異世界プロレスinオーバーロード   作:NEW WINDのN

72 / 96
第70話 始動

「この試合はユニットの全面対抗戦。よって帝国華激団3人対バルブロ血盟軍4人での変則タッグマッチとなります」

 このアナウンスが入ると、観客たちも状況を理解してザワザワとしている。

 通常このように人数が合わない試合はなかなか行われることはない。ユニットの対抗戦で人数が足りない場合は、多い方が人数を合わせるか、少ない方が助っ人を入れるものだが、人数が今わかった以上助っ人は用意できないし、血盟軍側は減らす気はない。

 

「なんか卑怯だな……」

 ガガーランは腕組みをし、相手を睨みつけながら顔を歪める。

「大丈夫ですよ。もともとひとり(バルブロ)は戦力外ですから。実質3対3ですよ、兄様」

 何気に辛辣なエンリの言葉にガガーランは笑みを浮かべた。

「たしかにな。存在感はあるけど、あいつ(バルブロ)は実力は雑魚だからな。他の3人は……ラキュースはプロレスでは未知数だが、やはり侮れんし、ガゼフのオッサンは……強えぞ」

「ガセフさんは噂に聞いたことがあります。周辺国家最強の戦士だと。それにデビュー戦のはずなのに妙にリングに慣れてますね……」

 エンリの目は正しい。どことなく落ち着きのないラキュースや珍しそうに観客を見回しているルーイに比べて明らかに落ち着き払っている。これは性格の違いなどではなく、慣れというものだろう。その理由はわからないが。

「話によると、ガゼフはダンディの下にいたはずなんだ。元国王が預けたときいた」

「それでですかね?」

 2人はガゼフを気にしているが、一番の問題は謎の坊主頭ルーイではないだろうか。ティを知っているということだけでも十分に怪しすぎるし、そもそもルーイがラキュースと組むのは相当な異常事態。彼の頬に傷をつけたのは他ならぬラキュースなのだから。

 

「腕だして……」

 トニー・カンレフェリーがバルブロのボディチェックをしようとしたところで、血盟軍が動き、バルブロ以外の3人が一斉に襲いかかった。

 

「うおおおおぉ!」

 いきなりガゼフがティをリフトアップし、そのまま場外へ投げ捨てる。

「うああっ……」

 客席から悲鳴があがるが、ガゼフは気にした素振りもみせず、トップロープを両手で掴むと身軽に飛び乗り華麗に舞う。

「うおおおおぉ……」

 右膝をティの腹部に突き刺すスワンダイブ式ダイビングニードロップを決めた。

「うぐぐ……ぐああっ……」

 ティが打たれ強いとはいえ、ヘビー級のガゼフの強烈すぎる一撃はさすがに効いた。

 

「どわっ!」

 ガガーランもまた、ラキュースの美しくそして打点の高いドロップキックで顎先を打ち抜かれてバランスを崩したところで、足を掴まれて抱えられてしまう。

暗黒力落(ダークネスパワースラム)

 ラキュースはガガーランを抱えてトップロープをノータッチで飛び越え背中からガガーランを地面に激しく叩きつけてみせた。さすがはアダマンタイト級。純粋な戦士ではないのに身体能力が高い。

「ゲへッ」

 この攻撃一発でガガーランはダウンしてしまう。華激団の上をいく過激な攻撃だった。

 

「姉様、兄様!」

 ひとりリングに残されたエンリにルーイが迫る。

「オラアアッ!」

 初めて出した技はスピード・パワーともに申し分のないトラースキック。体を半身にしてエンリの顔面を右足の裏で蹴り飛ばす。

「ぬんんっ!」

 エンリは気合いを入れて受け止める。

「ほう……意外とやるな」

 ルーイは思わず笑みを浮かべてしまう。

(この程度の小娘、一撃だと思っていたが……さすがは帝国プロレス。侮れないな。やはり警戒は必要か……)

 数多の希望者の中からほんの一握りの人間──いや、人間だけではないが──しか上がることができない帝国プロレスのリング。そこに立っている少女がただの小娘であるはずがない。

「それは私のセリフです。今の蹴りはまずまずでした。思ったよりやりますね」

 エンリは軽く言い返す。

「しかし、油断はよくないなっ!」

 エンリの左足……ふくらはぎの裏側を背後から忍び寄ったバルブロが地を這うような低空ラリアット。

「みたかバッキャロー!」

 以後この世界ではバッキャローと呼ばれることになるのだが、元はマッケンローと呼ばれた技だという。

「きゃんっ!」

 まさに足元をすくわれてしまったエンリは可愛い悲鳴をあげて、ひっくり返る。

「ルーイ!」

「仕方ない」

 本意ではないが、これは課せられた仕事である。バルブロと2人で倒れたエンリを踏みつけ、さらにストンピングの雨を降らせる。

「BOOー!」

 そんな2人にはブーイングの雨が降るが2人は全く気にすることなくガシガシゲシゲシとエンリを踏みつけ続ける。

「ダブルだめだっ! ワン、トゥ、スリー、フォー」

 レフェリーが反則カウントをとるが、バルブロは手慣れたもので、ピタっと足を外しカウントを止めさせる。

「オラアアッ!」

 カウントが止まったところで、ストンピング攻撃を再開する。

「なめないでよねっ!」

 エンリは右手でバルブロ、左手でルーイ。それぞれの蹴り足をキャッチ。そのまま立ち上がると、2人を後方へブンと投げ飛ばす。

「起きてよ~バルブロさん」

「ぐぎぎっ……な、なんてパワー、グベッ……」

 エンリはバルブロの顔面を右手で鷲掴みにして引き起こすと、そのままワンハンドアイアンクロースラムでリングへ叩きつけ、素早くフォールする。

「ワン! トゥ!」

 ここでルーイがカットに入りバルブロを場外へと転がしてエスケープさせた。

「もう。今ので終わってたのにっ」

「そう簡単にはさせんよ」

 リング上では、エンリとルーイが睨み合う。

 まだまだ全面対抗戦はおわらない。バルブロを消して頭数はイーブン。試合はこれからだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。