メイン後のリングに呼ばれもしないのに乱入してきたバルブロ。まあ、呼ばれて出てきたら乱入ではないのだが。
そんなバルブロに対し観客達はいつものように盛大なブーイングの雨で彼を歓迎する。いや、いつも以上というべきかもしれない。やはりメインの余韻をぶち壊したというのはよくないのだろう。
しかし、いつもならブーイングに噛みつき悪態をつくバルブロが……そうあのバルブロが、ブーイングなど何処吹く風といった感じで華麗にスルーしている。
「なんだ、馬鹿王子か。引っ込んでやがれっ! お前の出番はとっくに終わっただろうが。馬鹿が」
基本バルブロの出番は第1試合か第2試合。前座として会場をHOTにするのが役目だ。主にやられ役としてだが。
「うるせえ、デカトカゲ! 俺様の見せ場は今日はナウなんだよ! 今、ここがバルブロタイム……略してバルタイムだ」
人気者ティのティタイムを堂々とパクる……そういうところに小者感が出る。当然のようにまたもやブーイングが飛ぶのだが、今日のバルブロは一切無視している。いったいどうしたというのか。
「おい、トカゲじゃない。我々は誇り高き民族であるリザードマンだ。わかったかい能無しデカザル」
リューが、怒りを抑えながらも、しっかりと挑発し返す。
「ふん、なんとでもいえ」
睨み合うバルブロとリュー。徐々にバチバチとした空気に変わっていくが、それをよしとしない者がいる。
「おい、愚物!」
ここでティがマイクを持った。
「お前、なに
ティは本気の殺気を放つ。ティの背に、
「う、うるせえっ!」
殺気に対する怯えなのか、若干バルブロの声が震えていた。それに気づいたらしく、バルブロは拳をグッと握り気合いを入れ直す。
「聞いて驚け。なんとこの俺様がユニットを結成したんだよ。今日はその報告に来たのさ。ユニット闘争楽しそうじゃねえか。俺様も混ぜて貰うぜっ!」
人望のないバルブロがユニットを結成ときた。誰がそのことを信じるだろうか。
「ユニットって、どうせお前だけだろーが。わかった! ユニット名は"戦場でひとりぼっちな王子"でしょー? あれは、傑作だったよねー。部下全員に見放されてーちょー惨めで、ダサくてさー。あんな最高傑作なかなかみれないよ。と軍団の人から聞いたよー」
そう、彼女は見ていないのだ。
「う、うるせえっ! うるせえぞ、小娘がっ!」
「ノンノン。私はチャンピオン様だよー。強いんだよー。弱弱な元王子さまぁ」
「く……ふん、今のうちだぞ。おい、須永っ!」
「なんですかな……バルブロくん」
不利とみたかバルブロは解説中の須永に話を振る。
「お前マッチメイク権持ってるだろ?」
「ええ。私は帝国プロレスに関する権限を陛下から委ねられておりますからな」
「細かい話はいい。お前の権限で次の帝都大会でメインの試合を組んでくれ」
バルブロは真剣な顔をしている。
「まあ、いいですが。で、どのようなカードですかな?」
「くそ女だらけの帝国華激団と、俺様のユニットの全面抗争だ」
「おい愚物。私は今やってやってもいいんだよー? 簡単には殺さないから安心してかかっておいでー」
『殺さない』という言葉と、『簡単には殺さない』では、言葉の意味がまるで違う。後者はかなり物騒なセリフだ。
「まあ、私は面白くなるなら、なんでも構いませんがね」
「……よし、次の帝都興行だ。俺様のユニット対くそ女軍団」
「ああん?」
三人に睨まれるもバルブロはスルーする。
「わかりました。では、次回帝都興行メインイベントで帝国華激団と、仮に名付けますがバルブロ軍の全面対決決定しますぞ」
須永の宣言により、次回大会のカードが決定する。
「……これだけ勝手に盛り上げて、当日ひとりぼっちだったらウケるよねー」
「そしたら、ボッコボコにしてやろう」
「ジャンクをクラッシュしちゃいましょう!」
酷い言われようだった。
「ふん。俺様は見えないところで動いてるんだよ」
まさかのバルブロ乱入から始まった次回興行の対戦カード。彼のユニットとはいったいどのようなものなのだろうか。
「8秒で負けた人とかだったら、ちょーウケるよねー」
これはイグヴァルジのことだろう。つけ加えるなら数秒で皇帝ジルクニフに叩きのめされている。彼の処遇は知られていない。
「ふん。次回泣いて謝っても許さないからなっ!」
バルブロはマイクを叩きつけ、リングを後にした。