてアピールすると、武王に馬乗りになった。
「おらあああああっ!」
拳ではなく掌底を連打で叩き込みまくる。ドドドドドガガガガッドドドガッ……と鈍い音がする。ちなみにガの時はガードに成功した時に発する気がする。
「オラオラオラァッ!」
ガードの隙間から捩じ込み、ガードを開かせると、的確に顔面を打ち抜いていく。
「ゴアッ!」
たまに武王が下から打ち返すがひらりとかわし、強烈なカウンターをたたきこむ。前回よりルールに順応しているし、明らかにキレが良くなっている。
「無駄だよ無駄! 無駄! 無駄! 無駄!」
ついに、ガードすらさせなくなったガガーラン。鬼神が乗り移ったかのような連打に、武王の動きが止まった。まったく動かなくなった武王にガガーランは容赦なく掌打を浴びせ続ける。
「ガガーラン、フォールして」
誰かの声が聞こえ、ガガーランはハッとなって体を被せた。
「ワンッ! トゥ! スリ」
カウント2.9で武王の肩があがる。
「何っ? スリーだろ?」
決まったと思ったガガーランは指を3つ立ててアピールする。
「2」
レフェリーは2本指で2カウントだと返した。その間に回復した武王がガガーランの腰に手を回す。
「うぉぉぉぉおお!!」
ジャーマンスープレックスの要領で頭上高くまで持ち上げ、そこから前に叩きつける。ベジャッという音がして顔面からガガーランがマットに激突。
「うぐあっ……」
呻くガガーランをもう一度同じ体勢まで持ち上げるとガガーランの体を回して強烈すぎるパワーボムで後頭部から叩きつける。
「ゲホッ!」
さらにそれを持ち上げ直してもう一度パワーボム!
「ウホッ……」
まだ終わらない。もう一度持ち上げて叩きつけるとさらにもう1回持ち上げてうつ伏せに肩に担いだ。
「……地獄へ落ちろ、デスバレーボム!」
巨体が体を横に倒しながら飛び、ガガーランが頭からマットへと突き刺さった。
「カウントは必要ないだろう」
武王はクルリと背中を向けた。
「ご、ゴングだ! 試合終了!」
トニー・カンレフェリーがゴングを要請し、試合終了を告げるゴングが打ち鳴らされた。
「只今の試合は……デスバレーボムによるKO勝ちにより、勝者武王ゴ・ギン」
力と力の勝負は、最後は技術を加えて武王が勝利。
「これが帝国プロレスだ。いつでも上がってこい」
武王は背中越しに言い残すと静かに入場口へと消えた。
「大丈夫? ガガーラン……」
「すまねえ……」
かけつけてきたのはなんとタイガー・ジェット・ティ。場内がザワつくなか、肩を貸してガガーランとともに引き上げていく。
「かくして4人の勝者は決まり、次回大会にて激突することになります。次回は一気に準決勝、決勝を開催いたします。本日はありがとうございました」
勝者は誰か、そしてティの思惑は……次回興行を待て!
トーナメント1回戦が終了しました。
ようやく半分ですね……。
ここから3話は、久々にオーバーロード要素高めです。