第65話 俺様の試合を見てえだろ!?
「どうした貴様ら! なんなんだその反応はよ。おい、俺様の勝ちだぞ!? もっと騒げ! 泣け! 喜べ! だいたい貴様らは俺様が活躍するところを、もっと見たいんじゃねえのかよ!」
試合後のリングで1人吠えるバルバロ。普段からマイクでは強気の元王子なのだが、今日はいつも以上に強気だった。
なにしろ帝国プロレスが独自に行った出口調査の結果、彼は"今後活躍して欲しいレスラー"部門でなんと、ななななんと、ベスト3に入ったのだ。それも人気者のタイガー・ジェット・ティ、ライオネス・エンリの姉妹と僅差で競り合うというまさかの展開だった。しかも最終結果はまさかまさかの2位タイである。エンリと同票とは……まったく予想外であり、調査委員会も頭を抱えていた。
「うーん、バルブロにどんな活躍を求めているのだろうな」
「強い王子ではないでしょうな」
「奴に強さが伴うとは思えん」
「うむむ……」
ダンディ須永が対象から外れていたことを考えても、カイザーやレインといった人気どころ、武王やハムスタといった実力者をおさえてのベスト3だけにこれは価値がある。これで調子に乗らなければ、バルブロではない。さらに今の試合で無名の若手相手とはいえ、デビューしてから初めて3カウントを奪ったのものだから、輪をかけて調子に乗っていた。
「今日の俺様は最高に乗ってるぜ。なんならもうひと試合くらいしてやろうかっ!」
ご覧の通り完全に調子に乗りまくっている。バルブロ
「どうだ。お前らも、このバルブロ様の試合みたいよな!」
見たいか見たくないかといえば、「予定よりひと試合増えるならお得だよな?」という理由でみたいと思う人が大半だろう。しかし、珍しく否定的な意見がでないことをバルブロは良い方向に解釈する。
「よーし、お前らの気持ちはよーくわかった。今日は特別にもうひと試合すっぞ! バルブロ様の試合見てえだろ!」
ついに拍手が起きる。
「拍手がちいせえ。気合いを入れろ! もう一度だ。おい、このバルブロ様の……俺様の試合を見てえだろ!?」
先程より大きな拍手に、バルブロは満足げに頷く。笑みを浮かべているのが不気味だった。
「そういうことだ。誰でもいい。かかって来やがれ。気合いで倒してやるぜっ!」
バルブロはそうマイクで言い切った。
本気で言っているのだろうが、彼は気づいていない。プロレスにおいてこのようなマイクパフォーマンスを行うと、大抵ロクな結果にならないものなのだ。知らないうちに自らフラグを立ててしまったバルブロ。こんな急な予定にないパフォーマンスに対し、バルブロの試合相手は……あらわれるのだろうか。出てこないならこないである意味美味しい展開ではあるのだが。
ターラータッタッタッター ♪ ターラタッタッタッタン♪
「ドワーッ!」
場内が一気にヒートアップする。このテーマ曲で入ってくるのはもちろんこの人しかいない。
「なっ……」
動揺するバルブロをよそに、曲に合わせて手拍子がおき、そして……。
「ダーンディ! ダーンディ!」
ダンディコールが自然発生する。これはもはや条件反射的なものではないだろうか。
観客達は入場ゲートに注目しているが、誰も出てこない。では、貴賓室のバルコニーかとみるが、そこには誰もいない。
「あっ!」
一人の観客が須永に気づく。それが伝播し皆がある一点をみつめる。
須永が姿を見せたのは観客席の一番高いところだった。明るい紫のパンタロンに、今日は同じ色のタンクトップ。いつものように白いガウン姿だった。
「とあっ!」
須永は、リングに向けてダイブ。くるくるくるくるくるくるっと前方回転して最後にバク宙まで決めて赤コーナーのコーナートップへと降り立った。
「赤コーナー、ダンディすな~が~!」
大声援を受けながら、須永は横回転で、3回転してからリングへと着地し、両手を広げてアピールする。フィギュアスケートのジャンプを意識したパフォーマンスだろうが、この世界では誰も知らない。
「な、なんで出てきやがった」
「愚問ですな。バルブロ君がもうひと試合したいというから急いで準備してだな」
「いやいやいやいや、そうじゃない。なんでお前なんだよ」
バルブロは青ざめつつもマイクは続ける。
「今日は試合が無かったからですな。さあ、はじめましょうか」
「コス持ってくんなよ……」
ちなみに須永は早着替えの設定にリングコスチュームがあるため、一瞬で着替えることが出来てしまう。だからいつでも試合可能だった。
「特別試合5分一本勝負、はじめっ!」
ゴングがなってしまう。
「さ、どれくらい持ちこたえられますかな?」
「くっ、このクソッタレがあっ!」
バルブロが掴みかかる。
「よっと」
須永はそれを回避し、バルブロの足を掴むとうつ伏せに担ぎあげる。
「うぐっ……動けん」
がっちりロックされたバルブロはそのままエアープレンスピンで35回転させられ、天高く放り上げられた。
「では、これで終わりです。ダンディスペシャル!」
須永は飛び上がると、真っ逆さまにおちてくるバルブロをパイルドライバーに決めて、リングへと叩きつけた。
「ぐへっ……」
バルブロはそのまま意識を失い、試合終了を告げるゴングが鳴らされた。
「0分35秒、ダンディスペシャルにより勝者ダンディ須永!」
「まだまだですな」
須永は活をいれてバルブロを蘇生させる。
「いでで……くそっ! 次はやられんぞっ! 1分は持ってやるっ!」
志の低い……いや堅実な目標を立てるバルブロだった。そしてそのまま自力で歩いて去っていく。
「まあ、いくらでも相手はしてやりますが、思った以上にタフなんですな……ポーションを使ってないのに歩いて帰れますか……」
バルブロの新たな可能性を須永は見出す。
「なるほど。思った以上の拾い物でしたか。プロレスはやはり奥が深い」
バルブロの活躍はこれからも期待できてしまうかも……しれないようだ。
ミスターBOバルブロへの多数の投票ありがとうございます。
この話は、急遽追加させていただいたエピソードになります。バルブロの魅力が詰まった1話じゃないかなぁ。
本来の予定ですと、第3章にて消える運命だったバルブロ。前回のアンケートではネタ枠にも関わらず予想以上の投票をいただき、第4章にて生まれ変わって再登場。
今回のアンケートでも二位ですよ!? バルブロがアンケート二位になるなんて他にないでしょうね。無事に再々登場いたしました。
本当の新章1話は次回の話でしたが、やはりこの結果を反映しない訳にはいかないでしょうということで、この話になりました。
ミスターBO バルブロ の出番は今後どうなるでしょう。
新章もよろしくお願いします。