異世界プロレスinオーバーロード   作:NEW WINDのN

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第61話 電光石火で鐘は鳴る

 トーナメント決勝戦 タイガー・ジェット・ティ VS武王ゴ ・ギン

 

 二人ともこの試合が、この日の二試合目となるが、ダメージの蓄積やスタミナの消費を心配する必要はなかった。

 須永のいたリアル世界においては一日二試合というのは影響が大きかったのだが、この世界において連戦をするということは、実はあまりハンデにならないし影響も少なかった。

 これはなぜかと言うと魔法で回復することができたり、回復ポーションなるものがある。つまり前の試合のダメージは回復ができるし、スタミナも回復することは可能なのだ。それを使わないというルールでない限り二人とも万全の状態で二試合目を戦うことが出来る。それがこの試合の……いやこの世界のプロレスの面白いところである。

 

 万全の二人が相見えるこの試合、それも団体のトップの一角を占める二人である。30分を超えるような、長時間にわたる好試合を皆が期待していたのだが、この試合は意外な決着を迎えることになる。

 

 

「只今の試合は、1分12秒……1分12秒…………勝者タイガー・ジェット・ティ」

 挑戦権を手に入れたティも敗れた武王も、そして観客達も皆が呆気にとられていた、まさかまさかの秒殺決着である。

 

 ではそのプロセスを最初から見てみよう。

 

 

 ◇◇◇

 

「いくよ、武王」

「こい! 」

 両者は握手を交わすと距離をとる。

 カアン! 試合開始のゴングが鳴る。しばらく睨み合って様子を見る二人。緊張感が漂う。そして、先に動いたのはやはり、ティだった。

 

「とあああっ!」

 ティは自分の力を試すかのようにドロップキック! 武王の胸板を撃ち抜くがダメージはなく、それを簡単に跳ね返す。

「やっぱりねー、簡単には効かないか。でももう分かったから大丈夫、何とかしてみせるよ!」

 ハムスタほど硬くはないが、それでも、人間の皮膚よりは遥かに分厚く硬い。打撃攻撃はやはり避けるべきだろう……ティはそう考えた。

「と言っても、関節もやりいくいしー。それならちょっと考えさせてもらうよ……」

 などと言いながらティはさっと飛び上がる、そして両足で武王の頭を挟みくるっと後方に回転する。準決勝の最後に見せた超高速ウラカンラナをいきなり決める。

 

「くおっ!」

 なんとカウントは2.9。危うく3カウントが入るところだった。

「あらま。意外とおしかったねー。ほんじゃあ、こんなのはどう?」

 武王が起き上がる前に足をとり、足をT字のように組ませてブリッジしてエビに固める。リューが見せた4の字ジャックナイフの変形、ティタイムジャック。

 

「ワンッ! トゥ!」

 必死に返そうと藻掻く武王をティはフルパワーで押さえている。

「スリー!」

 そしてそのまま3カウントが入ってしまった。

 

「只今の試合は、1分12秒……1分12秒、ティタイムジャックにより、勝者タイガー・ジェット・ティ! タイガー・ジェット・ティ選手は、トーナメント優勝となりますので、タイトルマッチの挑戦権獲得となります」

 

「入っちゃったの?」

 ティのこの声に、よからぬ想像をした数名が卒倒。観客席が騒ぎになっていたことには触れないでおこう。

 

「スリーだよ」

 レフェリーのトニー・カンが3つを示しながらいい、呆然とするティを立たせるとその腕を上げ勝利をアピールさせた。

「やられたな……」

 ダメージのない武王はすっと立ち上がり、ドスンとティの肩に手を置いた。

「おめでとう。お前が優勝だ……プロレスは奥深いなぁ」

 武王は豪快に笑う。

「いや、今日は負けた。……今日はな。タイガー・ジェット・ティ……俺に勝ったんだ……タイトルマッチも必ず勝てよ。そしたら俺が最初にお前がとったそのベルトに挑戦してやるからな!」

 武王はそう言い残し、静かにリングを去っていった。残されたティはその言葉を噛み締める。

 

「よっしゃー勝ったぞ! 私が優勝だ。次のタイトルマッチ……この私、タイガー・ジェット・ティ様が、必ずあのダンディ須永のクソ野郎をぶっ倒してやる! いいか、ダンディ須永が一番じゃない! このティ様が一番なんだよ。それをよく覚えておくんだね。じゃあまた会おうねー。GOOD LUCKだよー」

 ティはエンリを引き連れリングを後にする。万雷の拍手が彼女を包こむ。

 

 挑戦者決定トーナメント優勝は、タイガー・ジェット・ティ。

 これによりタイトルマッチの対戦カードは、タイガー・ジェット・ティ VS ダンディ須永の頂上決戦とあいなった。

 

 ゲートへと消える前にエンリと抱き合い、そして迎えに出てきたガガーランともハグをかわし、ゲートへと消えた。

 

「あれ、私の出番がなくなったぞ」

 あまりに早い決着にスタンバイが間に合わず、出るタイミングをジルクニフは完全に失ってしまった。

 

 






第4章はあと3話、ひと試合を残すのみ。
プロレス比重の高い章でしたが、ラストマッチもお付き合いいただければ幸いです。


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