異世界プロレスinオーバーロード   作:NEW WINDのN

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第71話 ディープインパクト

「くそっ……やるじゃねえか……」

 序盤の攻防で大きなダメージを受けたガガーラン。なんとか回復し戦列には復帰したもののダメージから動きに精彩を欠いている。どうしてもガゼフ相手に守りに回ることが多く威力ある攻撃を受けきることができない。やはり予想通りと言うべきかそれ以上というべきか、ガゼフは強敵である。

「ぬんんっ!」

 ガゼフの強烈なラリアットで体勢を崩されそのまま抱えあげられるとこれまた強烈なパワーボムでリングへと叩きつけられてしまう。

「くそっ……こうなれば……」

 ガガーランはカウント2で返して立ち上がるとガゼフの首を両手で掴む。

「オラアアッ!」

 ゴオン! という鈍い音が響き、ガガーランのヘッドバットが炸裂する。

「くあっ!」

「ぐおあっ……」

 当然仕掛けた方もダメージがあるが、ガゼフのダメージが思った以上に大きい。

「もういっちょっ!」

 ゴオン……! 再び鈍い音がする。

「ぐああっ……」

 ガゼフはたまらず自軍コーナーへと逃げ、ラキュースにタッチすると場外へと転がり、頭をおさえてダウン。同様に、ガガーランも頭を押さえ場外へ転がり落ちる。もちろん、その直前にティにタッチをして権利を渡している。ガガーランの文字通り身を削る攻撃によりガゼフを戦力外とし、二対二の状況までなんとか持っていっている。

 もっとも、リングに飛び出したティとラキュースはともかく、コーナーに控えるエンリとルーイはダメージが大きく半分戦力外になりつつあるのだが。

「さっきはよくもっ! まだ背中痛いんですけどー」

 これは事実だが、あの程度の攻撃で参るティではない。ダンディ須永を相手に戦えばもっと酷いダメージを受けるのだから。それに慣れているティにとってはたいした問題ではない。

「闇の力を感じる……タイガー・ジェット・ティ……闇の住人だったのね」

 ラキュースは右腕をゆっくりと横にあげていく。

「な、なにを言ってんのー。薄気味悪いやつだよねー」

 ティはおどけつつ警戒心を強める。

「ま、倒しちゃえばいいかー!」

 ティは疾風のごときスピードでラキュースに襲いかかる。

暗黒刃(ダークブレード)

 以前須永が見せたレーザブレードは青白い光を放ったが、今回のラキュースは腕が黒いモヤのようなものに包まれた気がする。

強烈衝撃(ディープインパクト)

 ラキュースも飛ぶようなスピードで迎撃。ティの繰り出そうとしたアックスボンバーより早く切りつけるようにラリアットを叩き込む。

「うあっ!」

 カウンターで入ったこともあるが、ラリアットの受けに慣れているティが凄い勢いでロープまで弾きとばされ、反動で跳ね返ってしまった。

暗黒昇龍拳(ダークドラゴンブロー)!」

 左を前に半身に構えたラキュースは、一歩前に踏み込むと下に屈みこみ、右腕を斜め下に下げるとティが戻ってくるタイミングで、飛翔し、拳ではなく掌底でティの顎を迎撃しつつさらに右膝で追撃を加えるおまけつきだった。掌底も膝も一撃必殺の威力を秘めた強烈な一撃。

 

「ぐああっ!」

 初めて食らう大技にティが吹き飛ばされ、一気に体力ゲージを減らされてしまう。……もちろんゲージは見えたりはしないが。

「これで決める」

 いつの間にかリングに背を向けてニュートラルコーナーにたっていたラキュースは、天を指し華麗に宙を舞う。

 高く舞い上がり、後方へ一回転。ムーンサルトプレス……と思わせて捻りを加えると背中からセントーンの形で落下する"ヴァルキリー・スプラッシュ"! 

「どふっ……」

 呻くティの左足をつかんでフォールする。

「ワン! トゥ! スリ」

 ギリギリのタイミングでエンリが飛び込みカットに成功するが、勝負の天秤は血盟軍に傾いた。

「ルーイ、しっかりおさえろっ!」

 ラキュースは乱暴に言い放つと、エンリの首を脇に挟んでグインと持ち上げた。

「垂直落下!」

 脳天から突き刺す垂直落下DDT! 大ダメージを受けたエンリをルーイが逆エビ固めに決め、動きをおさえた。

「ラキュース、決めやがれっ!」

「言われなくてもっ! 決めるぞー!!」

 ラキュースは、両腕を頭上でクロスし技にはいることをアピール。そしてティを引き起こすと背中に回り、ティの両手を体の前でクロスさせ、肩車で担ぎ上げた。

 

暗黒海式超弩級竜巻(ダークオーシャンメガサイクロン)!」

 そしてそのまま、ブリッジして後頭部からリングへと叩きつけフォールする。

「ワン! トゥ! 」

 ためを作ったトニー・カンレフェリーは、首を左右に降ってから右手を振り下ろした。

「スリー!」

 

 場内はシーンとなる。王者ティがスリーカウントをとられた。それも新参者に……。受けいれることの出来ない結果だった。

「スリー?」

 右手の三本指でレフェリーに確認をとり、レフェリーはそれに頷き同じように三本指を示す。

「よっしゃー!」

 ラキュースは勢いよく青コーナーに駆け上がると右手で天を指し勝利をアピールする。

 

「ただいまの試合は、21分15秒、21分15秒……ダークオーシャンメガサイクロンスープレックスホールドにより、ダークネス・ラキュース選手の勝利となります」

 このアナウンスにより、観客も目の前の出来事を受け入れる。3人VS4人の変則マッチとはいえ、みんなの王者タイガー・ジェット・ティが負けたのだと。

 

「おいおいおいおい! どうしたぁチャンピオン。今日は王者の失墜の始まりになるようだなぁ」

 バルブロがイキイキとマイクを始める。

「どうだ、お前ら。俺様の血盟軍の実力は。次は、ティ……お前からベルトとそのマスクをひん剥いてやるわっ! 覚悟しておけっ。ラキュースに挑戦させるからな。いや、お前の挑戦を受けてやるよ。なあラキュース」

「いつでも、どこでも受けてあげる。ふふっ……楽しみね。もう一度闇の力を見せてあげるわよ。次もDOサイクロンで決めてあげるわ」

 ラキュースはそうアピールすると、4人でさっさと引き上げてしまった。

 まさかの結末だが、これもまたプロレス。いつもハッピーエンドになるわけではないのだから。

 

 

 


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