異世界プロレスinオーバーロード   作:NEW WINDのN

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第63話 ヒロイン

 タイトルマッチ宣言などを挟み、試合開始のゴングが鳴る。

 

「はっ!」

 試合開始と同時に須永が動く。いつも以上のスピードで接近し、組みに来たティの腕をかいくぐり、いきなりファイアーマンズキャリーの体勢で担ぎ上げた。

「行きますぞ!」

 そのまま回転し、エアプレーンスピンの体勢に入る。

「こんなもん外して……きゃぁぁぁああっ……」

 回転するごとにスピードが増して行き、須永は担いだまま飛び上がってみせる。まるで竜巻のようにごぉぉぉーっという音とともにコーナートップへ着地。そこから横に倒れ込みながらティを頭から突き刺す雪崩式デスバレーボム! 

 

「フォール」

 レフェリーのトニー・カンが飛び込みカウントをとる。

「ワンッ! トゥ! スリ」

 カウント2.99……ギリギリでティが返す。

「さすがですな。決めるつもりでしたが」

「さ、させネって……甘くないっていったろっ!」

 ここからはティタイムとばかりに突っ込もうとするティだったが、足がもつれて倒れてしまう。

「ちっきしょっ!」

 わななく足に拳を叩きつけ、膝をついて立ち上がろうとするが、須永がここを見逃すわけがない。

「勝機……見逃すわけには行きませんぞ……閃光不死鳥弾(シャイニングフェニックス)!」

 両手を広げ、膝を踏み台にして須永は膝を叩きつけた。

「甘いんだよ」

 それをガードし、蹴り足をキャッチするとそのまま膝をリングへと叩きつける。

「おらあっ!」

 二度、三度と叩きつけてから4の字固め! 須永の機動力を奪いにかかる。

「ぐっ……」

「へへん。どーだぁ!」

 須永の流れを食い止めたティはしてやったりという顔をしている。

「よっ!」

 しかし、須永は簡単にうつ伏せにひっくり返す。一般に4の字固めはひっくり返されると技をかけていた側が痛くなるという。なお、噂では自分が痛くならないかけ方もあるらしいのだが、須永はそれを誰にも教えてはいない……つまりこれはティの方が痛い。そういう状況である。

「あぁぁぁっ……」

「どうしました? 元気がないようですが」

「クソがっ……」

 懸命にひっくり返してやり返そうとするが、釘にでも打たれているかのようにビクともしない。

「う、動かない……あぁぁぁっ……」

 だんだんと足の感覚がなくなっていく、それがティの心に恐怖を与える。それでももがいて前進しようと試みるが、先程と同様に、やはり動くことができない。

「くそっ……」

 そして完全に足の感覚がなくなったところで、仰向けに担ぎ上げられた。いつ技を解かれたのかわからないうちに。

「ぐっぎっぎっぎ……」

 今度は背骨が軋む。先日超神・ジーニアス・カイザー・グレートが出したのはカナディアンバックブリーカーだったが、須永が繰り出したこれはアルゼンチンバックブリーカー。だが、100レベルの膂力を誇る須永が繰り出すこれは別の名称で呼ぶべきかもしれないが。

「ぐぎぎっ……」

 柔軟性のあるティでもさすがに厳しい。最初から攻めに回る須永の激しい攻撃にティはギブアップ寸前だった。

「姉様! まだ終わってませんよっ!」

 エプロンを両手でバンバン叩きながら、エンリが声を張り上げる。

「やり返してください、姉様っ!」

「らしくねーぜ。まだ諦めるのははえーんじゃないか?」

 いつの間にかエンリの横にガガーランが並ぶ。

「そうだ。お前は俺たちの代表なんだからな」

「そうだぜぇ。そんなに簡単に諦められたら困るんだよ」

「まあ、そういうことだな」

 ゼンにリュー、レイン……トーナメントに参加したメンバーが次々に青コーナー側に集結し、ティに励ましの言葉を送る。

「お前のタイトルに俺が挑戦するんだからなナ」

「俺もそのつもりだ」

 武王に、グレート。ほぼ勢揃いとなる。

「某は師匠につくでござるが、ティ殿も頑張って欲しいでござるよ」

 立場的にティにつけないハムスタは、申し訳なさそうにそう告げた。

「お前ら……」

 ティの瞳に光るものが浮かぶ。そして、ティを後押しする観客の声援が場内からわきあがった。

「いけータイガー!」

「まけんなジェット!」

「ティちゃんの強さみせたれやー」

 観客の支持は完全にティに傾いた。須永を応援する声はほとんど聞こえない、いや全く聞こえなくなっていた。

「やれやれ、これは完全に悪者(ヒール)ですな。……ラスボスを倒そうとする勇者がティであり、私がラスボスってとこですかねぇ。ならば、魔王の役目果たしてみせましょうかね……バーニングハンマー!」

 須永はデスバレーボムの要領でアルゼンチンバックブリーカーを決めたままのティを頭からマットに叩きつける。

「ぐへっ!」

 観客の期待を断ち切るような強烈な一撃だ。ティの首がぐにゃりと曲がり、そのダメージを表していた。

「ワンッ! トゥ!」

「返せっ!」

「まだ終われないっ!」

 カウント2.9で返す。

 

「まだだよ、まだ。私は勝つ!! 須永覚悟しとけよっ!」

 ナチュラルヒールと呼ばれた彼女は今やスーパーヒロインと化していた。観客は皆彼女の勝利を期待し、打倒ダンディ須永を見たいと願っていた。

 それに対する須永は自らが魔王(ラスボス)という立場を求められていることに気づき、そのポジションで対応することを決める。

「私は負けませんぞ。そうですな……いくらでも希望を抱いてかかってくるがよいでしょう。悪いですが。私が与えるのは貴女の勝利という希望ではない。そう……敗北という。絶望です」

 

 須永はそう言い放ち、纏う雰囲気を一変させた。

 

 

 

 





次回が第4章最終話です。

何故か今話が3回投稿されてしまいました。
予約画面だと1つだけだったのですが。
申し訳ない。
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