本日の帝都興行も超満員札止め。熱気に包まれたまま、問題のメインイベントを迎えた。
「皆様、大変長らくお待たせ致しました。只今より本日のメインイベントとなります。まずは、赤コーナーより、美しくそして激しく。"帝国華激団"……第二代帝国プロレス王者タイガー・ジェット・ティ、ガガーラン、ライオネス・エンリ組の入場です」
手拍子を送りやすい軽快な曲が流れ、鮮やかな青の武闘着に獅子の肩当をつけたエンリを先頭に、紺に近い青の鎧風コスチュームに熊の肩当のガガーランが続く。
最後に入場してきたティは、赤のセパレートタイプの武闘着風コスチュームに虎の肩当。彼女は基本的に腹部は出していることが多いが、動きやすいからだという話だ。
ティは、チャンピオンベルトを両手で掲げての入場だった。もうすっかり王者としての姿が板についている。
リングに上がった三人は、ポーズを決めると肩当を外し対戦相手の入場を待つ。
「青コーナーより、バルブロ軍団の入場です」
ある意味メインイベントに相応しい盛大なブーイングの中で姿を見せたのは真っ赤なマントを身にまとい派手な色遣いの貴族服風コスチューム──彼の場合は王族服風というべきかもしれないが──のバルブロ1人だけだった。どことなくジルクニフが好むデザインだが、色遣いに品がない。
「おいおい、本当にぼっちなのかよ。ちょー受けるんですけどー。傑作だよねー」
ティがニンマリとした笑みを浮かべつつ、口許を覆う。
「へっ、所詮はバルブロだったか……」
ガガーランは呼び捨てにし、嫌悪感をあらわにしていた。
「やあ下々の諸君、ご機嫌いかがかな。私がバルブロである」
マイクを強奪して、皇帝劇場の真似をはじめたバルブロをブーイングの嵐が出迎える。
「……元気そうでなりよりだ」
華麗にスルーして、バルブロは話を先に進める。もともと備わっていた鈍感力に、最近身につけたスルー力があるから、今のポジションで成功しているのだろう。
「では、諸君が楽しみにしているであろう、この私の最強ユニットを紹介しよう」
「誰も楽しみにしてないんじゃねーか?」
「とか言ってぼっちじゃないのー?」
ガガーランとティがツッコミを入れるが、バルブロは平然としている。
「くくっ。恐れおののき我が前に跪いて、泣き叫ぶがよい。泣いて謝っても許してやらんがな」
バルブロのこの余裕はなんなのだろうか。本当にユニットは結成しているのだろうか。
「
よくわからない紹介で入ってきたのは、神官風コスチュームで入ってきた金髪の女性だった。顔立ちは美しく気品がある。なお神官風コスチュームとは言っても、色は神官を示す白ではなく漆黒なのだが。
「な、そんな馬鹿な……」
入ってきた女性に見覚えがあるガガーランは、驚きで目を見開き、口は半開きになって呆然とその姿を眺めていた。
「あ、あり……ありえねえ……」
どのような姿であったとしても戦友を見間違えたりはしない。入ってきた漆黒の美人神官戦士は、ガガーランの本職だった冒険者、その冒険者達の頂点に立つアダマンタイト級に位置づけられていた"蒼の薔薇"のリーダーのラキュース・アルベイン・デイル・アインドラその人だった。かつて、生命の輝きと呼ばれた美貌はそのままだが、唇は健康的なピンクではなく、毒々しい……紫色になっていた。よく見ると、マニキュアも同じ色だ。
須永のパーソナルカラーの明るい系統の紫とは違うが帝国プロレスにおいて紫を使う意味は重い。
「なんでだ……ラキュース……嘘だろう……こんな再会とはよ……」
「青コーナー、ダークネス・ラキュース!」
蒼の薔薇はガガーランが帝国プロレスに登場したことで帝国民に広く知れ渡っている。ここでそのリーダーであるラキュースの登場。これで盛り上がらないわけはないのだが、バルブロ軍として登場というところが、観客達に戸惑いを与えていた。
「クク。このバルブロ様を舐めるなよ? 」
「バルブロの野郎、いったいどんな手を使いやがったんだ……」
訝しむガガーランをバルブロは楽しげに見ている。
「いい顔だなぁ、
猪でも呼びそうなバルブロの呼びかけに応えて姿を見せたのは、ガタイのよい歴戦の勇士という雰囲気の黒髪の男だった。黒のロングタイツに、レガース。小手のような大きめのリストバンドをつけている。
「な、阿呆な話があるかっ! マジかよ。ありえねえ……」
ガガーランはまたまた知り合いが登場したことに動揺を隠せない。
「青コーナー、"暗黒戦士長"ガゼフ・ブラック!」
「なんで、戦士長がバルブロと組むんだ……」
ガガーランは理解できない。話に聞く人格者のガゼフが、よりによってクズのバルブロと組むなどありえることではなかった。
「フハハハハ·····全てはこのバルブロ様の人望だよ。我々は恩讐をこえて集った血盟軍なのだからな」
とても人望があるとは思えないが、ラキュースとガゼフがついたのは事実だ。謎は深まるばかりだった。
「ところで、くくっ、全面対抗戦と言ったな……」
「そー聞いたけどー」
「なら、そういうことだよ」
そして、バルブロ軍4人目が登場する。
「なんだと、アイツはっ!? もはや意味がわからん」
出てきた人物をガガーランは知っている。4人目は坊主頭の男だった。頬には刀傷のようなものが残っており、上半身は黒いタンクトップ。左右の上腕部には天使のエンブレムが輝く。見える筋肉はしっかりと鍛えられているのがわかる。
「青コーナー、バルブロ血盟軍"軍師"ルーイ!」
「おい! 貴様、このリングに何をしにきやがった」
ルーイに噛みついたのはティだった。
「私は覚悟を持ってこのリングに上がっている。それで構わないだろう。そうそう、お前に一つ伝えておこう。兄貴がよろしくと言っていた」
ルーイはティを知っている。ティは苦虫を噛み潰したような顔になり、明らかに動揺していた。
バルブロ率いるドリームチーム誕生か?
ありえない組み合わせ?
いやいや帝国プロレスではありえるんです。
この話で通算71話到達。
前作 黒と緑の物語 を話数では超えました。読んでくださる皆様に感謝です。