異世界プロレスinオーバーロード   作:NEW WINDのN

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第6話 バトル"ロイヤル"

 

「よくきてくれたね。私が、バハルス帝国皇帝、ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスだ」

「ダンディ須永でございます。この度はお招きいただきありがとうございます」

 須永はできるかぎり、丁寧な言葉を選ぶ。

「楽にして構わない。スナガ、昨日の試合見事だったよ」

(そう言っていただけると助かるよ。まさか皇帝と会うことになるとは……"鮮血帝"か……たしかにカリスマがあるな)

 どこで調べたのか、須永が宿泊していた宿屋に、今朝突然使者がやってきて、「皇帝陛下の御召である」と告げられ、返事をする間もなく高級馬車に乗せられて城へと来ていた。

 

「ありがとうございます。光栄ですな」

「あれは初めて見る戦い方だったな」

「そうでしょうな。使い手は限られていますので」

 実際須永が生きていたリアル世界では、過去の娯楽であり、自由度の高いユグドラシルでも、わざわざプロレスラーを選ぶ酔狂なプレイヤーなど、ほとんどいなかったのだ。

 

「そうなのか。確かに聞いたこともない技の数々だったな。ドラゴンスクリューとか、ウエスタンラリアットとか」

 ジルクニフは、左腕を振るってラリアットの真似をする。

「私の戦い方を総称して、プロレスといいます」

「ほう、プロレスと言うのか。やはり初耳だな」

 ジルクニフはウンウンと頷きながら、今度はドラゴンスクリューの真似をしている。

 

(陛下……かなり気に入ったんだろーな)

 傍に控えるバジウッドは、ジルクニフの仕草を見てそう感じていた。

「そして、私はプロレスラーです。まあ、わかりやすく言うとプロレスラーとは、明るく楽しく激しく……熱い、魅せる戦いを生業とするモンクの亜種ですな」

 昨日の試合は、須永本人は満足のいく試合内容ではなかったのだが、それはプロレスの美学からみたものである。

 ジルクニフをはじめとする闘技場にいた観客からすれば、衝撃のデビュー戦であった。

 相手の攻撃を全て受けた上で、無傷で完勝など簡単にできることではないし、初めて見る素晴らしい技にすっかり魅了されていた。

 

「そうなんだね。とても興味深いよ。さて、スナガ、そこで提案があるのだが」

「伺いましょう」

「うむ。スナガ、皇帝直属のプロレスラーとして、活躍してみないかい?」

 ジルクニフは魅力ある笑顔を浮かべる。

「直属のプロレスラーですか?」

「そう。平時は私の傍にあって武術を配下に広めて欲しい、そして私を守ってくれ。もちろん闘技場で試合することは自由だ」

 ジルクニフの提案は、行く宛があるわけではない須永にとって断る理由がないものである。

(皇帝直属のプロレスラーなんて、過去にいないんじゃないのかな。もちろん皇帝と呼ばれたレスラーはいたけど。この異世界で確固たる居場所があるというのは助かるよナ)

 須永はあっさりと心を決める。彼はプロレスラーになれるのであればそれでよかったのである。

 

「微力ながら、このダンディ須永、ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス陛下のお役にたってみせましょう」

 須永は右手を胸にあて、頭を下げる。

「これはめでたい。よろしく頼むよ……スナガ」

「どうかダンディとお呼びください。陛下」

「よかろう、ダンディ……頼りにしているぞ」

 ジルクニフは満面の笑みであった。

(こうもあっさりと了承してくれるとは、少々拍子抜けだが……欲のない男なんだろうな)

 こうして、皇帝直属の四騎士に続く新たなる戦力……としてジルクニフ幕下に加わることとなる。もっともその実力は四騎士よりも上であるのだが。

 

「では、歓迎だ。まずはここにいる者達……四騎士を含んで揉んでやってくれ」

「いいっ? マジかよ……」

 バジウッドが悲鳴混じりに困惑の声をあげた。

「……マジだよ」

 ジルクニフは楽しげにバジウッドの口真似で返した。

 

 

「ぐえっ!」

「ぴぎゃっ!」

 まずは近衛騎士達が挑んだのだが、須永のエルボーやチョップ、蹴りといった基本技で壁まで吹き飛ばされて、次々に脱落していく。

 

