「ぬんっ!」
「せいっ!」
同時に組みにいくが、上手くポジションをとったのは、グレートだった。ティを首相撲でつかまえると膝蹴りを連打して頭を下げさせ、そのまま脇に抱えると、後方にドンッ! と倒れてティの頭をリングへと打ちつける。
「今のはDDTですな……」
解説席の須永が聞きなれぬ技名を口にする。DDTはポピュラーな技であったが、何故か今までの帝国プロレスには使い手がいない。 受けのタイミングに慣れてないティのダメージは軽くはなかった。しかも、グレートはその体勢のままティを抱えて立ち上がり、もう1発さらにエグい角度、ティを頭頂部からリングへと串刺しにする。
「ぐ……」
「決めにいくぞっ!」
グレートは初めて客席に対してアピールしてみせた。
「グレート! グレート!」
それを大グレートコールが後押しする。観客の期待はグレート勝利へと傾いたのか。
左手でマスクをつかんで起こすと、右腕をふるい叩きつけるようなラリアット!
「がっ……」
しかしティは堪え倒れない。 やはりラリアットに対しては耐性が出来ているのだろう。威力もフォームも色々だが、経験値があるのは大きな財産だ。
「やるじゃんっ! なら私もっ!
初公開となるティのアックスボンバーは、須永とは違って下顎を打ち抜くような軌道で放たれた。
「ぐっ……ぬうおおおおおおお!」
これは意地で耐えるが、関節技で痛めつけられていた膝はガクガクと揺れている。
「もらいっ!」
ティは足をとるべく低い体勢でタックルに入ったのだが、それをサッとかわされ腹部を掴まれ仰向けに担ぎあげられた。膝が揺れていたのはブラフだったのだろうか。
「ぎぎっ……ぐっ」
グレートの左肩を起点にティの背中が折り曲げられ、上下に揺さぶられる。揺さぶられる度にティの顔が歪み呻き声が漏れる。
「ほう……カナディアンバックブリーカーですな」
バックブリーカーとは背骨折りという意味合いで、いくつかの種類がある。そのうちの一つがこれだった。
「ティ、ギブアップするか?」
「ノーに決まってるだろうがっ……ぐぎぎぎっ……」
ティはレフェリーの呼びかけを拒否しこれを耐える。グレートは、その後もしばらく揺らし続けていたが、やがて決まらないと判断しもう一つの技へ移行する。
「くらええええええっ!」
バックブリーカーの体勢から前に落とし、この試合何度か見せているパワーボムで叩きつける。この技の名称はサンダーファイヤーパワーボム……彼はボムにこだわりを持っているのか。
「くあっ!」
ティはカウント2.8でブリッジして跳ね返す。
「ならばっ!」
もう一度カナディアンバックブリーカーの体勢に持ち上げ直すとジャンプして膝から着地しつつ、サンダーファイヤーの形で叩きつけ直す。先ほどより高さがあり、叩きつける角度がエグい。これはサムライボムと呼ばれる形だが、本人は狙ったわけではなく威力を高めようとしただけだった。
「くうっ……」
これはなんとかカウント2.9で返す。
「もう一度だ」
もう1回持ち上げようとするがこれはティが上手く切り返し、前屈みにさせたグレートの両腕を逆羽交い締めのように決めて、一気に持ち上げた。
「タイガードライバー!」
落下させながら両手を離して叩きつけ、そのままエビに固める。
「ワンッ! トゥ! スリッ」
カウント2.98というところで、ギリギリ返す。
「ちぇーとっておきだったのに決まらないかー」
初公開の大技で決めたかったのだろう。セリフは気軽な口調だが、顔には残念な気待ちがわかりやすく浮かんでいる。
「今度はこっちの番だっ!」
またもや肩まで担ぎあげる。
「これでフィニッシュだ!」
担ぎあげたまま、助走を1、2、3とつけてグレートは一気にティを叩きつけ……るはずだった。
「甘いよねー……」
くるりと超高速ウラカンラナで丸め込む。
「ワンッ! トゥ! スリ」
これをカウント2.9で右肩をあげて返す
「んふふ……まだ元気だねえ」
はね上げた右腕を素早くとらえると、腕ひしぎ逆十字をきめる。
「ぐうっ……」
必死に体をバタつかせてロープへと逃げるグレート。ロープに近い右足を伸ばすが……。
「大人しくしてなよー」
その足もまとめて極められてしまう。
「これがダブル・ジェット・ロックだよー」
この世界では、ティのオリジナルホールドとなるダブルジェットロック……須永のいた世界での名は……ドリカン・ニーサレンダーと呼ばれる技だった。相手を降伏させるという意味があるらしい。
「ぐあああああああああああっ!」
元々痛めつけられていた右腕と右膝が完璧にきめられてしまった。
「ぐあああああああああ……」
悲鳴に力をがなくなり……そしてグレートはタップアウト……ギブアップを宣言した。
「楽しかったよ、グレート」
手を貸してグレートを起こす。
「こちらこそだ」
「あんたなかなかやるね……」
ティはグイッとグレートに近づきなにごとか耳元で囁く……。
「じゃあまたね、グレート。次どんな形で会うかはわからないけどさ。再戦楽しみにしてるわ」
ティは投げキッスのサービスを残し、花道へと消えた。