異世界プロレスinオーバーロード   作:NEW WINDのN

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ようやく登場。
しかし……




第76話 黒幕

 

 

「しっかし参ったわねぇ」

「困ったもんよねー」

 ある会議場では集まった者達が全員頭を抱えている。

 ここに集まっているものは、かつて王国の裏社会を支配していた八本指の首脳陣である。

 奴隷売買部門長コッコドール、麻薬部門ヒルマ、警備部門長ゼロ。その他賭博、密輸、窃盗、暗殺、金融の全八部門の長が集まり、部屋は警備部門最強の六腕がしっかりガードしていた。

 リ・エスティーゼ王国が健在な時は、貴族派閥との癒着などもあり権勢を誇ったのだが、王国の消滅以降は各部門で大苦戦していた。

 

「麻薬はさっぱりだよ。帝国はジルクニフの治世がしっかりしているからね。それとあのプロレスとかいうのが邪魔しているよ。あれは下手な麻薬より中毒性があるからね……」

 麻薬部門の長ヒルマがボヤく。彼女は元高級娼婦。一介の娼婦から部門長までのし上がった苦労人だ。未だにその残滓はあり不思議と魅力を感じさせる。

「奴隷売買部門はお先真っ暗。以前は売り物になってた森妖精(エルフ)すら帝国では売れないわよ」

 コッコドールは口調は女性ぽいが男性である。

「こっちも人種問わないとかいうプロレスが始まってから、商売にならないのよのねー」

 奴隷制度は廃止され、人間ではない種族に対する偏見もかなりやわらいでいる。

 賭博は闘技場があり、国土が二国分となったため密輸も難しくなっている。

 他部門も似たりよったり。なんとか帝国でも勢力を伸ばしたいのだが、すべての部門が上手くいってないのだ。

 

「ゼロはどうなの?」

 ヒルマは警備部門の長に尋ねる。

「よくないな。よく依頼を受けてた貴族や商人はエ・ランテルの乱以来全滅しているからな」

「全滅って……」

「そう言われてみれば私のとこも、得意客が皆死んだか逃げたかしているわね」

 各部門長もそういえばと話し出す。そして、その結果は驚くべきものだった。

 

「うちだけだと思ってたら全部門そうなのね……」

「これは明らかにおかしいわね」

 ヒルマとコッコドールは顔を見合わせる。

「異常すぎるな。エ・ランテルの変以来、いくら多くの貴族や商人が散ったとはいえ、これはたまたまではないだろうよ。明らかに何者かの意図があったのは間違いないだろう」

 ゼロの言葉に皆無言で頷く。

「ええ、その通りですな」

 ここで、突如聞き覚えのない声が響く。

 

「何者だ!」

 ゼロ達は慌てて立ち上がり声のした方を見る。

 そこにはテンガロンハットをかぶった男が、壁にもたれかかり、ハンバーガーを齧りながら立っていた。

「おや、ミーを知らないと? いや、私を御存知ないですか。わりと有名だと思っていましたがね。では挨拶しておきましょうか。私はダンディ須永。あなた方を捕えに来た者です」

 須永はテンガロンハットを脱ぎ穏やかに話し、最後のハンバーガーを飲み込む。まるで緊張感がない。

「だ、ダンディ須永だと……」

「あの帝国プロレスのか……」

「だが、たった一人でなにが出来るってんだ」

「試してみますか?」

「やれるもんなら……ぐべっ」

 一瞬で五人が床に倒れ伏す。倒したのは久しぶりに披露した須永流空斬だ。単なる衝撃波たが、低レベルの人間相手なら仕留めるには十分すぎるだろう。

「あと三人ですかな?」

 残っているのは、ゼロ、コッコドール、ヒルマのみ。

「今なにがあったの……」

「ちょっとゼロ……警備甘かったんじゃないの?」

「六腕を全員配してあるんだぞ。万全なはずだ……」

「あとの五人は何をやっているのかしら……」

 しかし周囲は物音ひとつせず静かなものだ。

「まさか……な。おい、他の奴らはどうした?」

「全員捕らえましたぞ。ちゃちな幻術使いは蹴り一発で白目むいてひっくり返りましたよ。三日月刀は軽く脳天を叩き、動く骨は手足を砕き、刺突が得意な方は喉を突いておきました。空間を斬るとかいう詐欺師は殴り倒しておきましたよ。たっちさんに失礼なのでね」

 須永はこともなげにいい、逃走しようとしたコッコドールに一瞬で追いつくと卍固めを決めて痛みによって意識を奪う。

「馬鹿な……やつらは一人一人がアダマンタイト級なんだぞ」

「私は、ダンディ須永。常にアダマンタイト級以上の相手と試合をしています。たかだかアダマンタイト級程度などは敵ではないのです。もちろん貴方もですよ。勝ち目ゼロさん」

「勝ち目ゼロだとっ! くっ、言わせておけば。この闘鬼ゼロの力見せてやる!」

 ゼロの正拳突きが須永の顔面を捉えるが、須永は平然としている。

「まあ、悪くはないですが……」

「なっ!」

「では、お返しです。烈風正拳突き!」

「おごっ……」

 強烈な一撃がきまり、ゼロは左胸を押さえて前のめりにダウン。

「ああ……」

 最後に残ったヒルマは全てを諦めた。

「そうそれでよいのです。捕らえろ」

 屈強な軽装の騎士達が入ってきて全員を捕縛。実質王国を支配していたと言われた犯罪組織八本指はあっさりと一晩で消滅。

「やれやれ……恐ろしいのは黄金の姫の頭脳と、容赦のなさですな」

 須永はこの壊滅劇の黒幕(フィクサー)の顔を思い出す。会ったのはわずかな回数だが、あの美貌の姫は忘れることはできない。美しいからでなく、得体の知れなさが頭から離れないのだ。

「エ・ランテルの変からの敵対者の粛清が見事すぎるんですよねぇ……」

「ダンディ様。捕縛終わりました」

「ご苦労さまでした。あとは調査部隊に任せて引き上げましょう、レイナース」

「はい。ダンディ様」

 須永はレイナースを伴い八本指の拠点を後にする。

 






一度も出番がないのに、全てをコントロールする恐ろしい人物が一人……。
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