(これでも加減しているんだけどなぁ。本当にこの世界はレベルが低い……)

 須永は空手家ではないので、秒殺を好まない。理想としては、60分1本勝負で、40分を超える死闘……相手の技を受け切って、力を出し尽くした上で倒したいのだ。

 だから、須永は近衛達の攻撃を出来るだけ受けた上で、反撃していたのだが……。

 

「12人の近衛が3分も持たずに全滅か……」

 バジウッドは改めて目の前に立つ新たな同僚の力に戦慄する。

「さすがですわね」

 レイナースは珍しいことに笑顔である。

「…………凄い……」

「…………」

 須永の力を初めてみる残る2人はただ驚くことしか出来ない。

 

「さて、次は四騎士だ」

 ジルクニフは楽しそうに告げた。

 

「全力で行かせてもらう」

「構いませんぞ、バジウッド殿」

 四騎士は皇帝の命令を受け勝ち目のない戦いに挑む。4人で取り囲み、次々に攻撃を加えるが、須永は、全て真っ向から受け止め、ダメージを受けない。

「くっ、守りが硬い……」

「気をつけろよ、激風。反撃が来るとやべーぞ」

「は、はい」

 須永は、盾を蹴り飛ばし、剣を肘で弾き飛ばし、槍を掴んで投げ飛ばす。

「くそっ、4人がかりだってのに」

 バジウッドはすでに肩で息をしており、他の3人も同じような状態であった。

「では、こちらからいきますぞ」

 須永はそう宣言すると、攻勢に出る。

 

「グハッ……」

 "不動''ナザミは両手に持った盾で戦うスタイルだが、自慢の盾を2枚とも蹴り飛ばされてしまい、仕方なく繰り出した蹴りをキャッチされ、そのままキャプチュードで後方へと頭から投げ飛ばされ、気絶。

 

「あいたたた……参った、参りましたっ……」

 "激風"ニンブルは、旋回式の一本背負いで武器ごと投げ飛ばされて、そのまま腕ひしぎ逆十字固めを決められ、即座に降参。

 

「きゃああっ」

 "重爆"レイナースはか弱い少女のような悲鳴をあげながら、優しくボディスラムで床へと叩きつけられて、戦意を喪失。

 

「くそぉっ」

 残った"雷光"バジウッドは一番の粘りをみせたものの、エルヤー戦でのフィニッシュ・ホールドであるウエスタンラリアットを決められ、エルヤーに続き意識を失った。なお、血は吐いていない。

 

「見事! 素晴らしいぞ、ダンディ」

 ジルクニフは興奮を隠せない。

「ふふ、では陛下も……えいっ!」

 楽しげなジルクニフに近づいたレイナースがその腕をとって、須永へとホイップする。

「な、なにをする」

「陛下はこうおっしゃいましたわ。ここにいる者達……四騎士を含んで揉んでやってくれと。ここにいる者達には、陛下も含まれますわっ!」

 これはレイナースの拡大解釈なのだが、確かに取り方次第ではある。

「な、なにいっ?!」

(うわー。どうすっかなー)

 困ったのは須永だ。まさか皇帝を蹴り飛ばしたり、投げ飛ばすわけにもいかない。

 

「てやっ」

 須永は突っ込んでくるジルクニフを両足を広げるフロッグジャンプでかわすと、その腰を掴み飛び込み前転で優しくふんわりと丸め込む。いわゆる前方回転エビ固めである。

「おわっ」

 ジルクニフの視界が縦に一回転。気がつくと床に倒れ込んでいた。なおダメージは、ない。

「失礼しました、陛下。大事ありませんかな」

「あ、ああ……重爆っ!」

「あら、陛下のお言葉に従っただけですわよ?」

 レイナースは悪びれない。

「まったく……不敬罪で処刑するぞ?」

「あら、怖いですわね」

 レイナースはさらりと受け流した。

「まあ、よい。ダンディ、重爆を徹底的に鍛えておけ」

「畏まりました。みっちり鍛えさせていただきます」

 須永は、悪い笑みを浮かべてみせた。

 

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